Magic game   作:暁楓

62 / 92
 文才がなさすぎて書くのがつらい。結構マジで。
 なんというか、書きたい内容に全然ならなくて、それで妥協して、そうして脳内構想とは中身が変わっていって、書きたい内容からずれていくというループ&自己嫌悪。嫌になってくね。


第六十二話

 別室では、リンディや休憩組であったなのは達がモニターで交渉の様子を見守っていた。映像は取調室の片隅から撮影されており、部屋全体を眺めることが可能である。

 そのため、ウレクへと掴みかかろうとしたリインフォースが捕らえられ、爆破を受ける様を、彼女達は見せつけられた。

 

「……っ!!」

 

 はやては画面の中で倒れ伏している家族を黙って見ているようなことは我慢できず、部屋の出入り口の扉へと車椅子を走らせた。

 しかし、自分の足とも言える車輪の推進力はすぐに止められた。

 

「はやてさん! どこへ行くつもり!?」

 

 はやてが振り返ると、車椅子のハンドルを掴むリンディの姿が見えた。眉尻がつり上がったその顔はいつもの優しい現在は一児の、そして近い内に三児の母となる人のものではなく、場合によっては非情な判断をも下すアースラの艦長のそれであった。

 

「リインフォースの元に決まってます! このままやと、リインフォースが!」

 

「あなた、今の状況がわからない訳でもないでしょう!? 今行っても、いたずらに人質の数を増やして、綾さんが不利になるだけよ!」

 

 はやての大声に対して、リンディも反射的に大声にして返す。

 はやての気持ちはわからなくもない。むしろ、助けに行きたいのは自分だって同じである。養子として迎え入れようとしているフェイトも人質に取られているのだ。すぐに突撃してウレクを打ち倒し、フェイトを助けてやりたい。

 しかし、相手は危険なバインド爆弾を周囲に仕掛けている。彼の言動からして、次から捕まった場合には死の危険性もある。そのバインドの範囲内に入れることは死と隣り合わせにさせることだけでなく、その人質を盾にされ、交渉が綾にとって不利なものになる。

 さらに、ここではやての行動を認めればそれはフェイトの友達であるなのはや、フェイトの使い魔であるアルフまでもが行こうとするのが予想できた。事実、二人はもう飛び出そうとする寸前だ。ユーノが抑えているものの、はやての行動を許したら歯止めが効かなくなる。

 これ以上、人の命も交渉も危険な方向へ進ませる訳にはいかない。なんとしてもここで食い止める他はなかった。

 だが、はやてはまだ幼い少女だった。行けば自分が危険に晒されることならまだしも、周りへの影響まで予測を立てることは困難であった。

 

「だからって……リインフォースを見殺しにするって言うんですか!? リインフォースはどうなってもいいって言うんですか!?」

 

「っ――!!」

 

 だから、そんな叫びが出た。

 ただ、家族を失うのが怖くて怖くて、もう寂しさに捕らわれたくないが故の叫び。

 だがそれは、アースラに乗る者全ての命や責任を預かる艦長を否定する内容になってしまっていた。

 

「お、おい。こいつはマズいんじゃねえか?」

 

 末崎はこの言い争いの様子を見てうろたえていた。マズい方向に進んでいるということは理解していた。

 

「なあ才! あれ、どうにかして止められないか!?」

 

「……………」

 

 海斗に言われ、才は二人の方へと視線をやった。しかしそれは僅かな時間で、すぐ視線はモニターの方へと戻った。

 モニターからは、位置は変わらず、その場でうろたえているシャマルやフェイトの声が聞こえていた。

 

「……多分、必要ない」

 

「え……?」

 

「っ、この――!」

 

 はやての発言に対し、リンディがつい手を出そうと右手を振りかぶった時だった。

 

 

 

 うるさい。

 

 その一喝が、この部屋を叩いた。その声に、部屋の全員の声と動きが止まった。

 声の主は綾で、取調室にいる人に対しての言葉……だと思う。ドスの利いた声は、一瞬誰のものかわからなかった。

 また、低く冷えた声音が叩いた。全員がモニターを注目し、綾が口を動かしているのを見たため、綾の声であることが明らかとなった。それでもあまり信じていない者もいたが、確かに綾が言った。

 

 

 

 ――少し黙れ、と。

 

 

 

   ◇

 

 

 

「……………」

 

 ふぅー、と長く息を吐く。

 シャマルやフェイトの声がうるさくて、つい感情的になって大きな声を出してしまった。だが結果としてはこれで正解だったようだ。これで、雑音(・・)が消えた。

 ……冷静になれ。

 冷静に、冷徹に、冷酷にまでなれ。

 まずは状況の把握。相手の状態、こちら側の状態、それと……向こう側の把握も必要になってくるか。俺は声を出す。

 

「リンディさん。聞こえますか」

 

 少しして、目の前にモニターが展開された。モニターにはリンディさんの顔が映された。

 

『……何かしら?』

 

「そっち、状況としてはどうです?」

 

『あまり良くないわ。はやてさんが飛び出そうとしてる。なのはさんとアルフさんも寸前まできてるわ。なんとかこっちで抑えてるけど』

 

「じゃあ、力ずくでいいからそのまま止めておいてください。はっきり言って、雑音が増えるのはやめてもらいたいんで」

 

『……。……わかったわ』

 

 通信を続ける必要がなくなったので勝手に切る。寸前ではやての声が聞こえた気がしたがすでに切った後だ。

 次。リインフォースの手当て。手足からの出血を止める必要がある。

 

「シャマル、フェイト、リインフォースの止血をやってろ。シャマルは魔法が使えなくても出血を止める心得ぐらいあるだろ。急げ」

 

「は、はい」

 

「わ、わかったわ……」

 

 若干戸惑った様子を見せながらも、二人は止血に取りかかった。

 吹き飛んだ椅子を拾い上げて元の位置に戻し、そこに座る。

 目の前には、相変わらず卑屈な笑みを浮かべている金髪赤眼の俺。

 

「事態の一時収集も済んだか? さあどうするよ? 俺に従うか否か。あ、決定権は艦長さんが持ってんだったか? だったらその人に繋いだ方がいいんじゃないのか? どうなんだ? え? クカカカカカッ!」

 

「……安心しろ。これについてはリンディさんに訊くまでもねえよ」

 

「綾さん!?」

 

「お? それで? どうなんだ?」

 

 俺は腕を組み、椅子にふんぞり返って、答えた。

 

「ノーコメント」

 

「あ?」

 

「ノーコメントっつった」

 

「おいおい、いいのか? んなちんたらしてたら、そこの管制人格が保たねえぞ?」

 

「問題ないさ。その前にお前が音を上げる。音を上げるまでの間俺達は動かなければいい。今のお前ならどうせ、その自動捕縛魔法を維持することで精一杯だろうしな」

 

「……………」

 

 ようやく、ウレクがへらへらした笑みを引っ込めた。

 ウレクは自身でも、崩壊が進んでいると言った。その影響は魔法行使にも出ているはずである。そして今の反応を見て確信した。こいつはすでに魔法を同時に複数発動する程の力もなくなっている。

 こいつの交渉の手口は、人質を命の危険に晒し、脅すことによって自身を優位に立たせる手法。そのためのバインド爆弾であるのだが、バインド爆弾の範囲に入った時点で人質とはいえ入っただけでは命が危険という訳でもなく、人質としての意味が薄い。優位に立つためにはバインドで捕らえる必要がある。

 そのためにあの、人の感に障る話し方だ。大事なのは、こちら側に明確な攻撃意志を持たせ、正当防衛とすること。こちらの非を作らせて優位に立つという意味もあるが、回復魔法を使おうとしてバインドが反応したとあればウレクの一方的な攻撃行為となるため、交渉には不利になる。治療を拒んだのはそういうことを危惧した結果であろう。

 すなわち、動かなければいいのだ。動かずにウレクの消滅を待てば、こいつは自分から情報を吐いてくれる。

 なお、自動捕縛を切ってウレクから捕縛を仕掛けてくる可能性もあるが、そうなれば逆にチャンスだ。こちらにはフェイトがいるし、崩壊によってウレクの身体能力は落ちているはずなので俺でも狩れる。

 加えてもう一つ、俺が首を縦に振らない理由があった。

 

「ちなみに言っておくが、仮にお前の身体が崩壊していなかったとしても俺はあの条件は呑まねえぞ」

 

「なんでだ? 格安提供だと思うんだがなぁ」

 

「そう言っておきながら結局のところ、話す気がないだろ。でなけりゃ、『管理局』ではなく『管理局の者(・・)』なんて言い方はしねえよ。俺に話して箝口令を敷くつもりだったんじゃないのか?」

 

「……………」

 

 これは、ウレクが自分のカードを提示した時から薄々気づき、要求を聞いて確定になったことだ。

 まず、ウレクは自分の要求が先だと言って俺への命令権を手にする。人質を盾にすれば造作もないことだろう。そして俺だけに情報を開示し、俺に他言禁止の命令を言い渡す。そうすれば『管理局の者』に情報を開示するという条件は達成される。実質、ウレクは何一つ消費することなく欲しいものを手に入れることができる。

 

「そんな条件、誰が呑むかってんだばぁーーか」

 

「……チッ」

 

 ウレクが舌打ちをした。

 だが舌打ちをする割にはウレクは楽しそうに笑っていた。

 

「やっぱり、お前相手だとバレちまうかぁ」

 

「当たり前だろ。同じ頭脳をしてんだぞ」

 

「ちげぇねえ。ま、先に引っかかってくれた奴がいるおかげで、まだこっちにも希望はあるぜ」

 

 言うと、ウレクは天を仰いだ。

 

「おい! リンディ・ハラオウン! 聞こえっかぁ!?」

 

『何かしら?』

 

 ウレクの横にモニターが展開され、画面内のリンディさんが答える。

 ウレクはモニターに顔を向ける。

 

「現在このように我慢比べの状態だ。オリジナルに動く気はねえ。お前だって情報はほしい、しかしお前は艦長という責任上この管制人格を見殺しにする可能性がある判断は避けたい。そうだろ?」

 

『……何が言いたいの?』

 

「これからオリジナルと勝負する。その結果に互いの要求を賭けるってのはどうだ? こいつが勝てば情報をお前らに開示するし、お前らとの協力関係も約束してやる。俺が勝ったら綾への命令権をいただき、俺を釈放する。どちらが勝とうがこの部屋は用済みになるから、管制人格他、人質は解放となるし、勝負はすぐに終わらすことだって可能だから、治療は間に合うとは思うぜ?」

 

『……………』

 

 リンディさんに対して、俺対ウレクの勝負を要求してきた。これ以上俺との交渉は不可と判断して、リンディさんの立場を利用する策に出たようだ。勝負の結果に関わらず人質の解放を提示する辺り、ウレクはこの要求と勝負に賭けるらしい。

 ウレクの言う通り、リンディさんは艦長として、アースラに乗る者全ての命を預かるという責任がある。リインフォースには適切な治療が必要な状況で、この状況を長引かせてはならない。

 だが、リンディさんがすぐにその要求を呑むことはしなかった。

 当然だ。負けた時のリスクが厳しい。人一人差し出して逃げられたというのは艦長としての責任が大きくなる。

 しかし、元々こちらが動かないという選択肢はリインフォースの怪我を考慮しない、今の状況では危険な手段だ。ウレクは限界に近いとはいえ、いつ消滅するかわからない。ひょっとしたら僅か数分かもしれないし、何時間も後になっても生きているかもしれない。そんな不安要素の大きい賭けを行うのは好ましいものではない。

 なので、ここは後を押す。

 

「リンディさん、ウレクの提案を受けてください」

 

『あなたねぇ……言ってることの意味、理解しているのでしょうね?』

 

「当然です。負けた時のリスクは大きいですが、ここで死者が出ることは可能性としても存在しなくなる。人が死ぬ可能性を考えるよりは明らかにマシです」

 

 それに、もっと単純な解決方法がある。単純で、簡単で、最良な方法が。

 

「それに、勝てばいい」

 

 勝負とはそういうものだ。負ければリスクを背負う。だが勝てばいい。勝てば、そのようなリスクを考える必要がなくなる。

 はぁ、とリンディさんが溜め息をついた。

 

『これじゃあ、何のために決定権を持ったのかわからないじゃない』

 

「仕方ないですよ。こうなったんですから」

 

 俯きがちにまたリンディさんが溜め息をついて、そしてすぐに顔を上げた。

 決心したらしい。

 

『綾さん。勝負を受けるということは、あなたが責任を負うということよ。わかっているわね?』

 

「当然」

 

『なら、いいわ』

 

 そしてリンディさんは決定を下した。

 

『わかりました。その提案を受けましょう。それで、こちらで何を用意すればいいのかしら?』

 

 望みが繋がったウレクは、口角を引き上げた。

 

「そうこなくっちゃな。じゃ、新品のトランプ二組を用意しろ」

 

 ああそれと、とウレクは要求を追加した。

 

「シュテルのオリジナルと、シュテルが師匠呼びしてる奴。その二人を連れてこい」




 綾対ウレクの交渉勝負いつになったら終わるの? いつになったら本編に戻るの?
 思った以上に進まない現状にも自己嫌悪。さっさと終わらせたい。ただでさえStS入るまでの空白期めちゃくちゃ長い自信たっぷりなんだよ。ここで足止めくらってる暇なんてないんだよ。
 ああ、もっと早く書く力が欲しい。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。