Magic game   作:暁楓

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 注意! 今回の話は一部アンチ成分を含みます。
 事前に言っておくと、綾がゲスい発言をします。タグで理解しているとは思いますが、アンチ・ヘイトが苦手な方は今一度ご注意ください。


第六十三話

「フェイトちゃん!」

 

「フェイトー!」

 

「なのは! アルフ!」

 

 扉が開いて早々、フェイトに駆け寄ったのはなのはとアルフだった。

 フェイトも二人の元へ駆け寄ろうとして、一瞬何か迷う素振りを見せたのだが、その時にはもうアルフに抱きつかれていた。

 

「フェイトぉ! 無事だったかい!? あたしもう心配で心配で!」

 

「ア、アルフ駄目だよ。血がついちゃう」

 

 なるほど、どうやら自分についたリインフォースの血が付着するから少し躊躇ったらしい。

 リインフォースに行った止血方法は圧迫止血という、布の上から手でその名の通り圧迫して出血を止める方法である。本来ならゴム手袋をはめたり、ビニール袋を手に被せて血の付着を防ぐのだが、そのようなものがなかったのでフェイトやシャマルの手は血で染まってしまっている。

 もっとも、すでにフェイトが気にした意味がなくなったのだが。

 そしてなのは、アルフと続いて、今度はリインフォースの元へ直行する人物が二人。はやてとリンディさんである。

 

「リインフォースぅ!」

 

「シャマルさん! 応急道具を持ってきました。急いで応急処置をしましょう!」

 

「わかりました! リンディさんはまず右手の応急処置をお願いします!」

 

 シャマルとリンディさんで応急処置が行われる。はやても手伝うが、車椅子という位置上、「ないよりはマシ」程度の手伝いしかできない。

 そしてなのはと共にウレクの要求に出てきた人物である、ユーノが最後に入ってきた。ユーノは入ってくるなり、俺に謝ってきた。

 

「すみません、綾さん。本当ならはやてもアルフも、今ここに連れて来ちゃ駄目だってわかってたんですけど……」

 

「いや、いい。来てしまったからにはしょうがないさ」

 

 確かに、アルフといいはやてといい、余計な人まで来て欲しくはなかった。特にこの場では感情的になりやすいであろう二人は止めることに苦労することが予測でき、うるさく、正直言って邪魔だ。しかし、邪魔だと言って追い出すことができない以上、必要以上に気にする訳にもいかない。

 

「海斗達は?」

 

「才の発案で、何かあった時のために待機してます」

 

「それでいい」

 

 ここにはいない仲間のことを尋ねて、返答を聞いて心中で才に礼を言う。

 それがいい。もしもの備えもある方がいいが、それ以上にこの場をこれ以上うるさくせず、集中できるように努めたことが重要だ。雑音はできるだけ少ない方がいい。

 

「ウレクの要求の物は?」

 

「持ってきました」

 

 言って、ユーノはポケットからトランプの箱を二つ取り出した。どちらも新品で、ビニールの包みもついている。

 ユーノからそれを受け取り、その二つを机の上に置いた。

 

「用意するものは用意したぞ。それで、どうするつもりだ」

 

「よぉーし。じゃ、シュテルのオリジナルさん。お前ちょっとこっち来いよ」

 

「わ、私……ですか?」

 

 クイクイと手招きするウレクに、指名されたなのはは戸惑った様子でいた。

 そこに、はやてが待ったをかけた。

 

「なのはちゃん待って! 私が行く!」

 

「はやてちゃん!?」

 

「おめーなんざ最初っから呼んでねーよ。すっこんでろ」

 

「リインフォースを、私の家族を傷つけて! それでもそのまま自分の思い通りになると思っとるんか! そんなことはさせへん!」

 

 言って、はやては車椅子をウレクの元へ走らせようとする。

 なので、俺はレイピアの鞘を車椅子の車輪に差し込んだ。

 差し込んだ鞘は車輪と共に少し回り、背もたれに引っかかって止まる。車輪も鞘と共に動きを止める。

 

「っ!? 綾さん、何するんですか!?」

 

「はやて。今のお前は邪魔でしかない。黙って、すっこんでろ」

 

「っ、……どうして」

 

「あ?」

 

 はやてが一瞬俯いて呟いたかと思うと、次には顔を上げて怒鳴ってきた。

 

「どうして! そないなことばかり言うんですか!? 邪魔と言ったり、雑音呼ばわりしたり! 家族を傷つけられて、それでも外で黙って見てろって言うんですか!?」

 

「はやてさん! 勝手なことを言わないで」

 

 叱ろうとするリンディさんを手で制する。俺に考えがある、ということが伝わったリンディさんは、それだけで身を引いてくれた。

 少女の癇癪はまだ続く。

 

「綾さんは、ただ呼ばれなかったからなんて理由で、何もしようともせず、ただのうのうとしてろって言うんですか!? あなたは何とも思わないんですか!!」

 

 ふぅ、と溜め息。敵意を剥き出しにしている九歳の顔を見据えて、口を開く。

 

「そこまで言うなら、席譲ってやろうか? そしてこう言えばいい。『綾を渡すから、一刻も早くリインフォースに治療をさせてほしい』って」

 

「え」

 

「ちょっと、綾さん!? 何を言ってるの!?」

 

「おい、何勝手なこと言ってんだコラ」

 

 多方から非難の声が挙がるがそれは無視し、続ける。

 

「正直、俺自身はこの交渉がどっちに転ぼうがどうだっていい。俺が動こうとしない理由はただ、俺が安全な場所に留まって生存率を少しでも上げたいってだけだ。仮に俺がウレクの元へ行くとしても、直接的に死ぬって訳でもないだろう。なぜかは知らんが、俺がU-D……ユーリを救出するのに必要な駒に抜擢されたってだけだ」

 

 そう、この交渉による結果の違いはそんなところだ。ウレクが降りて管理局と共に事件解決に取りかかるか、ウレクの元に降りて単独でユーリ救出に乗り出すか。

 ウレクが管理局の協力を拒む理由は単純に、管理局への信用を持ってないからという理由で解決する。管理局がいなくともユーリを救出する手段をウレクは考えているはずだ。後はその成功率と俺の生存率がどちらが上かの問題で、俺は管理局に留まる方を選んだ。

 しかしそれはどんな屁理屈を使おうと、たった九年程度しか生きていない少女にはわからないだろう。家族のことを選ぶだろう。

 

「俺は、お前の言ってることが間違っているとは思わない。俺だって海斗らが人質にされたらそりゃあ怒る。家族が助かる確率が上がるならなんだってする」

 

 はやての言ってることは認める。だが俺は生存率の高い方を選びたい。

 

「リンディさんは責任を俺に預けた。俺はどうでもいいと今言った。だから、選びたいならお前が選べ。俺をあいつに差し出して、リインフォースに治療を少しでも早く施すか。それとも、リインフォースをもうしばらくほっといて、俺をここに留まれるようにするか」

 

 だから、楔を刺す。容赦なく、この少女の選択肢を奪う切り札を使う。

 

「闇の書の被害者に対する誠意がその程度だって、今ここにいる全員に示してもいいって言うなら、俺を差し出せばいい」

 

「!?」

 

 目の前の少女の双眸が大きく見開かれた。その顔が驚愕と共に、恐怖で塗りつぶされていく。

 被害者特権。その名の通り、闇の書事件の被害者が持つ非公式の特権。俺は闇の書事件とは関係ない扱いになっているが、あくまで管理世界では俺と闇の書事件の関係を隠しているだけであり、この特権を使うことは可能だ。

 しかも情報改竄を推進してはやてらの刑務所行きを回避させたり、リインフォースが現在システムを置いている夜天の写本を手に入れたりしたのが俺であるため、この特権の威力は凄まじい。使えば絶対とまで言える程度には効力を発揮する。

 かつ、こういう特権というものは見せびらかすのではなく、ちらつかせることでより意識させ、相手の抑止力となる。

 

「っ、……ぅ、ぁ……………」

 

 ああ、酷いことするなぁと、自分のことながら思う。

 自分のやってることが、間違いなく下種のやっていることだということはわかっている。家族を助けようとすれば、友達の信頼を失うことになるだろう。二人はそうは思わなくても、はやてはそのことに恐怖する。友人の信頼と家族、俺はそれを天秤にかけさせた。

 ああ、本当に、反吐が出るようなくらいに最低だ。

 

「……そんな……選べる訳、ないじゃないですか……」

 

「だったら、従え。選べない奴が出しゃばるな」

 

 震える声で、絞り出すように言ったはやてをその言葉で一蹴する。

 はやてを黙らせ、俺はようやくウレクへと向き直る。

 

「……下らん内輪もめを見せたな。悪かった」

 

 謝るが、思いの他ウレクはニヤニヤ笑っていた。

 

「いんや。結構面白いもん見させてもらったよ。冷徹に冷酷に、自分のためなら他人の傷をも抉ってみせるその残忍さ、さすがはオリジナルだ。あんたを素体にして良かったよ」

 

「……どうだかな。それより、話を戻さないか?」

 

「おっと、そうだったな。じゃあシュテルのオリジナルさん、お前だけ来い。ああ安心しろ。お前だけ特別配偶として触れる程度ならバインドも作動しない。明確な攻撃的速度での接触をした場合には容赦なくバインドだがな。後、シュテルの師匠はオリジナルの隣にいれ」

 

「なのは。行けるな?」

 

「あ……は、はい」

 

 なのはは頷くと、恐る恐るウレクの元へと近づき、隣に立った。

 

「で? これでどうするんだ?」

 

「互いの都合上、勝負は単純なものの方がいいだろ? 捲りで勝負しようぜ」

 

「捲り?」

 

 ユーノが訊いてきた。こういうギャンブルには無縁のようだ。

 

「引いたカードの優劣で勝負を決める、ギャンブルの中では最も単純な種目の一つだ」

 

「そうそう。ジョーカーを除いた山から一枚引き、その優劣を競う。ランク、スートの強弱はポーカー基準でいいよな?」

 

「構わん」

 

 ランクとはトランプの数字、スートはスペードやダイヤといったマークの正式な名称である。ただ数字やマークでも十分事足りるため、こういったトランプの用語は一般的に広くは知られていない。

 強弱はポーカーが基準ということは、最も強いランクはA、スートの優劣は強い順にスペード、ハート、ダイヤ、クラブとなる。

 

「なのはとユーノの意味は? 不正防止用の見張り役か?」

 

「不正防止って意味では正解だ。ただやり方は違う。ただ見張らせるんじゃなく、こいつらにシャッフルを代行させるのさ」

 

「え、私が……?」

 

 なのはが驚いた様子でいる。ウレクはグリン、と首を彼女の方に向けた。

 

「ああ。俺は見ての通り片腕しかない。シャッフルに時間がかかっちまうだけでなく、オリジナルと比べて不利だ。だからここは平等に第三者に切ってもらうってことさ」

 

 ただし、とウレクは言葉を切り、顔をこちらに向け直した。

 

「それじゃあ自分の引くカードに責任が持てないだろ? だから最後にカットの、切り分けだけは自分で行う。切り分けた札を積むのは代行に任せる。これなら最低限責任は持てるよな?」

 

「……切り分ける数は? 統一する方がいいんじゃないか?」

 

「ああそうだな。切り分ける直前の一番上のカードを含めて五つに分けようか。一応言っとくが、代行はカットの意味を持たせるために直前で一番上だったカードをまた上にして積むようなことはするなよ? あと勝負は三本先取、シャッフルは捲る度に、捲ったカードを抜いた状態で行っていく。以上だ。あとは訊くようなこともないだろ?」

 

「そうだな。それでいい」

 

 言ってすぐ、互いに机の上にあるトランプの箱を手に取り、片や手で、片や口でビニールの包みを取る。

 

「中身の確認はしてもいいよな? ここにきて不良品掴まされたとあっちゃあ堪んねえからな」

 

「勿論だ。俺からもそう願いたかった話だ」

 

 互いに同意を得て箱を開け、中身を取り出し、確認をする。俺は両手の中で、相手は机の上でカードを滑らせて。

 すでに(・・・)とっくに勝負は始まっている(・・・・・・・・・・・・・)

 

「ジョーカーを除く五十二枚、確認した」

 

「カカカッ、俺もだ」

 

 ドン、と同時にカードの束を机の上に置く。

 

「ユーノ。シャッフルを頼む」

 

「じゃあシュテルのオリジナル。シャッフルやれよ」

 

 カード引く。たったそれだけに人と情報賭けた捲り勝負。

 事前準備(・・・・)も終わり今、本格的に開始された。




 おかしい。当初の予定ではこの話で捲り勝負の後半まで行く予定だったはずだ。いつの間にか文字数稼がれてこれ以上は長くなりそうだったから切るハメになった。なぜだ。
 ここまで進まないないのは……、……………ディケイドの仕業か! おのれディケイドォォォォォ!!!
 冗談はさておき、なかなか進まないのは事実です。いい加減終わって欲しい。ユーリほったらかしにするのもあれだし。
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