Magic game   作:暁楓

71 / 92
 やっと最新話できあがりました。最近ペースがガタ落ちです。


第七十一話

 残り少なくなった缶ジュースを呷る。中身が喉を通過し、空となった缶を適当に握り潰し、少し離れた場所にあるゴミ箱目掛けて投げ込む。――よし入った。握力も腕力もだいぶ戻ってきたみたいだ。

 現在俺が座ってるベンチの隣では、少し前にユーリと交戦、負傷して搬送された海斗達と共に保護された転生者の一人、水田(みずた)次郎(じろう)の話が続いていた。無論聞き逃してなどいない。

 

「――このデスゲームで知り合った仲ですけど……スターチップを早々と手放してしまって、後がなかった僕らがこうして生きていられるのは、圭斗(けいと)のおかげだったんです。何にもできやしない僕らを引っ張ってくれて……いつか僕が支えていきたいと思ってたのに……なのにっ……!」

 

 嗚咽が混じり始め、すぐに嗚咽と泣き声ばかりになってゆく。俺は何をしてやることもなく、黙って聞き続ける。

 ――橋山(はしやま)圭斗。水田が所属しているチームのリーダーであった人物。正義感が強く、ほとんど一人でチームを支え、仲間を失格の窮地から守ってきたが、ユーリとの戦闘で水田達を庇い、チップを失って失格。海斗達によって水田達は助かったが、水田と、ユーリによって片腕をもがれた少年は戦意喪失状態となった。

 ユーリを止める追加指令がきてから、失格者が後を絶たない。今回の橋山の失格で四人目だ。

 

「質問だ。闇の欠片事件や、今回の事件から新たに追加された転生者がいるとか、そういう情報はあるか?」

 

 水田は首を横に振ることで答えた。

 A's時の転生者の追加以降、新たに転生者が追加されていないとすると、闇の欠片事件での失格者はゼロであるため、転生者は残り二十人。二百人参加させられた中で、生き残っているのは十分の一ということになる。

 

「もう一つ質問。ユーリとの戦闘はお前達から始めたのか? それともユーリから始めたのか?」

 

「……闇の欠片を倒してる途中、ユーリが突然現れて……襲われたんです……」

 

 嗚咽混じりの回答に、やはりと内心で頷く。

 失格者が続々出ているということは、それだけユーリと遭遇しているという意味になる。遭遇率が高いのは、ユーリの方から強襲しているということのようだ。

 それによって問題となるのは、闇の欠片からの阻害プログラム収集率の低下。ユーリと遭遇しないように立ち回る必要があり、ユーリから逃走するだけの魔力を温存していくことも必要になっていくため効率が悪くなる。場合によっては、逃走するためにせっかく集めた阻害プログラムを使うことにもなりかねない。

 才にはメールでこのことを知らせておく方がいいだろう。そう思い携帯を取り出す。

 その時、水田が気づいた。

 

「あれ、和也?」

 

「え?」

 

 聞いたことのある名前に、携帯に落としていた視線を前に向ける。

 

「……和也?」

 

「……あ? お前誰だよ?」

 

 約十一ヶ月ぶりに呼んだ名前の主は、当時からは様変わりしてしまった俺が綾であるとわかっていないようだった。

 無印時に抜け出して以降、すっかり連絡が途絶えていた佐崎和也。どうやら橋山のチームの一員となっていたらしい。

 

「……声でわかる程の付き合いでもないか。朝霧綾だ。十ヶ月以上も経ってこうなった」

 

「……あ? お前、綾なのか!? ……けっ、なんだよ。氷室とか言う奴がお前がチップ十九個持ってるだとか言ってたけど、蓋開けたらそんなのはガセで、結局お前は何もできなかったってか?」

 

 俺が綾であることに気づいた途端、和也は俺の身体を見て見下した態度を取った。

 

「あれ、和也、知り合い?」

 

「神を倒すだとか大法螺吹いてる馬鹿だよ。こんな奴に付き合ってたら、すぐにチップがなくなるぜ」

 

「か、神を倒すって……本気ですか!? ……あの、ところで、今スターチップはどのくらい……」

 

 若干興奮気味の水田に訊かれ、メール作成を一旦やめ携帯から現在のチップ個数を調べる。

 

「三十八……いや、さっき海斗達が指令をクリアしたからその分増えて四十か」

 

「……ハッ、チップの数まで嘘ついて、何が楽しいんだか」

 

「証拠、見せるか?」

 

 そう言って、チップ管理アプリからチップ取り出しを選んで決定を押す。チップ管理アプリはいつの間にか、おそらくはこのデスゲームが始まった時から追加されていたアプリの一つだ。スターチップの格納、取り出しが行える。

 取り出し命令に従って目の前に鈍い光が発生し、そこからスターチップがジャラジャラと落ちてきた。

 俺の手持ち四十個のチップでできた小さな山に、隣で水田は驚きで口を開けていた。和也に至っては、驚きを通り越して呆然とその場で停止している。

 

「こ、これ……全部、あなた個人の……ですよね?」

 

「それ以外ないだろ。あと触るなよ。強奪と判断されたらその瞬間失格になるぞ」

 

 水田は触ろうとしてはいなかったが、俺の忠告を受けてチップから少し距離を離した。

 

「……なんでだよ」

 

「あ?」

 

 和也を見ると、明らかに怒気を含んだ顔と声で怒鳴り始めた。

 

「なんでそんなにチップあるんだよ! おかしいだろ!!」

 

「毎回指令をクリアしていったからに決まってるだろ」

 

「だったらなんで腕とか目ぇ治さないんだよ! バッカじゃねえの!?」

 

「使う必要がないと判断したからだ」

 

「ケッ! カッコつけやがって!」

 

 かなり一方的な怒りを見せ、和也はそっぽを向く。

 しかし何か思いついたらしく、すぐに向き直り、高圧的な口調で話してきた。

 

「おい、なら一つ交渉しようぜ」

 

「……どんな交渉だ?」

 

「今回の指令、お前は攻略の方法考えついてんだろ? お前がやろうとしてることを俺達にやらせろ! そんだけチップ持ってりゃ、もう何もしなくてもお前死ぬことねえだろ!?」

 

「……こっちが攻略法を差し出すとして、お前は何を差し出すって言うんだ?」

 

「俺達が戦力として入ってやるよ。デバイスはあるし、魔力だってそこそこある。お前なんかよりずっと戦力になるしな!」

 

 

 

 

 

「綾より戦力になる? カカッ、それこそ法螺を吹くって言うんだぜお子様よぉ」

 

「ああ!?」

 

「……お前、いつからいた」

 

 ため息を吐きそうになるのを抑え、横を見る。

 少し離れたところに、和也をお子様呼ばわり――見た目年齢的には合っているかもしれないが――してけなした人物、ウレクがいた。何かを食っているようで、中身が空になった菓子の小袋を左手で持っていた。

 ウレクはこちらへと近づき、菓子の小袋をゴミ箱に捨てるといつもの狂気じみた笑みを向けてきた。俺は慣れたが、ウレクと面識のない二人は若干たじろいだのが見えた。

 

「このオッドアイのガキがお前と話を始めた辺りだったかなぁ? いやはや、こいつの交渉ごっこが聞いてらんねえクオリティだったんで、無駄に時間使っちまう前にさっさとお前を連れていこうとな」

 

「ああ!? てめえ、でしゃばった上に生意気なこと言ってんじゃねえぞ!!」

 

「でしゃばりも生意気もお前の方だよばーか。まずお前に俺を扱える訳ねーじゃん。それに何だっけ、ああ、お前なんかよりずっと戦力になる? キキッ、妄言もほどほどにしねえと信用無くすぜ?」

 

「……この野郎、調子乗ってんじゃねえぞオラァ!!」

 

「お、やるか?」

 

 激昂した和也の拳が到達する直前で、ウレクは回し蹴りを叩き込んだ。普通の回し蹴りとは変則的で、振り抜きはせずに足で引っ掛けて押し倒すように和也を床に叩きつける。

 

「ガハッ!」

 

「じゃ、一発死んでみるか?」

 

 楽しそうに、心底楽しそうにウレクは言い、魔力を付与させた左手を振りかざす。

 俺はその振りかざした腕を左手で掴み固定した。

 

「……ウレク、俺をどこに連れて行こうってんだ?」

 

「お? おお、すっかり忘れてた」

 

 ウレクはそう言うと、興味の対象外となった和也を蹴ってどかした。

 

「そろそろリハビリしたいだろ? 今プログラムカートリッジの試験運用って奴が行われててなぁ。どうよ、俺もいい加減退屈してんだ」

 

「確かにいいタイミングだな。腕はだいたい治ったし、お前の扱いもちゃんと理解しておきたいと思ってたところだ」

 

 腕の切断という大怪我をしたが、逆にこの怪我の大きさに医務員やシャマルの魔法治療を受けることができ、すでに治ってはいる。ウレクの扱いも、前回は唐突な運用であったため、もっとちゃんとした運用方法の確認をしたかったところだった。

 

「決まりだな。じゃ、さっさと行こうぜ」

 

 言って、ウレクはさっさと歩き出す。

 ウレクの後ろ姿を見て息を吐き出し、後ろを見る。

 和也は座り込んだ状態でただ呆然としていた。ウレクとの圧倒的差、そして今し方のウレクの殺意に当てられ、瞳には恐怖が見える。

 それを見てもう一度息を吐き、俺は先ほどの答えを言い渡す。

 

「……悪いが、交渉は却下だ。俺の役割は代われないし、俺はまだチップを手に入れていかなきゃならない。もう戦力も欲しいって訳じゃないしな」

 

 そもそも、今回の指令……ユーリ救出の方についてだが俺のやることは無関係ではないがMVPは取れないと思われる以上、和也が求めているチップは手に入らない事態に陥る可能性が高い。もう一つの指令、闇の欠片の掃討についても、闇の欠片の個体それぞれで対処法が多岐に分かれる上、その人の技術が問われたりと俺がアドバイスしたところで無意味になる。どの道、この交渉はどちらにとってもメリットがない、無意味なものだった。

 

「水田」

 

「は、はい?」

 

「一つアドバイス。今回追加されてきたユーリ救出の指令だが、闇の欠片から摘出できる阻害プログラムって奴を撃ち込めればとりあえずクリアにはなるはずだ」

 

 交渉は決裂したが、一応彼らの生存率を底上げするためのアドバイスは置いておき、俺はこの場を去った。

 

 

 

   ◇

 

 

 

「……朝霧、本当に大丈夫なんだな?」

 

「大丈夫だって。保険も用意されているんだし」

 

 電脳によって構築された空間で、ウレクと融合した俺はシグナムと対峙していた。

 対ユーリ用のプログラムカートリッジ。主力としてそれを使うのはなのはと、今目の前にいるシグナムとなった。なのはは別の訓練施設でクロノを相手に試運転を始めているという。

 空間内には、俺とシグナムの他にもリーゼ姉妹もいた。プログラムカートリッジのデータ測定に加え、万が一の不祥事――特にウレクが俺を乗っ取っての暴走の可能性――に対処するための、今俺が言った保険としての役割を持っている。

 

「そういう意味ではない。繋がったとは言え、腕が切られてまだ時間が浅いのだぞ」

 

「握力も腕力も件並戻った。そしてリハビリもウレク(こいつ)の検証も必要だから動く。文句あるか」

 

「しかしだな……」

 

 シグナムといい、リインフォースといい、夜天の関係者は俺が戦線復帰を渋る奴ばかりなのはなぜだろうか。

 

「シグナム」

 

 俺はやや強い口調でシグナムの言葉を遮った。

 

「相手を俺と考えるな。劣化とは言え、今から相手にするのはシステムU-Dの力に他ならない。本番の時にもそんな情けで手ぇ抜いて、仲間を墜とすのか」

 

「……………」

 

 シグナムは何も言わなかった。だが、答えなかった訳じゃない。

 対ユーリ用の力が加えられた魔剣が鞘から引き抜かれ、その主の命令が発せられる。

 

「――プログラムカートリッジ、『ヴィルベルヴィント』……ロード」

 

 通常のカートリッジと同様に炸薬の炸裂音が鳴り、シグナムの魔力上昇が感じられる。ただ通常のカートリッジとは上昇幅が格段に大きいこと、効果に持続性があることが違いだった。

 

「その通りだな。だが私は加減というのが苦手でな……そこは承知してくれるか?」

 

「今更だな。それに、ユーリとの戦闘は直撃は身体が欠損か直接死ぬかになるだろうから、当たるつもりなんて毛頭ない。今回だって同じだ」

 

「そうか」

 

 シグナムが構える。それに合わせて、俺も黒刀を抜いて平突きの構えを取る。

 

「――いくぞ!」

 

 言うや、シグナムが加速して斬りかかってくる。

 俺は動かない。回避する必要がないから。

 ギィンッ! と金属音。しかしそれを奏でたのはシグナムのレヴァンティンと、硬質物体と化した堕翼だった。

 堕翼とはそもそも、システムU-Dによって作り出される魄翼が元になっている。前回は説明がなく使えなかったが、こうした硬質物体の生成も魄翼と同様に行える。

 

「――!」

 

 驚いて硬直したシグナムの隙を、黒刀で文字通り突く。こちらはシグナムのとっさの魔法防御に遮られた。

 そしてシグナムは後ろへと跳んで退避する。仕切り直しのつもりだろう。確かに俺単体では近づいて斬りかかるしかない。

 だが、今回は別だ。

 

「スピア」

 

 堕翼から無数の槍を生成し、シグナムへと飛ばす。本来魄翼から作られるそれと比較すると威力・強度・速度どれを取っても劣るが、それでも牽制や誘導のためなら使える。

 左に偏らせて射出した槍。シグナムは反対側へと回避する。当然だ、よけれない速度じゃない。だが移動の方向性が決定された。

 

「エターナルセイバー!」

 

 右手に長い刀身を作り上げ、シグナムの正面から叩きにかかる。

 レヴァンティンで緩やかな傾斜を付け、それで流された。

 

(ちっ――!)

 

 薙ぐ動作は隙がデカい。叩くのに失敗した今、この隙の大きさは致命的だった。

 

「穿空牙ッ!」

 

 一気に間合いを詰められ、居合い切りを腹で受ける。

 しかもそれだけじゃない。

 

「紫電――」

 

(――ッ!)

 

 炎熱を纏ったレヴァンティンが振りかぶられる。

 回避――無理。防御――間に合いはするが割られる。なら――、

 

「一閃ッ!」

 

 左腕で最低限直撃を避ける。

 そして堕翼の片方を変形させて、シグナムの腰に巻きつけた。

 

「ッ!?」

 

 俺が落ちるのに連動し、シグナムも引っ張られて降下する。

 堕翼のもう片方を腕型に変形。シグナムを掴み、地面に投げ飛ばす。

 

「がはっ!」

 

 飛行制御もせずに落下していたため、当然地面に激突。仮想地形に柔らかさなどないためかなり痛い。

 だが痛みを無視して立ち直り、シグナムの落下地点へと走る。

 強化魔法行使。加速強化(アクセル)付与。

 加速強化(アクセル)追加付与。

 防御強化(プロテクト)付与。

 ――突く!

 

 ガギンッ!

 

 レヴァンティンで弾かれ、黒刀が手元から離れる。

 それだけではない。黒刀を弾くために斬り上げられたレヴァンティンをシグナムは、俺に向けて振り下ろすため両手持ちにする。

 

「っ、まだまだぁ!!」

 

 右手でシグナムの腕を掴み、さらに左手でレヴァンティンの刀身を掴んで無理やり奪い取り、投げ捨てる。

 そして堕翼から槍を生成して射出を――、

 

「ふんっ!」

 

「なあぁっ!?」

 

 投げ飛ばされた。しかも身体強化でもしてるのか、かなり吹っ飛ばされる。

 堕翼で態勢を整え、投げられた勢いを殺して着地。もう一つの剣、レイピアを抜き取って駆ける。シグナムもレヴァンティンを拾って駆ける。

 

「「おおおおおおおっ!!」」

 

 俺の突き、シグナムの唐竹が繰り出され――、

 

 

 

 

 

 それらは、水色の魔法陣によって阻まれた。

 

「「!?」」

 

「はい、そこまでそこまで!」

 

「熱くなるのは構わねーけど、目的忘れてんじゃねーか?」

 

 止めたのはリーゼ姉妹。ロッテが俺を、アリアがシグナムを受け止めている。

 

「……すみません」

 

『ケッ、白けるねぇ』

 

「……………」

 

 シグナムは謝罪し、剣を引っ込める。俺も黙ってレイピアを鞘に納める。ウレクは文句を垂れるがそれだけだった。

 

「あんたの堕翼ってやつの扱いは悪くないな。魔力が強化されてる割に攻撃時の出力が小さいのは本人のスペック上仕方ないとして。――ほれ、お前の刀」

 

「はい。ありがとうございます」

 

 黒刀をロッテから受け取り、これも鞘に納める。

 試験運用の結果は概ね良好。シグナムの方も聞く限りでは問題ないようだ。俺としては、さらにこの力の扱いを慣らすため、何よりチップを手に入れるために海鳴市に降りて戦闘を積みたいところだが、俺は一応病み上がりの身体。この模擬戦も無理やり許可を得たものであるため、また安静にしろと言われるだろう。

 

『手ぇ貸してやろうか?』

 

『却下だ。リンディさんから雷どころじゃ済まされなくなる』

 

 念話によるウレクからの提案は瞬時に蹴った。まだ死にたくはない。一応、無理が祟って最終戦に影響したらということもある。

 

「では、失礼します」

 

 話を終えて、シグナムは立ち去っていった。

 続いて俺もロッテに礼をして立ち去ろうとすると、ロッテから待ったがかかった。

 

「ちょいと待った」

 

「はい?」

 

「一つ訊きたい。お前が戦う理由ってなんだ? どうして無謀と言えるような戦いで、自分の命を捨てるような真似をする? お前の友人の才って奴にも訊いたけど、さっぱり意味がわからなかった。元々闇の書事件におけるお前の無茶ぶりに思ったことだ。だから本命のお前に訊きたい」

 

「……才は、なんて言ったんですか?」

 

「自分達がスクラップだからどうのこうの。あたし達から見たら異常な行動を取るのが当たり前だとか……そんなところだな」

 

 スクラップ、か……。

 ロッテだけではなく、いつの間にかアリアも真剣な表情で俺の回答を待っていた。

 俺はため息に近いような息を吐き、それから二人に答える。

 

「……確かに、俺達もスクラップなんでしょうね。多分間違いじゃありませんよ」

 

「はぁ……お前も訳のわかんねーことを言うのか?」

 

「俺だってわかりませんよ」

 

「はぁ?」

 

「ただ、スクラップである俺達は一度壊れてる。壊れたまま動いてる。ここまではわかります。そして、もう一度壊れた時、どうなるかわからないということもわかりますよ」

 

 そのもう一度壊れる時は、俺の場合いつになるだろうか。

 神を討つ時? または神を討つために手段を選ばなくなった時? それとも、その他の何か?

 一切わからない。いつ壊れるのか、どう壊れるのか、何一つわからない。ただ才が言ってたという話を聞いて、漠然と、それだけがわかる。

 

「壊れて異常となっている俺達は、異常な判断しか取れないし取ろうともしない。才と同じ答えですね」

 

「……はぁ。お前、一回頭ん中も診てもらった方がいいんじゃないの?」

 

「それぐらいで治るなら、とっくに治されてますよ。――では、失礼します」

 

 俺は訓練施設を去った。




 久々の和也登場。作品内では十ヶ月経っても踏み台のままです。踏み台から抜け出せる日はくるのか、それとも踏み台のまま忘れられるか。
 この話の中で和也とウレクが同じ「ケッ」という台詞を使ってるのに差を感じる不思議。これが踏み台パワーか。

 前回同様、綾も意味ありげなことを言いましたが……ちょっと忘れた頃にまた出てくるように意識したいと思います。
 すぐには出しませんよ。某駆逐アニメでゴリ押しミンとかのように言われないようにします。むしろ「え、あれ布線だったの? というかそんな台詞あったっけ?」とか言われるくらいに(

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。