Magic game   作:暁楓

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 急に調子が戻ってきていて怖い。どうしたのか。
 でもこの調子に乗っかってうまいこと書き上げたい。今月中に四章終わらせるのは無理っぽいけど。


第七十七話

「正体不明のプログラムによる干渉を確認。現状での戦闘続行は危険……撤退します」

 

 ユーリは魄翼を元に戻し、どこかへと飛び去っていった。

 支えるものを失い、落下しかけるウレクをシュテルが支える。

 

「なぜ……私を庇ったのですか。あなたがいなくなれば、作戦そのものが成立しなくなるというのに」

 

 シュテルはウレクの行動が理解できないでいた。これがディアーチェを庇ったのであれば、ユーリの制御に必要な存在を守るためとしてまだ理解できる。しかし、マテリアルが三基で一つの存在だとしても直接ユーリの制御には関わらないシュテルを守る理由はないはずだった。

 ただ、理由があるとすれば――

 

「……俺には、システムU-Dの記憶がある……」

 

 ウレクは薄ら目を開け、独り言のように語り始めた。

 

「俺達が、人の姿を得るより前から……俺達は四つで一つの存在だった。――家族みてぇなもんなんだよ……そんな記憶を持ってたせいで、手前の命欲しさに見捨てるなんてできなかったじゃねぇか……」

 

 理由があるとすれば、それはウレク自身の意志と感情――すなわち、心と言うべきそれだった。

 ピシリ、という音が立った。ウレクは崩壊寸前の状態になっていた。

 そこへ綾、レヴィ、ディアーチェが駆けつける。

 魔法陣の床を張り、そこにウレクを寝かせ、綾も足をつける。

 

「ウレクー!!」

 

「おい貴様、しっかりせぬか!」

 

 レヴィとディアーチェが心配の声をかける。ウレクは周りを見回した。そして綾の姿を見つける。

 綾を見つけたウレクは、おおよそ誰も理解できないような行動を起こした。

 

「――クッ、クククカカッ……」

 

 笑い出したのだ。

 今にも死が目の前にあるその顔で、先ほどの死にそうな口調とは打って変わって、いつものように、楽しそうに楽しそうに、笑う。

 

「……何がおかしい?」

 

 マテリアルズが唖然としている中、綾がそう問うた。

 

「カカカッ……いやぁ、嬉しくて嬉しくてなぁ。これで俺の目的の一つが果たされるってことに気づいたんだよぉ」

 

「目的だと?」

 

「ああそうだよ。朝霧 綾」

 

 ウレクは普段はオリジナルとしか言わない、綾の名前を口にした。何かあると綾がとっさに警戒するには充分だった。

 ウレクの口が動く。

 

「残骸の俺は、コイツを守れたぞ。そこんとこどう思うよ? 『リリ』を守れなかった、オリジナルのお前さんはよぉ!」

 

「――ッ!!」

 

 『リリ』の名を聞いた瞬間、綾の怒りが沸騰した。ウレクの胸倉を掴み、激しく揺らす。

 

「お、おい! 離さぬか!」

 

「お、落ち着いてよ。ウレクが消えちゃったらホントにマズいんだから!」

 

「リョウ、落ち着いてください。ウレクも妙な刺激を与えるのはやめた方がよろしいかと」

 

 マテリアル三人が慌てて止めに入るが、当の二人は全く聞く耳を持たなかった。

 

「キキキッ、そうだ、その(つら)だ! てめぇのそのいつまでも拭えやしねえ負け犬の顔が俺は見たかったんだよぉ!」

 

「何だと……っ!」

 

「こんなことやってりゃ人生変わるとでも本気で信じてたのか? んな訳ねぇだろ。いくら頑張ったって過去が変わるとかありえねぇ。所詮お前は負け組のまんま。そんなもんお前だって分かり切った話だろう。ましてやお前の場合はもはや解決だって叶いやしねぇ」

 

 ギリッ、という歯軋りが綾の奥歯から鳴った。

 

「……答えろ。お前は俺をどのくらい知っている」

 

「全部だよ。ALL、ALL、オール! てめぇが味わった後悔、屈辱ぜぇぇぇんぶ! 俺の頭ん中だ!」

 

「てめぇ……っ」

 

「まあ、そんなこたぁどうだっていいんだ。それよりこれから先のことを教えてやろうと思ってるが?」

 

 数秒の沈黙後、綾は苛立たしげに舌打ちした。その音と綾の表情はウレクの笑みを更に濃くする。湧き上がる怒りをどうすることもできないまま、ウレクの話が始まる。

 

「これから俺はお前の左腕にユーリの感情部品とそのインストールシステムを託して、それから気を失うだろう。そうなればお前は、俺からの補助が受けられなくなる。堕翼で飛ぶことも、俺の魔力、魔法を使うことも、オーバーアシストを受けることもみーんな、できなくなるってことだ」

 

 それはすなわち、綾の戦闘能力が元に戻るに等しく、綾にとっては致命的な問題だった。

 すでにウレクの身体が崩壊を始めていた。ウレクは綾の左腕を掴み、魔力を発する。

 

「じゃあな。過去が変わる訳でもねえこのクソみてぇなゲームを、せいぜい頑張れ」

 

 憎たらしい笑みが砕ける。ウレクが綾の左腕に溶け込み、黒く染めた。

 掴んでいたものが消え、綾の腕は力なく垂れた。

 

 

 

   ◇

 

 

 

 その後、なのは達が駆けつけた。

 俺は事の顛末を話し、作戦の一部変更を告げた。

 早い話が俺が飛べない以上、第二陣の戦闘領域を地上とし、第一陣の人達にユーリを地上まで運んでもらうというものだ。

 

 作戦は第一陣から第三陣までの三つに分かれる。

 まず第一陣。シグナムとクロノをメインアタッカーに据えたチームでユーリにある程度のダメージを与え、また防御層を削っていく。その後、新しく入った役目としてユーリを地上に運んでもらう。協力を申し出たフローリアン姉妹や未来組も加えて戦力と人数は最大規模である。

 第二陣。俺と才を中心としたチームで、ユーリと接続して感情部品のインストールを行う。やることはあくまで部品の組み込みなので、チームの人選はそれを行うための補助役を俺が選んだ。戦力としては最小であり、かつ人数も少ない。

 そして第三陣。インストール終了後、飽和攻撃とディアーチェによる制御で一気にカタをつける。――これが作戦の大まかな流れだ。

 

 

 

第一陣

シグナム

ヴィータ

シャマル

ザフィーラ

クロノ

アミタ

キリエ

ヴィヴィオ

アインハルト

トーマ&リリィ

 

第二陣

由衣

リーゼ姉妹

 

第三陣

なのは

フェイト

はやて

リインフォース

シュテル

レヴィ

ディアーチェ

 

 

 

 作戦の確認を終え、ユーリの居場所が特定されてそれぞれが持ち場へ向かう中、リインフォースがこちらにやってきた。

 

「綾……本当に大丈夫なのですか?」

 

「何がだ」

 

「その、第二陣が作戦の重要な役割を担っている割には、戦力が心許ないのではないかと……」

 

「戦闘でダメージを与えるのが目的じゃないんだ。元から火力なんていらない。一応、リーゼ姉妹を加えてもいるしな。それにできるだけ少ない人数の方がこちらの作戦上やりやすい」

 

「ですが……!」

 

「リインフォースッ」

 

 強い口調と共に睨みつける。そうすることによってリインフォースが萎縮した。

 

「俺を心配しているのはわかる。だけど過ぎた心配はかえって迷惑だ」

 

「それは……」

 

「俺はこれなら成功すると見てこの作戦とチーム編成を決めた。お前はそれを信じて、持ち場につけ」

 

「……わかりました。……………綾、ご武運を――」

 

 顔を俯けてそう言い、リインフォースは持ち場へと向かっていった。飛んでいく彼女の後ろ姿を見てため息をつく。

 

「……綾、あんたさっきから苛立っているんじゃないのかい」

 

「それで作戦失敗とかなっちゃあ笑えねーぞー」

 

「……わかってる」

 

 リインフォースとの会話を聞いていたらしいリーゼ姉妹に言われ、俺はそう答えた。

 ――俺が苛立っているのはわかってる。ウレクが遺した言葉に俺は過剰に反応している。リインフォースには過ぎた心配とか言ってたが、過ぎた怒りをしている俺も人のことを言えやしないだろう。

 フゥッ、と深呼吸をする。それで少しはクリアになった頭で作戦の再確認をする。

 ……大丈夫だ。この方法が、計算上最もチップの損失を少なくできる可能性が高い(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)んだ。さっきの緊急指令が終わって現在のスターチップの総数は三十一個。一つも無駄にはできない。いくつかの不安要素もあるが、ある程度の対策も用意した。

 

 空中に投影された画面の中では、第一陣の者達がユーリと対峙していた。

 決戦の第一幕が開始される。




 次回は丸々一話使って第一陣の戦闘を書きたいと思ってます。すでに活躍したシグナムとクロノを除いたほかのメンバーにとってはこの章唯一の出番かも。あ、アミタも出番もらってたか。それにシャマルも前に出番あったね! 活躍ほとんど描写されなかったけど!
 先に言っておきますけど、なのは達第三陣はブッパするだけなので出番の全カットも視野に入れてます。

第三陣一同「ッ!?」

 原作主人公勢の出番はカット。慈悲はない。

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