Magic game   作:暁楓

81 / 92
 事件後の後日談です。一話だけでは間に合いそうにないので二話ほどに分けました。
 最近、非常に寒いです。早朝になんか薄い感じのジャージに合羽着ただけの状態であられが降り風が吹く中何時間も作業してたら風邪ひきますので気をつけてください(体験談)。


第八十一話

 意識がうっすらと戻って目を開き、天井からの明るさに目を細めた。

 少し眩しく感じる光をある程度遮ろうと右手を動かす。筋肉痛の何倍もの痛みを感じたが、もう動かし始めたんだしいいやと、そのまま右手を顔に被せる。

 ここは……アースラの医務室……か?

 

「……気がつきましたか?」

 

 声がしたので首を向けると、そこにはアミタがいた。椅子に腰掛けてこちらの様子を伺っている。

 

「……何日寝てた?」

 

「丸三日以上寝てましたよ。綾さんの身体ものすごくボロボロだったんですから、むしろ早い目覚めです」

 

「三日か……十日程寝てた頃に比べりゃマシか」

 

「一体何があったんですか」

 

 ツッコミを入れた後、アミタはクスリと笑って立ち上がった。

 

「綾さんが起きたこと、皆さんに知らせてきますね」

 

 言うと、アミタはこちらが呼び止める間もなく部屋を出て行った。

 先に状況の確認、したかったんだがなぁ……。

 

 

 

   ◇

 

 

 

 アミタが出て行ってからしばらくして、まず海斗達チームメンバーが入ってきた。

 心配させたのは仕方なく思うが、海斗から決戦の結果――主に、俺が気を失ってからのことを聞かせてもらった。

 システムU-Dの制御、及びユーリの救出は無事成功したこと。

 謎の二人組は結局捕らえられなかったこと。

 それからアミタ達未来からの渡航者やマテリアルズは猶予いっぱいまで俺の目覚めを待っていたこと。

 

「……そうか」

 

 俺はそれだけ呟くように言った。

 指令期間終了時に失格となった者はいなかった。物理的な死は通知が来るのかわからないが、そういった例外がなければ生き残ったのは二十人ということになる。

 

「まあなんにせよ、綾が目ぇ覚めてよかったぜ」

 

「……ああ」

 

「……とにかく、これから何人も来るだろうけど、しっかり身体休めろよ」

 

 言って、海斗達は出て行った。

 

 次にやってきたのは、もう毎度お馴染みになりつつあるリンディさんだった。

 

「全く、やっぱり無茶をするのね。あなた、三日も寝ていたのよ?」

 

「目覚めてすぐアミタから聞きましたよ。それと、今回の無茶は不可抗力かと」

 

「不可抗力だからって、十個以上の強化魔法同時使用を認可すると思って? 後遺症が出てもおかしくなかったのよ?」

 

「……すいません」

 

「もう、こんなのじゃあ管理局で戦ってなんていけないわよ?」

 

「そこはなんとかしますよ」

 

 はあ、と露骨な溜め息がリンディさんから聞こえた。今の言葉、どうやら前線を引かせようという考えもあったらしい。無論引くつもりなど毛頭ない。

 

「まあ、あなたにこの手の話は言っても無駄だってわかってはいるんだけどね。でも身体はちゃんと治しなさい。これ以上取り返しのつかないような負傷はしないこと」

 

「わかってますよ。……ところでリンディさん」

 

「ん? 何?」

 

「俺達の妨害と援護をした人物、何か情報は得られたんですか?」

 

「……ううん、完全に撒かれたわ。あの二人が何者なのか、何が目的なのか、一切不明よ。才さんも面識がないみたい……綾さんは、何か心当たりある?」

 

「……………」

 

 思い出すのは、あの仮面の女の声。

 あの時はユーリとの戦闘に集中しなければならず、彼女のことを気にしている暇なんてなかったが、今思い出すと、あの声は……

 

「……いや、まさかな……」

 

「?」

 

「……ああ、すいません。……俺も、彼女らが何者かは……」

 

「……そう、ならいいわ。目を覚ましたあなたとお話をしたい人は他にもいるし、私は一旦失礼するわ」

 

 リンディさんはそう言って医務室から出て行こうとする。

 扉を開けたところで、リンディさんはくるりとこちらに振り返った。

 

「そうそう、今までの表沙汰にできないあなたの数々の功績、その報償となるものを何か考えておきなさい。あなたの傷が完治した後に支払ってあげるから」

 

 パチっとウインクして、リンディさんは歩き去っていった。

 

 次に入ってきたのはなのは、フェイト、はやて、キリエ、それからヴィヴィオ、アインハルト、トーマ、リリィの未来組だった。

 

「綾さん、お身体の方はいかがですか?」

 

「動くたびに身体が痛むのと、左腕がないことを除けば概ね平常か」

 

 処方された錠剤を水で流し込んで俺はなのはにそう答える。

 

「綾さんはやっぱり無理をし過ぎです。あんなリスクの高い作戦でなくとも、みんなで一緒に戦えばもっと安全に接続を行えたかもしれないのに……」

 

「そうですよ。それにあの時、綾さんが死んじゃったって思って大変だったんですよ!」

 

 そう言ったのはフェイトにヴィヴィオだった。ヴィヴィオの言うあの時とは、頭上から奇襲して引き裂かれた幻影のことだろう。作戦を明かしたのはリーゼ姉妹と才のみであったため、他のところではそれなりの混乱が起きたことが予想できる。

 

「あれが接続を行うには最善の方法だった。俺はそう判断したまでだ」

 

「……万全でない綾さんにリスクを背負わせるのが、最善だったんですか?」

 

 そう尋ねてきたのははやてだった。

 

「万全で戦いに臨める方が稀な話だ。それに、失敗すれば死ぬんだからリスクは同じだ」

 

「……………」

 

 はやては不服そうだが、それは無視してフェイトの方を向く。

 

「フェイト。……アリシアは今、どうしてる?」

 

「……姉さんは」

 

 フェイトはそこで一旦言葉を飲み込んだ様子だった。彼女の表情から少し、察しがついた。

 

「……綾さんが眠っている間に、本当のことを話しました。母さんはもう、この世にいないことを……今は、姉さんは落ち着いてます」

 

「……そうか」

 

 俺はそう返すだけだった。そのうち、アリシアと話す必要があるだろうがその時はその時だ。

 

「そっちの話は終わり?」

 

 沈黙してからそう声をかけてきたのはキリエである。

 

「……ん、ああ。なんだ?」

 

「起きてすぐで悪いけど、これからあなたの記憶の一部に封鎖処置をさせてもらうわ。タイムパラドックスを防ぐためって言ったらわかるかしら」

 

「ああ……封鎖の範囲はどうなるんだ?」

 

「この事件について、『時間移動があった』という部分だけを封鎖させてもらうわ。あんまり封鎖しすぎちゃうと、却って思い出しやすくなっちゃったりするから。私やお姉ちゃんについては、管理外世界から来たってことにしておくわね」

 

「……わかった」

 

 じゃあ早速、とキリエは魔法陣を展開してその封鎖というのを始めた。完了した直後、何も変わりないようだったが、どうやら彼女らが帰った後で効果を発揮するらしい。

 

「じゃ、私の用事はここまで。王様達もあなたに会いたいって言ってるし、私はここで失礼するわ」

 

 そう言って踵を返して、直後何か思い出したようにまた振り返った。

 

「忘れるところだった。お姉ちゃんを助けてくれてありがとう」

 

 じゃあねー。と手を振ってキリエは去って行った。それから後に続くようになのは達も出て行った。

 

 次に来たのは、キリエの言っていた王様達――シュテル、レヴィ、ディアーチェだった。

 

「ウレクのオリジナルー! 調子はどう?」

 

「概ね平常だ」

 

「ダウトですね」

 

「うむ」

 

 いきなりダメ出しを食らった。

 

「診断結果を見ましたから。仮に診断結果を見なくとも、あなたの無謀な行いとその負傷を見たのですぐにわかりますよ」

 

「身体を起こすのも容易ではなかろう。無理をするな」

 

「これぐらいなんでもない。ところでユーリは来てないのか?」

 

「ああ、あやつなら――」

 

 言って、ディアーチェは顔を出入り口の方へと向けた。

 未だ閉まってない扉。その陰から、見覚えのある金髪が覗かせていた。恐る恐るその金髪の主の顔が扉から出てきて、こちらと視線が合ってすぐに引っ込めてしまった。

 

「……………」

 

「少々お待ちを。引っ張ってきます」

 

 一礼してシュテルが部屋から出て行った。

 

「ほらユーリ、入りましょう。リョウと話があるのでしょう?」

 

「で、でも、緊張します〜……」

 

「入ってしまえばなんとかなりますから」

 

「ひゃー」

 

 ……しばらく小競り合いみたいなのが続いて、ようやくユーリがシュテルに押される形で部屋に入ってきた。

 

「あう……えっと、そ、その……」

 

 シュテルに押し込まれたユーリは、何やら恥ずかしいのか手で顔を覆った。戦闘で損失した身体は元に戻っていた。

 

「……こんな感じだ。今や感情が豊かっちゃあ豊かになった」

 

「ウレクの性格とは似ても似つかないねー」

 

 ウレクの性格がぶっ飛んでるだけだと思うが。

 レヴィへのツッコミを飲み込んでいると、シュテルが後ろからユーリの肩を掴む。

 

「さあユーリ、私が逃がしませんので、安心して話を」

 

「シュテル……お主案外スパルタだな」

 

「必要処置です。あまり時間がないのも事実ですので」

 

「……で、話ってなんだ?」

 

 そうユーリに尋ねる。部屋の外でシュテルがユーリを引っ張っている時にも何度か耳に入ったことだが、そこまで重要なことはあっただろうか。

 

「そ、その……こ、この度は色々迷惑をおかけして、ごめんなさい。そして、助けてくれて、ありがとうございます」

 

「怪我はいつものことだ。半分近くが自滅ものだしな。礼は受け取っておく……だけど、話ってのはそれだけか?」

 

「あ、いえ。まだあります。……これ、なんですが」

 

 ユーリが差し出したのはユーリとの接続に使用したウレクの武器、黒刀と、それから楕円形で灰色の水晶のようなものだった。

 実物を見た訳じゃないが、俺はこの正体に気がついた。

 

「これは……俺の義手の、システムコアか?」

 

「はい。ほとんど壊れてしまってますが、メモリーのサルベージくらいならできるかもしれません。……それで、話というのはですね……………これを、どちらかだけでもいただくことはできませんか?」

 

「ウレクがユーリの部品として還り、遺ったのが刀とコアの二つのみとなってな。彼がいたという証を持ち帰りたいとユーリが言うのだ」

 

「なお、その意見は王を含め満場一致で賛成でした」

 

「ちょっ、こらシュテル! 勝手なことを言うでない!」

 

 逃げるシュテルを追うディアーチェ。そんな二人に代わってレヴィが解説についた。

 

「でも、黒刀も義手も君が使ってたものだからさ、君に訊いてみようって話になったんだ。アミタ達も君が起きるまで待ってるって決めてたし!」

 

「あ、両方必要ということであればそれでもいいんです。ウレクのことを忘れるつもりはありませんので……」

 

「そうか。なら、システムコアは返してもらうかな」

 

 俺はそう答えて手を差し出す。

 

「あ、はい。……それだけですか?」

 

 コアを返してもらい、とりあえず近くの棚に置いといて「ああ」と返事をする。

 

「義手は元々俺のだからな、データのサルベージができるならしておきたい。対して黒刀はウレクの物だし、今となってはただの硬い刀だ。特別必要とは思わん」

 

「そう……ですね。では、これはいただいてもいいんですか?」

 

「ああ」

 

「よかったですね、ユーリ」

 

「はい……!」

 

「さて、用事もこれで済んだことだし、我々も準備せねばな。貴様が目覚めたことで、アミタ達も準備を始めているだろう」

 

「お前達も行くのか?」

 

「ええ。我々はエルトリア復興を支援するため、アミタとキリエについていくつもりです」

 

「エルトリアにはたくさんのダンジョンやモンスターがいるんだって!楽しみ〜!」

 

「私も、このエグザミアの無限連環機構がお役に立てるそうです」

 

「そうか。見送りぐらいならリンディさんからお咎めがくることはないかな」

 

「勝手にしろ。ではな」

 

 こうしてディアーチェを先頭に、マテリアルズとユーリも去っていった。

 四人が去った後、俺は義手のシステムコアに目をやった。

 まさか残っていたとは思いもしなかった。メモリーを回収することができるなら、ひょっとしたらアレ(・・)も利用できるかもしれない。うまく使えば、今後の戦いにも活用できる。さすがに管理局の技術者に話す訳にはいかないだろうから、使うとしても時間をかけるだろうが……。

 ……とりあえず、今は休もう。

 

 

 

   ◇

 

 

 

 まどろみの中にあった意識が何と無く浮上し、目を開ける。

 何時間くらい経ったのか、そう思っていると扉の開閉音が聞こえてきた。

 首を向ける。

 

「あ……寝てましたか?」

 

 そこにいたのはアミタだった。

 

「いや……今さっき起きたところだ」

 

「そうだったんですか。あ、失礼しますね」

 

 医務室に入ったアミタは、ベッドの近くにあった椅子に腰掛けた。

 

「出発の準備は整ったのか?」

 

「はい。今日はもう遅いので、明日の朝に出発します」

 

「ああ……今、夜か」

 

「はい。夜の十時を過ぎたところですね」

 

「それにしても慌ただしいな。そんなに余裕がないのか?」

 

「実のところ、滞在予定時間はもうとっくに過ぎてしまっていまして。身体も本調子じゃありませんし、早いところ戻らなければという状態です」

 

「それなら、わざわざ俺が目覚めるのを待たずに行った方がよかったんじゃないか。命に別状がある訳ではないし、記憶封鎖も眠っている相手にはできないって訳じゃないんだろ?」

 

「それはそうなんですけど、できればあなたとこうしてお話したくて……」

 

「話?」

 

「はい。とは言っても、大した話ではないとは思ってますけど……綾さん」

 

 まっすぐとこちらを見つめるアミタ。その表情には、感謝の笑顔が溢れていた。

 

「この度は色々と助けていただいて、本当にありがとうございました。――この言葉を、直接あなたに言いたかったんです」

 

「……感謝は受け取っておこう。そこまで何度もお前を助けた覚えはないんだがな。せいぜい決戦の時の一件ぐらいだと思う」

 

「他にもありますよー。ユーリからキリエを庇って私が負傷した時だって、助けていただきましたもん」

 

「あれは助けた内に入るのか?俺が来た時にはもうお前は負傷していたし、投げ捨てられていたお前を戦闘後に回収しただけだぞ」

 

「それでもですよ。その後は、話し相手になってもらって、こちらの世界のことも教えていただきましたし」

 

「その時は俺も暇だったからな」

 

「何より、ユーリを救ってくれたこと。あなたがいなければ、きっとそれも叶わなかった」

 

「俺だけで遂行した訳じゃない。俺個人にだけ礼を言うのは間違いだろ」

 

「はい!他の皆さんにはすでにお礼を言いました!」

 

「目覚めの遅い俺が最後って訳だ」

 

 そうですねー。とアミタは誤魔化すことなく答え、クスクスと笑った。

 そして、アミタが腰を上げる。

 

「さて、そろそろ失礼させてもらいますね」

 

「ああ、おやす――」

 

 直後。

 

 

 

 

 

 サッと素早く近づいたアミタの唇が、こちらの頬に触れた。

 

「……は?」

 

「――ふふっ。それじゃあ、お休みなさいです」

 

 顔を朱に染めながらもイタズラっぽくアミタは笑って、それから素早く部屋を出て行った。

 俺は彼女を見送ってなおしばらく呆然として、それからようやく右手を頬に触れた。まだ柔らかい感触が残ってるような気がした。

 キスされたことを遅れながら理解して、まず込み上げたものは恥ずかしさよりも懐かしさだった。

 きっと、ウレクから『彼女』の名を聞いたのも影響しているのかもしれない。リンディさんと話している時もにも、『彼女』と関連づけていた。

 思い出すのは、『彼女』――リリと過ごした時間……もう、戻ってくることのない思い出……。

 

「リリにされて以来、五年振りだな……」

 

 リリ……俺は……。




 次回後日談後編を予定。
 そこから先はちょっと書くべきものがあるのでそれ書いて……それから一気にStS編かなぁ。
 という訳で次章予告。










 ――十年後、舞台は魔法都市ミッドチルダへ。



 仲間達はそれぞれの部隊で活躍し、次々と功績をあげている中……















 俺は、犯罪部隊とも呼ばれる隊にいた。















 第五章、『魔法都市争乱編』



 全ては、勝つために。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。