Magic game 作:暁楓
作者「閑話も終わったことだし、StrikerS書いてくかー。ある程度書き溜めたいなー」
2018/7/25
はい。(はいじゃない)
もはや、これ覚えている人いんの? ってレベルなんですが、アクセス解析さん曰く今でも誰か一人以上は読んでいただいてるらしいです。まじすか。
超スローペースで書きながら、なんとかちょっとだけ書き溜めができたので、投稿再開します。
第八十八話
〇〇七五年四月、ミッドチルダ臨海第八空港近隣廃棄都市街。
一般人が立ち入ることのないこのような廃棄都市は、新たな都市開発が行われない限りは時空管理局がよく有効利用している。模擬戦などの訓練場は勿論のこと、凶悪犯を誘導して遠慮なく叩き伏せる、そう言ったいわゆる狩場として。
――そして今回二人が受ける、魔導師試験の試験会場としての一面もある。
二人とも歳は十代半ばといったところ。試験時間まで待機している二人の様子は両極端と言えた。
方や準備運動として体を動かし、方や自身のデバイスの点検をしていた。
「スバル。あんまり暴れていると、そのオンボロローラー壊れるわよ」
“現在は”拳銃の姿をしているデバイス、その簡易点検と調整をしている橙の髪をツインテールに纏めた少女が見向きもせずに忠告した。
彼女が『スバル』と呼んだ少女が暴れていると判断したのは、相方の運動量をよく見ているから、訓練校時代からの付き合い故の経験だった。
「そういうこと言わないでよティア〜。ちゃんと油は差してきた!」
「内部部品の磨耗チェックは? フレームの歪み確認、出力数値の調整、他にもあるけど?」
「う……で、でももうそんなのやってる時間はないよ」
「それを言うなら、前日までに確認をしなかったあんたが悪い」
ぐうの音も出ない正論だった。
反論できず、まずスバルの口から漏れたのはため息だった。
「はぁ〜、どうしてこんな時にティアのお師匠さんいなかったんだろ」
「あの人に頼ろうと考えたのがそもそもの間違いよ。言っとくけど、あそこで捕まえられることなんてほとんどないから」
「そんなに忙しいの? 『雑務課』って」
「ええ。あそこの人達はクソ忙しい日々を送ってるって聞いたことがあるわ」
「そういう風には見えなかったけどなぁ」
「……っと、そろそろ時間ね」
最終確認を終えた自分の得物をホルスターにしまう。
程なくして、ブザーと共に空中にモニターが投影された。
『魔導師試験受験者二名、整列お願いします!』
「「はい!」」
少女二人が整列する。
モニターに映されたのは黒い髪をストレートに伸ばした女性だった。 眼鏡をかけているが堅さはなく、あどけない印象すら見える。
『確認します。時空管理局陸士三八六部隊所属、スバル・ナカジマ二等陸士』
「はい!」
『同じく、ティアナ・ランスター二等陸士』
「はい」
『所有している魔導師ランクは陸戦Cランク、本日受験するのは陸戦魔導師Bランクで間違いありませんか?』
「はい!」
「間違いありません」
スバルとティアナ、二人の回答にモニターの女性は笑みを浮かべ、自己紹介に移った。
『はい! 本日の試験官を務めます、藤木由衣三等空尉です。よろしくお願いしますね!』
「「よろしくお願いします!」」
それから試験官、由依は試験の説明を開始した。
藤木由衣(十九歳)
魔力ランク…+AA
魔導師ランク…空戦AA
階級…三等空尉
◇
ミッドチルダ陸士二〇七部隊、メンテナンスルーム。
スバルとティアナが試験の説明を受けている頃、そこには二人の男性がいた。
一人は、赤みがかった茶髪の青年。やや長い髪を現在は髪留めで留めている。
もう一人は、頭を刈り込んだ男性でがたいが大きい。茶髪の青年とは一歳年上程度だが、髪型や体型のせいか周囲からは三十代に見られることが多い。今はデバイスを弄っているため外しているが、プライベートの時にはサングラスをよくかける。
「もうそろそろ、ティアナは試験に挑んでる頃か?」
デバイスの部品を交換しながら、丸刈りの男が尋ねた。
茶髪の青年が答える。
「ああ……」
「なんだ、心配なのか?」
「試験については心配ねぇよ。むしろ原作のアクシデントも潰して大勝利ってのが目に見える」
「じゃあ、なんだよ?」
「あいつに仕込まれたモノがモノだし、おかげであいつの思考がエライ殺伐としてっからなぁ。その後の方が心配なんだよ」
「まあまあ、なんとかなるだろ」
「んな適当な……」
「そういや、試験官って誰がやんだ?」
丸刈りの男がまた尋ねた。
「知らなかったっけ? 由衣が担当だよ」
「マジか!? あいつも出世したもんだな」
「ああ、俺達の中でも一番の出世頭だ」
例外を除いてな。そう茶髪の青年が言う。
違いねぇ、と丸刈りの男が頷いた。
しばらくしてメンテナンスが完了し、元通りとなったデバイスを青年に手渡す。
「ほらよ」
「しっかし、今でもその図体でデバイスちまちま弄ってるのが見慣れねえな」
「嫌みかコラ」
「いや、お前が機械に強くて助かってる。こいつを他人に見せたくはないからな」
「くっそー、いいよなぁお前らは。俺なんてお呼ばれにかかってすらいねぇぞ」
「仕方ないさ。俺としては由衣だけって可能性も見てたんだぜ。あいつらと末崎の繋がりなんてなおさらねぇじゃん」
「はあ……だよなぁ〜」
末崎と呼ばれた男は落ち込んだが、ふと思い出して顔を上げた。
「そういや海斗、綾はどうなんだ?海斗はスカウトされてあいつにはなしってことはないだろ」
「……ああ、あいつはな――」
海斗と呼ばれたその青年は、若干面倒くさそうに答えた。
藤木海斗(二十四歳)
魔力ランク…−A
魔導師ランク…陸戦A
階級…陸曹
末崎幹(二十五歳)
魔力ランク…B
魔導師ランク…陸戦C
階級…二等陸士
特記事項…デバイスマイスター資格保有
◇
カツカツと硬い靴底と廊下によって足音としてその空間に響く。静かなこの場ではどこまでも響いていきそうな音だ。
歩いているのは黒いバリアジャケットを纏った黒髪の男だった。右目には眼帯をしている。右手に持つ刀は、その刀身を赤く濡らしていた。
すぐ後ろに置き去りにされた、この施設の研究員“だったもの”の血で。
彼は侵入者だった。彼はこの施設の脅威だった。しかし、敵を報せるサイレンは、ここに入った時から一度も鳴っていない。
鳴っていないから、未だに異常に気づいていない者がいた。今入った部屋にいた者達がそれだった。数は四人。
「だッ、誰だ貴様――」
ドスッと、一瞬で白衣の男に接近して刀を突き立てる。心臓を貫かれ、鮮血を噴き出す男が絶命するのは数秒とかからなかった。
恐怖より先に混乱に抱かれながらも、両脇の男二人が懐から実弾銃を取り出し、侵入者がいた場所に向ける。しかし、向けた先にいるのは銃を向けあう互いの姿だった。誤射を防ぐため、慌てて銃口を上に向ける。
一人目を刺し、その勢いのまま通り抜けることで射線を避けた侵入者にとって、そんな二人の姿は格好の的だった。
襟の裏に手を伸ばす。そうして取り出したのは、USB状の四角い棒だった。先についているキャップを外すと、先端から魔力が鋭い刃となって噴き出した。その魔力刃二つを、ようやくこちらに気づいた二人に投げる。一つは喉仏を貫き、もう一つは頬に突き刺さった。刃が頬に刺さり痛みに悶える男の首に、彼は黒い装甲でできた左手の手刀を叩きつける。首の骨が折れる音と感触が彼に伝わった。
「わ、わあああああッ!!」
ようやくと言うべきか、最後に残った一人が恐怖に囚われ出口へと走る。しかし死体から抜き取られ投げ放たれた刀が男の後頭部を貫き、その先の壁に縫い止めた。
辺りは再び静寂に包まれた。
侵入者は刀を抜き取り、死体が纏う白衣を裂いてそれで刀身についた血と脂を拭き取る。そうしながら、彼は念話の回線を開いた。
『ルートB、四人処理した。残りはどうなっている』
『処理した人数はこれで十六人。ここの職員の人数と一致したわ。制圧完了と見ていいんじゃない?』
『こちらルートA、管制室に到着。ミユが現在データの回収を“お願い”してますどーぞー』
『シノ、まだ調べていない部屋はあるのか?』
『一応、実験室ってところが未確認ね。ミユ、実験室の様子って確認できない?』
『えっと……カメラが壊れているためか、一面砂嵐です……』
『俺が確認する』
『ああ待った、俺も行くぜ。。研究員だけじゃ物足りなかったんだ』
『あっ、い、行っちゃうんですか!?』
『ミユはそこで待ってなさい。私がそこに行くから』
次の目的地が決まり、彼は歩を進めた。
『実験室』をミッドチルダの言語で書かれた部屋に着くと、程なくして向かいの廊下から男が一人やってきた。
銀髪をまるでハリネズミのように尖らせたヘアスタイルの男性。バリアジャケットの基本色は同じ黒だが、黒髪の男とは違い、革製特有の光沢といくつものシルバーアクセサリーが目立たせていた。
「おう、ここか。じゃあ早速――」
「入る時のマナーは?」
黒髪は銀髪を止めた。銀髪は「わかってるよ」と言って続ける。
「部屋に入る時には――」
「ノックしてからお邪魔します、だ」
魔力で強化した足蹴り二つが扉を突き飛ばした。
実験室は他と比べて広い空間だった。二人はその中に入り込む。
中には、二つの影があった。
一つは竜。ずんぐりとした体に長い首と尻尾、四本の足を持った、地球で言うならば西洋竜というものであった。ただしその身体の至るところが鋭い鋼鉄の刃となっている。
そしてもう一つは、獣の身体に蛇の尻尾、大きな翼、そして異なる三つの頭という、ケルベロスとキマイラを合わせたような怪物だった。
そのどちらも自然には存在し得ない異形の存在である。導き出される答えは一つだった。
「生物兵器の開発所という訳か」
「あの三つ首面倒くさそうだな。俺ドラゴンの方にするわ」
「奇遇だな。俺もドラゴンを相手取りたいと思ったところだ」
「……………」
「……………」
そうしている間に獣と竜は二人の存在に気づいた。腹を空かせた二頭は、二人を餌だと殺気で眼を光らせる。
しかし二人はそれを気にも止めない。
「おい」
「……ああ」
二人は互いに頷き、同時に手を突き出した。
片方は握り拳、もう片方は人差し指と中指。
「じゃあ、俺がドラゴンだな」
「ちぇー。まあ面白そうだしそれでもいいか。しくじんなよー」
「わかってる」
刀を抜き、黒髪はドラゴンと対峙した。
己に向けられた殺気を理解したのか、ドラゴンは咆哮を上げながら彼に向かって走り出した。
鋭い牙に加え、剣の角を持つ頭を振り回す。床や天井を斬り裂きながらそれが男へと近づいていく。
男は魔法陣を展開した。灰色の魔力が彼の表面に纏わりつき、体内で循環する。
必要な魔法をかけた男は、まだその場を動かない。斬撃はどんどん近づいている。
微動だにしない男に対し、ドラゴンは確実に捕らえようと口を開き、牙を向ける。
そして閉じた――が、当たらなかった。
噛み付く寸前に、男は間一髪の回避をしていた。間一髪といえど追い詰められたものではなく、彼が作り出した状況であった。
ドラゴンが口を閉じ空いた空間に男は身体を滑り込ませ、胴体へと一気にかける。ただ走るだけでは不可能なその速度は、強化魔法によってもたらされたものである。
刀を構え、ガラ空きの胴体に向かって駆け抜け、突きを放つ。
ガギィイインッ!!
その一撃は甲高い金属音と共に弾かれた。このドラゴンの鱗や表皮は鉄でできているみたいだ。
男を踏み潰そうと ドラゴンの四つの足が動き出す。男はすぐに距離を取る。その途中で振るわれた鋭い尻尾は飛び越え、より距離を開ける。
ドラゴンは再び首を振り回しながら突進を仕掛けた。
対する男は、腰を落とし、刀を持つ右手を引き、左手と合わせ照準を固定する。そして、駆け出した。
ドラゴンは即座に反応し首を振り下ろす。このままでは直撃する――と横目で銀髪の男が見た次の瞬間、黒髪の男はさらに加速して斧のような首の一撃を潜り抜けた。
速度を乗せた突きを放つ。胴体の先ほど突いた箇所に突き立てる。相手は鋼鉄だが、技術があれば同じ鉄の剣で鉄を斬り裂くことは可能だ。
彼の刀はドラゴンの鉄の皮膚を切り裂いて肉に届いた。
痛みにドラゴンが吠えるが、彼の攻撃はまだ終わりではない。刀はドラゴンの肉に届いただけでまだ浅いのだ。刀の柄の先に右拳を当て、足元に魔法陣を、柄に当てた拳に術式の円環を展開し、力を込める。
魔法で強化した拳によって、刀がドラゴンの体内を突き抜けた。
「ギャアアアアアアァァァァァッ!!」
ドラゴンは経験したことのない痛みに怒り狂い、のたうち回る。二箇所の傷口から出血するが、臓器は避けたようで弱る様子はない。
運のいい奴だ。男はそう思った。
同時に、運の悪い奴だとも男は思った。これで絶命してくれてたら、そんな痛みにのたうつこともなかったのに。
男はバリアジャケットの内に仕込んでいる手の平ほどの黒い球と、魔力カートリッジを取り出した。カートリッジを球の中に組み込み、ボタンを押してからドラゴンの傷口にねじ込む。
直後、傷口を中心にドラゴンの胴体が破裂した。爆発によって首と胴体を繋ぐ肉体を失い、頭は地面に落ち、残る胴体もぐらりと揺れて崩れ落ちた。
竜の絶命を確認して、彼はもう一方の戦況を確認すべく振り返った。
「なんでぇ、一発で終わったぞ。拍子抜けじゃねえか」
視界の先にあったのは、バラバラに飛び散った獣の肉塊と、全身に返り血を浴びて不満を漏らす銀髪の男だった。
終了を察した彼は、刀の回収行動に向かいつつ再び念話の回線を開いた。
『俺だ。実験室の制圧も完了した』
『了解。じゃあセダンに後処理をさせて、私達は先に戻りましょ』
『ああ』
念話を閉じ、彼はその後処理担当のセダンに声をかけた。
「セダン、後処理は任せる。残さず“喰って”おけよ」
「了解だ、綾。上への報告はいつも通り任せるわー」
セダンがヒラヒラと手を振るのも見ないうちに、彼は部屋を後にした。
朝霧綾(二十四歳)
魔力ランク…――
魔導師ランク…――
階級…――
特記事項…時空管理局地上本部属秘匿特殊部隊所属(通称:ゴースト。表向きには地上本部雑務課所属)
ちなみに三年間、いろんなのに触れては感化されて書いてみたりしてましたが、今の作品があるし、途中挫折が多すぎるのでほったらかしです。
でもSAO×ISでオリ主闇堕ち系は今でも時々妄想してます。いつか出したいなあとは思いつつも無理だなとも思ってます。