Magic game   作:暁楓

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第九話

 ドカッ! という鈍い音と共に、海斗の身体が吹っ飛んだ。

 

「がはっ!」

 

「海斗っ!」

 

 竹太刀が叫ぶ。ゴロゴロと転がったが、すぐに海斗は起き上がる。

 二人は押されていた。

 フェイトの速さを捉えきれず、ほぼ一方的な展開となっていた。しかし二人は気合いで、フェイトが通過することだけは防いでいた。

 二人ともボロボロだが、竹太刀は海斗に比べるとマシだった。いや、海斗が竹太刀以上にダメージを受けていたと言うべきか。

 海斗は何度も、竹太刀をフェイトの攻撃から庇っていた。もうかなりの攻撃を受けても意識が飛ばないのは、元々の頑丈さと鍛えられた身体能力が幸いしているからだ。

 

「大丈夫だ。……って言いてえけど、結構限界だな……」

 

「そら当然やろ。どんだけわいを庇ってんねん。庇いすぎやろ」

 

「つい動いちまうんだよ」

 

「正義の主人公か自分」

 

「そういうのに憧れてんだ」

 

「そうやったな」

 

 二人して構えをとる。

 フェイトは油断なくバルディッシュを構えている。すぐに突破しようとしないのは闇雲に突っ込んでも捕まると理解したからだ。

 

「さて、どないしようか……」

 

(海斗はもう限界が近い……これ以上は張り合えへんな……。……でも、そろそろ……)

 

「フォトンランサー、ファイア!」

 

 雷を纏う魔力弾が三発、海斗と竹太刀に向かって発射される。

 だがその三つは、別方向からやってきた水色の魔力弾三発と衝突して相殺された。

 

「っ!?」

 

「うおっ!? なんだ?」

 

「……やっと来たか。そろそろ来てもらわな困るところやったで」

 

 竹太刀はフェイトに聞こえない程度の声で呟き、魔力弾が飛んできた方向を目をやった。

 上空――コンテナより少し高い程度――そこにいたのは黒いバリアジャケットを纏い、杖型デバイス『S2U』をフェイトに向ける、待ちに待った管理局の魔導師……クロノ・ハラオウン。そして、

 

「フェイトちゃん!」

 

 対照的に白いバリアジャケットを纏い、杖型デバイス『レイジングハート』を手にしたなのはの姿もあった。

 二人は海斗と竹太刀の目の前に降り立ち、庇うようにフェイトに立ちふさがる。

 

「くっ……!」

 

 一方的だった状況から一転、一気に不利に傾いた現状を見てフェイトは身を翻し、空を飛び立って逃走を開始した。

 

「待――」

 

「逃がすか阿呆」

 

 クロノが言い切る前に竹太刀がそう言って、首根っこをがっしり掴んだ。……クロノの方を。

 予想だにしない方向、人物からの攻撃にクロノはぐぇ、と断末魔。なのはは予想外な場所での顔見知りとの遭遇かつ、顔見知りの予想外な行動に驚き、その間にフェイトは飛び去ってしまった。

 

「こちとらさっきの少女を含めた二人組にいきなり襲われて困ってたんよ。自分らは事情知っとるみたいやし、なしてわいらが襲われたか教えてほしいんよ?」

 

 優しい口調とは裏腹にグギギギッ、と襟を締め上げる竹太刀。

 可能性は低いだろうが、このままフェイトを追跡して管理局とのコネは煙に巻かれて失敗なんてことはなんとしても避けねばならない。管理局に逃げられたら最後、今までの苦労が跡形もなくなってしまう。あと、ここでフェイトが捕まってしまうのも原作的に悪いし。

 

「なあ、説明してくれへんか? ついでに自分ら空飛んでたよな? なにもんやあんたら」

 

「た、竹太刀さん! 手っ、手を離してください!」

 

「ああ、そうやったなぁ」

 

 わたわたとしたなのはの説得で、ようやく竹太刀はクロノを解放。クロノは咽せた後竹太刀を睨むが、当の本人はどこ吹く風。

 一方、海斗は隠れている由衣を引っ張り出してきた。

 

「由衣ちゃん、怪我はないか?」

 

「はい、大丈夫です……」

 

「え? 由衣ちゃん!?」

 

「あ、なのはちゃん」

 

 次々と出てくる知人になのはは混乱。

 そこにクロノは咳払いをして、彼の本来の目的を話した。

 

「コホン。説明はするが、その前に僕達の話を聞いてほしい。青い菱形の石がこのあたりにあるらしいのだが、君達は知らないか?」

 

「ああ、あれなー……海斗、あいつどこ置いてった?」

 

「え? あー……すっかり忘れてた。どこに置いてったっけ……」

 

「……はあ。一緒に探しに行こか。オッドアイな子供が持っとるんよ」

 

「そうか、わかった」

 

「あーあと、それとは別にもう一人の友人が、わいらを逃がすために囮を買って出たんやけど……」

 

「ああ、そのことなら大丈夫だ。フェレットもどき……ゴホン、もう一人の仲間が向かっている」

 

 噂をすればなんとやら、クロノが言い終わってすぐに竹太刀の携帯に電話がかかった。

 

 

 

   ◇

 

 

 

「竹太刀、無事か?」

 

『おお、綾! こっちは何とか助けが来たから無事や。綾の方こそどうや?』

 

「正直かなりヤバい。左腕とあばらの骨がやられた。今は金髪の少年が手当てしてくれてる」

 

『金髪の少年……ああ、そうか。なら、とりあえず助かったってとこか?』

 

「まあな」

 

 ギリギリのところで金髪の少年――ユーノの助けが入り、それによって管理局の介入を察知したアルフは逃走。ボロボロの俺は、ユーノの治癒魔法をかけてもらっていた。

 簡易的な手当てみたいなもので、さすがに骨折を治すような回復力はないが、痛み止めとしては十分助かっている。……まだ痛みが物凄いが。

 

「とりあえず俺はこいつ使ってお前らと合流するから。そっちは任せるぞ」

 

『了解や。ほなな』

 

 通話を終了する。

 

「友達は大丈夫そうでしたか?」

 

「ああ、助かったらしい……さて、まずは友人と合流したい。なんで俺達が襲われたのかも聞いときたいんだけど」

 

「あー、えっとですね……」

 

 魔法のことを迂闊に喋れないと思っているのか、ユーノが言い淀んでいると、空中にモニターが展開された。

 

『ユーノ君、聞こえますか?』

 

「リンディさん!?」

 

『大丈夫よ。彼にはこちらで事情説明しますから。彼と一緒にアースラへ来てくれますか?』

 

「あ、はい」

 

『あなたも、それでよろしいですね?』

 

「……構いませんが、連れも一緒ですよね」

 

『ええ。勿論』

 

「わかりました」

 

 モニターが閉じられる。

 会話を聞いていたユーノは、俺達のやり取りに首を傾げていた。

 

「そういえば思ったんだけど……驚かないんですか? さっきのとか、今僕が使っている魔法とか」

 

「生憎、連れに魔法使いがいるんでね。慣れた」

 

「はぁ……」

 

「じゃ、案内してくれよ。そのアースラってとこに」

 

「あ、もうすぐゲートが開きますから」

 

 彼の言葉通り、程なくしてアースラへ繋がるゲートが開いた。

 

 

 

   ◇

 

 

 

「綾! 無事か――げふっ!?」

 

「触ろうとすんな。骨折に響く」

 

 ゲートを通ってアースラに着いて早々、海斗が飛び込んできたため鳩尾に拳を入れた。

 

「て、てめっ……俺怪我人なんだぞ……っ」

 

「お前頑丈だろうが。というか、俺の方が骨折してる分重傷だ」

 

 床に突っ伏して呻く海斗を冷静にあしらう。

 海斗のことはほっといて、次に由衣の方を向く。

 

「由衣、怪我はなかったか?」

 

「はい。……でも、私、いつも助けてもらってばっかりで、何の役にも立ってなくて、その……」

 

「そりゃ仕方ないさ。気にしなくていい」

 

「まあ、確かにしゃあないわ。こういうのは年長者に任しとき」

 

 竹太刀が割って入ってきた。海斗と比べたら、怪我は少ないようだ。

 

「はい……」

 

「……竹太刀も、ご苦労だったな」

 

「おお、でも労いは海斗にかけておき。わいの怪我が少ないんも、海斗のおかげなんやで?」

 

「そうか。……で」

 

 ここまできてようやく、俺はさっきから訊きたかったものの方を向く。

 俺の視線の先、武装局員に背負われている気を失った和也がいた。

 

「……なんでこいつは気絶してるんだ?」

 

「わいがやった。局員に敵意剥き出しでジュエルシード渡そうとせえへんかったから」

 

「ああ、なるほど」

 

 確かにありそうだ。こいつなら。

 そういえばメール(確実に指令達成の知らせ)が届いたけど、まだチップ受け取ってないな。まあアースラから降りた後で受け取ればいいけど。

 

「話は済んだか? まずは君達の手当てのため医務室へ案内しよう。話もそこでして構わないか?」

 

「ああ、わかった」

 

「ええでー。綾、肩貸そか?」

 

「大丈夫だ。歩ける。……海斗、行くぞ。いつまでもへばんな」

 

「お前が鳩尾にぶち込んだからだろうが……てか、俺こんな扱いばっか……」

 

 え、今更?

 

 

 

   ◇

 

 

 

「ああ〜……生き返る〜……」

 

「オヤジか」

 

「おじさんっぽい言い方すんなぁ海斗は。風呂の気分か」

 

「でもすげえよ。傷が見る見るうちになくなっていくぜ」

 

「しかし治癒魔法は再生というより回復促進なんだ。骨折のような場合はやはり時間がかかる」

 

「それでも約二週間で動かせる程度にはなるんだろ?」

 

「リハビリは必要だがな」

 

 医務室にて治療をしてもらう。なお、ここにいるのは怪我の手当てをしてもらっている俺、海斗、竹太刀。俺達に治癒魔法をかけているアースラの医務員(ユーノ含む)。後はクロノと未だ気絶中――というか、寝ているだけじゃないのだろうか――の和也。怪我もなく、(なのはにとっては)予想外な場所での再会となった由衣は、なのはとアースラ巡りをしている。

 

「で、話については?」

 

「ああ、もう少し待ってくれ。今、艦長が来ている」

 

 噂をすればというか、クロノがそれを言った直後に扉が開いた。

 

「怪我の具合はいかがかしら? 初めまして……って言うのも変よね。少し前にモニター越しに会ったから」

 

 入ってきた人物……リンディ・ハラオウンは部屋に入って俺達わ見回した後、そう言ってきた。

 

「そうですね。話をするにあたっては問題ありません」

 

「そう」

 

 リンディ提督は近くの椅子に座る。

 簡単に自己紹介を済ませる。

 

「じゃあ、まずはあなた達の話を聞こうかしら」

 

「ええ。いいですよ」

 

 俺はあらかじめ考えておいた説明を頭に思い浮かべ、再生を始める。

 

「世界が多数に存在し、魔法という技術が存在することはそこで未だに寝てる和也から聞いているんですよ。和也が魔法を知っている経緯については今は置いときますが。で、いつだか前に街中ででかい樹が街を破壊したり、それ以外にも奇妙な事が起こったり、それで俺達は独自に調査を行ってたんです。そしたら今日、魔力を帯びた石……ジュエルシードでしたっけ。……を見つけて、それから魔導師の二人組に襲われたんです。俺達は、もしもの時にと用意していた道具を使って逃げ続けて、ギリギリのところでクロノ他、あなた方が介入して助かった、という訳です」

 

「……なるほど。そういうことでしたか」

 

「では、そちらからも話をお願いできますかね? あなた達の組織……管理局でしたっけ? ……についてとか、ジュエルシードとは何なのか、とか」

 

「え、それは俺達には必要――」

 

「黙って聞きぃ」

 

 竹太刀ナイス。

 確かに説明は本来必要ないのだが、そのその事実を俺達以外が知るはずもない。なので敢えて聞かなければ後の話がマズい。

 

 リンディさんから、時空管理局という組織について、ロストロギアについて、ジュエルシードについて、そして襲撃者、フェイトについての話を受けた。時々クロノも説明に入っていた。魔導師や次元世界については知っていると言った分まだ説明は短い方なのだろうが、その間に和也は起きて、なのはと由衣も戻ってきた。

 

「しかし、ジュエルシードを渡して難を逃れる、とは考えなかったのですか?」

 

 一通りの話が終えたところで、いきなりそう訊かれた。

 

「いきなり武器を向けられたので。逃げることばかりで石のことは失念してました」

 

 答えると、リンディさんは呆れたように息を吐いた。

 

「……まあ、ジュエルシードを相手方に渡らせず、こちらで回収できたことでは感謝すべきですし、対応に遅れがあった私達にも非があります」

 

 ですが、とリンディさんはまるで子供に説教するような厳しい口調で続ける。

 

「あなた達の大怪我をしてまで戦う姿勢は容認できません。特にあなた!」

 

 ズイ。リンディさんが俺に顔を近づけてきた。おおぅ、近い!

 

「全身大火傷に加えて、骨折もしてるじゃないですか! 魔法で回復を速めることはできるとはいえ、すぐに元通りになる訳じゃないのですよ!」

 

 うわあ、ようなではなくガチで説教だった。

 海斗、由衣、竹太刀、助けて!

 

「……………」

 

 プイッ。

 

「……………」

 

 プイッ。

 

「……………」

 

 グッ!

 

 ……おい! 露骨に目を逸らすな二人! そして竹太刀! その親指はなんだ? 何の意味なんだ!?

 

「こら、目を逸らさない!」

 

 寧ろ目を逸らしてるのはあいつらで……ギャー!

 

 

 

   ◇

 

 

 

 小一時間、こってり絞られた。クロノ(むすこ)が手のかからない奴だからだろうか、俺への説教に滅茶苦茶力が入っていたような気がする。

 ジュエルシードを譲渡した恩でデバイス作ってもらおうかとか若干考えていたが、しばらくは意見できる気がしない。

 ちなみに海斗と竹太刀は俺ほど説教されなかった。おのれ……!

 

「さて、これからのあなた達のことですが」

 

 その言葉に、海斗と和也が妙に表情を引き締めだしたが、俺はそんなことにまで気にする気になれない。

 

「重傷である綾さん、海斗さんはこちらで治療をしてから帰します。怪我のなかった和也さんと由衣さん、もう少し治療したら大丈夫な竹太刀さんは今日中に帰っても大丈夫です。そして、ジュエルシードについては私達が担当してます」

 

「君達はこれからはジュエルシードに関わることなく、今まで通りの日常に戻ってくれ」

 

 クロノがそう言った直後、やはりというか和也が動いた。

 

「危険なものが海鳴市にあるのに、黙ってられっか――ぶふっ!?」

 

 和也が言ってる途中で、俺は和也にピロースローイング。和也の顔面に直撃させた。

 

「竹太刀、あいつを押さえにGO!」

 

「らじゃ!」

 

 竹太刀の動きは早く、俺のGOサインに素早く反応して和也の首をがっちりホールドした。

 

「なんだよ! 交渉の邪魔すんじゃね――」

 

「黙っと……れっ!」

 

 グキッ!

 

「あばす!?」

 

「か、和也くん!?」

 

 和也撃沈。なのはが驚きの声を上げるがそれは無視。

 

「……わかりました。ただ、それについて一つ話が」

 

「……何でしょう?」

 

 うわあ、リンディさんすっげえ警戒している。なのはが協力すると言った事実があったからか、単に俺を警戒してんのか……多分後者だな。

 

「ジュエルシードがどこに散らばってるのかはわかりません。そちらでジュエルシードが見つかった場合や、こっちが偶然見つけた場合にそちらと連絡する手段が欲しいのですが」

 

「……確かに、それは一理ありますね。わかりました。あなた達の携帯を、次元通信ができるように手を加えます。和也さんは、デバイスにこちらのアドレスを入れます。それでよろしいですか?」

 

「ええ。わかりました」

 

 ……よし、これで管理局との通信手段を得た。

 携帯四つ、デバイス一つをリンディ提督に預け、リンディ提督は退室。クロノも用が済んだため退室。

 二人が医務室から出て、ふぅ、と溜め息。

 

「お疲れやなぁ」

 

「ああ……まさか説教事になるとは思わなかった……」

 

「あ、あはは……私も、リンディさんに怒られないようにしないと……」

 

「それ以前に、どうしてこんな大怪我になったんですか? あの二人がこんな怪我をさせるとは思いづらいし、そもそも魔法でこんな大怪我をさせることなんてめったにないものですよ?」

 

「粉塵爆発を多用して、狼女の方をキレさせながら戦った。さすがに挑発しすぎて、あばらや腕の骨がこの様だけど」

 

「え……アルフさんを怒らせてたんですか……?」

 

「常にな。ちなみに火傷については自打球だ」

 

 「アルフをキレさせて」の部分でなのはとユーノにかなり引かれた。マジ切れのアルフが殴りかかるような場面ってあったっけ?

 

「まあ、しばらくはここの厄介になるんだし。話はその時にしよう。今日は疲れた」

 

「あ、そうでしたか。すみません。じゃあ、失礼しました」

 

「じゃあ、僕もこれで。……安静にしてくださいね?」

 

「なんで俺の顔見て言った?」

 

 そんなに信用ないのか俺?

 なのはとユーノが退室。それから、他の医務員達もお大事に、と言って出て行き、部屋にいるのは五人のみとなった。

 

「……ふぅ」

 

「なんや溜め息が多いなぁ。計画通りに行かんかったんか?」

 

「いや、計画通りだ。これで管理局とのコネを持つことに成功した」

 

「で、これからどうすんだよ? あ、わかった。連絡を利用してジュエルシードの回収だろ?」

 

「全然違う。というか、そんなやり方してもあっさり見つかって十二時間も持てないだろ。二十一個にも届かん」

 

 それにバレたらリンディさんからの説教が来る。あれは当分受けたくない。

 

「じゃあ、どうすんだよ?」

 

「二十一個全てが管理局もしくはテスタロッサ勢によって回収されるまで待機、やろ?」

 

 俺が答える前に竹太刀が答えた。

 俺は頷く。

 

「可能性があるならその状態で、タイミングは第一期の終盤だ。俺達はそれまで、しっかり体力を回復させる。これが俺のプランだ」

 

「一発逆転……ってことなんですね?」

 

「まあな。竹太刀はプランの全容が見えてるみたいだな」

 

「なんとかなー」

 

「へー。じゃ、俺は二人の指示があるまで、待機を兼ねてなのはちゃんと話とかしてていいんだな?」

 

「ああ。自由でいいぜ」

 

 よっしゃ、とガッツポーズを取る海斗。あいつにとって怪我の功名といったところなのか。

 

「和也はどないすんのや? ぶっちゃけ説明しても納得せえへん気がすんのやけど」

 

「納得させろ。というか、納得してもらう以外ないな」

 

「了解や。綾がいない間のオカン役は任しとき」

 

 誰がオカンだ。

 

「あ、そっか……綾さんと海斗さんはここで怪我を治してもらうんですよね」

 

「ああ。だから、竹太刀の言うことをちゃんと聞いとけよ」

 

「はい!」

 

「みんな、携帯を次元通信ができるように改造、終わったぞ」

 

「あ、はい」

 

「案外早いな。四台もあるのに」

 

「すでになのはの携帯で経験済みだから、だそうだ」

 

 そうなのか。

 説明を受けた後、由衣、竹太刀、気絶したままの和也は海鳴市へと戻っていった。

 

 さて、ここからが本番だな……。


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