Magic game   作:暁楓

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 今回はちょっと短めです。


第九十一話

差出人:管理者

 

件名:指令

 

内容:

 次の指令を指定期間内に実行、達成せよ。

 

指令内容:レリックを確保せよ

 

期間:新暦0075年9月12日まで

 

報酬:期間終了時に所属組織のレリック保有数1個につきスターチップを3個配布。

 

 

 

 レリック――高密度の魔力結晶体であり、StrikerS編にとって重要なロストロギア。

 レリックにはそれぞれNo.が割り振られており、またそのNo.ごとに魔力の量や波長に多少の差異が存在する。

 作中では主に機動六課が回収対象のロストロギアとして追っていると同時に、スカリエッティ一味もまたレリックウェポンと呼ばれる兵器の動力として集めている。

 ゆえに、このレリックを回収する手段は大きく分けて二つ――六課に着くか、スカリエッティに着くかだ。

 五年前にこの指令が通達され、当時ほとんどが六課入りを目指した。が、六課に入ることができた転生者は四人。そもそも時空管理局入りを断念した者も少なくはなく、多くが傭兵として外部からの介入を図るか、犯罪者に身を落とし、スカリエッティとの接触を図るという路線変更をしていった。

 

 

 

 管理局所属、三十四人。

 無所属のフリー魔導師、およそ十六人。

 犯罪組織所属もしくは犯罪者、およそ五十二人。

 未だ不明、三十二人。

 

 

 

 正確な数字はわからないが、存在自体が不明となっている三十二人を除いておそらくはこの通りだ。

 総数百三十四人。五年前の指令開始と共に三百人もの転生者が新たに送り込まれ、現在までに失格として消えていった結果の人数である。

 指令、緊急指令により失格とされた者。違反を起こして失格となった者。そして――何者かによって“狩られた”者。

 狩られたとは、俺達にとってのもう一つの生命線、スターチップが奪われることを意味する。

 他人からスターチップを奪うことは、このデスゲームの違反行為であり、即失格となる。デスゲームが始まってから今日(こんにち)まで適用され続けている原理だ。

 しかし、どういうことかその違反行為であるはずのスターチップが奪われ、そして奪われた者が失格として消される事案が、五年前から起きているらしいのだ。

 偶然目撃した民間人――のちの調査で転生者だったことがわかった――が、その現場を見たという。

 発覚後、その“転生者狩り”と思われる失格通知が数日続いたが、犯人の尻尾を掴む前に下手人の消息は断たれた。

 しかしその後、ある一定のタイミングで“転生者狩り”の被害が出るようになった。――指令終了の直後である。

 転生者がスターチップを手に入れた直後、“転生者狩り”はなんらかの手段でそれを強奪し、相手を失格に至らしめる。そのため、この五年間は指令終了後失格者の通知が二回来るようになっていた。

 しかし不思議なことに、この五年間でその“転生者狩り”がこちらに現れたことはない。

 この世界で特に名も上がってない転生者までもを狩っているような奴が、秘匿部隊にいる俺や“ジョーカー”の異名を持つ才ならまだしも、由衣や海斗のように“名は上がってはいるが狙い得る”奴らにも仕掛けないというのがわからない。

 理由として考えられるのは、五年前に加えられた転生者しか把握できていない、手を出した場合のリスクを警戒している、強奪を仕掛けるための条件を満たしていないなどいくつか考えられる。が、いずれも決定的とは言えず、奴もしくは奴らを捕捉できていないのが現状だった。

 

 ――指令の話に戻そう。

 StrikerSの物語において重要な存在の一つであるレリックだが、五年前から始まったことから察せられるとおり、レリック回収の動きは五年前から始まっている。

 高密度の魔力を内包した“危険物”――というのが、管理局がそれを回収する表向きな理由だが、高エネルギー体という“金の成る木”を見逃すことなどあり得ない。ゴーストを始めとした暗部組織によって記録に残ることなく回収されたレリックが各地の研究所によって研究・エネルギー開発されている。研究所は当然違法のものだが、こちらにとって重要なのはレリックの所在を把握していること。順当にいけば“記録にないレリック”はいずれ俺や才が襲撃・回収する算段となっている。

 問題は、指令に書かれている所属組織というものがどれだけの範囲を表すのかという不確定要素と、指令が終了するその日は管理局の保有するレリックが確実に狙われるという不安要素だろう。前者については可能な限り手元に確保できるようにすれば確実だろうが最悪、俺がいる地上本部か、海斗がいる機動六課のどちらかが確保していればいいはずだ。そういう意味では海斗と由衣が六課に入ったのは行幸と言える。後者については、地上本部襲撃に対し備えをする他ないが、襲撃のある程度のタイミングと、そしてこの世界における(・・・・・・・・)敵の戦力を知っていることは決して小さくはないアドバンテージのはずだ。

 

 ……十年前からあらゆる手を尽くしてきた。

 武器を造り、力を造り、今の立場も散々利用した。

 転生者含め、殺した人も数知れない――全ては、あの神への反逆のため。

 

 現在のスターチップ保有数……四十七個。

 神風には、まだ遠い。

 

 

 

 

 

 

「さて、今回の特務の確認といこうか」

 

 やや薄暗い部屋の中、雑務課――否、ゴーストとして召集された四人を前に、サイオンは口を開いた。

 ここは、普段俺達が過ごしている雑務課の部屋ではなかった。

 暗部部隊が、人知れず作戦会議を行う場所。本部の案内図等に記されておらず、その場所に名前はない。便宜上、『暗部室』などと呼ぶものが一部いたらしい。しかしその性質上、暗部会議より上層部の密約・密談に使われることもあるため、その名が暗部内に浸透することもなかった。

 

「今回の特務は“記録にないレリック”の運搬。対象物は貨物用リニアによって一般貨物とともに密輸される。レリックは暴発されると面倒だから、脅威が近づくことのないよう護衛すること」

 

「つまんねー特務なこった」

 

「セダンさん、レリックの暴発は被害が洒落にならないですから、適当なこと言わないでください」

 

 態度悪く言うセダンをミユが嗜める。セダンの態度はいつものことだが、真面目な彼女は無駄と知りつつも注意をしている。

 

「真面目なこって。無人リニアなんだから被害なんざねーよ」

 

「人的被害よりも、懸念されるのは“記録にないレリック”の存在がバレることだろ。俺達が呼ばれたのも、状況対応力の高さから選ばれたという話だ」

 

 近接戦に強い俺とセダン、狙撃が強いシノ、そして機械に対する絶対的な制圧能力を有するミユ。あらゆる状況に対して柔軟な対応を取りやすい俺達は、暗部隊の中でも特務に選ばれる回数が多かった。

 そして、今回の任務が特務とされる理由。リニアへの襲撃やレリックの暴発によって今回のレリックが管理局の明るみに出た場合に、そこから他の“記録にないレリック”の存在に感づかれる懸念があるからだ。無論、このレリックが明るみになっただけで全てバレるなどということはないだろうが、懸念は少しでも払拭したいのだろう。人の思考を読み取るレアスキル持ちの監察官というものが存在する以上、それが来ないようにしなければならない。

 

「話、続けるよ? 有事の際はレリックの安全確保を最優先。必要であれば破壊制限の解除及び実弾兵器の使用を各自の判断で認めるものとする」

 

「いつもの通りだな」

 

「許可が明言されていることが重要なのよ。その違いだけで私達の動きやすさが大きく変わるわ」

 

「G5がヘリを操作しリニアを追走、有事の際にG2、G3がリニア上に降下して脅威を迎撃、G4は遊撃支援及び作戦指揮をしてほしい。以上だ」

 

「G2、了解」

 

「G3、了解」

 

「G4、了解」

 

「じ、G5、了解です」

 

 G2――セダンとG3――シノが敬礼、続いて四番目の亡霊(ゴースト4)として俺も敬礼する。G5であるミユも言葉にたどたどしさを残しながら敬礼した。

 

「G5ー、そろそろコードネームにも慣れようぜ~?」

 

「わ、わかってますよう!」

 

「ミユは気を楽にしなさい。基本的にはヘリの中で安全を確保してれば充分だし」

 

「仲が良いのは良いことだね。では行って来なさい」

 

「了解」

 

 ミユを話のダシにしている二人に代わり、俺は再度敬礼をした。




 大体の勢力図と、新要素“転生者狩り”の話でした。
 禁忌を侵す存在ってその言葉だけでもカッコいいよね……カッコよくない?
 次回ようやく原作らしい話になります。原作らしい……かな?

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