スターピースカンパニーの事件簿   作:あずき抹茶

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大型犬って可愛い


【秒針】トパーズの飼い犬失踪事件④

 「今日はありがとうございました」

 夕焼けの街並みには烏の影が染み付いていた、夜の姿が現れ始めた。

 「いえいえ、お役に立たず申し訳ありません」

 「そんなことありません、貴重な情報ですよ」

 「それに果物まで受け取って、御協力ありがとうございます」

 

 

 

 「謎が増えましたよ、先生」

 桃•林檎•バナナは丁寧にカットされ、銀の大皿に盛り付けられた。

 マーガレットはフォークとナイフを使い一口に切ってから食べていた。

 オイラーは資料片手に半分に割られたリンゴを食べていた。

 

 「増えたね、謎」

 可食部分を綺麗に食べ切るとオイラーは手掴みで桃を食べようとしたが、その手は拒まれた。

 「増えたね、じゃあ無いですよ、どうするのですか?」

 「どうもこうも無い、これは事件だ、真剣に取り組むよ」

 

 その言葉にびっくりして緩んだ手を振り解き、桃を摘んだ。

 完璧に熟した白桃は身がしっかりしていて食べ応えがあった。

 「なぜ事件だと思ったのですか?キチンと説明してください」 

 

 「犬だよ、陰謀術数渦巻くカンパニーの高級取りが雑種なんて飼えない」

 「そんなことないでしょう、殺処分反対のアピールに有効ですよ」

 「犬の中に探知機や爆弾が仕込まれている可能性があるだろう?」

 「そんなこと、、、」

 「あり得るよ、三十年ほど前に博識学会の学者が実験の為に大量にマウスを購入した」

 

 『繁殖』の実験のためにね、しかしと続けて「実験は失敗に終わった、『繁殖』の力を恐れた過激派はマウスの体内に探知機を付けて実験室は特定した、そして瞬く間に襲撃した」

 指を畳みながら数えるように続ける。

 

 「他にも前例は山ほどある。

 巡海レンジャーが原始博士の居場所を見つけるために猿に発信機を付けたが、逆に利用されてしまった。

 仙舟羅浮にて薬王秘伝が一般人を装って長命種を勧誘していた。

 珍しい記憶を多く収集した高名なメモキーパーの正体は探検家や冒険家に使命感を植え付けマッチポンプを行っていた」

 

 「似たような前例は多い、要は危険なんだよ、信用を証明できない物が近くに有ることが」

 

 桃の水滴をティッシュで拭き取り、引き出しから最新の地図を取り出した。

 「では何故トパーズ氏はそのような犬の散歩をしていたのでしょう?

 「それが謎だね、現時点では何も分かってない」

 地図に目星と付箋を付けて鞄にしまうと、立ち上がって言った。

 

 「取り敢えず今日はもう遅いから引き上げよう。明日はちょっとだけ遠出して動物病院や保健所を巡ろう」

  オイラーは一方的にそう告げるとコートをハンガーラックに掛けて浴槽に向かった。

 

 

 

 ーーートパーズの視点

 

 

 

 「首尾は順調?」

 トパーズは極めて平穏に進展を尋ねた。

 無意味な社交辞令には真っ向から反発するが残業のイライラを相手にぶつける程マナーを軽視していなかった。

 「あぁ、特に問題はないよ、あの犬も雑種の割に頭が良かった」

 「犬、じゃないわ『ジェームズ』よ」

 「これは失礼した、名前が付けられていたなんて知らなかったよ」

 

 トパーズは電話の向こうで軽口を並べる相手に青筋を立てた、知らなかったなど簡単に嘘だと分かるからだ。

 

 「冗談が過ぎたね、本題に戻ろうか」

 「ジェームズくんは予定通り此方で回収したよ、今ボクの部屋でドッグフードに顔を埋めてる。

 怪我もしてないし病気もして無い健康体そのものだね」

 

 『良かったぁ、、、』トパーズは内心で安息を漏らした。

 【カンパニー動物愛護協会:名誉会長】として動物を囮に使った作戦は気が乗らなかったのだ。

 

 「それが分かったのなら問題無いわ、忙しい時期にお願いして悪かったわね」

 「僕と君の中だろう?ピノコニーへ行く準備は済ましている。寄り道くらい些事に過ぎない、気にしてないよ」

 「それなら良かった、ピノコニーの案件はダイヤモンドが元々決まっていた担当者を君に変更したと知った時は、どんな裏工作が有ったのか気になったけどその様子なら平気そうね」

 膝上で眠そうに欠伸したカブを撫でながら言った。

 電話の相手は同僚の細やかな思案に感謝した。

 「大丈夫、既に策は練ってある」

 「そう、、、なら良かったわ、成功を祈っている」

 「僕の方こそ、ジェイドさんから任された仕事、成功を祈っているよ」

 

 トパーズは電話が切れたことを確認したのち、倦怠感からイスに仰向けになった。

 ジェイドさんから送られた資料には数行の注意事項と参考人、そして事件のあらましのみが記載されていたのだ。

 『それに』

 トパーズは資料の一枚目を手に取り、注意深く経歴を見た。

 『オイラー、前例の少ないカンパニーの顧問探偵、彼の噂や実績を洗い流してみても不自然は見当たらなかった』

 『浮き出てきた人物像は偏屈な学者に近い、自分が認めなければ事件を事件と認めず事故と片付ける性格、そのせいで本来得られるはずの給料が先送りになっている』

 『ジェイドさんは二重の意味で信用できる探偵と言っていたけど、距離を測りかねるなぁ』

 

 「はぁぁぁ」落ちかけていた意識はトパーズに掴まれる事にやって覚醒した。

 仰向けの状態のトパーズはカブのお腹を顔面が埋め込み、グリグリと前髪が崩れを厭わず押し付けた。

 カブの抵抗は虚しく三秒ほどなされるがままだった。そしてトパーズは急に脱力した、そして急に立ち上がり

 「今日は寝よう!」

 脇腹でカブを抱えたトパーズは宣言した。

 眠る直前で意識を覚醒させられたカブが寝れるようになったのは、その3時間後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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