1986年
ホグワーツ魔法魔術学校の近くに1つの村が存在していた。その村の名はホグズミード村という。
ホグズミード村――
あそこはイギリスで唯一、住民が魔法族のみという村だという。
ホグワーツの生徒達の買い物と娯楽の場、6年生以上は姿現しの試験・練習場所としても使用されるという。
……住民が魔法族のみの村が実はあと1つ、スコットランド内のどこかに存在しているらしいからホグズミード村が唯一の村ではないという噂があるが……
とにかく、その村の中にはある家があって、その食卓に1人の老人が座していた。彼の名はアバーフォース・ダンブルドアという。
アバーフォース・ダンブルドア――
彼はホグワーツ魔法魔術学校校長にして20世紀で最も偉大と謳われる大魔法使いとされるアルバス・ダンブルドアの実弟だ。
彼はホグワーツの近くのホグズミード村にある汚らしい旅籠ホッグズ・ヘッドの店主をやっている。
そんな彼は腕を組み、瞼を閉じながら思案に耽けていた。何かを考えているのかは知る由もないが……彼の額にはシワを寄せていた。
一見機嫌が悪いようにみられているアバーフォースに声掛ける影が1つ。
「お父さん、何を考えていたんですか?」
「ん……クオウか、いや何もだ」
アバーフォースは自身に声を掛けてくる男に微笑む。
アバーフォースに声を掛けた男はアバーフォースの孫だ。名はクオウ・ダンブルドアという。
クオウをアバーフォースはつい微笑む。ぶっきらぼうで苛烈な自身と違って、穏やかでしかし芯がはっきりしている孫に誇らしさを感じたからだ。
「――お前は本当にいい奴だな。お前のようや奴がオレの孫だというのが信じられない程だ」
祖父の突然の称賛にクオウは目を見開くも微笑み返す。
「……おじいさんが育ててくれたからですよ。あなたがいてこその私だから」
「……いや、お前は自らの頭で考えて、自らの足で立っている。それだけでも大したもんだ――それこそアルバスより――クリーデンスもお前の事を誇りに思う筈だ」
アバーフォースのその言葉にクオウも微笑むが、少々ながらの悲しさもみられた。
「――もしもそうだとしたら……お父さんに直接見てもらいたかったな……」
クオウのその言葉にアバーフォースも目線を下げ――クリーデンスの事を想う。
クリーデンス・ダンブルドア――
彼はアバーフォースの息子にてクオウの父親だ。彼は曰く付きの魔法使いだが……残念ながらもう既に死亡している。
2人はクリーデンスの事を想ってしんみりしていた。そこにそんな空気を打ち破るかのように
「お待たせ〜!あなた!おじいさん!」
「お待たせ〜!」
「「うぉ!?」」
アバーフォースとクオウの元に女と男の子が明るそうに食事を運んできた。その勢いに2人も面食らわれた。2人を驚かせた女と男の子は――
「ビックリしたじゃないか……キューレラ、クリア」
「ふふっ、あなた達こそ何をしんみりしているの」
「うん!暗かったよ……」
――女はクオウの妻で名はキューレラ・ダンブルドアという。
そして男の子はクオウの息子にてアバーフォースの曾孫で名はクリア・ダンブルドアという。
2人の言葉にアバーフォースもクオウも頭を下げていた。
「……と、とにかく食事ができたようだし。あとはアユリアを呼ぶだけだね」
「あ、あぁ……オレが呼ぼう」
アバーフォースとクオウがキューレラとクリアの勢いに少しアワアワするうちに――
「来てるよ〜」
その声が響いた。その声に場にいる人々が一気に視線を女の子に向けた。
「「「アユリア」」」
「お姉ちゃん!」
アバーフォース達に微笑む女の子こそが――アユリア・ダンブルドアだ。
彼女はクオウとキューレラの娘でクリアの姉で――アバーフォースの曾孫なのだ。
彼女の晴れやかな笑みにアバーフォース達も微笑み返すも――
「具合は……大丈夫のようだ」
「うん!今日はセーフの日みたい」
アバーフォースの心配そうな言葉にアユリアもそう答える。
実はアユリアは少し病弱で、しかも原因不明なのだ。それは体調が悪い日もあれば、普通に元気でいる日もあるのだ。今日は体調が良いらしい。
アユリアの晴れやかな笑みにアバーフォース達も笑みを浮かべ――
「はい!じゃあご飯を始めましょう!」
そうしてダンブルドア家の食事が始まった。料理の味を味わい、会談を楽しんでいた。
「アルバスおじいさんは?」
「――アイツは」
突如のアユリアの純粋な目線での問いかけにアバーフォースは顔を歪めながら答える。
「忙しくなるらしいから顔を見せる機会が少なくなるそうだ」
「「え〜!」」
アルバスの来訪の機会が難しいと言われたアユリアとクリアは不満気に声を上げた。それに対して
「……だから来る時はみやげを用意すると言ったぞ」
アバーフォースのその言葉にアユリアとクリアは不満を抑えつけた。
「……ふーん…じゃあいいか!」
「お土産……何だろうね!」
「ふふっ……ねー!」
そう笑い合った姉弟を見つめるアバーフォースは思案に耽った。
――アユリア……まるで最愛の妹アリアナ・ダンブルドア、そしてクリーデンスを思い出させている彼女の未来にアバーフォースは不安を感じていた。
「(――アルバスから聞いた例の予言もあるからな)」
兄アルバス・ダンブルドアから聞いた予言。その内容に記載された「予言の4人」の1人こそがアユリア・ダンブルドアであるかもしれないという可能性にアバーフォースは顔をしかめた。
――ふざけるな。
――アリアナの時といい、クリーデンスの時といい……
――運命だろうが何だろうが……これ以上に不幸に見舞われるのはごめんだ!!
アバーフォースはアユリアはもちろん家族を〝今度こそ〟守りきろうと決意を固めた――
そんなアバーフォースにアユリアは声を掛けた。
「――おじいさん?」
「ん?何だ?」
「どうしたの……?顔が怖いよ?」
愛孫からの言葉にアバーフォースは慌てて笑みを浮かべる。
「――何でもない、さぁ続けよう」
――そうして食事を再開した。
――そしてダンブルドア家の和気藹々な会食を外から見つめる影が1つ。
「…」
木の枝に止まっている黒い鳥がその景色をただ見ていた……
●
ホグズミード村の近くの森。
その内をアユリアが歩いていた。彼女は動物が生息してて植物も植えている森内を歩くのがアユリアは好きだった。そうするうちに「命」を実感できるからだ。
体調が良いアユリアは今日も森を歩きながら動物の鳴き声を聴く、景色を眺めるのを楽しんでいた。
――あぁ……「命」を感じられる……
そう思ったアユリアは背伸びした。その瞬間
「!」
ハッとするアユリアはある方向に目を向ける。そして駆け出した。
何故か焦っているようにみられるアユリアが森を駆け出しているうちに川が見えた。そして
「!やっぱり……!」
アユリアが川を凝視していたら――犬が溺れていた。
川で溺れている犬の助けを求める声がアユリアを呼び寄せたのだ。そして動物と植物を愛してる心優しきアユリアは犬を助けようとした。
アユリアは川の近くの細長い植物を掴みながら犬に手を差し伸べた。
「――さぁ!掴まって!」
アユリアの声に気付いた犬はその手に掴まろうとするが――
「……!」
川の流れが強くて犬が進めにくいのに気付いたアユリアは顔をしかめる。
「……やるしかない」
ボソッと呟いたアユリアは瞼を閉じて――何かを念じた。
「……!?」
犬が自身の身体が浮かんでくるのを感じた。
――アユリアが魔法力を使って犬を川から浮かばせたのだ。アユリアの念により犬の身体がアユリアの手元に向かった。
――しかし
「……ハァハァ」
アユリアが汗を流しながら苦しんでいた。
無理もない。杖を使わずに魔法を使うには高度な技術を必要とする。まだ幼くて訓練を受けていないアユリアがそれをし続けるのは無茶なのだ。
しかしアユリアは犬を救う為にはリスク等気にしないのだ。
「――あと少し」
アユリアの手と犬の距離が少しずつ縮まってきた。
少しずつ……少しずつ……やがて
「!やったぁ……」
犬の身体をアユリアの手が掴んだのだ。それにアユリアが笑みを浮かべた瞬間に片手が掴んでいる細長い植物が千切れた!
「――え……」
アユリアが間抜けな声を出しながら川へ落ちようとし――
「――危ない!」
どこかから手がアユリアの植物を掴んでいた手を掴んだ。
「!?」
アユリアが目を見開いて、目を向けると――艶のある豊かな銀髪を持った可愛らしい女の子がアユリアの手を両手で掴んでて彼女が川へ落ちるのを止めていた。
「――あなたは……?」
「それは後!今は――」
呆気に取られたアユリアにそう言い放つ女の子だが――
「あ……」
その女の子も間抜けな声を出しながらアユリアと共に川へ落ちようとした。
「――!(川へ落ちる!)」
そう思ったアユリアは瞼を閉じた。
だがそうならなかった。
川へ落ちようとするアユリア達を助けた者がいた。
「「……!?」」
アユリアと女の子がハッとすると――2人の身体が川の上で浮かんでいた。ふと上を見上げると――
黒い鳥が2人の身体を足が掴んでいた。その状況に2人は目を見開く――
●
「くぅ~ん」
犬がアユリアに懐いてて、アユリアもそれに微笑んだら自身の肩に止まっている黒い鳥を見る。
「――ありがとう。私達を助けてくれて……あなたは一体……?」
アユリアの言葉に女の子も同感なのか黒い鳥を凝視する。
そしてアユリア達の疑問に答えるかのように黒い鳥の身体が燃え始めた。
「!?」
「ちょっ!?燃え――!?」
アユリア達が驚く間もなく、その姿を現してくる。
――それは白鳥大の真紅の鳥だった。
――金色の孔雀と同じくらい長い尾とかぎ爪を持ってて、黒い目をしていた。
その姿を目にしたアユリアは声を震わせながら出した。
「――不死鳥!!?」
アユリアの言葉に女の子は目を見開く。
「えぇ!?――本当なの!?」
「えぇ、間違いない……」
アユリアはアルバスの飼っている不死鳥を思い浮かべた。その特徴を持っている以上間違いはない!
不死鳥の登場に目を見開くアユリアをよそに女の子は口を開く。
「――もしかして、不死鳥はあなたに飼い込まれるのを望んでいるんじゃない?」
女の子のその推測にアユリアは驚愕する。
何せ不死鳥を飼うのは難しいといわれる。不死鳥が人に飼い込まれるのを好まないのも理由の1つである――なんだが。
「そんな訳はない……そうなの?」
アユリアは一度否定するも――不死鳥に確かめる。すると不死鳥が頷いた!――ようにみえた。
「――はぁぁぁ……!」
少なくとも不死鳥が自身のそばにいるのを望んでいるのが分かったアユリアは驚愕する。女の子も驚愕に目を見開く。
「……不死鳥を飼うなんて……やるわね、あなた」
「そ、そうね……」
女の子の言葉にアユリアもとりあえずそう言った。
「……それで、名前……どうするの?」
「!名前……」
アユリアもハッとし――思案に耽る。やがて――
「……ルーチェにしよう!」
アユリアの力強い言葉に女の子――そして不死鳥も微笑んだ……ようにみえた。
しばらくアユリアと女の子はルーチェについて会話していた。
●
「ワン!」
そう鳴いた犬は元気そうに駆け出した。
それをアユリア達は眺めていった。
「――じゃあね、お母様を待たせてはいけないし……」
女の子はそう言い、手を振りながら歩いていく。
「――待って!あなたの名前は……?」
アユリアの問いかけに女の子は振り返って
「――デルフィー……私はデルフィーニ・ブラックよ!」
そう名乗ったデルフィーニ・ブラックは今度こそ去った。
「デルフィーニ・ブラック……」
「……ルーチェ。私も帰ろう」
――この日からアユリア・ダンブルドアは不死鳥と共に生きていく事になる。