全てを失った私が死にたがり少年に養われる件   作:雪夏(せつか)

1 / 1
ep.1 奇妙な出会い

「桜井伊織さん……大変申し訳ないんだけど、今月で君は解雇ね。」

「……は?」

 

人生はゴミだ。

 

「あんたいつまで家賃滞納してるんだい!払えないなら出ていきな!」

 

「……はぁ」

 

人生はクソだ。

 

「伊織〜!実は私結婚したんだよ!」

「……そっか!」

 

こんな人生、望んでなかったよ。

 

この世に神様なんて言う愚かしい存在がいるなら、1度そいつの首根っこを掴んで問い詰めてやりたい。

どうしてこんなにもこの世は不平等に満ち溢れているのか。

 

「どうせ何も残せないなら、最後にこの不平等をぶっ壊して満足してやる」

 

私はホームセンターで包丁を買い、夜の街へでた。

ここは大都会もいいところ。たくさん人がいるので、その分多くの人を殺めることが出来るだろう。

 

そしていざ実行しようとした時、私の手は大きく震えた。

 

「なんで…動かない……」

 

すると後ろから、若い男の声が聞こえた。

 

「覚悟がないからだよ、お姉さん。」

 

私は後ろを振り返る。

高校…いや、中学生か?

哀れな目を私に向けられたのと、図星をつかれた悔しさで私は刃先を彼に向ける。

 

しかし彼は全く動じず、こう続けた。

 

「ダメだよお姉さん、沢山人を殺そうとしてるのに何故か路地裏に隠れちゃうし、今この瞬間も手が震えてるじゃん。」

 

そして何故か私の元へと近寄ってくる。

「動く…な……刺すぞ。」

声を振り絞って出すも、制止は全くの無意味だった。

「僕はさ、殺されたいんだよ。ほら、自分で死ぬのってちょっと躊躇っちゃうじゃん?でも殺されるとなると躊躇いとかってないかなぁって。」

そう言ってまた1歩近寄る。

私は向けた包丁を下ろす他なかった。

「あーあ。殺してくれると思ったんだけどな。」

 

私はゆっくりと彼に問いかける。

「なんで……君は死にたいの?」

彼は少し微笑みながら答えた。

「…………生きていても僕の欲しいものは絶対手に入らないって悟ったから…かな?」

……似ている、私に。

彼も私に似たような感情を持ったのだろう。

 

「お姉さん、もし良ければ家においでよ。お姉さんのこともう少し知りたい」

 

私は一瞬言葉を失った。

「いや…でも私君を殺そうとして……家より警察連れて行った方が…」

 

すると彼は目を丸くしたかと思えば、腹を抱えて笑い始めた。

「ははっ!こんな人初めて見たよ!」

彼は、私のほうに歩み寄り

「僕は君が望むものを差し出すことができる、だから君も僕に協力してよ」

と耳元でささやく

確かに自暴自棄にはなっていたが、よくよく考えれば悪い条件ではないのだ。

私は、少しばかり考え込んで彼のところに行くことに決めた。

こうして、なんとも歪な不思議な関係が始まったのである。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。