全てを失った私が死にたがり少年に養われる件 作:雪夏(せつか)
「桜井伊織さん……大変申し訳ないんだけど、今月で君は解雇ね。」
「……は?」
人生はゴミだ。
「あんたいつまで家賃滞納してるんだい!払えないなら出ていきな!」
「……はぁ」
人生はクソだ。
「伊織〜!実は私結婚したんだよ!」
「……そっか!」
こんな人生、望んでなかったよ。
この世に神様なんて言う愚かしい存在がいるなら、1度そいつの首根っこを掴んで問い詰めてやりたい。
どうしてこんなにもこの世は不平等に満ち溢れているのか。
「どうせ何も残せないなら、最後にこの不平等をぶっ壊して満足してやる」
私はホームセンターで包丁を買い、夜の街へでた。
ここは大都会もいいところ。たくさん人がいるので、その分多くの人を殺めることが出来るだろう。
そしていざ実行しようとした時、私の手は大きく震えた。
「なんで…動かない……」
すると後ろから、若い男の声が聞こえた。
「覚悟がないからだよ、お姉さん。」
私は後ろを振り返る。
高校…いや、中学生か?
哀れな目を私に向けられたのと、図星をつかれた悔しさで私は刃先を彼に向ける。
しかし彼は全く動じず、こう続けた。
「ダメだよお姉さん、沢山人を殺そうとしてるのに何故か路地裏に隠れちゃうし、今この瞬間も手が震えてるじゃん。」
そして何故か私の元へと近寄ってくる。
「動く…な……刺すぞ。」
声を振り絞って出すも、制止は全くの無意味だった。
「僕はさ、殺されたいんだよ。ほら、自分で死ぬのってちょっと躊躇っちゃうじゃん?でも殺されるとなると躊躇いとかってないかなぁって。」
そう言ってまた1歩近寄る。
私は向けた包丁を下ろす他なかった。
「あーあ。殺してくれると思ったんだけどな。」
私はゆっくりと彼に問いかける。
「なんで……君は死にたいの?」
彼は少し微笑みながら答えた。
「…………生きていても僕の欲しいものは絶対手に入らないって悟ったから…かな?」
……似ている、私に。
彼も私に似たような感情を持ったのだろう。
「お姉さん、もし良ければ家においでよ。お姉さんのこともう少し知りたい」
私は一瞬言葉を失った。
「いや…でも私君を殺そうとして……家より警察連れて行った方が…」
すると彼は目を丸くしたかと思えば、腹を抱えて笑い始めた。
「ははっ!こんな人初めて見たよ!」
彼は、私のほうに歩み寄り
「僕は君が望むものを差し出すことができる、だから君も僕に協力してよ」
と耳元でささやく
確かに自暴自棄にはなっていたが、よくよく考えれば悪い条件ではないのだ。
私は、少しばかり考え込んで彼のところに行くことに決めた。
こうして、なんとも歪な不思議な関係が始まったのである。