第4章
この日記をつけるのは何日ぶりだろうか。
核のボタンが押されてしまったあの日、私たちは天帝を守って核シェルターに退避した。
シェルターに入っていると、外と連絡はとれない。
外が静かになって、核爆発後の放射能が減少したであろう時期を見計らって外に出た。
想像を絶する光景が広がっていた。
最新の近代都市だった帝都が消滅していた。
そこには何もなかった。
砂漠だった。
これが核爆発の威力なのだろうか。
※ ※ ※
とにかく、天帝は無事だということを政府に伝えなくてはならない。
私は、内閣と参謀本部が入っていたシェルターへ人を走らせた。
かなり時間がたってから、その使者は戻ってきた。
シェルター内には一人の生存者もいない、と使者は言った。
内閣と参謀本部が入っていたシェルターは、核爆発に耐えられなかったのだ。
何ということだろう。この国の政府中枢が消滅してしまったのだ。
※ ※ ※
ここに生き残っているのは、幼年の天帝と私の他には、侍従武官のソリア、侍従長のジャコウ、それに私と同じシェルターに入っていた少数の侍従や避難民だけだ。
この皆で備蓄食糧を分け合いながら、何とか友軍と連絡を取ろうと、四方に人を走らせた。
避難民の群れに会うことはあっても、友軍の姿は全く見ることができなかった。
既に軍や警察の機構も崩壊してしまっているのだろうか。
だとしたら、どこからも救援は来ない。我々だけで生きていくしかないのだ。
しかし水は?食料は?
幸い、非常用の井戸は残っていた。
また、さらに幸運なことに、野菜の種や芋を持っている人が避難民の中にいた。核戦争前から、このことあるを予期して保管していたのだという。(それが役に立つ時が来てしまった。)
これで何とか自活の道を探るしかない。
第5章
私が侍従武官長という政府高官の肩書きを持っているというだけの理由で、この集団のリーダーに立てられているが、私は畑の作り方も野菜の育て方も知らない。
こんな時に拳法家は無力である。
私に次ぐ地位のジャコウは、普段は威張っているくせに、こんな時はオロオロするばかりで、からっきし頼りにならない。
それでも、みんなで悪戦苦闘の末、ようやく畑らしきものができてきた時に、朗報が来た。
行方不明だった侍従武官のショウキが生きていたという。
ショウキは、私達とは別の場所で避難民をまとめて村を建設していた。
その村には、私達と違って農業に詳しい人がいるらしく、村造りが順調に進んでいるらしい。
私達はショウキの村の人達に頼んで農業指導を受けることにした。
快く引き受けてくれた村の人達には、全く感謝の一語に尽きる。
この恩義は、いつか返さなければならない。