第12章
かくして、リハクの呼びかけで、第一回講和会議が開催された。
出席したのは各勢力の代表。
主な顔ぶれとしては、私とリハクの他には、マミヤ、リセキ、ザク、バルガ、リゾといった面々が来ていた。
マミヤは、マミヤの村のリーダーである。
この国の村や町の多くが、野盗上がりの武装勢力によって征服され終わった中にあって、マミヤの村は度重なる野盗の侵入を跳ね返し、住民自治を守り抜いた村であり、リーダーのマミヤは、その統率力と戦闘力を高く評価され、当代随一の女傑と呼ばれていた。
ただ、マミヤ本人は、「戦闘力が高い」とか「女傑」とかと言われるのを嫌っているふうだった。口に出しては言わないが。
自分の村を守るため、相当無理して「女傑」を演じているのかもしれない。
あの若さで無理を重ねて、心が折れてしまわなければ良いのだが。
リセキ、ザク、バルガの三人は、旧拳王党の代表として来ていたが、彼ら三人に会ってみると、リセキは物静かな老人だし、ザクとバルガは謹厳実直な武人といった感じ。かつてその乱暴狼藉ぶりで、天下に鬼の如く恐れられた拳王軍の首脳には、とても見えない。
彼らが言うには、拳王軍でも狂暴凶悪な連中はケンシロウに倒されてしまい、自分たちだけが生き残ったのだという。
リゾは、もと聖帝の部下である。
聖帝がケンシロウと戦って敗死した後、旧聖帝領には部下のリゾが盤踞し、聖帝党の残党として危険視されていた。
今回の講和会議にも参加するかどうか危ぶまれていたのだが、意外にもリゾ本人があっさりとやってきた。
リゾが言うには、
自分が聖帝の残党と言われるのは心外である。
自分は聖帝に脅迫されて仕方なく従っていたに過ぎない
という。
聖帝は領内の子ども達を拉致して強制労働させていた。
彼らを親元に帰さなければならないし、帰る身寄りのない者がいれば、自分たちで面倒を見なければならない。
そういう仕事をするために、とどまっているに過ぎない。
リゾは、そう言っていた。
彼についての情報をいろいろ集めると、どうやら彼が言っていることは本当らしい。
リゾ派は危険な武装集団という風説は間違っていたのだ。
世間から誤解されながら、黙々と自分のなすべき仕事をしているリゾという男は立派だと思った。
※ ※ ※
こうして始まった講和会議において、次の事項で合意をみた。
・各勢力は即時停戦すること。
・今後、各勢力は他の勢力に武力を行使せず、紛争がある場合は交渉で解決すること。
・この講和会議を臨時議会とし、ここから臨時政府を選出すること。
ここでリハクが、私を臨時政府の首相に推薦した。
私は辞退した。
「私は天下のために何もしていない。
ケンシロウこそ、拳王の恐怖政治を終わらせた功労者ではないか。
そのケンシロウがこの会議に呼ばれていないというのは、どういうことか。」
私がそう言うと、ケンシロウは姿を消したという。
「俺は北斗神拳伝承者としてなすべきことをしただけで、政治的な野心を持つものではない。」
そう言ってケンシロウは去ったという。
「それでは“南斗最後の将”はどうか。
南斗の将は拳王に捕らえられたが、後でケンシロウに助け出されたと聞いている。
将は名声・人望・実績いずれも私より上だぞ。
“南斗最後の将”こそ新政府の首相にふさわしいのではないか。」
私がそう言うと、リハクが言った。
「我が将は本名をユリア様といって、ケンシロウ様の婚約者です。
ユリア様はケンシロウ様と静かに暮らすことをお望みです。
だからケンシロウ様とともに去られました。」
そうか、そういうことなら仕方がない。
「それではリハクどのが首相ではどうか。」
「私は拳王軍に敗れた敗軍の将に過ぎません。
その私が新政府の首班では、旧拳王党の方々が納得しないのではないでしょうか。
ここはファルコ様のように、周りに敵を作っていない、かつ声望のある方が適任なのです。」
結局、私が首相を引き受けさせられることになった。