BLUE ARCHIVE ZERO~THE BELKAN SCHOOL WAR 作:神宮寺志狼
「私は小学生の頃スクールバスに乗って学校まで通っていたの。」
フェリは語り始める。
「自分で言うのもなんだけど当時の私も品行方正で何の問題も起こさず。
まさにヒフミちゃんが言うところの『普通の子』だったわ。
でも「なんのために生きているのか」「特にやりたいこともなくただ生きている」だけの人生でもあったの。」
もはや現高校生の口から出るようなものとは思えない言葉がでてきた。
「おかしいと思うかもしれないけれど、本当にやりたいことがなかったの。欲しいものは何でも手に入ったし、好きなものなんでも食べれた。
だから、流されるままに育ってきた。」
「ど、どうしてそれがベルカ自治区で過ごすことに......」
コハルの疑問ももっともだ。
フェリは話を続けた。
「.....ある日トリニティのスクールバスがジャックされて、それに乗ってた全員がベルカ学園に連れていかれたの。」
「"!!!"」
いつかホシノが言っていた借金返済の解決案。
『他校のスクールバスを拉致すればオッケー!』
その言そのものであった。
《.......そういえば、確かにそんなこともありましたね....》
通信機越しにハナコが言う。
《たしか5年前....正しくは、スクールバスが音沙汰もなく忽然と消えた、と言う話だったかと。》
フェリがハナコに語り掛ける。
「よく覚えてるじゃない。」
《えぇ、まぁあの頃の治安はよかったトリニティでへは珍しいことだったので。
まさか、貴女がそれに巻き込まれていたとは思いませんでした。》
「"そうなんだ、ごめんフェリ話を続けて?"」
フェリは頷くと話を再開した
「...それからの日々は毎日が戦いで、顔見知りと殺し合いのように互いに銃を向けあって生きてきた。
時には食べ物の取り合いになったり、それが原因で引き金は互いに軽くなり、罵りあったりもした。
毎朝早朝から夜遅くまで訓練で生活環境も衣食住が最低限。
そんな歪な環境で生きてきた私は徐々に自分が嫌いになっていった。」
彼女は自らの銃をみつめる。
「本当はね?
銃と弾丸を目にする生活を続ければ次第に心は歪みそれが当たり前になっていく。
───このキヴォトスではもうそれが染み付いている。
銃を持っていないのは往来を裸で歩く事より恥ずかしいと、何度も教わってきたけれど、私はそうじゃなかった。
だから、何とか脱走して、トリニティの自治区で保護されてからは、なるべく銃は構えなかった。」
《それがお姉様が銃を使わなかった理由なのですね....》
通信の向こうはナギサだろうか、かなりショックを受けていた。
「じゃあ、お姉様はなんで私達の身代わりになってまでベルカ戦争に行ってくれたの?」
当然すぎる疑問がミカの口から発せられる。
「.......そうね....
一つ目は、いくら1年近く虐待に近い指導を受けたとはいえ、一時でも居た学校がただ潰される報告を黙って聞く気にはならなかったから....かしら。
二つ目は、未だに取り残されている元トリニティの同胞を見かけたら説得して助け出せないか、と思ったの。
最後は.....貴女達に、戦争────いえ、無闇に銃を使って欲しくなかった.....
道中、"あの子"の眩しさに憧れた事もあったけれど.....
それでも、私は
....貴女達にはわからないでしょうね。こんな思い。」
「.....」
《.......》
《お姉...様....?》
生徒達は全員黙った。
このキヴォトスにおいて銃というのは食べ物と同じくらい必需品だ。
逆に言えばそれをフェリは「要らない」どころか「憎むべきもの」として語っている。
もはやそれはキヴォトスの常人には理解できない言葉だったのだろうか。
しかし───────。
『少し、わかる気がします。』
そう言っているのは戦車を動かしていたヒフミだった。
彼女の声は戦車の中でこもり、表情は当然読めないがそれでも悲しいとか哀れみの感情ではない何かが感じ取れた。
「ヒフミちゃん、いいのよ、そんな嘘───」
『嘘じゃありません。
以前、皆さんの前でも言いました、私には好きな物があります。
同様に好きな人達がいます。
例えナギサ様のお願いでもアズサちゃんやハナコちゃんに銃を向けろと言われても多分「嫌です」と答えると思います。
フェリ様の言いたい事はよく分かりませんが『撃ちたくない』と言う気持ちは理解出来るつもりです』
それは偽りなどではなく、
間違いなくヒフミの本心だった。
「"ヒフミ...."」
私達の間を戦車のキャラピラの駆動音を除き、静寂が包んだ。
そんな中、喋ったのはアスナだ。
「リーダー!皆!見えてきたよ!!」
彼女の指差す方には、アヤネの駆る雨雲号と囲まれている中善戦するアビドスの生徒達。
フェリが叫んだ。
「各員、戦闘用意!!!」
彼女はどんな思いで、今、銃を手にしているのか...
私には読み取れない。
きっと、それは彼女自身にしか分からないのだろう。
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