BLUE ARCHIVE ZERO~THE BELKAN SCHOOL WAR 作:神宮寺志狼
「....とある物品の奪取?」
カヨコが首を傾げる。
「そうだ。」
アルは何かを思い出したようだった。
「ヴァレー駐屯基地って!
サイファー!貴女が所属していた所じゃなかったかしら!?」
その返答にサイファーが少し引き気味になる。
「.....よく知っているな?」
「当たり前よ!当時貴女について調べたもの!」
貴女のようになろうと思って、と言う所をアルは口を抑えて飲み込んだ。
依頼内容にムツキが疑問を持つ。
「じゃあさ、管理者にお願いして入れさせてもらえば良いじゃん。
わざわざ強盗みたいにコソコソする必要あるの?」
「...それが出来たら苦労しない。」
「許可....でなかったんですか?」
ハルカが恐る恐る聞く。
サイファーは首を横に振った。
「そういう問題じゃない。
その管理しているのがカイザーグループだからな。」
その単語を聞いてアル達の顔が少しだけ歪んだ。
「....久しぶりに聞いたわね。」
「でもさ~、それがどしたの?」
ムツキは何も知らないが故に純粋に質問をした。
「ベルカ戦争中、ベルカ側にて武器や資材の供給をし、戦争を長引かせた上、核を与え、エクスキャリバーを建設し、あまつさえ私とフェリを消そうとした企業にノコノコ連絡を取れ、というなら話は別だ。」
「 .....目を付けられているのね。」
「話が早いな、陸八魔。
つまり、ベルカ戦争の真実は明るみになった今でも、カイザーから狙われている、と言うことだ。」
カヨコは納得した。
「.....ただ基地に忘れ物取りに行く訳じゃないんだよね?」
「あぁ。
この依頼内容は遺品の回収作業だ。
目標はペロロぬいぐるみ
その数、およそ200体。」
「2、200ですって!!?」
このくらいの大きさのだ、とサイファーは机にぬいぐるみを置いた。
人の頭位のインテリペロロぬいぐるみを。
「....大型車が必要になるね。」
カヨコの言葉にサイファーがリスクを伝える。
「もうひとつ、先日、基地に1度侵入した。
その時に警備ドローンに勘づかれた為に、おそらく更に警備が厳重になっている。」
カヨコは悩んだ末に聞いた。
「まず聞かせて欲しい。
傭兵なんて沢山いるし、いざとなればアビドスの6人に頼る事も出来るでしょ?
どうしてそうしないの?」
サイファーは答える。
「理由は3つ、分けられる。」
「1つ。対策委員会は巻き込めない。
2つ。ある程度の強さと少人数であること。
3つ。
カヨコは眉間に皺を寄せた。
「.......1と2は分かった。
でも3だけおかしい。
私達の評判は良くも悪くも悪名が轟いてるし、経営難で明日の食事にも事困ってる。
ネットでの評価も低いなんていうものじゃない。
そもそもゲヘナでは非公式で、私たちはお尋ね者。
それの何処が─────」
「いや、確かに経営難だろう。
しかし、活動資金の事は置いて話を進める。
まず、ネットの評価など当てにならない。
陸八魔。お前の取引先はほとんど不当な報酬詐欺を働く悪徳企業だ。
いや、生徒相手にまともに報酬を支払う大人がいないのが現状だろからな。
話を戻そう。
最終的に裏切っているのは相手方の方。
であれば、契約相手の事務所の爆破でも足りないくらいだ。
そして戦闘成果を知らないまま評価されている。
聞けば風紀委員会相手に4人でかなりの大立ち回りをし、風紀委員長抜きであれば圧倒できるそうだな。
特に陸八魔アル。
お前は狙撃担当であるにもかかわらず、空崎ヒナ相手に機転を聞かせて捕まることなく善戦し、無事切り抜けた事があったそうじゃないか。
私はアイツとは共に戦ったことがあるからな。
戦って「
そうとうの幸運持ちか、実力か。
それに、経歴からして金ではなく情で動くタイプだと判断した。
善を良しとし、悪を排除する。
勧善懲悪。
便利屋68の本当の方針はそうなのだろう?」
「....?」
ムツキは首を傾げた。
(え ....違うのだけれど。)
アルは白目を向いている。
「.....つまり、低評価こそ高評価の証。
そう言いたい訳?」
カヨコの言葉にサイファーが頷いた。
「私は便利屋68の実力を買っている。
報酬は....そうだな800万でどうだ?」
「「「は?」」」
サイファーの提示した金額に少し引く3人。
「....高すぎる。」
アルが考え込む。
「....もうひとつの物品も、遺品なのかしら。」
「あぁ、AR-57をベースに灰色に塗装されてい名称ファイティング・ファルコンという名前のアサルトライフルだ。
アヴァロンダム攻防戦後、あの戦場では盗難が多くてな。
彼女の武器も盗まれたようだ。
心配は入らない。
ブラックマーケットに運び込まれた所までは調べが取れている。」
アルはさらに考える。
彼女が便利屋68の企業方針を履き違えている事には今目を瞑るとして、メリットが多すぎる。
サイファーと共に仕事が出来、彼女の事が知れるかもしれない。
学べる事は多いだろう。
そして最大のメリット、金額であった。
「....銀行口座とか、凍結されてて払えないってオチはなしよ....?」
「それはお前だろう?陸八魔。」
(バ、バレてる....)
「ちゃ、ちゃんと払えるんでしょうね!?」
そういえばサイファーは膝上のアタッシュケースを開き机に載せる。
「ここにある。
前払いでいい。」
札束を見てアルは驚いた。
「本物....?」
「本物だ。
見て確認しろ。
後、これはあくまで前払いの報酬だ。
必要な活動資金や弾薬代は私が持つ。」
アルに続いてカヨコがサイファーに質問した。
「この大金。どこで?」
「.....戦争中やそれ以前からの報酬資金。
これでも極1部だ。
大半はアビドス高校の口座に投げ込んできたからな。
出処に関しては怪しい金では無い。
.....証明する方法は、ないがな。」
「あと、もうひとつ聞いても?」
「なんだ?」
ここでカヨコは決定的な質問をした。
「.....この持ち主。『円卓』で貴女と片羽と一緒にいた生徒?」
「....え?」
アルは思い出す。
(サイファーしか眼中になかった腰の砕けた私を、他の誰かが立ち上がらせてくれた。
──────『味方を助けながら敵を圧倒する....凄い!これがサイファーの戦い方...』─────
私と同じように、サイファーに憧憬の眼差しを向けていた少女。
顔は──思い出せない。
名前は確か───)
「あぁ。コールサインP.J。
当時、SRT特殊学園の1年生。
本名を神宮寺ペロコという。」
「─!!」
「....そっか。あの子が.....」
「.....そうなの。」
カヨコが悲しそうな表情をする。
「....アルちゃん。どうするの?」
悩んだ末、アルは答えを出す。
「........いいわ。受けましょう───」
「.....そうか。」
少しだけ、サイファーが安心した表情を浮かべる。
「───でも、手前金は受け取れないわ。」
「......情か?
ヴァレー駐屯基地の件も、ブラックマーケットの件もともすればカイザーグループを敵に回すことになる。」
アルは椅子から立ち上がった。
「.....サイファー。
この便利屋68を甘く見ない事ね!!」
「....なんだと?」
「.....確かに!
貴女からしてみれば勧善懲悪を成しているかもしれないけれど。
私達の本質は『正当な報酬さえ貰えればどのような悪どい仕事でも引き受ける冷酷無比な便利屋』
それが傭兵の本質よ?」
「.....傭兵の本質やら概念定義はさておき、
お前はとてもそうは見えないんだが....。」
サイファーが目線をそらせば、ムツキがカンペを持っていた。
『アルちゃんは本気で言ってる。とりあえずノってあげて。』
「.....だったとして、それがなんだ?」
「
逆を言えば
(確かに金欠....でも、自分を助けてくれた人の遺品探しでこんな大金受け取れないもの....っ!)
これが陸八魔アルが取れる最大限の強がりだった。
「........そうか。」
そして、陸八魔アルには他に言いたいことがあった。
「代わりに!
貴女、
「は....?」
interval 68 AER YOU IN?
「ねぇ、アルちゃん。」
あの日の帰り際、小鳥遊ホシノに呼び止められた。
「何かしら?」
「一つだけ、忘れないで欲しいんだ。
『円卓の鬼神』。
そう呼ばれた生徒は
その言葉を聞いて歩みを止める。
「え?だって、サイファーは生きているのよね?」
「うん、生きてる。
でも、それはもう、アルちゃんが憧れる、『鬼』って呼ばれる傭兵なんかじゃない。
1人の生徒だよ。」
「そ、そんなの───」
「彼女本人が先生に告げたんだよ。」
──私の目指した、憧れる冷酷な傭兵はただの噂で。
──本人も、それを否定した。
私は動揺を隠せなかった。
でも、知っている。
私自身が華麗でハードボイルドなアウトローに未だ成れていないように、
───人というのはすぐには変われない────
──────────────────────────────
そうしてサイファーとアル、2人の問答が始まった。
「勧誘よ?
貴女どこの学校の所属でもないんでしょう?」
「....一応、学籍は持っているが....」
「なら相当信用出来ない生徒や弱い子ばかりなんでしょうね。
その学校は。」
「それは違───」
サイファーの言葉をアルが上書きするようにかき消した。
「だって、頼りないからわざわざ私達に依頼をしに来たのよね?
そうじゃなければ私達のところになんて来ないもの。
協働の依頼をしに、なんて。」
「私はただ巻き込みたく───」
「それは信用していない、と何が違うのかしら?
聞けば、B7R以前はアビドス高校の生徒と編隊を組んでいたそうじゃない。
もし、貴女が今アビドス生徒だったのなら、彼女達はその亡くなったP.Jとは関係大ありね。」
「ッ!お前、全部知っていて───」
そう、アルは全部聞いている。
サイファーが今何処の学生なのか。
誰が戦友なのか。
そしてどうして出ていったのか。
「そして、ここに『片羽』がいない。
私が知っている限り、『片羽』は貴女の最高の相棒だったはずよね?
そして、円卓でも貴女と亡くなった生徒とも組んでいた。」
「....お前、何が言いたい?」
アルの挑発するような言葉にサイファーの眉間に皺が寄る。
「貴女は傭兵よ、その中でも伝説的な英雄『円卓の鬼神』。
戦争が終わろうが続こうがそう生きるしかない、そういう事よ。
だから勧誘しているの。」
「傭兵だったのは昔の───」
「いいえ?
ホシノ達や『片羽』に相談したり、損得勘定や報酬で物事を考えて、果ては単独行動しか出来ない。
頼れる友人も慕ってくれる後輩もいない貴女が今ここに居ることが全てを物語っているわ。」
「...........」
サイファーは何も言い返せなかった。
「一時的な契約でも永続でもいいけれど。
1日あげる。考えてみて頂戴。
貴女の返答次第では、あの子達への連絡はやめてあげる。
そうね、答えが出せなければ貴女をアビドス高校に引き渡す。
どう?悪くないでしょ?」
「......確かに、私はお前を甘く見ていたようだな。
なら、この依頼を取り消し、今すぐに力づくでも。」
「カヨコ。」
呼ばれたカヨコは察して携帯を取り出した。
「あの子達の行動力、知っているのではなくて?
もし、今私達を倒してこの場から去った後でも、彼女達は貴女を見つけるでしょう。」
「なら明日───」
アルは会話において先回りした。
「それでもいいけれど、自分の痕跡を残さず、1日で彼女たちからどこまで逃げられるかしら。」
「私は逃げ───」
「逃げてるわよ。あの子達から。
何より自分の立場から。」
サイファーは事務所を去った。
「アル。あれは言い過ぎ。」
カヨコがアルに忠言する。
「.....ねぇ、カヨコ。
もし、私やハルカが黙って出ていったら、貴女は怒るかしら?それとも心配してくれる方かしら?」
その言葉にカヨコが笑い出す。
「....ちょっと想像つかないかな。」
「うん!私も!
だってアルちゃんが1人で生活しているイメージ全然つかないもん。」
ムツキも同意した。
「うっ....」
ぐうの音も出ない。
「ハルカは....多分アルの元を離れないし....。」
カヨコが横目で見ればハルカは首が折れないか心配なほどガクンガクンと縦に振っていた。
「私がお邪魔でしたら消えます.....で、でも─」
「ち、違うのよ!?ハルカ!
あくまで例えの話しよ!!」
こほん、と咳払いをして話を戻した。
「確かに八つ当たりをしたようで後味悪いわね。
あの子達が可哀想だと思ったの。
大事なものを傍に置いておかないっていうのは三流のすることよ?
本当に強いのなら自らの手で守れるでしょうし、それをサイファー自身がわかってないはずがないわ。
だというのに、理解しながらもそんな下手を打っている。
現に『円卓』ではそうだったでしょう?」
「.....ま、社長はそれでいつも財布落としたり、印鑑無くしたりしてるけど。」
「そ、それはそれ。これはこれよ。
とにかく『サイファーらしくなかった』の。」
アルがカヨコから投げられた自分の失敗談を棚に置き、「これだけは間違ってない」と一番の問題点を上げた。
「いやいや、アルちゃんサイファーの噂しか殆ど知らないじゃん。」
ムツキが続けて話す。
「それはあれじゃない?家出したから頼りにくい~、みたいな?」
「そこよ」
「「え?」」
「そもそも何でわざわざ黙って出ていったのかも、
居なくなるのに学籍を置いた理由も分からないわね。
言うなれば彼女たちに対しての裏切りよ?
ちゃんと話し合えばあの子達だって納得したでしょうに。」
「....まぁ確かにアルの言う通りだけど。」
アルが熱く語る中カヨコとムツキがひそひそなと話し出す。
(ねぇカヨコちゃん。
アルちゃん、が言ってるの、自分の憧れの否定だよね?
気づいてないのかな?)
(....そうだね。
目標とあの子自身の性格が一致してないのはいつもの事だけど。
アルもああ見えてショックなのかも。)
ハルカが割って入った。
(それは、アル様の思っていた『円卓の鬼神』と...本人が全く違う...という事にでしょうか?)
(多分。)
「そこ、聞こえてるわよ。」
「....あの、アル様。」
「え?なにかしら?」
「結局アル様はこの仕事、受けるんでしょうか?」
「 ......あ」
(まずい....懐に余裕が無いのにまた依頼を蹴ってしまったわ!!
どうしよう!!)
「......サイファー次第よ。
あれで取り下げるもよし、受けるもよし。」
「......生殺与奪、握られてない?私達」
「....今日もおにぎり4等分するしかないね!」
笑ってムツキはそう言った。
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