BLUE ARCHIVE ZERO~THE BELKAN SCHOOL WAR 作:神宮寺志狼
「"え!!?サイファーがどこかに?"」
「はい....やらなければいけない事があるとトリニティを出ていったきりカウンセリングの時間を毎日のように──。」
サクラコからの報告を受け、ハスミにサイファーの予定を確認したあと私たちは周囲を探した。
しかし街区にサイファーの姿は無い。
「"一応戻っては来ているんだよね。"」
「はい、そのようです。
寮の門限にはギリギリ間に合っているようでして。」
ハスミも合流し捜索範囲を広げたが見当たらない。
「サイファーさん....どこに行ってしまったのでしょう。」
「"仕方ない、戻ってきてから本人に聞こう。"」
1度解散し、補習授業部の部室を覗く。
そこには誰もいなかった。
「"またPC教室かな?"」
そうして別の教室を覗くとフェリがコントローラーを持ってゲームをしていた。
私は彼女の邪魔にならないように部屋に入った。
「そこっ....!!」
〈カチッ!カチッ!カチッ!!〉
〈ダダダダッ!ダダダダッ!!ダダダッ!!〉
見ればフェリは自分で『片羽』を操作しながら『鬼神』と対峙していた。
被弾はゼロだが、同時に相手のHPもあまり削れていなかった。
というより削れ方が異様なまでに遅い。
硬いのだ。
フェリは『鬼神』のHPを半分まで削ったところで時間制限となりステージをクリアした。
「....これはおめでとう、でいいのだろうか。」
「こんな悲しいことって....」
「話を聞くだけでは、この悲惨さは分かりませんね......」
アズサ、コハル、ハナコが難しい顔をしていた。
「"皆、お疲れ様。"」
「あら、先生来ていたの。」
「こ、こんにちは先生。」
何処かヒフミもぎこちない。
「こらこら、皆。もうベルカ戦争は終わった事よ?」
どうやら今のステージは工場都市無差別爆撃の任務だったようだ。
後から聞いた話、このステージは使用キャラに『鬼神』『片羽』のどちらかを選択できるようで、彼女達は『鬼神』でクリアした後『片羽』で挑んだようだ。
ゲームのセーブをヒフミに促されフェリがセーブした。
「ほら、コハル。泣かないの。」
「な、泣いてなんてないもんっ...グズッ...」
「良くこのゲームをプレイ出来ますね、フェリさん...」
「それは、まぁ若き日の過ちみたいなものだからしょっぱくはあるけど....」
「あはは....何だかホシノさんみたいなこと言いますね。」
ヒフミの意見に私も同意した。
私達はPC教室を後にしてティーパーティーの部室で話し合いをしていた。
ナギサ、ツルギ、サクラコ達を踏まえたサイファーについての話し合いだ。
「え?あの子毎日何処かに出かけてるの?」
「"そうみたいなんだ。フェリ達は行き先知らない....?"」
補習授業部のメンバーも首を横に振った。
「サイファーさんも欲しいモモフレンズのグッズが見つかったんでしょうか?」
「いえ、いくら何でもヒフミみたいにはならないでしょ!」
「え!?コハルちゃん酷くないですか!?」
まぁ、ヒフミはモモフレンズ、特に『ペロロ様』の事になると止まらない。
テストの日に学校を抜け出してライブに行くほどだ。
「.....あえて自由にさせてあげるのはどうでしょう?」
それはハナコからの提案だった。
「誰にも声をかけていないのは頼れる人物がいない、頼る必要が無いもしくは誰かに言えないような事をしている、の3択でしょう。
彼女は、自分が標的になっていたのにトリニティの被害を抑えようと郊外まで1人で灰色の少女達を引き剥がしました。
その彼女が今トリニティに何かをするとは考えにくいです。」
「"となると"」
「はい、単純に、『このトリニティ』においてサイファーさんの信頼に値する人物がいない。
またはサイファーさん自身の問題なのでは無いかと。」
「ですが、心配です。
彼女は1度襲われています。
彼女の身に何かあればティーパーティー、しいては正義実現委員会の名前にも傷をつけることになってしまいます。」
「お言葉ですが.....アイツがそんなヤワな奴だとは思えません....」
ナギサの意見を否定したのはツルギだった。
「しかし...巡回や会議の時間に遅れてくるなどの行動は目立っています。
一度...言って聞かせた方が、いいかと。」
少し考えたあと、ナギサはサクラコに話題を振った。
「...サクラコさんは何かご存知ありませんか?」
ナギサの問にサクラコも首を横に振る。
「いいえ、むしろ分からない事ばかりなので先生に相談したのですが....まさかカウンセリングだけでなく委員会の仕事まで....」
「....君は本当に、今回こそ何も知らないようだね。」
セイアが念を入れて聞いた。
「はい....」
「では、一応の事理由を伺って現状注意、という事で。」
しかし、それでサイファーの奇行が止むことはなかった。
「お姉様は止めて下さらないのですか?」
ある日、学校の廊下でハスミとフェリが話しをしていた。
「私から言って聞いてくれるならいいけど、あの子あぁ見えて頑固だから。
ハスミの言いたい事はわかるわ。
正義実現委員会の生徒が規律を乱していては元も子も無いものね。
「では──」
「でもごめんなさい。
もう少し待って欲しいの。
その代わり、彼女には見張りをつけるから。」
そこでフェリと私の目が合う。
「そう、とっておきの。」
「!まさか。」
「お願い出来るわよね?『先生』?」
私は即答した。
「"うん。わかった。"」
そんな訳で、常時不機嫌なサイファーが誕生した。
「........」
「"......"」
見回り、ご飯、勉強。
あの大聖堂で拒絶こそされたが、彼女は怒っている訳ではなさそうだった。
やはり他の子同様に「大人」が信用出来ないようだ。
街区の巡回中、サイファーの横を歩く
「.......『先生』。これをいつまで続ける気だ?」
沈黙に耐えかねたのかサイファーが話しかけてくる。
「"君が何しているのか分かるまで。かな?"」
サイファーは溜息をついた。
「『
「"....フェリに頼まれたから。"」
「....アイツが?」
今度は私が疑問を投げかけた。
「"どうして直接伝えてあげなかったの?"」
そう聞くとサイファーは閉口した。
「"フェリもホシノ達も、君の事が気になっているよ。"」
「...そうか。」
話が長く続かない。
「"私は別に英雄譚とか過去の君がどうしていたとかは、はっきり言うともういいんだ。"」
「....で?」
「"それでも、何か一人で抱えてるんじゃないかって、心配になる。"」
数日見て回ったがサイファーはいつも1人だ。
ヒフミ達は「話していて楽しい。」とは言ったが、私が付いている時には一度も、誰とも会話をしなかった。
むしろその雰囲気から、1,2年生からは怖がられている。
「"フェリとはあれからどうなの?"」
遅れて反応がやってくる。
「....どうとは?」
「"ヒフミとアズサとは買い物に行ったんでしょ?"」
サイファーの返答は遅い。
まるで言い訳を考えているかのように。
「別に、アイツとはあの戦争で偶然エレメントになった。
ただそれだけの関係だ。」
「"それはいくらなんでも嘘だよ。"」
「は?」
その凄みに少し引いたが、私は言いきった。
「"それは嘘だよ。
どうでもいいなら、君は躊躇いなくアヴァロンダムで彼女を撃てた筈だ。"」
「....そうだ。
だから現に私はあいつを撃った。」
「"でも、躊躇ったよね?
君は撃ちたくなかったんだ。
それに記憶の中の君はディレクタスでも彼女と笑いあってた。
炎の中で君は望んでいた。
いつかアビドスの皆と、フェリと一緒に───"」
「.......人の記憶を覗き見て、何もかも知った気になるな。」
この言い方は不快だったのだろう。
「"それでも、かつて君が望んでいたのは、友達と楽しく過ごすこと。だったんじゃないの?"」
「.........」
私は待った。
サイファーが口を開くまで。
それは10秒だったのか、1分だったのか。
「....あぁ、そうだ。」
返って来たのは肯定の言葉。
これまで私に対して言い訳や嘘で固めてきたサイファーの本当の言葉。
「"なら───"」
「だからこそ、やらなきゃ行けない事がある。
それに───
.....話し疲れた。」
サイファーは言葉を途中で止めた。
そして、巡回が終わりサイファーは寮に戻ろうとする。
いくらなんでもそこまではついていけない。
「"じゃあまたね、サイファー。"」
「....鬱陶しい。」
「"という感じだった。"」
私はティーパーティーの部室に皆を呼んでもらい報告した。
「なるほどねぇ、あの子がそんな事まで。
是が非でも私と直接、話したくないと。」
フェリは椅子に座りながら机を人差し指で叩いて鳴らしていた。
ミカが耳打ちしてくる。
「(あれね、お姉様が怒ってる時の特徴。あんまり機嫌損ねない方がいいよ☆)」
「メッセージを聞けばわかるんでしょうか?」
ヒフミが呟いた。
その隣ではハナコが顎に指を当てて考え事をしていた。
「....『やらなきゃ行けないこと』とは何でしょう?」
「....彼女にとって大事な事....。」
見ながらお互いを見ながら肩をすくめる。
「『境目の無い世界』....」
ハナコが呟いたその単語に、皆の顔が青ざめた。
「いやいや、流石にそれは有り得ないでしょ!!」
「そうですよ、ハナコちゃん。
ハナコちゃんも言ってたじゃないですか。
サイファーさんがトリニティに害を及ぼすとは思えないって!
今学籍が無くなったベルカ生徒の為の学校の建設も進められてますし!
もうそんな事をする必要──」
コハルとヒフミが大声でハナコの考えを否定した
ハナコは苦笑いを浮かべて答えた。
「いえ、あくまで憶測ですから
ですが、思ったんです。
『平和』を得た今の彼女に残されているものを考えた時に『友人達』より優先する事と言えば、強迫観念に駆られた『何か』では無いかと。
何よりベルカ戦争の英雄になってしまった事を彼女は後悔しているそうですし。
戦い、に身を置いてきた彼女がポンと渡された平和をすんなり受け入れられるとも思えないんです。」
ハナコがアズサを見る。
「失礼ですが、アズサちゃん。
アリウスからトリニティに来て随分と戸惑ったのではないですか?」
「... あぁ。その通りだ。」
「....サイファーさんはアリウス出身だと聞いています。
経緯と過ごした時間はどうあれ、アズサちゃんと立ち位置は似ていますね。」
ナギサの表情が険しくなる。
「もう少し、様子を見たいです。
先生──」
「"うん、わかった。"」
しかし次の日からサイファーは姿を消した。
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