BLUE ARCHIVE ZERO~THE BELKAN SCHOOL WAR 作:神宮寺志狼
PCのある教室に行くと補習授業部が画面を見て一喜一憂していた。
〈カチカチッ!カチッ!〉
画面を見ればヒフミが『片羽』と戦っている最中だ。
「そこです!!」
ヒフミはコントローラーを巧みに操作して、『片羽』の持っているレーザーライフルを破壊した。
しかし、被弾がない訳では無い。
フェリが呟く。
「被弾タイミングが完全に当時のまま.....。
これ、もしかしてサイファーが....」
当時を知っているのはサイファーとフェリだけだ。
あれ以降、フェリはゲーム開発部とあまり関わっていないという。
なのであれば、サイファーが当時を再現するべくモモイ達に話をした可能性が高い。
続いてコンテナから発射されるミサイル。
ヒフミは躱そうとするがやはりダメージを負ってしまった。
「これ、やっぱり確定ダメージなのね。」
「あはは.....そうみたいですね。」
フェリの方へは顔を向けず集中してプレイするヒフミ。
ダメージは負いつつも確実にミサイルコンテナを破壊していく。
『時間ね。』
そして発射されるV2の描写。
『惜しかったわね、相棒。
学校によって作られた『境目』なんて歪んだ物は一度リセットすべきなのよ。
このV2で全てを「ZERO」に戻し、次の世代に未来を託しましょう?』
『こちらイーグルアイ、聞け!GALM1。
敵個体の識別が完了した。
コードネームは.....『片羽』!!
お前の相棒だった者だ。
奴の装備は全身を装甲で守っている。
唯一の弱点はV2への信号を送るための装置が集約した胸部の装置だ。
正面角度から胸部を銃撃し『片羽』を倒せ!
今そこで彼女を止められるのはお前だけだ!
『円卓の鬼神』幸運を祈る!───』
ムービーが終わり、ヒフミがフェリを見る。
後ろでは涙で顔をぐしょぐしょに濡らしたコハルと目を伏せてコハルを慰めるハナコ。
そして、画面をじっと見つめるアズサ。
「フェリ様───」
「いいのよ、ヒフミちゃん。
撃ちなさい。」
フェリの言葉にヒフミは頷くとコントローラーのトリガーを押した。
〈カチッ!〉
ヒフミは『片羽』の胸部を撃ち抜いた。
そして『片羽』が倒れ、V2が上空で爆発する。
雨の中立ち竦むサイファーの描写がゆっくりと暗転した。
そして、そのままリザルト画面を通り過ぎ、スタッフロールが流れる。
筈だった。
「これは....」
「[貴女の所属を入力してください]と出てますね?」
ヒフミが画面上の文章を読み上げる。
その文章を見たフェリは携帯で電話をしはじめる。
「....あ、もしもし、ナギサ?
そう、今ようやく終わって。
多分、これが答えなんだと思うの。
貴女達も来てくれない?
ツルギとハスミ、後サクラコも連れてきて。
ごめんなさいね、ではよろしく。」
フェリが電話をかけていたのはナギサだったようだ。
「いま、みんなを呼んだわ。」
「ではやはりこの先にサイファーさんの。」
「ええ、おそらくきっと。」
数分後ナギサ、ツルギ、サクラコが集まった。
「お姉様、それでは....この画面が。」
「ええ、おそらく当時関係者しか開けないようにしている筈よ。」
「.....一般人がプレイすればここは確実に『GALM1』と入力する所でしょう。
フェリさん、どうしますか?」
ハナコがフェリに問う。
「.....GALM、も一般人選びそうよねぇ.......、ここはやっぱり。」
フェリは「GALM2」と入力した。
「コールサインでも通じるかしら?」
そのまま、彼女は決定キーを押した。
画面が暗転し黒い画面に日付が羅列される。
「この日付....」
「サイファーさんの処遇が決まった日じゃありませんか?」
「....?そうなのか?」
映像が切り替わり、そこには廃屋の椅子に座り込むサイファーが映し出された。
その姿はゲーム開始前ベルカ戦争について語るホシノと構図が被った。
『私は戦った。
力を示す為、誇りを守る為、戦いに勝つため。
でも、ホシノ達と別れ、P.Jが倒れ、『お前』と向かい合ったあの時には、私を支えるものは崩れ去っていった。』
サイファーの独り語りに皆は座り黙って聞いている。
『私は心が折れた。
自らに銃口を向ける気力すら湧かなかった。
放心したまま歩き疲れて、心が壊れた私を保護したのは、『お前』の母校にいる純粋無垢なシスターだった。』
皆がサクラコを見る。
彼女は「え!?どうして今私の名前が」と困惑していた。
『私はトリニティを見た。
アリウスとも、ベルカとも違う街並み。
そこで幸せそうに生きる市民を、生徒を見た。
私は彼女たちとベルカやアリウス分校で生きる者達で、
なんの違いがあるのだろう、と思った。
生きる場所が違うだけで、それだけで、平和が奪われてしまった彼女達が。』
「.....やはり、そう感じていらしたのですね。」
「サクラコさん....?」
サクラコの独り言にナギサが反応する。
「前にも言いましたが、トリニティ総合病院に入院していた頃は、彼女は毎日のように窓からトリニティの街並みを眺めてらっしゃいました。
やはり感じていたのは────」
『そうして.....あの日トリニティが襲撃されて、街が、建物が焼かれ、人々は混乱し逃げ惑う姿を見てベルカと何も変わらないと。
納得してしまった。
結局このキヴォトスでは、どこに居ても
瓦礫に埋もれた街。
それが何だか悲しくて仕方がなかった。』
アズサは顔を伏せた。
直接とは言えずとも、アリウススクワッドがサイファーに新たな絶望を植え付けていたのだと、感じたのだろう。
「アズサちゃん....」
ヒフミがアズサを抱き寄せた時だった。
『でも────その場に、平和を。
ハッピーエンドなんて馬鹿げたものを強く望む者がいた。』
ヒフミとサクラコがお互いの顔を見合わせる。
アズサも顔を上げた。
『私はその少女達に勇気づけられたんだ。』
「これって、あの時の。」
「ヒフミさんの宣言、ですか....」
『この
学園も学校も統一し、1つの学校として。
確かにそうすれば自治区の利権争いも、無くなるかも知れない。
────でも、無くすだけで全てが変わるのか?
世界を変えるのは、お互いに支え合い、信じ合う力なんだろうな。
アビドス生徒と
でも、それが出来ないのも
その言葉を聞いて、ナギサとハナコは納得した表情をした。
誰かを信じる事が、どれほど難しく、大切なのかを、2人は理解している。
『私は今戦場に立っている。』
「"「え!?」"」
この一言で全員が困惑した。
『アビドスとゲヘナとトリニティの狭間だ。
──確かめたいんだ、『学校』が存在する意味を。
そして、そこで生きる市民や生徒達の意志を。
こんな場所に答えなんてないのかもしれない。
でも、探したいんだ。
そう、そう思う。
今はそれでいいと思う。
許せ、
こんなつまらない事に、お前を巻き込みたくなかった。
私はもう普通の学生生活なんて、おくれないだろう。』
誰に、向けた言葉なのか。
それは明白だった。
「...は?」
フェリの眉間に皺がよる。
『フェリ、お前には失った分の、普通の学生生活を送って欲しい。
私のような恨み辛みの起爆剤なんかとは関わらず、
お前が大事にしていた友人や、愛する後輩と楽しい学生生活を過ごせ。』
そして、映像の中の彼女は微笑んで言った。
『なぁ、ゲーム開発部。
この映像、アイツはちゃんと見ると思うか?
そうか.....なら残さなくちゃな ....。
........
そして、画面は暗転し、エンディング曲と共にスタッフロールが流れる。
「ええと....つまりどういう事ですか?」
混乱したヒフミが誰でもなく疑問を浮かべた。
「 .....あの子は戦争の火種になりそうな物を、独りで排除している真っ最中、って事なんじゃない?」
机を全ての指を使って〈トントントントントン〉と音を鳴らしているフェリ。
「お姉様.....」
「勝手に人の幸せ決めつけて、勝手にいなくなって。
その癖自分は戦争の爪痕を1人で消そうとか、何様よ!!」
誰から見ても、フェリがぶちぎれているのが分かった。
「それで?
どうするのナギサ?」
「え!?私ですか?」
ナギサにニコニコ詰め寄るフェリ。
見てられないと、ハナコが助け舟を出した。
「....もし、他学園と、トリニティの生徒が
皆がツルギの方を向く。
「.....ウチの馬鹿がやらかした事は、私達で片付けるべきかと。」
「 ....先生..」
ナギサが私を見つめてくる。
「"どうするのかも、ナギサが選択するべきだよ。
でも、何か意見が欲しいというなら。
これはナギサが向き合うべき真実なんじゃないかな?"」
私の言葉を聞いたナギサ。
少しの間だけ目を閉じて、結論を出した。
「....サイファーさんを、探しに行きましょう。」
「「はい!」」
その言葉に皆が頷いた。
「彼女がいなくなってからまだ1日しか経っていないわ!!
どうせゲーム音痴な私を馬鹿にしてクリアに時間が掛かるとでも思ったんでしょうけど!!
そんな勘違いが貴女の間違いよ!」
こうして、トリニティを総動員したサイファーの捜索が始まった。
『先生!!新しい生徒さんが来ました!!』
「"翼"無しの帰還は、もうお断りよ。」
「ご機嫌よう、相棒。
まだ生きてる?
なんてね。
トリニティ総合学園、3年生の片羽フェリよ。
宜しくね、先生。」
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