ソノ日ノ空ハ銀色デシタ   作:Aa_おにぎり

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気づいたらクリフジの事ばかり調べてんぞ…
カイソウの資料が全然無い…(T ^ T)


#13

十一月中頃

 

あの阪神競場での最後の阪神優駿を見てから一ヶ月がたった頃。時期で言うと、第三次ソロモン海戦が勃発した頃。

 

「はっはっはっ!!」

 

カイソウは場を走って調教をこなしていると、声をかけてくる人が一人。

 

「カイソウ」

「あっ、クリフジ先輩」

 

手拭いを片手に涼しげな顔をしている彼女は一本走った後の彼女に持っていた手拭いを手渡した。

 

「無理は禁物です」

「はい、よく分かっています」

 

クリフジもだが、と言い掛けたところでカイソウは止めた。

阪神優駿以降、調教にさらに熱が入っている様子のクリフジはいつもより多めに調教をしており。来年の新戦に備えていた。

 

「先輩も、この時期に怪我なんてすれば大事ですよ」

「無論、節度は弁えています」

 

元々大きい体の彼女はカイソウから見ても大きいものであり、特に背の小さい彼女の調教師と比べると本当に可哀想なくらい大きかった。

 

「この後、一本どうですか?」

「はい、是非!」

 

カイソウはクリフジの並走の提案に乗ると、柵に手拭いを掛けて早朝から走り出していた。

 

 

 

「おっ、やってるやってる」

 

そしてそんな光景を見ながら窪田は履いている靴の爪先を軽く叩くと、そこに声をかけるハリのある声が一人。

 

「おはようございます。窪田調教師」

「よう、前山君」

 

齢十九歳の彼は年齢通りの若々しい張りのある声で挨拶をすると、窪田は軽く笑う。

 

「しかし元気だ、若いってのは素晴らしいな」

「窪田調教師もまだまだ二十代じゃないですか」

「この時期の年ってのは取りやすいの」

 

そんな軽口を言いながら二人は場を走るクリフジとカイソウを見る。

 

「……良い景色だ」

「同感です」

 

並走をしている二人の気の入れ込みは二人も把握しており、熱が入りすぎない程度で微笑ましげに見ていた。

 

 

 

朝の調教を終えたカイソウはその後、窪田からこんな事を言われた。

 

「最近熱が入っているだろう?少し安め」

 

阪神優駿を見届けたカイソウはあの後からより一層、競走に対する関心は高まっており。目標の東京優駿や京都農林省賞典を望む様になっていた。

元々暫く新戦が先となるカイソウはそんな窪田の意見に反抗しようとは思っておらず。急遽与えられた休息の日にそのまま生徒会に向かったのだが、

 

「今日は特段カイソウにしてもらう仕事はない。ゆっくりと休んでくれ」

 

と言われてしまい、彼女は今日一日は手持ち無沙汰な日となっていた。

街に出ようにも今の時期、京都は至る所に雪が降り始めており。山の方では既に雪かきが始まっているくらいで、とても外に行こうとは思わなかった。

 

「暇だな〜……」

 

そして学校の校庭でベンチに座って天を仰ぐカイソウはふと思った。

 

「そうだ、お母さん達に手紙書こ」

 

この前、阪神競場でミネタカに会った時の事や彼女の学校生活の事を書こうと思って部屋に戻る。

 

「ふぅ…」

 

寮の部屋で軽く休憩をするカイソウはそこで切手と封筒、紙を取り出すと鉛筆で書き始める。

 

『お父さん、お母さん。そろそろ其方では雪かきも忙しい頃でしょう』

 

そしてスラスラと書き始めた手紙はカイソウの思いをそのまま載せていた。

 

『京都に来てからと言うもの、私も北海道では見られなかったような景色でいっぱいでした』

 

そして綴っていくのはこれまでの半年ほどで経験した出来事を書いていく。ここで出会ったヤマイワイの事やセントライトに勧誘されて生徒会に加入することになった事、先月見た阪神優駿の景色など。

北海道の田舎の農村育ちの彼女からすれば全てが新鮮だったその景色を事細かく書いていた。

 

母もかつては八大競走で活躍した名であったが、現役引退後は北海道の地で静かに暮らしていた。

東京や京都に行けば自分がどれだけ知らない事が多かったかがよく分かると言っていた母の言葉は本当だった。

 

『阪神優駿を見た時は、姉さんにも会いました』

 

そして阪神競学校で探して久しぶりに再会したミネタカの近況も書いていた。

 

『姉さんはこっちでも友人ができている様で、学校でも上手くやっていけていそうでした。

ただ、あまり私とは話したがらなかった様子で。すぐにどこかに行ってしまいました』

 

そこでカイソウは阪神競場で姉のミネタカを探した時の事を思い出していた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

阪神優駿が行われる前日、セントライト達と共に生徒会として前日入りしたカイソウはそこで現地の生徒に声をかけていた。

 

「あの…」

「ん?どうしかした?」

 

見慣れない生徒から話しかけられ、軽く首を傾げる阪神競学校の生徒。

 

「ミネタカって言う娘を知りませんか?」

「ミネタカ?」

 

その名前を聞いて少し考え得る仕草をとった後にその生徒は思い出した様子で軽く手を叩く。

 

「ああ、あの子ね。知り合いか何か?」

「あっ、私の姉でして……」

「なるほどね」

 

名前を聞いて来た理由に納得した様子のその生徒はカイソウに行った。

 

「確か六組だから、この校舎の二階にいるはずよ」

「ありがとうございます」

 

そこて頭を下げると、カイソウは校舎の中に恐る恐る入って行った。

基本的に京都競学校とそれほど変わらない校舎なので構造的な問題の不安はないが、見知らぬ生徒ばかりなので少々見付けられるか不安だったが。『六組』と書かれた教室の前にたどり着いた。そして教室の扉を開けると、姉の姿はなく。代わりに数人の娘が机に座っており、少々はしたない空気感があった。

 

「ん?誰あんた」

 

すると一人の芦毛の娘が気づいた様子でカイソウを見て聞いてくると、彼女はそこで気を締めて聞いた。

 

「あの、ミネタカと言う人を探しているんです」

 

そう言うと、その生徒は答えた。

 

「あいつならここには居ないよ。多分図書室に居るさ」

「わかりました。失礼しまーす……」

 

これ以上、居てはいけない雰囲気があったのでそそくさと退散をして次に図書室に向かった。

 

 

 

そして図書室に入ったカイソウは部屋を見回して姉の後ろ姿を探すと、部屋の端で本を開いて読んでいた見覚えのある姿が目に入った。

 

「姉さん」

「っ!?」

 

そして静かに近づいて後ろから声をかけると、非常に驚いた様子で後ろを見たその娘はカイソウを見て固まっていた。

 

「なっ…!?」

「久しぶり。姉さん」

 

目を見開いて驚く栗毛の娘はカイソウの姿を見て固まってしまっていた。

驚くミネタカにカイソウは少し声を抑えて彼女の手を取った。

 

「ここじゃ話せないから、ちょっと外に行こう?」

「え?あ、ちょっと……」

 

カイソウのノリに巻き込まれたミネタカはそのままされるがままに図書室を後にしており、図書委員の娘が手を引っ張られるミネタカを見て軽く驚いた様子を見せていた。

 

 

 

そして図書室から引っ張り出され、校庭の隅のベンチに座るとカイソウは姉との再会に嬉しげにする。

 

「久しぶり。姉さん」

「……」

 

陽気に話しかけるカイソウとは反対にミネタカはなんとも言えない表情を浮かべており、雰囲気はやや暗かった。

 

「どうした?」

「…何でも無い」

 

ミネタカは少し鬱陶しげな目線を向けながら返すと、カイソウはそんな姉を見て安堵と軽い世間話から入った。

 

「私ね、今年京都に入ったのは知っているでしょ?」

「えぇ、手紙で読んだわ」

 

ミネタカはグイグイと来る変わらないカイソウに軽くため息を漏らしながらカイソウに合わせた。

 

「それでね、あの後友人もできて。…お母さんの言っていた通りだね」

「ええ、そうね」

 

どこか適当に返している様子のミネタカにカイソウはそこで明日見る予定の阪神優駿の話を持ちかけた。

 

「それでさ、明日の阪神優駿を見るから。一緒に見ない?」

「いい」

 

しかしミネタカの返答はカイソウの思っていた答えと違っていた。

 

「え?」

「私はもう…嫌って言うほど見てきたから」

 

何処か忌々しげな様子を隠しているようでミネタカはそのままベンチから立ち上がる。

 

「…ごめん、今日は用事があるから」

「あっ、待って姉さん」

 

去り際、カイソウは一番伝えたかった事をミネタカに言った。

 

「お母さん達、姉さんの手紙がなくて心配していたよ」

「……」

 

用事はそれだけか、とでも言いたげな様子のまま。ミネタカは校庭を後にしていた。

そして取り残されるように校庭で突っ立っていたカイソウは肩を掴まれた。

 

「カイソウ?」

「うおっ!?」

 

振り返ると、そこではセントライトが彼女を見て軽く話しかけてきた。

 

「こんな所に居たのか」

「あぁ、すみません。何か用事でもありましたか?」

「ん?ああ良いよ良いよ、この後の用事は特になかったからな」

 

そこで軽く笑ってカイソウの背中を叩くセントライトは、そのまま彼女の背に腕を回す。

 

「この後、ここの生徒会と懇親会をやるんだ。参加するかい?」

「あぁ…はい。行きます」

 

少し姉に関して色々と話したい事もあったが、何処か自分を避けているような雰囲気のミネタカを見て次会った時に話そうと思うとそのまま校庭を後にしていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

『姉さんとは、阪神優駿の時にはそれほど話せなかったけど。今度阪神競学校と、京都が合併するので。その時になったら、また姉さんにお母さん達の話をしたいと思っています』

 

手紙をそう締めくくると、カイソウの部屋の扉が数回叩かれた。

 

『カイソウさん、居ますか?』

「はーい?」

 

何だろうと首を傾げながら襖を開けると、そこでは寮母さんが立っており、そこで寮母さんがカイソウを見た。

 

「実家から荷物が届いているよ。取りに来て頂戴な」

「あっ、はい。分かりました」

 

寮母さんは年の行ったお婆ちゃんであり、ここは二階なので荷物を持って階段を登るのは酷だ。

時々、娘の実家から荷物が届くことがあり。中身は日用品などであり、物が足りない中でこう言う荷物は私たちにとってはとてもありがたい物だった。

 

「これが荷物ね」

「はーい」

 

宛先に自分の名前が書かれた木箱をカイソウは抱えると、そのまま部屋に運んだ。

 

「よっ、と」

 

結構重ための荷物であり、宛先には日用品と書かれた木箱を開けると。そこには手紙と一緒に米や麦の入れた袋が入っており、今年とれた農作物を分けてくれていたのだ。

 

「母さん達も元気にやっているかなぁ」

 

後でセントライト達にお裾分けでもしようかなどと考えながらカイソウは手紙を読み始めていた。




次回から一気に時系列がトントンと飛んでいきます。

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IFストーリーは入りますか?(主にカイソウが三冠目指した世界線とか)

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