いずれカイソウも実装されるのだろうか…?
十二月八日
バサブア島守備隊が玉砕す。
十二月三一日
大本営がガダルカナル島撤退を決定。
一月二日
ニューギニアのブナにて日本軍守備隊全滅。
二月二日
スターリングラード攻防戦に於いてドイツ第六軍が降伏。
これによりドイツ国防軍は東部戦線に於ける戦略的主導権を失う。
二月七日
帝国陸軍第十七軍はガダルカナル島より撤退を完了。
ガ島における損害は約3万2000名が上陸し1万名が撤退に成功、戦死1万4000名、行方不明2500名であった。
二月九日
大本営はガダルカナル島からの転進を発表。
ガ島撤収後より日本軍はパプアニューギニアに作戦の重点を移す。
三月二日
兵役法改正・敵性語追放
四月十八日
ブーゲンビル島上空にて連合艦隊司令長官山本五十六が戦死、俗に海軍甲事件が起こる。
五月十六日
あれから時は流れ、一冬を超えた。
戦争の影は日常生活にも大きく影響は出ているが、そんな中でもこれと言った大きな不満足な事はなくこの日も多くの観客が訪れていた。
「すげぇ人気だな…」
「そうですね」
そんな景色にカイソウや窪田はやや圧倒されていた。
視線の先で立見所の多くを埋める観客。その手には当然馬券が握られており、日々の給料を使って今日の新馬に今晩の食卓を賭けていた。
しかしほとんどの人間は分かっているだろう、今月の初めについに木炭や薪までも配給の対象になった。
「現実逃避かな?」
「さぁ、私に聞かれても…」
すると一斉に観客が沸き立つ、理由は目の前の下見所に現れたとある馬娘にあった。
「さて、今日は盛り上がるだろうな」
そしてその頃ラジオでは放送が入る。
『四番、一番人気のクリフジです!』
そう、今日はクリフジの新馬戦である。皇族の関係者であるクリフジの実力は既に市井にも噂で広がっており、事前の配当でも圧倒的な一番人気であった。
脚部不安により、横浜農林省賞典と中山特別を見送ったのが非常に悔やまれると新聞でも書かれていた。
まだまだ新人の前山調教師にも関わらずこの人気、それもそのはずだ。
「なんて整った脚だ…」
「…」
今年に入って東京の方に戻ってしまったクリフジの成長具合に二人は唖然となっていた。
たった五ヶ月、馬娘はここまで変わってしまうのだ。
京都から東京まで、クリフジの新馬戦を見に行きたいと窪田に懇願したところ、彼は快く承諾してくれた。
おかげで前日最後の急行列車に乗って遥々東京競馬場にこうやって観客として訪れた。
「帰ったら米を送りますね」
「はっ、そんな物いらねぇよ」
そう言い窪田はカイソウの頭を二回軽く叩く。
「良いもんは、お前さんのために使え」
「…」
「その方が、お前さんの親御さんも喜ぶ」
窪田のずっと言っていた口癖である。
北海道の実家から送られてくる食べ物は質の高い食料ばかりであり、カイソウは送られてくる乾燥した野菜や穀物を知り合いに配ったりしていたが、京都競馬学校に本格的に阪神競馬学校の馬娘が来るに当たってセントライトから止めるように言われていたのだ。
「分かりました…」
理由はすぐに分かった。
戦時下による物資統制による厳しい食料管理が行われ、その所為で学校の中でも少々空気が悪くなっていた。
それは毎日出てくる食堂の食事を見ていれば一目瞭然だった。
毎日少しずつではあるが、芋や炒り炊きの量が増えており。一回昼食で楠公飯が出た時は大不評で、生徒会室に講義の突撃が行われたほどだった。
あれなら確かに普通に玄米と白米を混ぜて食ったほうが美味かった。
そして阪神競馬学校の生徒会と合流したことで自分は本格的に追い出されるようになっていた。
まぁ、元々京都の生徒会は三人しかいなかったのが一人抜けて地獄絵図になっていたので有り難かったのだが…。
「おっと、そろそろ始まるな」
視線の先では馬場に五人が一斉に立ち、前を向いて準備が整った。
待機所で一人、息を大きく吸って感情を整えていたクリフジ。
そこに静かに歩み寄って声をかけたのが一人、
「クリフジ」
彼女の調教師、前山だった。彼は初めての競走を前にやや緊張している彼女の背中を軽く叩く。
この前二十歳になって緒方調教師や兄弟子の柳沢に揶揄われながら散々飲み潰されていた。
「いつも通りやって行け」
「えぇ、もちろんです」
今の身長は146.2で成人の男であれば号泣するほどで、普段は見下ろすほど小さい身長の彼はいつもセントライトから揶揄われている存在だったがこの時だけは少し彼が大きく見えた。
「そのベコけつを他の奴らに堂々と見せつけてやれ」
「…」
それを言った前山にクリフジは彼の尻を蹴り飛ばしていた。
そして自分は今、発走の網の前で立っている。
五頭が並び、その中でも私は圧倒的な人気を抱え込んでる。
その事に何の問題は無い。
私はこの中で誰にも負けるはずがないのだから。
「(当然、見ていますよね)」
観客席の中、その姿は見えないが必ず居るだろう。
数ヶ月前まで横を走っていた北海道から出てきた田舎娘。
初めて出会ったのは彼女が京都に出た直後の事、駅前で右往左往していた田舎丸出しの彼女はどこか面白い部分があった。
そして彼女が生徒会に入る様にセントライトに提案もし、彼女はそれに答えてくれた。
京都の馬場で並走調教を行った時にも彼女は自分の
「…」
そんなクリフジを一人の馬娘、トシシロがやや睨みつける様に見ていた。
そして並んだ五人の前の網が勢い良く上がった。
「「「「「ーーーーっ!!」」」」」
観客が声を上げてその様子を見る。距離は一八〇〇米、初めての競走をクリフジは走る。
「「「っ!?」」」
クリフジの初戦、第二コーナーを曲がった先で既に後ろとの距離が取れる。圧倒的な健脚と、馬場に踏み込まれる脚の音は異次元であった。
彼女の美しさには欠けるが、速度が出るそのベコけつと言われた彼女の体は二つの重賞を見送った分、遺憾無く発揮されていた。
この時点で人々は期待の新人の走りに魅了されていた。
圧倒的な王者、セントライトが認めた実力者と噂される彼女にのし掛かる期待、羨望の眼差しは一気に爆弾のように膨れ上がる。
誰もが思う。
次の三冠は彼女に違いない。
彼女ならできる。
そんな何処の馬の骨も知らない民衆の想いは残念ながらクリフジには届かない。
ただ自分は目の前の一着に向かって飛び込むだけだ。
自分を慕ってくれた後輩の指針を導く伝道者となる。ただそれだけの為に。
そしてコーナーを曲がり、最後の直線に入る時には五馬身は離れていると実況は報じた。
その目に焼き付けろと言わんばかりに先頭を走るクリフジの走りは圧倒していた。
誰もがクリフジの勝利を確信した時、
「クリフジィィィィイイイ!!」
ゴール直前、馬場に響く一人の怒号。その場にいた馬娘の誰もが一瞬驚いた。
叫んだのはトシシロだった。
誰もがクリフジの実力に圧倒され、魅了されたその空気を打ち砕く一発の銃声の様だった。
五馬身は離れていた距離をクリフジの後ろを走っていたトシシロが走る。
「あれは…」
「おいおい…嘘だろ?」
それを見ていたカイソウと窪田はトシシロの加速に絶句する。
「脚を擦り減らす気か…?!」
「あの速度じゃあ自滅しますよ!!」
そしてみるみる見ているウチに四馬身、三馬身と接近しているトシシロ。
「ちっ…」
クリフジは接近してくるトシシロに軽く舌打ちをする。
残り三〇〇米、初戦で一着を逃すのは自分の掲げた誇りと目標を早々の諦める事になる。
「(初陣から自滅覚悟ですか…!!)」
まさかこんな奴と走るとは思っても見なかった。
追い込みをかけてくるトシシロにクリフジは若干の焦りが生まれた。
「こんな所で…」
「っーーー!!」
トシシロはクリフジのみを捉えていた。
すでに他の三人は置いていかれ、絶望した顔を見せていた。
「こんな所で…!」
普段は物静かなクリフジがこの時、歯をこれでもかと食いしばりながら追い込みをするトシシロを睨みつけた。
「貴方相手に負ける訳にはいかない…!!」
その一瞬だけ、クリフジの呟きがトシシロの耳に入り。彼女は驚きと畏怖の顔を浮かべた。
「っ…!!」
そして残り一馬身まで迫った所で先にクリフジはゴール板を踏み抜いた。
「「「「「っーーーーーー!!」」」」」
新馬戦、これは歴とした新馬戦である。
しかし目の前の観客席からはまるで優駿の様な歓声が響いていた。
一本を走り切り、大きく息を吸って呼吸を整えようとするクリフジ。
そして歓声の響く立見所を前に大きく一礼をするとそのまま馬場を去った。
「お疲れ様」
「長吉…」
走り終えた後、自分を出迎えにきた前山を見ると彼は一言。
「よく頑張ったね」
「…はい」
少し暗い表情のまま、答えた彼女はその後続けて彼に溢した。
「競走に集中できていませんでした」
「…」
そんなクリフジに前山は少し考えた後に彼女の肩を持った。
「それはカイソウの事かい?」
「はい…」
クリフジは素直に答えると、前山は軽く頷く。彼女がカイソウの事を気にかけているのはよく知っていた。なので調教に集中させようと東京に戻っていたのが、今のクリフジの要因となっていた。
真面目なのが祟ってしまったと言うべき結果だ。何とも難しい心理状態だ。
前山はさっきよりも長めに考えた後にクリフジを見上げる。
「なら次に生かすべきだ」
「…」
ゆっくりと顔をあげると、前山はクリフジの瞳をしっかりと見つめながら言った。
「次は三十日、それまでに一緒に考えよう」
「…分かりました」
クリフジはそう答えると、前山は軽く笑う。すると、
「せんぱ〜い!」
通路に大声が聞こえ、二人は通路の奥を見るとそこでカイソウが手を振っているのが見え、その後ろで呆れるように目を向ける窪田の姿があった。
そしてカイソウが駆け寄るとクリフジを見ながら言った。
「初勝利、おめでとうございます!」
「…」
カイソウの無垢な
「これ、お土産です!」
そう言ってカイソウはクリフジに一本の瓶を手渡した。
「冷やし飴…」
それは京都にいた時にクリフジが飲んでいた甘味料だ。砂糖が統制された今の時代、数少ない甘味だった。
「前山さんにはこれを…」
「おぉ、ありがとう」
そう言って彼に小袋を手渡すと前山も少し微笑んだ。
彼女の実家から届く荷物の中には今では希少な砂糖が入っており、彼女はこれから現役のクリフジに多めに分けてくれていた。
「ありがとう」
実家が大規模農家をやっているカイソウの好意に感謝しながら前山はそれをしまうと、彼女はクリフジに言う。
「次の東京優駿も頑張ってくださいね!!」
そんな彼女にクリフジは薄く微笑み、彼女の頭に手を乗せながら答えた。
「えぇ、任せなさい」
もっと資料を!もっと史料を!!
資料がやっぱり足りじないんじゃ…。
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IFストーリーは入りますか?(主にカイソウが三冠目指した世界線とか)
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