ソノ日ノ空ハ銀色デシタ   作:Aa_おにぎり

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#25

パッパラッパーパッパラ♪パッパラッパパッパパー♪

 

乱波の音と共に迫撃砲や艦砲射撃の鳴り響く中を、銃剣を持った兵士たちが塹壕から飛び出す。

 

「突撃〜っ!!」

「天皇陛下、万歳〜っ!!」

「バンザーーイッ!!」

 

日の丸を掲げ、上陸して来た海兵隊員達に突撃を敢行する。

 

「うわっ!」

「がはっ!!」

 

だが突撃をした先では、機関銃(M1919A2)半自動小銃(M1ガーランド)の射撃が飛び、兵士達は倒れて行く。

 

「くそっ!」

「近寄らせるなぁっ!!」

 

上陸した米海兵隊は爆薬や火炎放射器を使って陣地を一つずつ制圧する。

 

「撃てっ!!」

 

直後、上陸した軽戦車(M3)中戦車(M4)の砲撃が苛烈に日本軍陣地に飛び込んでいく。

 

「Fir!!」

 

設置した爆薬に点火し、陣地を丸ごと吹き飛ばす海兵隊員。

空から雨霰と高性能爆薬の砲弾が降り注ぐ。

 

「先に行っている」

「ああ、靖國で会おう」

 

崩壊した陣地の中、ある負傷兵は小銃の銃口を咥えると引き金を引いた。

 

 

 

最後の攻撃は夜間に行われ、約三〇〇名の兵士達は上陸した米軍陣地に突撃を敢行した。

 

「くそっ!」

 

艦砲射撃や機関銃の攻撃で多くの兵士が斃れていく中、数名はそれを潜り抜けて陣地に飛び込んだ。

 

だ!」

「ウマがいるぞ!」

「くそっ!」

「がぁっ!!」

 

足の速い日本軍に居た数名の娘が銃剣を付けた小銃(三八式)を持って陣地に飛び込み、ある者は軽機関銃(九六式)を持っており。それで多くの兵士が殺傷される。

 

「おのれっ!!」

 

それを見ていた米軍の娘も銃弾を持ってくると自動小銃(M1918BAR)の引き金を引いて陣地に飛び込んで小銃を発砲しながら振り回す一人に引き金を弾いた。

 

「っ!」

 

そして発砲、そのの兵士は斃れた。

戦闘は徐々に静寂になり、多くの死傷者を出した。

 

 

 

 

 

十一月二五日

タワラの戦いにおいて日本軍敗退。

 

十一月二八日

第19回中山農商省賞典障碍開催。優勝はカミワカ。

 

十二月一日

学徒出陣第一陣出征。

 

十二月十日

文部省が学童の疎開を推奨する。

 

十二月十五日

銅像等の非常回収開始。

 

十二月十七日

東条内閣は競馬場の施設を軍事部門に転用するため、競馬開催の一時停止を閣議決定する。

 

十二月二三日

日本競会は理事会を開催。

「競場設備を直接戦力増強部門に転用するため、当分の間競を停止する」

娘の調教鍛錬および能力検定ならびに軍維持のための能力検定競走を行う」

「場所を東京・京都の両競場とし、能力検定競走実施上必要なる部分のほかは直接戦力増強部門に有償貸与する」ことを決議。上申を行う。

 

十二月二四日

徴兵年齢を一歳引き下げを決定する。

 

 

 

 

 

「ふっ!」

「ほっ!」

「よいしょ!」

 

年末もほど近くなったこの日。競馬学校の校舎の側で、多くの生徒たちが円匙を持って地面を掘っていた。

 

「それ」

「うわっ」

「あっ、ごめん」

 

バケツの中に土を入れ、ソレが満杯になると外で止まっている車に放り込まれる。

 

「とりあえず掘った土は、入り口の補強に回すの」

「はいっ!」

 

そこで指揮を取っていたのはカイソウとミネタカだった。

 

「竹は良い補強剤となる」

「木材との併用も前提で。排水にも注意してください」

 

そう言いながら二人はまとめられた木材や竹材を削っていた。

 

「お姉ちゃん。こっち」

「ふんっ!」

 

ミネタカは木槌を持って削った木材同士を繋げる。

 

「見事なものだ…」

「大きい部材じゃないと使えない技ですよ」

 

セントライトは舌を巻いて二人に感嘆の声を漏らしていた。

北海道生まれで、なおかつ寄木細工が作れるほど手先が器用な二人は黙々と骨組みを作っていた。

 

「まさか学校のそばに防空壕を作れだなんて…」

「仕方あるまい。生徒の身を守るためのものだ」

「…」

 

設計図もなしにどうやって作れと?と、喉まで出かかったミネタカだったが、彼女はグッと堪えた。

最低限の資材だけを渡され、防空壕を作れと言うお達しが国から降りたが、セントライトは『何も知らん私たちにどうすれと?』と一言申したい気分だった。

正直、ミネタカ達がいなければただ穴を掘っただけで終わっていた可能性があった。

 

「痛っ!」

「大丈夫!?」

 

作業中、ある生徒が転倒して擦傷をやってしまった。

すぐさまカイソウはそばに駆け寄ると、彼女に聞いた。

 

「大丈夫ですか?」

「えぇ…取り敢えずは」

 

それ以外の目立った怪我はなく、すぐに彼女は保健室に連れて行かれる。

 

「なんで高校生なのに土木作業をしなきゃならないのかね…」

「本当に。私達輓にでもなった気分だわ」

 

元々学費の関係でお嬢様学校と化していた競学校。競走の勉強は行った来たが、土木の勉強はさっぱりだった。

だからミネタカ指示の元で防空壕を作っていた。

 

 

 

「まさか学校に防空壕とはな…」

「ええ、生徒会長に呼び出されて大騒ぎでしたよ」

 

放課後、調教師用の部屋に入って彼女はちゃぶ台の前で座り込んで文句をいう。

この時期、窪田は炬燵を出したかったのだが、生憎と燃料統制の関係で薪ですら配給対象のこの時代。彼女には沸かした湯で湿らせた手拭で我慢してもらう必要があった。

 

「できそうなのか?」

「まあ姉さんが上手くやってくれると思いますよ?」

 

カイソウは今日の調教を終えて足を冷やしていた。

いよいよ来年から彼女は本格的に走る。そのための準備は万端だった。

 

「テキ〜」

「?」

「年明けは帰るんですか?」

 

彼女は聞くと、そこで彼はヤカンを火にかけて答える。

去年の年末、彼は京都に残って年越しをしており、またカイソウも北海道まで帰るのは遠いからと帰らなかった。

本州にいる子でも、東北とかの子だとあまり帰る事はなかった。ちなみにセントライト先輩は実家に帰る予定である。まああの人は特別だ。

 

窪田もまた、北海道は札幌の農家の生まれであり、彼の妹には娘が居たという。生憎、彼女はどこも受からなくて農耕として働いているそうだ。

 

「いや、俺も北海道生まれなの忘れてるだろ」

「はははっ、そういえばそうでしたね」

 

カイソウやミネタカと違ってしがない農家の六男として生まれ、尋常小学校を出た後に異母兄に弟子入りして見習調教師となった窪田は、実家に帰っても『働け』と言われて追い出されるのがオチだった。

 

「全く、お嬢様はこれだから…」

「でも恩恵受けてるでしょう?」

「まあそうだかなあ…」

 

そこで彼は部屋に置かれた木箱を見る。中には雑穀米や乾燥野菜、砂糖や缶詰が入っており、彼女の実家から送られてくるものだった。

今年の年越しは、姉と共に鍋を囲んで食べる予定だった。

 

「カイソウ、今日はもう帰っていいぞ」

「はーい」

 

坂道調教を終え、淀の坂を何度も走らされたカイソウは少々疲れた様子で部屋を後にした。

それを見送り、窪田は軽くため息をついた後にヤカンを置いた。

 

「さて…俺も行くか」

 

国民服の上から外套を着て、ハンチング帽を被る丸坊主の窪田は部屋を出ると、そのまま学校を出た。

 

 

 

京都競場は京都市街地から大きく南に離れた場所にある。

そして競学校は昔から優れた軍を輩出するための養成機関としての特性上、走ることは結婚にもつながる重要な事である。

 

「ふう…」

 

そして彼は近くの喫茶店に入ると、そこで先に座っていたある人物を見つけて席に座った。

 

「すまん、待たせた」

「なに、問題ないさ」

 

そこで待っていたのは、彼の見習い時代の知り合いの装蹄師だった。

 

「どうにかなったんだな」

「ああ、軍の資材からちょっと貰って来たさ。後で頼むぜ?」

「ああ、任せとけよ」

 

そこで彼は木箱に入れられ、大鋸屑で包まれた二つの蹄鉄を取り出す。

 

「ほぉ…」

 

その蹄鉄は、カイソウの勢いよくすり減る踏み込みにも耐えられるように作られた特別製の蹄鉄だった。

 

「お前さんの要望通り、頑丈な金属を芯に使っている」

「…」

 

蹄鉄師の説明を受けながら蹄鉄を触れると、かなり重く感じた。

 

「なあ、本当にこれを作るほどなのか?」

「ああ、セントライトのお墨付きだぞ?」

「ほぉ、そりゃすげぇ」

 

代用コーヒーを飲みながら蹄鉄師は窪田の言う娘に軽く期待する。

 

「なら、来年走る時は期待してもいいか?」

「ああ、アイツには必ず優駿を取らせる」

 

彼は頷くと、その蹄鉄を箱に戻す。

 

「来年は、多分最後の競になる。だから取らせてやるんだ」

「…そうか」

 

その時の窪田の目を見て、蹄鉄師は小さく頷く。

 

「頑張れよ」

「無論だ」

 

窪田は不敵に笑った。

 

 

 

「はっ!はっ!はっ!はっ!」

 

その頃、東京競学校では、ヤマイワイが坂道調教を何本も走っていた。

 

「ヤマイワイ」

 

その横をクリフジが併走しており、彼女はそれを汗をかいて走っていた。

 

「ペースを上げますよ」

「っ!はいっ!!」

 

そこでクリフジは駈歩から徐々に襲歩に速度を上げてヤマイワイと走る。

 

「っーー!!」

 

前年の優駿、しかも史上初の変則三冠を獲得したと併走をするという贅沢な調教を受けている彼女は、クリフジから教えてもらっていた。

 

「来年の中山四年特別(桜花賞)は、ここ(東京)の一八〇〇米です。私の場合ですと、新戦の時と同じ状況です」

 

これほどのスピードを出していながら、彼女は話す余裕があった。

彼女は、来年は横浜記念に出走した後に帝室御賞典(春)に出走する予定で組んでいた。

 

「あの場は内枠・逃げが圧倒的に有利に働きます。だからヤマイワイ…」

 

そこで彼女はヤマイワイを見ると言う。

 

「全力で逃げなさい。そのために、私に全力でついて来なさい」

 

その直後、彼女は地面を勢いよく蹴って飛び出す。

 

「っ!!」

 

クリフジの仕掛けに若干驚いたヤマイワイだったが、すかさず彼女も姿勢を前に倒して追いかける。

彼女の巨体から生み出される圧倒的なパワーはヤマイワイを千切ろうと走り、ヤマイワイはその速度に追いつくのに一杯一杯だった。

 

「はぁ…はぁ…」

 

そして息切れの兆候を見せた時、

 

「おーい、戻ってこーい」

 

二人の調教師の前山が声をかけて来たので、二人は彼の元に戻った。

 

「よし、ヤマイワイ。足を見せて?」

「は、はい!」

 

彼女はクリフジと併せで、全力で走った事で脚に若干の熱が篭っていた。

 

「クリフジ、あまり無理はさせないでよ?」

「分かっています。この子には、必ず勝ってもらいたいだけです」

「大丈夫です!必ず勝ちに行きます!」

 

クリフジとの生活にも慣れた彼女はそう意気込むと、前山達もそんな彼女に頷いて返した。

 

「よし、じゃあまだやるかい?」

「はい!お願いします、先輩」

「分かりました。では今度は平地で行きましょう」

 

クリフジは頷くと、ヤマイワイと共に走り出し、前山は時間を測り始める。

 

 

 

 

 

そして時は流れ、年を越す。

 

「おはようございます」

「おう。おはよう」

 

この時代、まだ正月というのは旧正月の日の方を祝うことが多かった。だから月表で新年を越しても、祝うのは一ヶ月ほど先の話だった。

 

「一応新年だ。あけましておめでとう」

「おめでとう御座います!」

 

お互いに短く挨拶を済ませると、そこで二人は初日の出を見た。

 

 

ーー激動の1944年が始まった。

 

 




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IFストーリーは入りますか?(主にカイソウが三冠目指した世界線とか)

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