タフ外伝 Devils×Devil『宮沢鬼龍、スーサイド・スクワッドに入る』 作:スローダンサー
「バルデルデ、東南アジアの海に浮かんでいる。国際社会で地位があるわけもなく、その緯度経度からして中国もアメリカもとることない戦略的価値もない島国だ」
鬼龍がプロジェクターに映った島について説明する。その口調はかなり馬鹿にしたものだ
「だがこの国には秘密があった。時は第二次大戦に遡るぜ。かのナチスドイツは連合国にあらゆる面で押されていた。戦争戦略はもちろんのこと、この時代から表にで始めたヒーローたちにだ」
プロジェクターの画像は古い写真に切り替わる。白黒の色味ないそれには、コスチュームを着た奇人達が映っていた
「オールスター・スコードロン。アメイジングマン、コマンダー・スティール、ジョニー・クイック、リバティ・ベル………他50人ほどのヒーローで構成された世界最初の大型チーム。ナチスドイツは世界中の力ある遺物を探したが彼らに邪魔されたそうだ」
ナチス将校を連行するヒーロー達を捉えた写真が流れていく
「そこでナチスドイツは考えた。『自分たちでもヒーローを作り出せないか?』と。随分と遅く愚かしい考えだがな」
鬼龍はナチスドイツの策を愚弄する。先ほどの写真の日付は1944年。この1年後ナチスは消え失せることを考えるとあながち間違いではないだろうか?
「ナチスドイツは懸命に研究した。そしてな、バルデルデにしか咲かない花が人間の肉体に大きな影響を与えることを突き止めた。その薬効を増幅して取り出したのがこの『コンパウンドV』。人間をメタヒューマンに変える劇薬」
鬼龍はいつの間にか手に青い薬を持っていた。薄暗い光に照らされキラキラ輝いている
「ナチスドイツが壊滅後、残党は必至の思いでバルデルデにやってきた。この『コンパウンドV』を精製する環境が揃っていたからなぁ。だが、その目論見は途絶えた」
鬼龍が次のスライドを見せる。そこには山が噴火する様子が捉えられていた
「この災害によって花の大部分が失われ、大量生産は見込めなくなった。残党どもは『コンパウンドV』の研究を凍結したわけだ」
「もしかしてバルデルデで、今その薬を作ってるのか?」
「正解だ、赤ガキ」
鬼龍はジェイソンの質問と共にスライドでとある人物を写す。丸坊主の男だ。その頭には満開の向日葵がタトゥーとして入っている
「こいつはミスター・ブルーム。植物学者にして化学者。バルデルデ固有の花を復活させた第一人者だ」
「鬼龍君、私この男知ってるぞ。腕はいいが危険思想で学会を追放された異端児だ」
「サンダーボルトの言う通り。こいつは人間を花による身体拡張実験をやりすぎて国に居られなくなったアホだ」
「アホって言い過ぎじゃない〜?」
「ふん、自分の実験を嗅ぎつけられたアホであることは変わりないぞミャウミャウ」
「そう言うものか〜………」
ミスター・ブルームの写真が切り替わり、ミスター・ブルームが誰かと握手する写真に切り替わる。その人物は軍服を見事に着こなす若中年だ
「バルデルデの独裁者『ヴォート・ビロンズ』。この男が『コンパウンドV』の計画を発見したのが全ての発端だ。ミスター・ブルームを自分の国に呼びその材料を復活させることに成功したのだ」
次のスライドを写した時、空気がひりつく。そこには知らないコスチュームを着た人間達が20人以上写っていた
「『スコードロン・ペイバック』。『コンパウンドV』によって生み出された超人軍団。ヴォートは彼らを使い、大国に成り上がろうとする稚拙な夢を持ってる」
【ゴス!俺たちはこいつらを殺すのか?】
「いや、それは別のスーサイド・スクワッドがやる。俺たちの任務はミスター・ブルームの暗殺、『コンパウンドV』の全破棄。そして人質の救出」
人質の写真を鬼龍は写した。若い女性である。かなりの美人だ
「ビクトリア。現大統領の娘だ」
「鬼龍君、彼女は君にとってそれだけじゃないだろ?」
「口を慎めサンダーボルト。余計な情報は邪魔なだけだ」
「いやいやこれはチーム全員が共有するべきものだよ。彼女はね、鬼龍の愛人だ。腹には彼の子供もいる」
サンダーボルトの口を鬼龍は塞げなかった。その衝撃的な発言で他のメンバーは鬼龍を思わず見る
「もしかしてヤリステを?」
「赤ガキ、頭脳を吹っ飛ばされたくなかったらこれ以上の追求はやめろ、いいな?」
「うっす………」
ジェイソンは萎縮した
「ともかく俺たちのミッションは三つ
・人質を救出する
・『コンパウンドV』の全破棄
・ミスター・ブルームの暗殺
これらを行う。何か質問は?」
手を挙げたのはサンダーボルトだ
「なんだ?」
「『スーサイド・スクワッド』って部隊名は縁起が悪い。『サンダーボルツ』って名前にしないか?」
「却下。他には?」
手を挙げたのはベントリロクエストだ
「なんだ?」
【ゴス!他にチームがあるらしいがそいつらとは合流しねぇのか?】
「しない。奴らと俺たちの任務は別だからだ」
【承知したぜ!】
「フン………他にはなさそうだな。ではミッションを開始する」
鬼龍はリモコンを投げると颯爽と部屋に出る。彼の後を追うため、残りの5人は慌てて部屋を飛び出すのだった
◇◇◇◇◇
数時間後 夜 バルデルデ沿岸
飛行機から飛び降りる6人。無事海へ着水し、陸へと上がっていく。スカーフェイスはくしゃみをした
「大丈夫〜?」
【防水のスーツにしておきゃよかったぜ!】
「私も〜ブーツが濡れ濡れだよ」
「俺のヘルメットにも入ってきやがった」
「そんなフルフェイスにするからだよジェイソンくん。私のようにつけ外しが簡単なマスクにすればさぁ」
「マウントしないでくれないか?」
「これは失敬。ただ先輩としてのアドバイスをだねぇ」
【けっ!サンダーゴルト、もうテロリストだろあんた!】
「用意が悪いなお前達」
「鬼龍!あんたリーダーだろ!?準備する際に一言あってもいいんじゃなかったか?」
「知るか赤ガキ!自分たちの不手際を上に押し付けるのは、愚か者だ」
「なんだとぉ!」
「SILENCE」
ぐちぐちと喋る5人に対してオノマトピアは黒い耳栓を投げつけた。黙れと口外に彼は伝える
「なんでお前がリーダー面してるんだよ………」
ジェイソンのぼやきは爆音によって消え失せた。鬼龍を除く5人は戦闘体制を取る。爆風が彼らの肌を撫で、巨大な火柱が立ち上る
「フン………始めたようだな」
「鬼龍、あれがあんたが言ってた別チームか?」
「ああ、奴らの任務はスコードロン・ペイバックの抹殺とバルデルデ軍の壊滅。規模のデカさはアメリカ仕込みだ」
【おいおい、一国に喧嘩できる奴らなんて限られてるぜ。ゴス、誰か1人くらいこっちにきてくれないか?】
「諦めろ、スカーフェイス。来ない援軍をきたいするのは馬鹿らしい」
【チェ………】
6人はジャングルの中を行軍する。夜に隠れ先を進むが、至る所に蔦と植物、そして見たこともない動物達が蔓延っており、先が見えない
「一旦ここでキャンプだ。日が出たら、街に入る。この先は………廃ビル群か」
「それは………街なのか?」
「国に捨てられたものが集まって独自のコミュニティがあるらしい。グズが集まってなんとかやっているゴミ溜めだな」
鬼龍の歯に衣着せぬ物言いにジェイソンは不快な顔を浮かべた。この男は傲慢で口が悪い。なるべく付き合いたくないタイプである
「しかしキャンプか。何処に陣取る?」
「BEEP-BEEP」
ジェイソンはオノマトピアがエンジン音を口に出したのに眉間を寄せる。なぜこんな擬音を出したのか?その疑問は後ろを向いた時、解決する。そこには黒いキャンピングカーが置いてあった
「お前………こんなでかいものも作れるのか?」
無言でサムズアップするオノマトピア。表情のないマスクが何処となく得意げであり、少しばかりジェイソンはイラっとした
「ふん………使えるものは使うもんだ。そうだろ赤ガキ」
「それは………そうだな」
「でか〜い。てかベットまであるよここ。ふかふか〜」
「ほう、見たまえ、鬼龍君。キッチンには火までつく。グリーン・ランタンのパワー・リングを思い出すねぇ」
「なかなかいいな。今日は俺が料理を作ってやる」
【ゴスあんたできるんすか?!】
「フランス料理はたくさん食べてきた。舌は肥えてる」
「再現できるかとは別の話じゃない〜?」
鬼龍の料理は不味かった
◇◇◇◇◇
数時間後 バルデルデ 明朝 廃ビル群
鬼龍はオノマトピアが作り出した双眼鏡で街の様子を見ている。人々の姿は見えず、閑散とした印象しか受けない
鬼龍の頭から通知音が響く。骨伝導の通信装置だ
「アマンダか何か変わったことが?」
『昨日、もう一つのチームが壊滅した』
「なにっ」
『通信が途絶してミッションの進行度はこちらでも判別がつかない』
「手際もあと詰めも悪いとは………」
『いい?貴方達に追加ミッションを与えます。そこの廃ビル群の中で一番大きなビルがありますね?』
「ああ、目で見た」
『そこには別チームの生き残りが1人監禁されてることがわかってます。連れ戻し状況を聞きなさい』
「監禁している側の人間はどうする?」
『貴方達のやり方に任せるわ』
「了解。で………誰を助けるんだ」
『女よ。ピエロのような格好をしている。名前はハーレイ・クイン』
| ハーレイ・クイン 元精神科医で元ジョーカーの恋人。近接戦闘の達人。スーサイド・スクワッドに何度も入隊しているベテランでもある |
◇この女は……!?