タフ外伝 Devils×Devil『宮沢鬼龍、スーサイド・スクワッドに入る』 作:スローダンサー
バルデルデ 朝 廃ビル群
「指示された場所はここか」
ジェイソンの呟きは古い臭いアスベストの風に乗って消える。6人は巨大なビルの入り口前でそれを見上げていた
朽ちたビルが多い中、ただ一つだけ比較的綺麗で一番大きい。オノマトピアが生成した定規を使い鬼龍はビルの高さを計測する
「40m前後、おおよそ15階くらいか。向こうの話だとその最上階に救出対象はいる」
「救出対象は誰だっけ〜?」
「ハーレイ・クインとかいう女だ。自分で道化を名乗るとはどんな神経してるのやら………赤ガキなんかわかるか?」
「いやっ?だがあのアマ、最近ジョーカーの女ってアイデンティティ捨てたらしい」
【お前が死んだロギンじゃなくなったようなもんだな!】
「黙れスカーフェイス!………くそっ」
「あまりいじめないでよスカーフェイス〜」
【ケッ!女はやっぱ顔か?】
「そりゃあねぇ?でも顔だけじゃなくて身体も良くないとね〜」
「サワサワするな!」
「ミャウミャウ君、私の肉体ならいいよ?」
「流石におじさんすぎて〜」
「ガーン………」
「オノマトピアにもやれやれってジェスチャーされてるの控えめに言って終わってるな。サンダーボルト、爆破するか頭?」
「鬼龍君、私の扱い雑だね?」
「ともかくだ、捕まってから十数時間。バルデルデ政府がハーレイ・クインを殺す前に助けなければならない」
「ふむ、なるべく速くかな?」
「もちろんだサンダーボルト。時間がない」
「10分ですませよう」
「流石に早すぎないか?」
「ジェイソン君。私の名前はサンダーボルト。それくらいお茶の子さいさいだよ」
【サンダーゴルト、その前に目の前の奴らを片付けようぜ!】
入り口はガラス張りの扉だ。その奥にはアサルトライフルを持った軽装備の兵士がウロウロとしている
「朝早くから大変だね〜」
「一体何を警戒しているんだ?」
「赤ガキ、それは考えなくていい。とにかく始末するぞ。………お前達、言っておくが大きな音を出すなよ?」
【ゴス!それじゃあ俺何もできないですよ!】
スカーフェイスの武器はドラムマシンガンの模型。だが実際に弾が出る精巧品だ
「オノマトピア、なんか出してやれ」
「SWISH」
オノマトピアは小さなナイフをスカーフェイスに握らせた
【こんなアーノルドのチ◯ポより小さいなワッパでどうしろって言うんだよ!】
「………Tsk舌打ちの音、ZINK」
【あっこいつ舌打ちしやがった?!】
投げやりに小さなボウガンの模型を渡されたスカーフェイスはオノマトピアの態度に激怒する。物言わぬオノマトピアの表情も何処となく深いそうだ。一触即発の雰囲気が流れる中、小さな一本締めの音がする
鬼龍が手を叩いたのだ
「おい、駒ども。くっちゃべってる余裕はあるか?」
鬼龍は皆に前を見るよう即した。兵士たちが集まってきている。銃口が九つ、スクワッドに向けられた
⦅お前らなにもんだ?!⦆
英語でない疑問に答える者はなかった。兵士たちは理解に苦しむ。6人いた部外者が4人になっていた
グルッ、ボキッ
色のついた風が二つ大きく吹くと、兵士たちは首が折られた。鬼龍とサンダーボルトがいつの間にか兵士たちの後ろに回っていたのだ
「サンダーボルト、お前の手は要らん」
「鬼龍君!一応今私たちは味方なんだ。ここは協力しないとね♪」
若作り中年のウインクを鬱陶しく手で払う鬼龍。しかしサンダーボルトの言うことに一理ある。片付けた兵士の装備を漁る
「こいつら通信機器の類を一切持ってないな」
「実に好都合じゃないか鬼龍君。数が減っても誰も気づかれない」
鬼龍は囁かない違和感を死体と共に土に埋めると、ビルへ入ると階段は三つあった。近くに備え付けられた階層マップを見るとそれぞれの階段は別の階層につながっており、まるで迷路のように複雑だ
「ここは3組に分かれて探索するぞ。サンダーボルトとオノマトピア、ベントリロクエストとミャウミャウ組め。俺は赤ガキと行く」
異論は出なかった。3組のペアが、音を出さず階段を登っていく
◇◇◇◇◇
サンダーボルト・オノマトピア組
お喋りなサンダーボルトも隠密作戦ではその口にチャックをしている。オノマトピアは尚のこと静かだ
オノマトピアはサンダーボルトに武器がいるかジェスチャーで尋ねる。サンダーボルトは首を横に振った。サンダーボルトの最大の武器は素手だ
「ZINK」
オノマトピアの手には黒いコンパウンドボウ。大した力を使わずともの大きく引き絞ることができる
ヒュン、バシンッ
オノマトピアが放った矢は兵士の頭を吹き飛ばす。血の花が咲く兵士を見て、何事が起きたのかと兵士は警戒し始めた。だがあまりに遅い
サンダーボルトは赤と青の色がついた風になる。廊下で警戒していた兵士たちは反応ができない。サンダーボルトの指は兵士の両目を抉る。サンダーボルトの脚は兵士の顎を壊す。サンダーボルトの掌底は兵士の脳を粉々にする
「私もなかなかやるだろ、オノマトピア君?」
「………SWISH」
自慢げなサンダーボルトに対してオノマトピアは甘いと言わんばかりに黒い手裏剣を二つ投げつけた。サンダーボルトには幾ら速くてもスローに見える。首を曲げて避けるサンダーボルト
ヒュン、カカッ
「うっ」
その後ろにいた兵士の首と心臓を手裏剣は貫いた。サンダーボルトは1人取り逃していたのだ。『甘いなあんたも!』と言いたげに指を振るオノマトピア
「………まだまだ精進が足りないわけか」
肩を落として落胆するサンダーボルトにポンと手を置きオノマトピアは慰める
「ふー………落ち込むのは終わりだ。次に行こう、オノマトピア君」
オノマトピアの答えはサムズアップだ
◇◇◇◇◇
ベントリロクエスト・ミャウミャウ組
【たくよぉ、銃をぶっ放せないなんて俺としてはストレスが溜まるもんだぜっ!】
「スカーフェイス〜、隠密でしょ?貴方のドラムマシンガンはサプレッサーつけられないでしょう?」
【ちぃ、だけどよぉ?ボウガンなんて使ったことねぇよ】
「まあ引き金あるし銃と同じように使えばいいんじゃな〜い?」
対照的にペチャクチャと会話している2人。階段を上がりきったその時、2人の目の前にトイレ上がりの兵士が立っていた
⦅なぜここに⦆
ヒュン、カッ
⦅なにっ⦆
兵士は小さな悲鳴をあげ倒れ込む。その微かな声は異常を示すには十分だった
⦅な、なんだぁ⦆
次々と兵士たちが2人の前に集合してくる。その数13人。それぞれがライフルの引き金に指をかけ、今にも発射しそうだ
【や、ヤベェぜミャウミャウ!?この量はなんとかできねえよ俺は!】
「まかせなしゃ〜い」
ミャウミャウは白魚のような指でたおやかにマスクを外す。淫靡な美貌の下にある怪物の口は兵士達を恐怖させた。だがミャウミャウはただ素顔を見せただけで終わらない。彼女の口から舌が13本飛び出す。兵士たちの身体に巻き付くと上へ下へ左へ右へ壁に当て続ける
⦅あへっあへっ⦆
兵士たちの命は風前の灯だ。舌がだらしなく飛び出て血塗れである
腹がなる音がした。ミャウミャウから聞こえた。スカーフェイスは嫌な予感がした
「いただきます〜」
⦅あああああああああああ⦆
あっという間に兵士たちはミャウミャウの腹の中に入っていった。軽く咀嚼するがほぼ丸呑みである
「えへへ〜、妊婦だぁ」
ミャウミャウの腹がパンパンに膨らんでいる。ポンポン満足そうに腹を撫でる彼女にスカーフェイスがつぶやいた
【………しっかり消化してからいくぞ】
スカーフェイスはミャウミャウの後ろに隠れるようになった
◇◇◇◇◇
「赤ガキ!お前の手並み、見せてくれ」
鬼龍はジェイソンを兵士の前に出す。赤いフルフェイスの下で顔を歪めるが、やるだけだ。腰につけた2丁の拳銃を取り出す。それぞれにサイレンサーが付いていた
⦅なにもんだぁ?!⦆
バシュッ
兵士の眉間に打ち込まれる弾丸。だが兵士はまだまだいる。ジェイソンは拳銃のバレルを手で持ち、ボタンを押す。グリップ部分が青白く光った
「ほう、電撃か」
鬼龍の見立て通りである。バチバチ光るグリップを兵士に押し当てると途端に失神だ。1人、2人、3人兵士がどんどん倒れていく
⦅うおおおお⦆
ライフルを捨ててナイフを持ち突撃する兵士。だがジェイソンは慌てず、懐から手裏剣を発射。手裏剣は兵士の脚に突き刺さる。痛みのせいで転がる兵士。目の前にきた無防備な後頭部をジェイソンは撃ち抜いた
「これで一掃できたかな?」
「赤ガキ、つめが甘い」
「あっ?」
鬼龍はジェイソンの肩を踏み台に廊下を走る。一番奥にある部屋からタイミングよく3人の兵士が飛び出してきた
「なっ、まだいたのか?!」
「やるなら徹底的にやれ、師から何を習った!」
ジェイソンは鬼龍に反論しようと思ったが上手く言葉が出なかった。鬼龍の手がジェイソンには見えない。残像すら残さず兵士2人の頭蓋を撃ち抜く
「灘神影流・霞突き」
速すぎて敵は殴られたこともわからず失神する鬼龍の得意手だ!
「赤ガキ、面白い技を見せてやる」
「なにっ」
鬼龍は残った兵士の目の前に立って手を構える。数ミリ離した拳を兵士に軽くぶつける。すると兵士の背中がふくれあがり、兵士の迷彩服が破け、倒れ込んだ
「なんだよそれ」
「灘神影流・塊貫拳、波動を自在に操り肉体を破壊する」
「すげぇ技だな………」
「やってみるか?」
「いや………えっ嬉しいけど何故?」
「………興が乗った、ただそれだけよ」
鬼龍のいい淀みに不信感を抱くジェイソン。しかし、言葉の裏に嫌な感情は感じられなかった。つまり純粋に教えたいだけである
「なら、頼むぜ鬼龍」
「ふん、しっかり覚えろよ」
次の階層の兵士は彼らの修行の犠牲となった
◇◇◇◇◇
「おっみなさん最後はやっぱり、一つになるんですねぇ!私としてはもう少しオノマトピア君の実力を見てみたかったのですが………」
【いや、俺はもう安心したぜサンダーゴルト!?2人だけだと心細い!】
「ええ〜私もいるのにそんなこと言う〜?」
【………】
「ふん、口の多い奴が黙るとはな。赤ガキ、あの女に手を出す時は気をつけろよ?」
「いや俺はディックとは違うぜ?そこまで好色ってやけじゃ………」
「どーだか………」
「え、私のこと嫌いなの〜?」
「いやそう言うわけじゃないんだが………」
【悪いことはイワねぇ………その女はやめておけロギン】
「どう言う意味かなぁ〜?」
【ヒィ!】
「お前ら本当に何があったんだよ………」
「赤ガキ、黙れ」
「なんで俺だけ!?」
「塊貫拳を身につけたからと言って油断するなって言いたいんだよ鬼龍君は」
「いや違うが?」
「サンダーボルトのおっさん………なんでそんなことを知ってるんだ?」
「男には秘密があるもんだよ」
6人は喋りながら最上階の探索を行なっていた。どこを探してもハーレイ・クインはいない。探していない場所はあと一箇所だけ。分厚い遮音カーテンが引いてある大部屋だ
「影が二つある。多分ここだ」
ジェイソンは拳銃を構える
オノマトピアは斧を作り出す
スカーフェイスはドラムマシンガンの模型に持ち帰る
ミャウミャウはマスクを外す
サンダーボルトは拳を握る
鬼龍は目を細める
カーテンを開けた!
シャッ
「でねプリンちゃんとこのまま一緒にいたら私もうダメになるなあってなって別れちゃったわけ」
「人の恋は色々あるもんだな。あたしもパートナーとは痴話喧嘩が絶えなかった」
「ええー聞きたい!オシーンちゃんのパートナーの話♪」
「そうか………パートナーの名前はトニア。あたしにはできすぎた女だった」
「あれ!私と同じ!」
「そうなのか?」
「私もパミーといい暮らししてたの最近」
「でも捕まってミッションに挑んでるとはな」
「いいのいいの!成功すれば出られるわけだ………し?」
ハーレイ・クインは椅子に座りテーブルを挟んで、女と談笑していた。筋肉が分厚い。座高が高く脚も太く長い。全身は傷まみれで長い黒髪をポニーテールにしていた。オシーンというらしい女はハーレイ・クインが固まっている方角を見て、同じく固まる
「ハ、ハ〜イ、ハーレイ」
「あ、ミャウミャウちゃん♪何でこんなところに?」
「いやなんか捕まってるって聞いて〜?」
「てか隣にいるの死んだロビンじゃない!元気してる?」
「生き返ったからな………」
「ふーん?………あれもしかして私助けにきた感じ?」
「ハーレイの仲間なのか?」
「多分………?あっ紹介するね!この人はオシーンちゃん!反政府ゲリラのリーダーしてるの!」
「よろしく。………あれ私の兵士には合わなかったのか?」
6人は目に合わせた
「いやあってない」
「そそ、鬼龍君のいうとおり!私たちはあってないよ」
【知らない知らないぜ!】
「全く心当たりがない。隠密だからな!」
「そ〜そ〜………ゲップ。ペッ!」
ゴトっ
ミャウミャウはゲップした拍子に消化されてない指を吐き出した
「………」
「………」
「………」
「………」
「………」
【………】
「………」
「………」
沈黙を破ったのは鬼龍だった
「ハーレイ。お前の話を聞きにきた」
◇◇◇◇◇
「アメリカ人の傲慢ってのは映画の中じゃないんだな」
「ごめんってオシーンちゃん………ほら私たちって犯罪者だからうっかり殺しちゃうのよ」
「言い訳にもなってないぞそれ………」
オシーンは怒るのもバカらしくなってきた。そして考える。バルデルデ政府を陥落させるにはスコードロン・ペイバックを倒すのも必要条件。目の前の彼らの力を利用すれば、その目的に近付くだろう
「………はぁ、許すわけじゃないぞ?条件だ。あたしも連れてけ」
「えっでも私たちの任務、危険よ?」
「それぐらい承知の上だ。おい鬼龍とやら!あんたのせいでもあるからな!上にも伝えておけ!」
「もう言ったよ」
先ほどまで鬼龍とアマンダは会議をしていた。彼女は声越しにも無表情であることがわかる。鋼のような命令口調で、オシーンと協力を承諾した
「で、キリュー?だっけ?私に何聞きたいの?」
「昨日、お前ら別働隊に何があったのかだ」
「えっ?生体反応とかでわからないの?」
「いや、激しい戦闘でセンサーの類があらかた故障、カメラも破損。状況がまるでわからないとの回答だ。全く穴が多くて嫌になる」
「あら!?アマンダの悪口は頭吹っ飛ばされる対象になりかねないからやめた方がいいよ」
「ふん!あの女は俺の口の悪さくらい承知だ」
「ふーんまあいいよ」
ハーレイ・クインは落ちてたサーベルを拾う。金メッキの表面で、彼女の趣味にはあってなさそうなものだ
「それは?」
「ロビン!これはね、チームメイトが託したものなの」
「えっそんなの使うやついたっけ?」
「キャバリエよ」
「………わからんなすまん」
「まあ彼ゴッサムにいなかったしね」
サーベルを振り回すハーレイ・クイン。無茶苦茶で術理も何もあったもんじゃない剣筋だが、不思議と美しく見えた
「私たちのチームが壊滅したのは知ってるよね?」
「まあハーレイ君しかいないならそうなんじゃないか?」
「じゃあどう壊滅したかを説明するわ」
ハーレイ・クインは10年も昔を振り返るような哀愁を漂わせつつサーベルの刃を撫でる
「私たちのスーサイド・スクワッドが負けるなんて思っても見なかったの」
◇何を喋る………?!