タフ外伝 Devils×Devil『宮沢鬼龍、スーサイド・スクワッドに入る』   作:スローダンサー

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鬼龍、ハーレイから話を聞く

十数時間前 ベル・レーヴ刑務所 飛行場

 

「遅い、頭が余程なくなりたいと見える」

「アマンダ〜、そんなこと言わないでよもぉ!」

 

 赤い戦闘服を着込んだハーレイ・クイン。彼女は大量の兵器をバックに引き摺りながら現れる

 

「あのね? ここの刑務所のトイレ、汚いからさぁ、本当に出ないんだよね! おしっこ」

「改善要望があるなら、アンケートにでも書きなさい」

「ベル・レーヴでアンケート用紙見たことないんだけど!」

 

 ズルズルと歩くハーレイ・クイン。アマンダは手に持っていたファイルをハーレイ・クインに投げ渡した

 

「えっ何これ」

「ハーレイ。貴女今回のミッションのリーダーをお願いしたい」

「…………えーとさ、私、こーいうこと言うのキャラじゃないと思うんだけど…………アマンダ正気?」

「今回のスクワッドに適任なのが貴女しかいないの。貴女はミッション経験も初対面のメンバーとの連携も経験が豊富でしょうに?」

「いやそれにしてもよ。私、人見知りだし? ちょーと人選ミスってるって」

「ファイルを読みなさい」

「ぇでも」

「ファイルを、読みなさい」

「…………はい」

 

 アマンダの圧にハーレイ・クインは負けた。ファイルを開いて中に書かれた紙をペラペラと巡っていく

 

「今回多いわね」

「20人。初参加も多い」

「20人!? ふーん…………」

 

 紙を進めるごとにハーレイ・クインの眉間に皺が寄っていく

 

「アマンダ…………一国を火の海にするつもりなの?」

「なんなら滅ぼしたっていい」

「えっマジでそんなレベルなの今回」

「マジで、そのレベル」

「だからなのねこのメンツ…………」

 

 ハーレイ・クインは腹を括った。もうやるしかないだろう。面倒と思う感情を笑顔の下に隠し、メンバーが待っている航空機の中に入った

 

「はぁい♪ みんな元気ぃ?」

 

 返事をしたのは1人だけだった。緑のマスクにオレンジのスーツ。その腰には銃のような兵器がぶら下がっていた

 

「おっ、ハーレイ・クインでねえの! ジョーカーの女やめだのって本当が?」

ミラー・マスター、相変わらず訛りがすごい」

 

ミラー・マスター

 本名エヴァン・マッカロック。鏡の支配者。スコットランド訛りがきつい。罪状:強盗

 

「いやー助がったよ。どいづもごいづも無口ばっかでさ。口が枯れぢまうぜ!」

「あらそう♪ …………しっかし豪華なメンツよね」

「なんでも人造ヒーローど国の軍全滅させるだめに選ばれだらしいよな」

 

 ミラー・マスターの言葉にハーレイ・クインは頷く。そして周りのメンバーを見渡した。18人のヴィラン、その中で目を引くのは5人

 

 紫のツノの生えた仮面をつけた男はナイフを3本手にもたず、お手玉させている。彼の名はドクター・ポラリス

 

ドクター・ポラリス

 本名ニール・エマーソン。磁力を自在にコントロールできる。罪状:建造物等損害等

 

 チーター柄の皮膚を持ち長い赤髪を撫でる男がいる。彼の名はチーター、文字通りの名前だ

 

チーター

 本名セバスチャン・バレステロス。チーターのパワーを神と契約して手に入れる。罪状:威力業務妨害等

 

 人型の魚が天井を見ている。灰色で牙や爪が鋭い怪物だ。彼の名はピラニアマンである

 

ピラニアマン

 カリュブディスを名乗るテロリスト。ピラニアを操り、アクアマンを破壊した。罪状:殺人等

 

 青い肌に白い髪、黒のスーツを着こなし所々に氷がついている女がいる。彼女は氷のワイングラスを作り水を飲んでいた。彼女の名はキラー・フロストである

 

キラー・フロスト

 本名クリスタル・フロスト。クリオキネシス*1の使い手。罪状:殺人

 

 そして最後の1人。赤いマント、青いスーツ、黒い髪、神の如く筋肉、そして胸に輝く『U』のマーク。彼の名前はウルトラマン

 

ウルトラマン

 本名クラーク・ケント。別世界の悪のスーパーマン。罪状:大量虐殺等

 

「他のも粒揃いね♪ テロリストに殺し屋、傭兵、泥棒、詐欺師、狂人…………犯罪者の見本市よ」

 

 唐突に誰かが立ち上がる。目が見えるバンダナを巻いた剣士だ。自分の髭を撫でて金メッキの剣を振り上げる

 

「1人はみんなのために! みんなは1人のために!」

 

 彼はキャバリエ。自らを銃士と思い込んでいる熟練の剣士だ

 

「みんなのため? おおなんと傲慢?! 我がケラウノスを喰らうか!?」

 

 キャバリエの言葉に反応して立ち上がる男がいた。古代ギリシャ人がきていたローブをきた男である。彼の名前はマキシー・ゼウス。その手には雷を模した金属片があった

 

マキシー・ゼウス

 自らをゼウスの生まれ変わりと信じ込んでいるマフィア。雷型の機械から電撃を発射できる。罪状:神性召喚による大量殺人

 

「はいそこ揉めない!」

 

 2人をハーレイ・クインは叩き伏せる。彼女の近接戦闘力はこのチームの中でもトップクラスだ

 

「いい? これから向かうのはバルデルデ! そこには私たちを捕まえたムカつくヒーローのコピーライトがいるってアマンダ言ってたよ! 私たちはそいつらを全員ぶっ殺す事が仕事! 質問は?!」

 

 質問は出なかった。その代わり、個々のやる気が殺意として滲み、空気が歪んでいく。ハーレイ・クインはカラカラ笑った

 

「やる気満々じゃん♪」

 

 ◇◇◇◇◇

 

 バルデルデ軍港基地上空 夜

 

「じゃあっ全員いるか調べるからね!」

 

 ハーレイ・クインはメンバーの書かれたファイルをめくる

 

「ウルトラマン、いる。キラー・フロスト、いる。ミラー・マスター、いる。チーター、いる。ドクター・ポラリス、いる。ピラニアマンも…………いるね! あとは全員いるで…………」

 

「待て待て待て待て! キング・スネーク様とか忘れてないか?!」

「あら、またバットマンに負けた人じゃないの♪」

 

 胸に大きな蛇のタトゥーが入った男がハーレイ・クインにツッコミを入れる。彼の名前はキング・スネーク、バットマンとタイガーロビンに負けた男である

 

「ただでさえ人数多いから強そうな人がいればそれで良くない?」

「ハーレイ・クイン! その言い方キング・スネーク様が弱いみたいじゃないか!」

「いやまぁ…………ごめんね?」

「謝るなら他の奴らも呼んでやれ!」

 

 キング・スネークの剣幕にハーレイ・クインは鬱陶しく思いつつも、ファイルを再び開いた

 

「えーと…………

 ・キング・スネーク

 ・ブラック・スパイダー

 ・キャバリエ

 ・マキシーゼウス

 ・TNTEEN

 ・スケール

 ・アングルマン

 ・ブルターレ

 ・キャッツアイ

 ・デュラン

 ・ヘルブス

 ・フィッシャーマン

 ・ミュート

 …………これで全員かな?」

 

 名前を呼ばれたメンツは満更でもない表情だ。ハーレイ・クインは少しばかり溜め息を吐く。癖が強い連中ばかりで嫌気がさすのだ

 

「まあいいわ! これからミッションを開始するわ!」

 

 ハーレイ・クインの言葉と共に航空機の乗降口が開く。各人は海に飛び込む準備をする。乗降口から海面が見えたその時、メンバーの先頭にいたハーレイ・クインを押し除け、海に飛び込む者がいた

 

「あれ誰?!」

「あいづは…………確がスケール! アトランティス人の新入りだったはず」

 

スケール

 環境テロリスト。アトランティス人。海中を素早く動ける半魚人

 

「今しか逃げるチャンスがねえで思ったんかなぁ。新入りだがら考えなしだな」

 

 ミラー・マスターのぼやきにハーレイ・クインは頭が痛くなった。いきなり逃亡するとは幸先が悪い

 

『ハーレイ。貴女にあれ渡してるわよね?』

「…………あっそういえば!」

 

 ハーレイ・クインは自分の腕を見る。そこには非金属製の大きいガントレットが嵌められていた。表面には20個のカバーに覆われたボタンがついている

 

『ハーレイ。起爆の許可をします。逃亡者には死を』

「はーい♪ 私一度やってみたかったのよね!」

 

 〈スケール〉と記されたカバーを開けてボタンを取り出す。ハーレイ・クインは振り上げた指をボタンに叩きつけた

 

「ポチッとな♪」

 

 その直後、海に水柱をあげていた。5mほどある水柱は2秒ほど高さを保つものの、散っていく

 

『スケール、生命反応消失』

「…………アマンダはいつもこれ楽しんでいるの?」

『ノーコメントとさせてもらうわ』

 

 ハーレイ・クインは後ろを向く。各人のメンバーのやる気を測っていた。皆殺意がマシましだ

 

「いい?! 逃げたら頭に華が咲くよ! 私たちに許されているのは前進のみ! さっさと解決して刑務所出るわよ!」

 

 おおーっ! と他のメンバーは雄叫びと共に手を上げた。ハーレイ・クインは乗降口から飛び出す

 

「突撃ぃぃーっ!!」

 

 ◇◇◇◇◇

 

 ⦅なんだぁっ⦆

 

グシャッァ

 

 兵士達は丸々とした肉団子になり潰れる。ドクター・ポラリスの磁気操作によるものだ! 

 

 ⦅ちぃ、なんだってピラニアが空を飛ぶんだ⦆

 

 兵士たちが空中を飛ぶピラニアに食われていく。ピラニアマンが海域を超えてピラニアを召喚操作している! 

 

「しゃあっ」

 

ビッ、ビッ

 

 チーターの爪が光る。兵士の腹をベストごと切り裂き、ボロンと内臓が飛び出す! 

 

 ⦅あっあがぁ⦆

 

 兵士たちが氷像とかしている。キラー・フロストのクリオキネシス。発射された弾丸すらただの氷に変える! 

 

「うああああああああああ」

 

 

 兵士たちが次々と鏡面の中に落ちていき死んでいく。ミラー・マスターの鏡を操る力。それはただの水溜まりすら必殺の凶器に変える! 

 

 ⦅鳥か? ⦆

 ⦅飛行機か? ⦆

 ⦅いや…………スーパーマンだぁぁぁ⦆

 

 だがそれも間違っている。目から熱光線を出し、兵士達を殺すその姿は鋼の男とは思えない。破壊の跡をウルトラマンは薄暗く笑いながら見ていた

 

「はあい♪ ハーレイ選手の第一打席…………ホームランっ!」

 

「あああああああああっ」

 

 

 ハーレイ・クインの木製バットは兵士の頭を吹っ飛ばし、空に上げる。一撃で死ぬ兵士たちにハーレイ・クインは笑いが止まらない

 

「みんなもやってるねぇ!」

 

 巻き上がる爆発! 飛び散る血飛沫! 逃げまどう兵士たち! 凝縮された地獄がそこに顕現していた

 

「さーってと、あの目につく塔破壊しておこうかなぁ♪」

 

 ハーレイ・クインは持ってきたバックからロケットランチャーを取り出す。狙いは軍の基地にある見張り台

 

「はっしゃーっ!」

 

ボシュゥゥゥゥ

 

ドォォォン

 

「ひゃっはっ! 命中…………してない?」

 

 見張り台は無傷である。その周りに紫のバリアが覆い被さっていたのだ! 

 

 ⦅そこまでだ侵略者ども! ⦆

 

 男の声がする。英語ではないためわからないが、ハーレイ・クイン達スーサイド・スクワッドにはそのニュアンスは伝わった

 

 光があたり声を出した男の姿が現れる。金色のバンダナ、白の十字軍めいた鱗スーツ。そしてその右手には紫色のバリア盾がついていた

 

 ⦅我が名はアメリカンクルセイダー!! 自由の十字軍! 祖国に勝利を齎すものなり! ⦆

 

 アメリカンクルセイダーが自己紹介すると、彼の後ろから多種多様なコスチューム姿の人間が現れる。その数、100人以上! 

 

 ⦅バルデルデを守護する。それが我らスコードロン・ペイバック! 我が国を脅かすものに報復する者なり! スコードロン・ペイバック…………アッセンブル!! ⦆

 

 スコードロン・ペイバックはスーサイド・スクワッドに襲いかかる! 

 

「待って!? こんな数いるなんて聞いてないわ!」

 

 ハーレイ・クインの悲鳴を、笑う者がいた。彼女は自分の後ろを見る。そこには鏡の支配者が立っていた

 

「数が足りねえ? だらおらの番だべ。この鏡の支配者の力見よ!」

 

 ミラー・マスターはキラー・フロストが作り出した氷の前にメンバー全員を移動させる

 

「鏡よ鏡、あっちに映るものこっちに連れで来だまえ!」

 

 鏡に映るハーレイ・クインが、ウルトラマンが、ドクター・ポラリスが、その他のメンバーが1人、2人と溢れ出てくる! 

 

「やるじゃんミラー・マスター!」

「これで数は互角よ。こいづら全員叩ぎのめすぜ!」

 

 スーサイド・スクワッドとスコードロン・ペイバックがぶつかった! 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 現在 バルデルデ廃ビル最上階 朝 雨

 

「で? それでどうしてお前しかいない?」

 

 雷がぴかりと光る。鬼龍の質問にハーレイ・クインは不愉快そうに答えた

 

「うちのチームの1人にねTNTEENっていう強力な自爆能力者がいたわけよ」

「ふむ」

「彼が3人同時に爆発したら軍の火薬庫に引火したみたいで爆発の威力と規模が極大して」

「うん」

「全員吹っ飛んだ」

「…………ふざけてるのか?」

「いや鬼龍君、ハーレイ君の言ってることは真実だ!」

 

 サンダーボルトが横から口を挟んできた。ゴロゴロ雷が鳴っている

 

「私たちがこの国に上陸したとき見た爆発。あの規模と威力はどんな超人だろうと良くて重体、悪ければ即死のとんでもないものだった。ただ、TNTEENとやらだけの力だけとは思えん。向こうのヒーローもどきに爆発の威力を上げるものでもいたんじゃないか?」

「あー…………なんかいたわねトランプ投げるやつ」

「じゃあそいつの力もおそらく混ざったんだろう!」

 

 サンダーボルトの答えに関しては鬼龍は口を挟まなかった。概ね同じ意見だからだ

 

「で? スコードロン・ペイバックはどれだけやれた?」

「うーん。爆発前に30人くらいかなぁ? でも爆発した後はわからない♪」

「ちっ…………もっとしっかりと把握をだな」

「ちょっといいか?」

 

 話に割り込むのは燃える反政府テロリスト・オシータ。鬼龍は眉を顰めるものの止めることはなかった

 

「スコードロン・ペイバックはこの国じゃ有名だ。こんなコミックまであるくらいだしな」

 

 オシータが出したのはアメコミチックの漫画雑誌である。⦅スコードロン・ペイバック⦆とタイトルと共にヒーロー達がアメリカ兵士を倒す姿が表紙にあった

 

「中々思想を感じる表紙だな。プロパガンダとしては三流もいいところだがな」

「鬼龍。重要なのはそこに出てくるヒーロー達は実在することだ」

 

 オシータは登場人物紹介の場所を指差す

 

「スコードロン・ペイバックは100人以上いるが、真に兵器と言えるのはこいつら7人だ」

 

 そのページを覗き込もうとした鬼龍だが、突如として窓を見た

 

「鬼龍のおっさん?」

「赤ガキ、さっきまで晴れてたよな?」

「…………確かに雷までなってる。だが…………天気予報だと今日は晴れだ!」

「皆避けろ!」

 

 オシータの声と共に雷が部屋に走る。青白い雷が1本2本3本、反応し損ねた者を貫いた

 

「argh!? *2

 ⦅我が雷を受けて生きているとはな! ⦆

 

 オノマトピアは雷の直撃を受け、焦げ臭い煙を全身にあげている。彼をこんな状態にした下手人が窓を突き破って入ってきた

 

 黒いピッタリ張り付いたスーツを着ている。王族のように豪華なマントを着こなしたアボリジニめいた男だ。その手に握られているのはバチバチと音が鳴る槍だ! 

 

 ⦅我が名はワンダジン! オーストラリアが天空神、ワンジナの息子にして、雷の神! ⦆

 

 ワンダジンは空気を焼き切る光を纏う。その威光は裏を知らなければ本当に神だと思うほどの神々しさだ

 

「ワンダジン! スコードロン・ペイバックの中でもビックスリーと数えられているほどの実力者」

 ⦅我が雷を知る非国民もおるか! 仲間の弔いである! 纏めて死ぬが良い! ⦆

 

 目から雷光がほど走るワンダジン。だが、この場に怖気つく者はいない

 

「ふん、たかが雷。バッテリーの充電にも役に立たん物を誇るとはな。赤ガキ、電気を操る敵との戦闘経験は?」

「ゴッサム・シティ舐めんなよ。電撃操作は何人もいるわ」

「オノマトピア、傷は?」

『argh』

「まだだな、今回は休め」

「では鬼龍君? あいつを殺すのかね?」

「別働隊ができなかったからな。アマンダも殺せとさっきからうるさい」

「なら…………さっさとやっちゃいましょうよ〜」

【へへっゴス、あんたならいい作戦あるでしょ?】

「ふん…………じゃあついてこい。俺はあらゆる神を愚弄する。もちろんあの神もどきもな!」

*1
凍結能力のこと

*2
うめき声




◇何が始まる…?!
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