タフ外伝 Devils×Devil『宮沢鬼龍、スーサイド・スクワッドに入る』 作:スローダンサー
バルデルデ 朝 廃ビル
ワンダジンは宙に浮かぶ。バットマンのようなガジェットによる滑空ではない。スーパーマンに似た理屈の及ばない超能力だ
⦅我が槍ママラガンよ! ⦆
ワンダジンの槍に青白い雷が走る。切先が鬼龍達に向けられると三つの閃光が空気を焼く
この雷を鬼龍達は柱を盾にすることで防ぐ。だが一撃で破壊されてしまうため、何度もを使える手ではない
ジェイソンはワンダジンに向かって拳銃を撃つ
パパパァ
ワンダジンが磁石を持っているかのように、3発の弾丸は見事に脳、首、心臓へと導かれた。だが、ワンダジンの皮膚に穴は開かない。弾丸は潰れ、床に落ちる
「流石に硬いか」
「スーパーマンと同じレベルか? 赤ガキ」
「鬼龍のおっさん、それは正しいぜ。ありゃクリプトナイトでも持ってこなきゃ近代兵器は歯がたたねぇ」
「ふん、赤ガキ。あいつをどう見る?」
「ありゃシャザムだな。電気出すスーパーマンだし」
「勝ち目は?」
「ある。奴は槍を通してしか雷を出さない。電気を使う奴は撃つ方向を決めないと出せないからな、ボルト然り、エレクトロキューショナー然り、シャザム然り」
「じゃあ…………槍を奪えばいいの〜?」
「ミャウミャウ、それはダメだ。槍を手放しても両手で撃てるならあまり意味がない」
【今槍を手放しても両手で撃ってこないのか?】
「神を気取るものが自分の象徴をわざわざ手放すとは思えんねスカーフェイス君。今油断しているうちがチャンスさ」
【つまり奴が槍を向けたら全力で避ければいいんだな?】
「ああ、そして打ち切ったその時が隙になる。…………あとは奴をどう倒すかだが」
「赤ガキ、さっき教えた技を使えばいいだろ? まさか忘れたわけではあるまい?」
「…………忘れてるわけないだろ」
「この間は怪しいね〜」
「うるせえいミャウミャウ。じゃあ作戦は?」
「俺が立てた。いいか? 俺やサンダーボルト、ミャウミャウが囮になる。隙をついて撃て」
【ゴス! 俺の番は?】
「お前雷避けられるか?」
【…………オノマトピアを盾にするぜ!】
「よし、いくぞ、駒共!」
真っ先に飛び出したのは鬼龍! その両横にサンダーボルトとミャウミャウ。その姿を隠すようにジェイソンは隠れながら走った
⦅わざわざ死ににきたか!! ⦆
槍先を突撃した鬼龍達に向ける。三線の銀光。宙を走り、空を焦がす、必殺の一撃をミャウミャウは化物の跳躍を持って、サンダーボルトは超人の動体視力を持って、鬼龍は弾丸滑りを持って躱した
⦅なっバカな?! ⦆
ワンダジンの驚愕を他所に雷を簡単に避けた3人はワンダジンの四肢を拘束した。ワンダジンは自らの怪力を持って振り解こうともがくが、全く動けない
「やれや、赤ガキ!」
鬼龍の叫びと共に後ろからジェイソンが素手で走る。握り拳を動かないワンダジンの胸に叩きつけた
「塊貫拳!」
ドン
ギュルギュル
⦅あっわわわおっおっおっ はうっ はうっ⦆
「お、おい鬼龍のおっさん、こいつバネの壊れた人形みたいに跳ねてやがる!?」
「ちぃ、頭にやったなお前!」
パン
鬼龍は揺れ動くワンダジンの頭を両手で勢いよく挟む。すると叩かれた頭の上から『気』が飛び出し、ワンダジンは倒れ伏した
「…………たくっ、赤ガキ。殺すならいいんだがこいつからは情報を取らなきゃダメだろ」
「うっす…………すいません」
「まあまあ鬼龍君。死んでないんだから」
【今のうちに縛っておこうぜゴス!】
「それは言えてるな。オノマトピア行けるか?」
鬼龍への返事はサムズアップだった
◇◇◇◇◇
バルデルデ 昼 オノマトピア製キャンピングカー
鬼龍達は廃ビルからジャングルへと場所を移動させた。追手対策である。鬼龍は現在、灘神影流に伝わる複数の拷問と自白術を使って、ワンダジンを取り調べしていた。その様子を描写するのは今回割愛させていただく
他のメンバーは今暇なので思い思いに過ごしていた
ジェイソンは青空を見ながらぶらついている。昔を思い出しながら。いい思い出も思い出したくないことも生温い熱帯の風に乗って消えていく
ふと視線を下げると目の前には同じメンバーのミャウミャウがいた。彼女はマスクを外し、幼なげな美貌の下にある醜悪な怪物の舌を出している。何かを食べているようだ。ミャウミャウがジェイソンに気がつくと、ほのかに頬を赤くしマスクをつけた
「今のは見られたくなかった〜…………」
「一体何してたんだ?」
「アリ食べてた〜。小さい頃からのくせでさ〜やめられないんだよね」
「美味いのか?」
「ん〜ちょっと酸っぱい」
ミャウミャウが歩き出すのをジェイソンは追った
「ん〜っ、付いてくるの?」
「数がいた方が何かあっても楽だろ?」
「なるほど〜」
ジェイソンとミャウミャウの間に会話は無くなった。しばらく気まずい空気が流れる。切り出したのはジェイソンだ
「何年くらったんだ?」
「100年〜。今は10年だけど」
「正当防衛でか?」
「私こんなんでしょう〜? しかも日本人。肌黄色いから碌な弁護士もつかなかった」
「酷い州に行ったせいだな」
「まあね…………」
「あんたは〜?」
「さあね、いまいち覚えてない。裁判時はぼーっとしてたからな」
「それ心象悪くない?」
「俺の顔直視する奴はいなかったよ」
「まじ?! こんないけてるのに〜」
「…………ジョークだよ間に受けないでくれ」
「下手だね〜」
「うっせぇ」
ジェイソンとミャウミャウはお互いくすくすと笑った。少しばかり打ち解けた気がする
「ねぇさ…………星の巡り合わせが違えば、私もヒーローになってたかなぁ?」
真剣な声の質問だ。マスクをとって悍ましい怪物の口を見せてくる
「…………俺、元々車泥棒なんだ」
「えっそうなの?」
「ああ、バットマンの車のタイヤ盗んだらヒーローになってた」
「それってすごい出世だね〜?」
「そのあとすぐ死んで蘇る羽目になるんだがな」
ジェイソンは咳払いし、ミャウミャウの顔を全く恐れず見て言った
「まあつまり、慣れる可能性は全然あるってことよ」
「私が? ヒーローに〜?」
「うん」
「このわたしが?」
「うん」
「…………あんがと」
ミャウミャウは顔をマスクで隠しそっぽを向いた。ジェイソンにその表情を見られたくなかった。気恥ずかしさと喜びが混ざった笑みを見せたくなかった
◇◇◇◇◇
サンダーボルトとベントリロクエストはオノマトピアの作った椅子に座ってコーヒーを飲んでいた
「美味いねぇ! カフェインは私の脳に効く」
若中年は飲みながら瞑想のポーズをとっていた。自らの性能を100%引き出すために必要な行為である。神秘的行為はサンダーボルトの身体と精神をリンクさせ、強くする
「サンダーボルト…………」
「ぬっ? アーノルド君が喋るとは」
スカーフェイスの声ではない、消えうる中年の声がサンダーボルトの聴覚を刺激した
「私に何かようかい?」
「…………あなたは何に操られているんですか?」
「WHAT?」
サンダーボルトはやれやれと言わんばかりに首を振る
「まさかこの私を操り人形だとでも言うのかい?」
「…………違うのですか?」
「違う! 全て私が考えてやったことさ。世界から核戦争の危機を取り除くためにはニューヨークにイカ爆弾を解き放つ必要がだね」
「…………見えますよ、あなたの身体に糸が」
ぴたりとサンダーボルトは動きを止めた
「…………ポケットにあるボタン。血がついてますよね。そこから糸が見えます」
サンダーボルトはアーノルドが指差したポケットからボタンを取り出す。黄色でニコッと笑うマークが入ったものだ。そこには乾いて取れない血が付着している
「よく気がつくね」
「…………へへへ」
「悪い人だ」
サンダーボルトは拳を振り上げる
「駒ども! 情報を吐けたぞ!」
鬼龍の声が響く。サンダーボルトは拳を下ろし解いた
「運が良かったね」
サンダーボルトの笑顔は引き攣っていた
◇◇◇◇
メンバーは鬼龍を中心に集まる。ワンダジンは死んでおり、すでに埋葬された
「スコードロン・ペイバック。残りは6人
・アメリカンクルセイダー
・レッドドラゴン
・パープルレイン
・ブルージェイ
・メジャーマックス
・ベヒーモス
こいつらも殺害対象だ」
「説明は私オシータが後でやるよ」
「でだ、最終攻撃地点はここだ」
バルデルデのマップの中心を指差す鬼龍。首都であり、最大の繁華街「レブーマ」、その中にある一番高い塔『ペイバックタワー』にピンが立っていた
「ここに大統領の娘、ミスター・ブルーム、コンパウンドV、そしてスコードロン・ペイバック全員がいる。準備はいいな?」
反対するものはいなかった
◇この場所は…?!