タフ外伝 Devils×Devil『宮沢鬼龍、スーサイド・スクワッドに入る』 作:スローダンサー
バルベルデ最大の繁華街レブーマ
異国情緒溢れる繁華街の道に黒いキャンピングカーが止まっている。あまりに黒いため、怪しさを感じつつも極力関わらないよう、バルベルデ人は避けて通った。その中で鬼龍達は作戦会議を行なっている。入念な打ち合わせはミッション遂行に重要だからだ
「スコードロン・ペイバックの残りのメンバーについてもう一度確認するぞ」
オシータはバルベルデに流通するコミック調の雑誌をテーブルの上に広げた。六つのヒーローの個人誌。しかし本国のそれと比べるには烏滸がましい出来である
「アメリカン・クルセイダー。第二次大戦の際、連合国の英雄として日本と戦った特殊部隊のヒーロー。長い眠りから目覚めた彼は今のアメリカの在り方に疑念を抱きバルベルデへと向かったらしい。その能力は紫のエネルギーシールドを自在に作り出す」
「コンプレックスが見えるな。大国のヒーローが自国を捨ててまで自分たちに協力している。その程度のプロパガンダしか作れないのだな」
「メジャー・マックス。こいつもアメリカ人。女性初の空軍パイロットの正体は宇宙人に改造されたスーパーヒーロー。空を飛んで、手からエネルギー光線を発射する」
「またアメリカか。自国からは作れないのか?」
「レッド・ドラゴン。ソビエトの伝説的女性スパイ。遺伝子改造により若さを保つ。あらゆる武器のエキスパート」
「アメリカの次はソ連。どこまでも大国のおんぶに抱っこ…………設定も拙いな」
「ブルージェイ。科学者。自らの体を小さくする粒子を作り出したこの男は、バルベルデの国鳥アオカケスからインスパイアされたコスチュームに身を包んだ」
「ふん、その技術もアトムからパクったものだろ? とってつけたように国鳥を出しているが、こいつがバルベルデの人間か甚だ怪しいものだ」
「パープル・レイン。女性型アンドロイド。スコードロン・ペイバックを倒すために作られたが、紆余曲折の末に仲間になる。マインドコントロールの名手」
「ふん、敵が友情の末、味方になる。陳腐だな」
「ベヒーモス。科学者。特殊な放射線を浴びた影響で巨大な赤ん坊になる。こいつだけ見たことないな。おそらくただの予定だろうね」
「見切り発車のヒーローを作るとはよほど人不足に見える」
オシータがコミックを出すたびに鬼龍は酷評していく。このような欺瞞を鬼龍は好み、そして笑うのだ
「で? 作戦はどうする?」
「シンプルに行こう」
ジェイソンの疑問に答えたのは鬼龍だ。取り出したのは黒いゴルフバッグ。それを6つだ
「中にはオノマトピア特製の爆弾が多量に詰まっている。オシータとハーレイ・クイーンは陽動をしてくれ。市街が混乱している間に俺たちはタワーに侵入して爆破する」
「爆破だけで偽ヒーローチーム倒せるの〜?」
「まあそれだけでは無理だろうな。あくまでコンパウンドVの材料になる花をタワーごと潰す。その後、奴らを殺す」
「シンプルと言うよりかは粗雑な計画ではないか鬼龍君?」
「何が起こるかわからないだろ? 作戦の細部なんざその時々で詰めていけばいいのさ」
【大雑把ですなぁゴス!】
「ならもっといい作戦を提案できるかスカーフェイス?」
【俺の出来ないことを盾にするのはいけませんぜ?!】
「落ち着け…………鬼龍のおっさん。俺に異論はねぇ。皆もそうだ。だよな?」
ジェイソンの物言いに口を挟むものはいなかった。ここで口論して面倒ごとになるのを皆避けたかったのだ
「…………よしっ、ではお前ら作戦を開始する準備はいいな」
その言葉に皆はサムズアップを出すのだ
◇◇◇◇◇
バルベルデ最大の繁華街レブーマ 昼
繁華街で爆破が起きた。政府の警備兵達は燃え上がる煙に向かって行き銃声を奏でる。オシータとハーレイ・クイーンが行動を開始したのだ
「さすがはハーレイ・クイーンに反政府ゲリラのオシータ。破壊工作はお手のものか」
「鬼龍のおっさん。兵士たちはあらかた散ったようだぜ」
「よし…………駒ども突撃だ」
黒のゴルフバッグを持ち、鬼龍達はペイバックタワーへ、突撃していく
ペイバックタワーは高級ホテルのような装いだった。財の限りを尽くして飾られた宝石彫刻絵画、それはヒーローの基地というよりかは、成金趣味の美術館である
【ゴス、ここのもの全部売ったらどれだけの値段になるんでしょうね?】
「知らんな。そもそもここに本物はない」
【そうなんですか?】
「出来が少しいいニセモノだけだよ。この絵なんて弟子が模写した物だ」
鬼龍は拳を持って風を起こす。風は油絵に向かって進み、ぶつかる。すると油絵に罅が入り、奥にある下絵が丸見えとなった
「なっ?」
「おっさんすげぇな」
ジェイソンの賞賛を満更でもなく受け取る鬼龍。だが、ここで油を売る暇はもうない。鬼龍達はエレベーターを発見すると、上へ行くボタンを押した
エレベーターが光る。
番号が少しずつ降ってくる。
それを見る鬼龍達。
1分経った。
エレベーターはまだ来ない。
5分経った。
エレベーターはまだ来ない。
10分経った。
エレベーターは来ない。
15分20分30分45分65分。
いつまでもエレベーターが来ない。
何かおかしいと思うが違和感を認識できない。
身体が崩れる感覚がする。斃れる。雨が降る。
紫の雨だ。
誰かが歩いてくる
声にならない声をあげている。
胸の龍は見たことある。
鬼龍は目を開く。
その男の名前を叫ぶ。
紫の雨は降り続いている。
鬼龍の周りが崩れる。
自分の父が出てくる。
アメリカ軍が作って自分の遺伝子兵器が体をつかむ。
紫の雨が体を凍えさせる。
心臓が痛む。
目の前に自分の墓がある。
心臓の鼓動が聞こえる聞こえる聞こえる聞こえる聞こえる聞こえる聞こえる聞こえる
◇◇◇◇◇
倒れ伏す鬼龍達を上から見下ろす女がいる。鉄仮面をつけ、メタリックなスーツに身を包む彼女はパープル・レインだ。鬼龍達の異常は彼女の力によるものである。他人の神経を狂わせ、支配し、発狂させる。後数分もすれば彼らは正気を失ってしまうだろう
⦅まあ万が一に備えて⦆
パープル・レインは腰から拳銃を取り出した。今動けないところに向かって確実にとどめを刺そうとしている。パープルレインは強力な超能力を持つ代わりに身体能力は常人ほどだ。だからこのような小道具が必要になるのである
⦅ひひひっ、バイバイ侵入者。貴方達が見る死人は本物になるわよ⦆
パープルレインは拳銃の引き金に指をかける
ヴィィィィィィィィィィィィィ
⦅あれっ⦆
パープル・レインは背中から倒れた。彼女が後ろを見るのは必然だろう
【きひゃひゃ、赤い血が流れてやがる。アンドロイドってのは嘘なんだな!! 偽物ばっかじゃねーか!!】
そこにいたのは人形を持った眼鏡の中年である。人形の手にあるドラムマシンガンの模型からは煙が出ていた。ベントリロクエスト。腹話術師を意味する名を持ったギャングである
⦅な、なんで平気なんのよ?! ⦆
【けけっ、ベントリロクエストを操れるのはただ1人なんだよ!! ただ1人!!!】
ヴィィィィィィィィィィィィィ
【つまりこの俺だ】
物言わぬひき肉となったパープルレインを蹴り上げるベントリロクエスト。そして横たわっている仲間達を起こしにいった
【おい、ロギン! 死んでる場合じゃねーぜ】
「うっ…………ひでぇもんだぜっ」
ジェイソンは首を振るう。スカーフェイスが他のメンツを起こす中、鬼龍の口からジェイソンは名前を聞いた
「ジェット…………」
苦しげに口にした鬼龍をジェイソンは起こす
「…………チッ、助かった赤ガキ」
「礼を言うならスカーフェイスに言ってやれ」
【へへっ、ゴス。俺がいなかったらお前ら終わってましたなぁ!】
笑うスカーフェイスに釣られて皆笑ってしまった
ボッ
スカーフェイスとベントリロクエストの頭は赤い花になって吹き飛んだ
「なにっ」
ヒューっ
「argh*1?!」
オノマトピアの首に細い糸がつけられ、ドンドン空へ登っていく
「え〜っ?! なにがおきてるの?!」
⦅貴女の相手は私だぁっ⦆
状況についていけないミャウミャウの腹に空を飛ぶ女がタックル。そのまま掴んで窓を割っていく
パンッ
「うっ」
⦅かっこいい赤いマスクだな! 私の青いスーツとどちらが上か勝負よ! ⦆
ジェイソンのコートの裾が何か小さなものに引っ張られて行き奥の部屋へ消えていく
⦅しゃあっ、チャージング・スターっ! ⦆
「ぐはっ!?」
鬼龍に突撃をかます盾を持った男はアメリカン・クルセイダーだ。目から口から血が噴き出す鬼龍。だがこの突進を鬼龍はガッチリ抑え込む
⦅なにっ⦆
「愚か者のくせになかなかやるじゃないか!」
冷や汗をかきつつ力を込める鬼龍。身体能力は互角? いや向こうのほうが僅かながら上だ!
「サンダーボルト!」
「なるほど…………承知した鬼龍君!」
サンダーボルトはおおよそ常人とは思えない並外れた速度でエレベーターを破壊し、上へと登っていく
⦅貴様ぁっ仲間を逃したな? ⦆
「…………⦅お前なんて俺1人で十分だよ⦆」
アメリカン・クルセイダーは目の前の男が突如母国語を喋り驚く。その際、緩んだ力を鬼龍は見逃さない。柔道の背負い投げで大きく投げ飛ばした
空中に投げ出されたアメリカン・クルセイダーであったが、オリンピックの体操選手顔負けのバク転を繰り出し、なんの問題なく、地面に着地する
離れた距離は10m程、お互いの呼吸があった時、その距離は0となる
ボボパン
ボボパン
ボボパン
ボボパン
ボボパン
ボボパン
鬼龍とアメリカン・クルセイダーの殺し合いが始まった
◇勝負の行方は…?!