ファインダー越しのイジツ 〜荒野のコトブキ飛行隊〜 作:redcapshadow
かつて戦いがあった。
いや、戦いなんて今までに幾度となくあった。
この果てしない荒野が続くこの世界で細々と暮らしていた我々だったが、ある日空に開いた穴の向こうからやって来た人々…「ユーハング」。我々は彼らとの交流により伝えられた飛行機や技術や文化のおかげで、ちょっとした潤いがこの世界にもたらされたのだ。
しかし、それがまたある日に「ユーハング」は突然穴の向こうに帰っていってしまい、穴もそれ以来消えてしまった。
それが今から70年も前の話。
その後イジツの人々は遺されたユーハングの置き土産を狙い、こぞって争いをはじめた。
悪党や商人にそのおこぼれに与ろうとする者、老いも若きも男も女も関係なく巻き込み、そして飲み込まれていった。
そこいら中で戦いが起き、それこそ何のために戦っているのかも敵も味方もよく分からなくなるぐらい続いたある時、ひと際大きな戦いが起こった。
原因がなんだったのかは詳しくわからないが、どこかの誰かが一発大逆転を狙っただとかでそれはもう大激戦。これが後に「リノウチ大空戦」と呼ばれる戦いでありこれが8年前の事。
そうしてようやくこの世界に平和が訪れた…
というわけでもなく相も変わらず空賊がそこらを我が物顔で跋扈していて争いは続いてる。だけどなんだかんだ生きていけてるのがこの世界「イジツ」なんだ。
…そして戦いは今、目の前でも起きている。
空襲警報!
その時自分は九七式艦攻の偵察員席でカメラを構えていた。アレシマ市近郊の上空から街並みの写真や今回のイベント関係の風景を撮影するためだ。
最初は聞こえて来たその「音」の意味を図りかねていたが、すぐに身をもって味わうことになる。突然現れた戦闘機から機関銃弾が雨あられと我々に降ってきたのだから。
電信員席が地上と操縦席に向かって吠えている
「こちらワナカ新聞社所属の九七式艦攻だ、現在空賊と思われる戦闘機から攻撃を受けている!アレシマ飛行警備隊応答しッ!オッちゃん右後方から突っ込んでくるぞ、ヤバいって!!」
操縦席も負けずに吠え返す
「うるせぇ分かってるよ!!チッ、なんでこんなに接近されるまで気が付かなかったんだ!おめぇ達の目は節穴か!あれほどしっかり見ておけと言ったろうが!!!」
鈍重で旋回機銃を降ろしたこの取材用の九七式艦攻で戦闘機を相手取るなんて土台無理な話、だから先手を打って退避するのがセオリーなのだがもう遅い。
「いや、まさかこんな大きな街の近くまで空賊が来るだなんてさ聞いたことないよ。あいつら大体ノロい飛行船や単独行の飛行機を狙うもんだろう!?」
そんなやり取りを横目に向かってくる空賊をカメラに納めようとしたけど、高速で動く戦闘機相手に備え付けの航空写真機では思うにいかず、首に掛けていたカメラに持ちかえる。
「すいません、写真を撮るのに夢中になってました(カシャ)ん~あれは零式艦戦でしょうか?(カシャ)あ、なんか赤と黄色でマーキングが描いてありますね(カシャ)」
突然現れた正体不明の零戦を撮影しつつ
「ええい、言い訳は生きていたら聞いてやる!チクショウ振り切れねぇなクソが。あとボウズこんな状況でカメラとは余裕じゃないか。えぇ!」
電信員席と自分は口々に言葉を返すが操縦席はかなりお冠のようだ、かくいう自分も外から見られるほど余裕があるわけじゃない。昔からカメラを構えていると不思議と落ち着いた、そのおかげなだけ。
とは言っても今はピントどころかタイミングすらロクに合わないままシャッター切っている。そもそもこんな不規則な機動の中でまともな写真が撮れるわけがないのだが、それでもカメラを離すことはできなかった。
ふとファインダーから顔を上げるとアレシマを挟んだ反対側の空に黒煙を上げながら飛行機が落ちていくのが見えた、空賊か警備隊のどちらかはわからないがあちらでもドンパチやってるらしい。
できればそのお仲間には加わりたくない。
「しつこいなコイツら。俺達をアレシマの哨戒機かなんかと勘違いしてやがるのか?」
「だったらどうする!?今から無関係だから見逃してくれとでも言えってのかよ!」
「いやもうアレシマに通報しちゃってるから、あながち間違ってもない気もしますが」と自分がこぼせば電信員席がソウダッターと頭を抱える。
その時、ガクンと機首が大きく下がった
「この高度じゃ機体を捨てて脱出もできねぇし、かといって上昇かけて速度も失ったらいいカモだ。こうなったらこっちは出来る限り低空を飛行してアイツらが突っ込んで来た所を左右に振ってかわしていくしかない」
「何でもいいからなんとかしてくれよ!」
「だったら絶対敵を見失うな、今何機追って来ている?」
「二機だよ!二機!え~と5時の方向から回り込んできてる!」
「フン。どうやら相手の腕はそんなによくない。本来だったら最初の一撃でとっくに終わってるさ」
ヘボ野郎に落とされてたまるかとオッちゃんが吐き捨てる。こちらを安心させようとしてくれているのかもしれないが物言いが物騒だ。
「よし、真後ろに来たら合図しろ」
そうこう言っている間に、二機の零戦が旋回しつつこちらの後方を捉えようとしていた。
「いやいやもうこっちに向いてるって」
零戦から発砲、機銃弾がばら蒔かれるも外れだ
「ケツにつけられてなけりゃそうそう当たるもんじゃない」
空賊の機体がどんどん大きくなる
「ヨーシ、今だ!」
電信員席が叫んだ
そして返事もなく機体が左へと振られるとさっきまで居た位置に機銃弾が通りすぎて…
ガガガガッ
いや被弾した
「オイ?!当たった当たったぞオッちゃんの嘘つき!!
」
「こっちは足つき九七式艦攻なんだぞ!それに7.7㎜くらいでガタガタ言うな!!20㎜だったら今頃バラバラで御陀仏だ!!」
たしかに大口径の弾は直進性が良くないから致命傷を避けれたことは間違ってない。
そして、こちらを被弾させた機体が右旋回でこちらの側方を抜けていくが、その後ろに居たもう一機の方はそのまま追い縋って来る。
「チッ、旋回性の高い零戦相手にかわしきるのは流石に無理か」
「無理ってなんだよ無理って?!あぁ〜誰でもいいから助けてくれ〜!!」
その時、電信員席の声に答えたのかどうかはわからないが前方からこちらに向かってくる機体に気がついた。
「前から来るあれって救援ですかね?」
カメラを空賊から前方へ向け直しながら自分が問いかけると。
「わからん。ただ一つ確実なのは敵だったら助からないって事だけだ」
そうだ、真正面からの反航戦になる。武器は勿論無い。
ファインダー越しに見えるのは二機の青色の塗装がされた機体。
(後ろの空賊とは違うな?)と一人疑問に思うと。
電信員席から「オッちゃん今だ!!」の声。
機体はもう一度左へ滑る
前から来る戦闘機にピントを合わせ、カメラのシャッターを切った瞬間、前方の機体から火花が散った。その数瞬後に後ろから爆発音と視界の端に九七式艦攻の右側の補助翼が吹き飛ぶのが見えた。
「ダメだ、機体を制御できない!落っこちるぞ!!」
自分はとっさにカメラを抱えるように上体を下げた、その次の瞬間。
ドガッ
ズガガガ
凄まじい衝撃と振動、それから天地がひっくり返るような感覚に襲われた後、機体は停止した。
「どうして…こんなことに…」
誰かの言葉が聞こえたのを最後に自分は意識を手放した。
荒野のコトブキ飛行隊が好きなのですが、特にイジツという世界があまり掘り下げる資料がないのが少しもったいなく思います。
だからこの世界でなにか作ってみたいという気持ちが湧いたのがこの作品の制作動機です。
今でも二次創作している方もいらっしゃるから勇気を貰えましたしね。
一話のパク…ネタが大体わかった人とは良い酒飲めそう笑