シャンフロで商人プレイする奴の話   作:白詰

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シャンフロで商人プレイする話その8

 

 

旅狼(ウォルフガング)黒狼(ヴォルフシュバルツ)図書館(ライブラリ)にSF-zooの連盟が出来上がって日をまたぎ、とある半裸鳥人がやる気を無くして別のロボゲーに走ろうとしていた頃。

寄り道のし過ぎでフォスフォシエに居たため、その連盟(金の話)に参加し損ねたアンバーは何をしているのかというと

 

 

 

「お兄さんアンタそりゃ見間違いってやつだよ」

 

「だからよぅほんとなんだって、嬢ちゃんは信じてくれるよな?」

 

「ないわけじゃない、とは思いますけど……うーん……」

 

 

第8の街エイドルト、その大通りに面した酒場にて商人クエスト(ウィークリークエスト)をこなしつつ、カウンターで1人の酔っぱらったNPCの話をクエスト主の酒場の店主と聞いていた。

とはいえ、なにも暇つぶしというわけではない。このカウンターで酔いつぶれている者がいるときには、なるべく話を聞いておいた方がいい、というのはある程度のプレイヤーは知っていることである。

 

 

「ほんとなんだよ、俺は見たんだ!奧古来魂の渓谷でよぉ、上から水晶群蠍(クリスタル・スコーピオン)が降ってきたんだよ!いきなり何体もだぜ、怖くってよォ」

 

「でもそのまま消えたんだろう?見間違いだよそりゃ。ワイバーンゾンビかなんかだ」

 

「縄張り争いかなにかがあったのかもしれませんけど、何体もっていうのは不思議ですね」

 

「本当なんだよぉ~なんかデカい音もしてた気がするしさ……」

 

 

そう、なんとこのNPC。出現した街の近くにて発生したイベントであったり、近くにいるプレイヤーに関係のある情報を、おおまかにではあるが教えてくれるのである。

話の伝え方は今回のように酔いつぶれながらというのが主であり、さらには多少の誇張が入っているのでそこまで信用できる情報とはいえないのだが、それでも手軽に使える情報収集の手立てとして一部のプレイヤーにはありがたがられている。

そんな情報源であるため、アンバーもクエスト完了になるまでの待ち時間に話を聞いていたのだが、どうやら今回は渓谷でのイベントの類か何かだったようだと彼女は当たりをつけた。

おそらくは何かしらの、それこそ縄張り争いかなにかがあったのだろうとそう考えた彼女は悪くないだろう。

実際には最近知り合った敏速極振り紙耐久(サンラク)による突き落としダルマ事故の被害者だったのだが、それを考えつけるのは同じ装備を手に入れている者たちくらいである。

 

 

 

「それじゃ、私はこの辺で」

 

「またよろしくー。で、アンタはいつまで飲んでんだ」

 

「ほんとなんだよぉ…………」

 

 

クエスト完了のウィンドウと共に席を立ち、すっかり日が昇ったエイドルトの街をアンバーは歩きながら、さてどうしようかと考える。

ここからとれる行動は大きく三つである。一つは、王都であるニーネスヒルへと向かう道。単純にデカい街であるためそれなりにやることも多いが、そのやることのほとんどが今まで来た道を逆走することになるのが難点である。

二つ目は、あえてこのままエイドルトに留まる。ペンシルゴンからの集合地点でもあったので、居ればまぁ誰かには会えるだろうという考えである。そこから内容が聞ければ万々歳といえるが、逆に誰にも出会わなかった場合はただの時間の無駄になる。

三つめはこのままフィフティシアまで突っ走ること。それなりの時間はかかるが、辿り着ければやることは王都並みに多い。クランメンバーもそれなりにいるが、とにかく辿り着くのがめんどくさすぎるのが難点か。

 

 

「フィフティシア、かなぁ」

 

 

ぽつり、と目的地を呟くアンバー。イレベンタルを通るまでいいとしても、その後の道中にいる手癖の悪い飛行物体(ユザーパー・ドラゴン)の存在だけがあまりにも嫌だと少し顔を歪ませる。

自分が弓を持つ原因になった相手へのトラウマは、まだ消えていなかったようである。

 

 

「おや、アンバーくん」

 

「あ、キョージュ。お久しぶりです」

 

 

 

行くと決めた以上は、とにもかくにも準備から。そんな思いでエイドルトにある道具屋に入ろうとしたアンバーは、ちょうど中から出てきた魔法少女と目が合った。

見た目の可愛らしさからくり出される渋い男性声というギャップにも複数回出会えば慣れるものである。とはいえ周りのプレイヤーがギョッとした顔で振り返ったりして注目を集めているので、挨拶もそこそこに移動する。道具屋はあとでまた寄ればいいだろう。

 

 

「キョージュはどうしてまたこんな所に?なにか新しい発見でも?」

 

「この前のウェザエモン討伐に関しての進展があってね。年甲斐もなく走ってやってきたというわけさ」

 

「おぉ、じゃあ結構重要な情報を手に入れたわけですね」

 

「その通りだとも。手痛い出費もあったがね」

 

 

そう言っているキョージュの顔は、しかしそんなことは関係ない。といわんばかりの喜びが溢れていた。

ということは、本当に大きな収穫があったのだろうとアンバーは推測する。

ペンシルゴンも昨日この街に来ていたはずなので、もしかしたら彼女から直接情報を買ったのかもしれない。

だいぶ吹っ掛けられたと思うが、まぁこの喜びようはそれほどの価値があるものだった、ということなのだろう。

 

 

「アンバーくんはジョブ関連かい?」

 

「はい。ちょうど今からフィフティシアに戻るところで」

 

「なるほど、ちなみにだが新大陸の状況なんかは知っているかい?」

 

 

相変わらず頭の回転が速い、とアンバーは心の中で舌を巻いた。どうやら道具屋で出くわした理由も完璧に理解されているようである。

 

 

「その辺は疎くて……よければ、教えていただけると」

 

「実は新大陸では、いま武器を持っている者より斧を握っているものが多いと聞いているよ。衣食住……まずは住から、ということだろうね」

 

「ありがとうございます」

 

どうやら、買う物を大きく変更した方がよさそうである。聞いておいてよかったと彼女が思いながら頭を下げれば、キョージュはいやいや、と軽く手を振って応えた。

 

 

「これから家内につづいて私も世話になるかも知れないからね。その時はよろしく頼むよ」

 

「ええ、その時はぜひ。……ところでなんですけど、水晶群蠍が落ちてきたって話、知ってます?」

 

「ほう!いや初耳だね、聞かせてくれるかな」

 

 

もちろん、と答えながら内心では先ほどのNPCへの感謝を唱えるアンバー。既出の情報かもしれない恐れがあったが、反応的に先ほどの情報とは釣り合っているようだ。

受けた恩は早めに返すのはアンバーのモットーである。なぜか?それを盾にせまってくる悪魔がいるからに他ならない。

 

 

 

「NPCからなので確証はないんですけど、どうやら深夜に上から大量に降ってきた。ってことらしいです」

 

「ふむ……縄張り争いか……いや、群とまで入っているわけだからそれは……ありがとう、考察しがいのある面白い話を聞くことができたよ」

 

「いえいえ、こちらこそ」

 

 

 

お互いに実りのある会話にできたことに安心しつつ、アンバーはキョージュと手を振って別れる。

その足で向かうのは道具屋、しかし買うのは戦闘職用ではなく、生産職系に必要な物資たちである。降って湧いたお金の匂いに誘われて軽くなった足取りでフィフティシアに向かうアンバーの頭には、道中にいるとあるボスモンスターのことなど欠片も残っていない。

 

 

 

 

――それが無果落耀の古城骸にてブチ切れながら弓を乱射する姿が見られる数時間前の出来事であった。

 

 

 






ちなみに教授はペンシルゴンが商連との直接的なパイプを持っていないことは見抜いてます。
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