シャンフロで商人プレイする奴の話   作:白詰

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途中から書き方が変わるのを)許してください


シャンフロで商人プレイする話その9

 

 

「お、終わったぁぁ!」

「強敵であったでござるなぁ」

「皆さんお疲れさまでしたー!」

「お疲れ様です……!」

 

無果落耀の古城骸、そのエリアボスである簒奪者の竜(ユザーパー・ドラゴン)がポリゴンとなって消えていくのを見とどけながら、サンラクたちは各々の思いを吐き出した。

直前に発生したリュカオーン戦のせいで準備不足に陥っていたとはいえ、やはり空を飛ぶ(プレイヤーが届かない)タイプのモンスターは厄介だと再認識させられたサンラクは、この戦いを終わらせるためその身を挺して行われた「兎砲弾(スーパーエムルキャノン)」によって未だ気絶しているエムルを担ぎ上げる。

まず間違いなくこの戦いのMVPはエムルである。今は白目をむいているものの、それもあの勇敢な特攻を思い返せば仕方ないことだろう。第二射のシークルゥの出番がなかったのは間違いなくエムルの犠牲――もとい、活躍があったからに他ならないのだから。

 

 

「うーん、とはいえ俺の手が塞がるのもなぁ」

 

 

そう、ボスを倒したとはいえここはいまだフィールド内。サンラクとてこのままエムルを眠らせておいてやりたいところではあるのだが、もし接敵した場合にエムルを担ぎながら戦う、となると厳しいものがある。

さてどうして起こそうか、とりあえず一発大声でも出してみるかとサンラクが考えていると、一人の少女が手を挙げた。サンラクに出会うためサードレマから全力ダッシュで会いに来たという秋津茜、その人である。

 

 

「じゃあ私が抱いておきましょうか?さっきので手裏剣も無くなっちゃいまして」

 

「おぉ、なら頼むわ」

 

「はい!任せてください!」

 

 

そうしてエムルを秋津茜に任せたサンラクたちは、少し白んできた空の下で攻略を再開する。とはいえボスを倒した以上残るはフィフティシアまでの一本道を多少警戒しながら歩くだけ。リュカオーンとの遭遇、そしてその撃退を共に成したことで距離が縮まった一行は、和気藹々と談笑しながら進んでいく。

 

 

「そういえば、レイ氏に聞いてみたいことがあったんだけど」

 

「ははは、はい!な、なんでも……なんでも聞いてください!どんなことでもお、答え…します!」

 

「お、おう……。いや、そんな深いことじゃないんだけどさ、レイ氏が知ってるシャンフロでの面白い事件とかある?」

 

「あ、私も気になります!」

 

「シャ、シャンフロ内での事件です、か……」

 

困った。そうサイガ‐0は思った。

もちろんシャンフロはそのユーザー数の多さから数々の事件がある。そしてこの場にいる誰よりも早くシャンフロをプレイしていたサイガ‐0はもちろんそういった事件の数々を知っている。知っているが故に、どの事件について話すべきなのか困っているのだ。

 

一番食いつきが良いのは、やはりこの三人共通のユニークモンスターである「夜襲のリュカオーン」についてだろう。しかしリュカオーン関連での事件となると「黒狼(身内)」の話になってしまうため、少し躊躇いがあった。

とすれば、サンラクのクラン「旅狼」のリーダーであるペンシルゴンの話だろうか。けれどペンシルゴンの起こした事件の話をするとなると必然的にPKの話になってしまう。秋津茜(初心者)の前でそれはちょっと……という気持ちがある。

心の中で様々な葛藤と戦いながらサイガ‐0が導き出した話は

 

 

「そうです、ね……「聖女ちゃんストーカー被害事件」って、いうのがありました」

 

 

 

 

この場の誰とも関係がないが、その名前といきさつで広く知られている話だった。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「最近、その……少し愛情表現が特殊な方々が来られてまして……」

 

事の始まりとしては、プレイヤー間において絶大な人気を誇るNPC「聖女イリステラ」のそんな一言からだった。

リアルの問題で少々ログイン期間が空いてしまった「聖女ちゃん親衛隊」もとい「聖盾輝士団」のリーダー(好感度1位)「ジョゼット」がRPの一環として調子を聞いた際に発せられたその悩みは、「ジョゼット」含む聖盾輝士団が己の不甲斐なさを悔やみながら、しかし迅速に掲示板にて情報を共有したことで、一気にプレイヤー間で広まり、そして大多数のプレイヤーによる犯人探しが行われたのだ。

 

「聖女ちゃんに迷惑を与えた不届き者に死を!」

「変態野郎に制裁を!」

 

そんなスローガンを掲げたものたちが朝夕問わず走り回っている姿は、ある種のカルトじみていたものだと目撃者はいう。

けれど、多くのプレイヤーがそんな憤りを力に変えて捜索しているというのに、即座にめぼしい成果があがる、ということはなかった。

しかしそれもそうだろう、そもそもイリステラの周りには聖盾輝士団以外にも多くの護衛用NPCが警備として駐在しているし、それ以上に多くのプレイヤーが出入りしている場所でもある。

そんな中で起こったのが今回の事件なのだ。やたらと巧妙な手口で行われているのに違いなかったのである。

 

 

3日間に及ぶ多くのプレイヤーの捜索も空しく、ただ時間だけが過ぎていく焦燥感に聖盾輝士団の面々が襲われる時、とあるプレイヤーによる掲示板へのこんな書き込みがあった。

 

「聞かなかったから言わなかったんじゃなくて、好感度足りてなかったからじゃない?」

 

 

それは話の流れとしてはジョゼット以外に聖女イリステラがなんで言わなかったのか?という疑問に対する一つの反応だったのだが、これをみたクラン「図書館(ライブラリ)」所属のプレイヤーによって、深掘りがなされ、そしてとある仮説が打ち出された。

 

その仮説とは「好感度1位くらいにしか話せないほど秘密性が高く、しかし不特定多数が利用するような場所での出来事なのでは?」という物だ。

本当は話してはいけないが、しかしあまりに不愉快だったため、思わず好感度の高いジョゼット(同性)にでてしまった不満――そして、教会内にはそれに該当する場所があった。そう、()()()である。

懺悔室というのは、プライバシー保護の為お互い顔が見えず声しか聞こえない。さらにはPKペナルティの恩赦を得るために、基本的には誰でも入れるようにされているのだ。そして聖女イリステラもその場所に人が足りなければ告解の相手として出ることがあるのも確認されている。とすれば、その仕様を悪用したのではないか、と。

 

この仮説が出されたのちのジョゼット率いる聖盾輝士団の行動は素早い、などというものではなかった。

残念ながら聖盾輝士団の力をもってしても、懺悔室を利用した者の把握は――NPCなども混ざっているため――不可能であったが、仮説を基にいえば、聖女イリステラ以外のシスターor神父を引き留めていた仲間がいると判断し、それらに対しての炙り出しを開始。

すると明らかにローテーションで足止めを図っていたと思われるプレイヤー達が多数炙り出され、そこから連鎖的に多くの犯人が捕まっていった。

 

この際、捕まったプレイヤー達の言い分は悲惨というより醜さのほうが強いものであったという。そしてそんな中で捕まったプレイヤー達は少しでも罪を軽くしようとお互いのことを売り出したのだとか。

醜い自己保身に走った者たちが等しく裁かれていく中、ついにこの仕組みを考えたプレイヤーまでもが売られたことによって、この騒動も決着を見るかと思われたのだが……

 

その元凶であるプレイヤーは捕獲される際、衆人監視のなかでこう叫んだのである。

 

 

「他にも同じことしてるやつがいる!そいつの真似をしただけだ!」と

 

 






実際にはレイ氏がこんな感じのことを話しているということでユルシテ……
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