ジャックは救われたけど俺の心は死んだ
説明プリーズプロゲーマー
ラウンド中起こったことがわからねぇ
「えーーーっと、どっから説明しましょうかね」
開いた口が塞がらない、とはこういう事なんだろうなと、モニターから流れる
全四ラウンドから繰り広げられた大熱戦は、この後のケイ対シルヴィアの対決の前に多少ではあるが解説しておかねばと思うほどに熱く、そして素晴らしい戦いだった。キャラ選択時はエンタメに振り切ったかと思ったが、ノーフェイスの戦い方を見た後では、たしかにカースドプリズンでしかできないと実感させられた戦いだった。
「次のラウンドまで時間がないので短くいきます。とりあえず第一ラウンドはスルーで、解説は第二ラウンドから」
最初の第一ラウンドは、言っては悪いが予想通りな結果だった。
ノーフェイス本人の実力の高さが分かる攻防ではあったのだが、常時最高潮、といった具合のミーティアス相手にスロースターター気味のカースドプリズンではやはり相手が悪い。
上手く捌いてはいたものの、最終的な結果を見ればミーティアスは無傷で勝利した上、最後の一撃に関してはカースドプリズン側は全くの無抵抗で受け入れていた。そもそもがこう……消極的というか、攻めっ気が感じられなかったというか………なかなか来ないケイのために時間稼ぎでもしていたのではないだろうかと邪推してしまう。
しかし、第二ラウンドになった途端、その考えは改めることを余儀なくされた。どうやらカースドプリズンだけでなく、ノーフェイスのほうもエンジンがかかるのが遅いタイプだったらしい。
第一ラウンドはなんだったのかと思えるほどに、まさしくギアが入った攻撃を繰り出すカースドプリズン。
いや、ギアが入ったのではなく様子見をやめたといったほうがいいのだろうか。ミーティアスの攻撃の後隙を捕まえたかと思えば、カースドプリズン特有の仕様を使った無理な体勢からの一撃。ここからリズムを掴み、空中のミーティアスへの投擲攻撃に怯んだところに間髪入れずにタックルと―――なるほど、やってることは単純だ。
が、それをやれるのは頭がおかしいと言わざるを得ない。
だってそれは、
「あ゛ー、説明してて頭痛くなってきましたよホント。」
なんで急に攻撃当たるようになったんかね
シルヴィア油断してたっぽい
油断した程度であたるような奴じゃないんだよなぁ
対戦中はコメントを真剣に見ている余裕はなかったが、おそらく多くの視聴者には急にノーフェイスが漫画の主人公のように覚醒して、劇的に強くなったようにでも見えていたことだろう。
とはいえ、
であれば、なにをすれば全一相手に無名選手がここまでやれるようになるのか。
「ノーフェイスはアレです、選択を押し付けられる前に押し付けてるんですよ。後の先を取るために先の先を叩きつけてるんですね」
言ってることはわかる。意味はわからん
わざと殴って反撃にクロスカウンターってこと?馬鹿なの?
言葉にするなら簡単だ。相手がしてくる行動が分からないから、
なるほど、格ゲー、というより対人ゲーの基本に近い。勝てる状況に持ち込んでいるだけだから、誰だって無意識にやっていることでもある。
それを第二ラウンドでノーフェイスはやっただけだ。そこまではいい。
問題は、それをやっているのが無名の選手で、やられているのが全米一位なことだ。
「シルヴィの厄介なとこは、別に必勝パターンが決まってるわけじゃないとこです。どこからでもリーサルを決めれるし、相手の行動を見てから別のパターンに切り替えたりもするんです。だからこれは、シルヴィが
何パターンの勝ち筋あればやれるんだよ
クソゲーに対処するためにクソゲー押し付けるの草
クソゲー、確かにそういう表現のほうが近いのかもしれない。見てから対処するのではなく、対処してくる行動に対処する。
先読みなんて目じゃないレベルの難易度だが、それを実際にやられてしまえば何も言えない。どんな理論だろうが勝ったのならそれは正しいのだから。
奇しくもプロゲーマーの中での「カウンターで捕まえる」というシルヴィアへの攻略法は正しかったわけだ。先に先にと攻撃を繰り出した上で出てくる相手のカウンターをカウンターで捕まえる必要があっただけで。
「できたらあなたでも多分シルヴィ以外には勝てますよ。できればですけど」
机上の空論とかいうレベルじゃない
イキリ方が虎の威を借る小物で恥ずかしくなってくる
イキリマンはまずプロになってからコメントしろ
“
というか話はこれで終わりではない、最大の問題は第三ラウンドのダブルノックアウト、つまりガチ中のガチになったシルヴィアと引き分けたことだ。
第三ラウンドまでくると、基本的にはただの直接対決に近い。そこまでのゲージ消費の有無程度のアドバンテージはあるが、それだってすぐに覆せる。ヘリを取り込んで――おそらくはノーフェイス本来の持ちキャラの――全く別人のような戦い方になっていなければ、勝敗はミーティアスに傾いていたかもしれない。
明らかに本命の扱いなれた二刀流スタイルと高速戦闘にめまいを覚えたが、それくらいに全てが十全にできなければ全一には追い付けないということだろう。事実そのおかげでミーティアスの
結果としては相打ちに終わったが、普通はあそこから切り返して一発入れるのは無理なので純粋にシルヴィアが上手かったにすぎない。
第四ラウンドは、あれはもう仕方がない。ノーフェイス側に落ち度はない、ただただシルヴィアのスタミナが化け物なだけである。それでも高高度プロレスで一矢報いたあたりは流石だ、爆散前の焼き肉という叫び声は気にしない方針で。
「まぁ、つまるところ。必殺の初見殺しを複数用意して、その上で飛んでくる反撃を読み切った上に本命のスタイルで捻じ込めば、ここまでやれますってことですね」
これが世界レベルか……
世界がこんな魔境であってたまるか
あったんだよなぁ
ここまでやって勝てない全一はなんなの
「でも勝てないわけじゃないですよ、相手だって人間ですから」
受け売りの言葉だ。格ゲーを始めたころにたまたまランクマッチで当たってボコボコにされ、そこそこ自信が付いた頃に再戦して、それでまたボコボコにされたそんな因縁がある相手に言われた言葉。
話が進んでプロになったときに素性を知り、大会で顔を合わせるたびにやっぱりボコボコにされるようなそんな相手がくれた言葉は、はたして本当は誰に向けたものだったのか。それを知る術はない、けれど推し量ることはできる。
私が彼に挑むときと、その
『本日最大のビッグマッチに行きましょう!!Silvi選手 対 K選手の対戦です―――!!!』
――願わくば、あの『流星』を撃ち落とすのが彼でありますように
オリ主人公が全く出てこない