シャンフロで商人プレイする奴の話   作:白詰

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迷走に迷走を重ねてました。ユルシテ…………





シャンフロで商人プレイする話その16

 

 

シャンフロに、壮大な鐘の音が鳴り響く。

 

世界の隅まで響き渡るように、数回鳴り響くその音が意味することに、ほぼ全てのプレイヤーが足を止める。いや、止めさせられた。

 

『シャングリラ・フロンティアをプレイされている、全てのプレイヤーの皆様にお知らせ致します。現時刻をもちまして――』

 

 

 

『――ユニークモンスター「深淵のクターニッド」の撃破を確認いたしました――』

 

 

 

 

その日、世界はまたひとつ段階を踏んだ。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「うわぁお、何事です?」

「いいから、ちょっとこっち来て」

 

 

リアルのイベントを片付けて、久々にシャンフロにログインしたアンバー()を待ち構えたのは、自身が所属するクラン、そのリーダーであるアクマリーの明らかな不機嫌顔であった。

 

有無を言わさない気迫でズンズンと足早にどこかに歩き出したアクマリーからは、どう見たってトラブルの気配が立ち上っていたものの、態々待っていたということは自分(アンバー)の問題でもあるということ。

とすれば拒否権などあるわけもない。

早々に抵抗を諦めて同行すれば、着いた先は我がクランが所有する拠点の1つ。その入口でようやく立ち止まったアクマリーは、しかし振り返ることはなく言葉を発した。

 

 

 

「――ペンシルゴンが来てる」

 

 

あぁ、不機嫌の理由はそれだったのかと、思わず心の中で安堵する。

やらかした自覚が多すぎてどれで怒られるかわからないのが良いわけではないが、少なくとも今回は自分が原因という訳ではなさそうだと胸を撫でおろす。

そんな私を知ってか知らずか、いまだ振り返らないままアクマリーは話を続ける。

 

 

「原因はアンバーが渡した紹介状」

「ごめんなさい」

 

 

訂正、ガッツリ原因だったようだ。即座に謝る私にようやく少しは怒りが収まったのか、ため息一つと共に彼女は振り返った。

 

 

「正直、紹介状の件は別に悪い取引じゃないし、現状を考えるとむしろ褒め称えれるくらい良い手だったよ」

 

 

でもねぇ、と続くアクマリーの言葉でちょっと上がりかけた私の頭を再び地面と平行にする。本格的に怒られる前に先に謝る。これ大事。

 

 

「なーんで最初に最上級のを渡しちゃうのか……」

「ちょっと見栄張りました!」

 

 

深いため息が聞こえてくる。ほぼ全裸のサンラクとかいう圧倒的不審者が居たせいなんですと言いたいが、今思いついた言い訳なので言わないほうが良いだろう。

パッと思いついた言い訳は、だいたい奇麗に言い負かされるのがオチなのだ。

 

 

「ま、好きに決めたらいいよ。アンバー」

「はーい……」

 

 

それはつまるところ、お前が持ってきたんだから自分で片付けろ。ということではないだろうか。

わざとらしく音が響きながら開く扉の先に見えた悪い顔をする知り合いに、思わず回れ右したくなるのを堪えつつ、私は歩を進めた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「……なにしてるんです?」

「うわ!ビックリしたぁ!」

「おや、アンバーくん。君もかね」

 

ペンシルゴンとの商談というか、密会?から数日後。

 

「ここ来てね!」という文言で送られたメールに記載された場所――黒狼館に着いてみれば、そこには「ライブラリ」を始めとした錚々たる面々が。

「SF-zoo」に「午後十時軍」の人は話していたので、特に話していなさそうだった「聖盾輝士団」と「ライブラリ」に話しかけたのだが……なんというか、申し訳ないことをしてしまった気がする。

 

めちゃくちゃ驚きながら振り返った聖盾輝士団(ジョゼット)と朗らかに挨拶を返してくるライブラリ(キョージュ)という、なんとも正反対な反応にどう対応したものかと思っていると、少し咳払いをしながらジョゼットのほうから話しかけてくれた。

 

「ごめん、ちょっと考えごとしてて。珍しいね、アンバーがこういう場に出るの」

「えぇまぁ、その、ご指名だったといいますか、なんといいますか」

「では商連協力者とは君のことだったのか」

 

なるほどなるほど。なんて言いながら一人頷くキョージュ。

 

なにがなるほどなのか、というか協力者ってなんのことなのか。色々聞きたいことはあったものの、一旦横に置いておく。

それよりも先に確かめておかなければならないことがある。

 

「あの、もしかして皆さんもペンシルゴンに?」

「そうとも。我々ライブラリとしては、いまや逃すことの出来ない歩く宝物庫のような同盟相手だからね」

「輝士団としてもそんな感じかな。どうにかして渡りをつけたいと思ってたところでね、悪い取引でもなかったし」

 

おおう、ということは向こうで盛り上がっている「午後十時軍」と「SF-zoo」も同じという事である。

この数日で7クランも巻き込んだペンシルゴン――というよりは「旅狼」の行動力にはただ感嘆するしかない。ライブラリも巻き込めているということは、それだけ独占している情報も多いという事なのだろう。

まぁユニークモンスターを二体も討伐している人物が居れば、それだけで他よりも抜き出ていると言えるので少ない情報でもライブラリは話に乗ってくれそうではあるが。

 

そして――これから旅狼が何をするのか、というのを特に聞いていないのは自分だけらしい。

話を聞く限り、どうやら二人ともある程度の経緯というか、ペンシルゴンが書いている図は把握しているようだ。私?おいしい取引あるヨ!絶対損させないヨ!って言われて気づいたらここに立ってましたがなにか?

というか、ペンシルゴンはともかくとしても、クランリーダーであるアクマリーも教えてくれないのはやっぱりおかしいと思う。おかげで話を振ったのに愛想笑いでやり過ごす羽目になってるのだが

 

心の中で元凶二人に悪態をつきながら話を合わせていると、黒狼館の扉が開きだす。

どうやら出番になったらしいので他の人の邪魔にならないように少し横に避けると、不思議そうにジョゼットが訪尋ねてくる。

 

「あれ、行かないの?」

「メールが来てから入って来てと言われてて……」

「そっか。じゃあまた後でね」

 

最後尾で小さく手を振って入っていったジョゼットを見送って、ひとり黒狼館の前に取り残されながら、私はひとつだけ決意を固める。

 

 

 

…………絶対に恨み言の一つは言ってやろう。

 

 

 

夏休みとはいえ平日。誰も通りかからず、であれば何か起こるわけもなく。

ペンシルゴンからの連絡が来る頃には、あまりの暇さに悟りが開けるんじゃなかろうか。

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