シャンフロで商人プレイする奴の話   作:白詰

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オーストラリア大陸を繋いでました。


シャンフロで商人プレイする話その19

 

「で、後一人はどうすんの?」

 

黒狼との戦い、オイカッツォにとっては初のPvP(対人戦)が迫る中。

流石にプロゲーマーとしては簡単に負けられないと、ペンシルゴンを相手にせっせとスキルを磨きながら、彼はふと疑問だったことを思い出した。

 

 

「サンラクくんが『我に秘策アリ!』って言ってたから、だいじょぶなんじゃない?」

「アイツがそういうこと言うと、大体なんか悪いこと起こる気がすんだけど」

「あー、たしかに」

 

 

サンラクが謎に自信のある企みをしている時は、大体が周りに被害が及ぶことが多い。

今回はそうでないことを望むものの、多分なにかやらかすのだろうなという確信はオイカッツォの経験則によるものだ。

とはいえ、これまでも被害はあれど何とかなってきたし、今回はそれで被害を受けるのはクランリーダーのペンシルゴンだろう。

自分に害はないならいいか。オイカッツォは考えるのをやめた。

 

 

「てっきり、ペンシルゴンが後一人くらい連れてくるのかと思った」

「それも考えたんだけど、まー、ちょっと事情があってね」

「そうなの?アンバーあたりなら快諾しそうだけど」

 

 

パッと思い浮かんだプレイヤーの名前を挙げてみると、目に見えてペンシルゴンは難しい顔になる。

確かに自分で言っておいてなんだが、アンバーは生産職(商人)であるし、トップクラン相手では戦力に数えにくいのかもしれない。

が、ペンシルゴンの悩みようはそういったものではなさそうだ。

 

 

「あー、うーん。まぁ…カッツォくんならいいか」

「なになに、面倒ごとはもう手一杯なんだけど」

「いやぁ知っておいた方が後々楽だよ」

 

 

面倒ごとは今の一つ(シルヴィア)だけで十分だと手を振ってみるが、そう返されてしまえば聞かざるをえない。

あまり聞きたくないものでないことを祈りつつ、オイカッツォは聞く姿勢を取った。

 

 

「アンちゃん自体は、速攻快諾だろうね。あと多分初見殺しだからふつーに戦力にもなる」

「じゃあいいじゃん――とはならない訳ね」

「そ。アンちゃんはいいんだけど、アクマリー……ああ、ギルドリーダーが問題でね」

 

 

なんと説明したものかと、ペンシルゴンが言いよどむ。

 

 

「簡単に言うと、アンちゃんガチ勢なんだよね」

「…………、偶像崇拝(ジョゼット)的な方?」

「残念ながらそういうのを更に凄くした方だねぇ」

「やっぱ聞くんじゃなかった」

 

 

そりゃあ誘蛾灯とか言われるわけだと、ネットでのアンバーの肩書を思い出してオイカッツォは溜息を吐く。

ネットでの扱われ方にオイカッツォが変なシンパシーを感じている間に、ペンシルゴンも溜息を一つ吐いて話を続けた。

 

 

「明らかな地雷以外はアンちゃんの決定に従うんだけど、裏で何吹っ掛けられるかわかんないからねぇ」

「アンバーに一言添えてもらえば?」

「それしたら表立って無茶な要求しだすよ」

 

 

どんだけだとオイカッツォは頭を振る。

クラン間とはいえただのPvPにクラン員を貸し出すだけで、まさかそこまでの拒絶反応があるとは。

 

 

「いやー、最初はそんなことなかったのに10回目くらいから対価を要求しだすようになっちゃってさぁ」

「お前の責任じゃねーか!」

「なにおう!毎回ちょっとだけ私とのPvPに付き合ってもらってただけですー!」

「…………ホントにちょっとか?本人に聞くぞ?」

「…………まぁ、その。『どっちかが死ぬまでは終わってないから』って三日くらい追い掛け回したのは、私も悪かったと思ってる」

 

 

これである。ここまでしておいてよく本人から拒否られなかったものだとオイカッツォは頭が痛くなる。

いや、むしろ本人がそれだからアクマリーが管理しているのか。

どちらにしろ、悪いのは目の前の女であることは間違いなかった。

 

 

「お前、よくフレンド続けて貰えてるな……」

「そこは私もビックリしてる。正直、初対面から今に至るまで含めても好感度マイナスだと思ってるよ」

「そりゃそうだろうよ」

 

 

オイカッツォもペンシルゴン、どちらも最高にイイ性格をしていると彼ら自身自覚している。

しているからこそ、ペンシルゴンのフレンドをやれている人物。という強者(同類)は大切にしたいのである。

 

 

 

「まぁ、理由は分かったけど……初見殺しってマジ?そんな強いの?」

「本気と書いて大マジだよ。カッツォくんとかは勝てるかもしれないけど、他は無理。あと多分サンラクくんも一発は無理だね」

「マジで!?」

「サンラクくんのビルドだと天敵と言っても過言じゃないんだよね」

 

 

予想外の強さにオイカッツォ(プレイヤー)、ではなく魚臣慧(プロゲーマー)の好奇心が擽られる。

あのサンラクが初見突破不可能だとオイカッツォに言わせるようなビルド。是非とも攻略したい気持ちが彼の中に湧いてくる。

 

 

「一応、大まかな戦法とかビルドは知ってるけど、聞く?」

「待って、当てて見せるよ」

 

この場合、相手の情報だけでビルドを完全に当て切るのは不可能だ。サブジョブからステータスまで何もわかっていないので、考えるだけ無駄だろう。

ならばサンラクの天敵のようなビルド、というのを考えるべきだろう――となると、広範囲攻撃か回避不可の遠距離技か。

後者はありえない。対人戦よりもまずゲームとして成り立たないし、そもそもソレをやられたら誰だろうが勝てない。なので外す。

 

とくれば、可能性は自ずと一つ。

 

 

「――広範囲魔法で焼き尽くしてくるビルドと見た!」

「うーん、惜しい!75点!」

「クッソ、結構いい読みだと思ったんだけどなー!」

 

 

実際良いところまで来ているとペンシルゴンは笑う。

サンラクでは勝てず、オイカッツォになら突破できるということは、敏速ではなく体力が必須だという事。そこまでの読みは完璧だし、ただの遠距離技じゃなく広範囲技だと読み切っているところも流石である。

ただ、一点だけが違うのだ。

 

 

「魔法じゃあないんだよねー」

「魔法じゃないってことは、弓とか?いやでもサンラクなら弾くなりなんなりするでしょ」

「じゃあここでヒント!アンちゃんの職業は?」

「そりゃ商人って決まって――」

 

 

瞬間、オイカッツォに電流走る。

 

 

 

 

 

「――もしかして、商品とか投げてくる?」

 

 

「――Exactly(大正解)!!」

 

 

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