シャンフロで商人プレイする奴の話   作:白詰

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シャンフロで商人プレイする話その21

 

 

「正直、油断してた」

 

 

黒狼と旅狼、ついに迎えた決戦の日。

 

 

開始よりも少し早い時間ではあるものの、しかし既に独特の緊張感が張りつめる闘技場。

そんな中、自分の周りに集った顔なじみの仲間に向けて、サンラクは包み隠さずに自分の本音を打ち明けることにした。

 

 

「いくら言ったところで、所詮はゲーム。そんな油断を、俺はしてたんだ」

 

 

紡がれるその言葉を、否定する者も、笑う者もいない。ただ静かに二人だけが聞いていた。

 

 

「今更、そう、本当に今更だが、俺は後悔してる。どうしてもっと……ってな」

 

 

どうして今更、そんなことを思ってしまうのだろう。

後悔先に立たず、なんて言葉がこれほど身につまされる事があろうとは

 

「もう遅いが、それでも今だから思うんだ。だから、これだけは二人に伝えておきたい」

 

 

 

いつの間にか閉じていた両目を見開き、正座を解き、勢いよく立ち上がりながら、サンラクはその思いの丈をぶつける――!

 

 

 

「――大変ご迷惑をおかけしました!」

 

「なに勝手に立とうとしてんだ、許すわけないだろこの鳥頭」

「絶対許さないに決まってるじゃない半裸変態。ほら早く正座続けて」

 

 

ざんねん!サンラクの判決はくつがえらなかった!

 

即座に首元に突きつけられる槍の穂先と、後ろから響くスキル発動音によって座り直す鳥頭。

刺さる視線が痛いのでさりげなく立とうとしたのだが、許されないようだ

 

「なんでだよ!ここは俺の精一杯の謝罪に『しょうがないなサンラクは』って許してくれるのが仲間ってもんだろうが!」

「逆に聞くけど、もしそれ俺に言われて、即許すのかお前」

「……許すに決まってんだろ!俺とカッツォの仲だぞ!」

「ここで即答できないのが答えだよね」

 

 

呆れるオイカッツォとペンシルゴンの視線から、そっと顔をそらすサンラク。

 

つい先ほど聞かされた自分の盗品売買というやらかし――正直そんな仕様(盗品ペナルティ)に気づけというのが難しいとはいえ、怒られてる理由(調査不足)即答できない(絶対イジル)のも自業自得なのでなにか言い返すのも難しく、行き詰まったサンラクの頭の中で逃走の二文字がチラつきだす。

そんな心情を読み取ったのか、しょうがないと言わんばかりのため息を吐き出したペンシルゴン。

そのまま首の動きだけで立ち上がるように示されたことによって、ようやくサンラクの視線はいつもの位置に戻った。

 

 

「マジですまんかったとは思ってる」

「聞いたカッツォくん!あのサンラクくんから素直な謝罪の言葉が出たよ!これは歴史的――ううん、人類史に残る快挙だよ!」

「ついにあのサンラクも『ごめんなさい』ができるようになったんだね……!」

「もう二度と謝んねぇ」

 

 

とはいえ、実際に目の前の二人に自分の尻拭いをさせてしまったのも事実であるため、取っ組み合いに発展させてうやむやにしたいのをグッと堪えるサンラク。

ここでこれ以上話を長引かせていると、せっかく早めに3人だけで集まった意味が無くなってしまうからだ。

 

 

「で、俺はどうすればいいんだ?」

「んー、実のところ、サンラクがしないといけないことって特に無いんだよね。諸々は俺とペンシルゴンでなんとかできたし」

「そうだねぇ、あそこに居る本人とアクマリー……あ、アンちゃんとこのリーダーね?その二人に謝っておけば大丈夫かな」

「……なぁ、ほんとに大丈夫か?リーダーがものすごい目でこっち睨んでるんだが」

「「いいから早く行ってこい」」

 

先ほどから痛い視線を送ってくる幼女とはなるべく目を合わせないようにしつつ、恐る恐る近づくサンラク。

後ろの方から感じる愉悦の気配に殺意を抱きながらも、しかし以前鋭い目つきでジッと見つめてくるアクマリーに気圧される。

 

けれど、ここで怖気づいてもしょうがない。そう自分を奮い立たせ、謝罪の言葉を口にしようとしたサンラクよりも早く、アクマリーは口を開いた。

 

 

「――ノーネームだったりしますか?」

 

まるでそう、いきなり黒歴史のノートが押し入れの奥から見つかったような、そんな衝撃がサンラクを襲う。

一瞬呆けたサンラクの頭は、しかし次の瞬間には言い逃れるための様々な可能性を模索しはじめる。

 

(例えばプランA「誰ですかそれ」で突き通す――いや、向こうだって確証がなにかあるはずだ。そこを誤魔化せないと意味がない!となると、プランB――プランBってなんだ?ねぇよそんなもん!)

 

様々な言葉が浮かんでは消えていく。傍から見れば幼女の前で立ち尽くす半裸の覆面男性なので犯罪臭がすごいのだが、今のサンラクにはそこまで気にする余裕はなく。

数秒、数十秒、いや、もしかしたらそれ以上経っているのか。少なくとも体感では数分も経っているかのような思考の渦からなんとか言葉を紡いだサンラクは――

 

 

「……さ」

「さ?」

 

 

「……サガサナイデクダサイ……?」

 

「……フフッ

「「――あははは!!!!!」」

 

 

前から零れた微かな笑い声と、それをかき消すような後ろからの笑い声に、サンラクは笑顔のまま後ろの主犯格と思われる二人に突撃した。

 

 

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