サンラクは激怒した。
必ずこの邪知暴虐の外道たちを許しては於けぬ、と繰り出した拳に華麗なクロスカウンターを決められて床に沈みながらも、しかしサンラクは見下してくる二人への闘志を燃え上がらせ、思いの丈を吐き出した。
「お、おのれ外道共め……!まさかそんな
「初っ端に砂かけしてきたサンラクくんには言われたくないよね、その台詞」
「そもそも2対1になったのお前の責任だろ」
「そんなことはともかく、なんで俺のことバラしたんだよ。流石にマナー違反すぎるだろ」
「おい身代わり速すぎるだろ」
サンラクは外道二人の
形勢不利?なんのことやら。そう言わんばかりに澄ました顔で立ち上がるサンラクの、そんな身代わりの速さに感心すればいいのか、それとも呆れればいいのか。
どちらかと言えば呆れが勝る絶妙な顔をしながら、ペンシルゴンがアイコンタクトで何かをオイカッツォに訴えると、その視線を受けた彼は、打って変わってどこか申し訳なさそうになりながら、口を開いた。
「実はバラしたんじゃなくてバレたんだよね……」
「は?ネットリテラシーっていうのを知らないのかよ、ホントにプロゲーマーか?」
「おい待て事の発端はお前なの忘れるなよ変態半裸鳥野郎」
一瞬見えた勝機を逃すまいと、ここぞとばかりに口を開いたサンラクを、やはり同情は不要と返す刀で優しさと共に微塵切りにするオイカッツォ。
しかしどこから説明したものかと逡巡し、ちらりと彼はアクマリーを見やる。
だが先ほどから腹を抱えて笑っている彼女は、やはり彼が知ってる通りのゲラなのでしばらくは帰ってこれそうにないようで。
ちょっとだけ自分の迂闊さを恨みながらも、諦めて自分の口から事の経緯を説明することにした。
「アクマリー、俺のご近所さんなんだよね」
「……ハイ?」
「俺と同じ電脳大隊所属の格ゲープロなんだけど、そっちの方は別名でやってるから最初気づかなくてさ」
「オトナリサン……?音成さん……??」
「それで声から俺がバレて、GGCの動きとか戦法とかその辺から、芋づる式にペンシルゴンがバレ――おい?聞いてるかサンラク?おーい」
「……ギャルゲーかな……?ちがうよな、だって
「だめだペンシルゴン。このクソゲー脳には難しい話みたいだ」
「そうだねカッツォ君。ところでこれでお隣どころか同じ階層は全員女性だ。って伝えたら、彼もっと壊れそうじゃない?」
「いや壊してどうす――ちょっと待ってなんで知ってんの!?」
「カッ〇×す▽※――※□!」
出歯亀精神がくすぐられて即座にオイカッツォのご近所情報をばらまき出したペンシルゴンに、果たしてどこから漏れたんだと焦る被害者。
それを聞いて、
男2人が別々の理由で混乱に陥るのを愉しみながら、一人笑うペンシルゴンの姿というのは傍から見れば稀代の悪役だ。
実際に
「いい加減に落ち着けこのアホ鳥頭!」
「ぐぅぇっ!」
「っていうかアクマリー、いつまで笑ってんのお前!いい加減そっちからも説明してほしいんだけど!」
「――あー、ハイハイ……フッふふ……」
そんな地獄絵図を拳によってオイカッツォが収めながら、アクマリーに話を引き継ぐ。
いまだに笑いのツボは押されているが、とりあえず喋れるようにはなったようで、咳払いをしながらも彼女は再び床に沈んでいたサンラクの前に立った。
――瞬間、サンラクに悪寒が走った。
「あー、改めて初めまして。アクマリーです」
嫌な予感、などではない。
もう確信と言っても過言ではない何かが、サンラクの脳裏にとある記憶を呼び覚ましながら、警告音のように体中を駆け巡る。
そうして呼び覚まされた記憶の幻聴が、アクマリーの声に重なった。
「まぁ、その?リアイベとか色々聞きたいことは、うん。野暮だから置いておくけどさ」
『おはよう楽郎、ところで――――』
これは、そう。
ある時、調子に乗って日曜の早朝にクソゲーを始めてしまい、当然の寝落ちからの
まぁ、つまるところ
「――――うちのアンバーに何してくれてんだテメェコラ」
『――――約束守れないのなら、どうなるか言ったわよね?』
「マジですいまっせんしたァァ!」
絶対に逆らっちゃいけない笑顔をしたアクマリーに、サンラクはかつてないほどに綺麗な土下座を決めた。
なお、
ちなみにペンシルゴンがアンバーを止めてない場合、アクマリーが何か言う前に、次は気をつけてねの一言で本人によって許されて終わる。
が、それで済ませると色々こじらせた奴がさらに拗らせて揉めるので……。