シャンフロで商人プレイする奴の話   作:白詰

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思いついてしまったので供養を兼ねて




ちょっとした小話その2

 

 

ネフィリム・ホロウというロボゲーを、貴方は知っているだろうか。

 

 

プレイヤー自身が機衣人(ネフィリム)と呼ばれるロボットと一体化して戦う、文字通りの人機一体を体感できる良ゲーであるこのゲームは、しかしながらその出来栄えに反して人が少ない過疎ゲーと化してしまっている。

 

 

最近こそ絶対王者ともいえたランキング一位のプレイヤーが、ふらりと帰ってきたランキング荒らしのプレイヤーに負けたという一大イベントと言ってもいい出来事によって、ある程度の活気を取り戻しているが、それでも全体としてみれば少ないと言わざるをえないこのゲーム。

そんなゲームで、ランキング二位「スーパー玉男(ボールマン)」こと玉男(たまお)は―――、

 

 

『残念』

「だぁぁぁぁぁ!ここでかよ!」

 

 

 

――本日も機体縛りから解き放たれたランキング一位「ルスト」に蹴散らされていた。

 

 

 

「お、おかえり玉男」

「ルストまだちょいちょい機体慣れてなさそうだが、やっぱ強いな」

「もうちょいミサイル積んで序盤みたいな回避ミスを増やさせるのはどうだ」

「あんまり積むと重さがキツイだろ、ブースター増やして攪乱した方が……」

「いや、ならもう逆に重装甲にしてタックルとか」

 

「今戦った身から言うと、序盤のヒットは新しいブースターかなにか試してるからだ。多分変わるから狙わない方がいい」

「マジかよ」

 

 

戦闘を終えて観戦エリアへと戻った玉男は、そんな声達に出迎えられた。モニターにかぶりつきでほとんどがこっちを見もしないが、いつものことなので特に気にすることなく玉男もその輪に加わる。

ルスト攻略は、今なお多くのプレイヤーにとっては目指すべき目標であるのだ。

 

モニター内にて大暴れするルストを見ながら、その攻略法を模索する玉男たち。最近ではルストの相棒の笑いの沸点の低さを利用して、そのオペレーター能力を封じるのがベストだという変な攻略法を見出した彼らが議論を交わす中、その一人がそういえばと玉男に話を切りだした。

 

 

「TA勢に聞いたんだけど、この前から流星さん帰ってきてるらしくてさ」

「え、マジか。サンラクといい懐かしい奴が来るな」

 

 

プレイヤー名「流星」

 

そのままりゅうせいと呼んでしまいそうだが、実はこれでながれぼしと読ませてくるそのプレイヤーは、ネフホロにおいてはルストと同じくらい有名で、サンラクと同じくらいログインが読めない人物だ。

 

ネフホロにおいての主流が対人戦であることは疑う余地もないが、その主流に負けないほどの人気を誇るコンテンツとしてタイムアタックがある。

多くは対人戦の空き時間や暇潰しにプレイヤースキルの向上を目的としてやっているもので、玉男やルスト、サンラクなどもその例に洩れない。

高速移動中の反射神経だったり適切なスラスターの加減速を学ぶために、とりあえずはやっておけといわれるそのコンテンツの開始位置には、上位10名のタイムが名前と共に表示されており、当然そこにもルストの名前が最も高い位置に刻まれていたのだが、ある時、その名前の上に流星という名前が表示され、そして不動になっていたのだ。

 

そしてその位置はつい先日、新たな機体を駆るルストによって書き換えられたのだが――

 

 

「昨日新記録出してたぜ、順位見に来たルストが悔しがってた」

「あれより速い速度だせんのかよ、化け物か」

「ログ見たけどさぁ、なんていうか、マジで流れ星みたいだったよ」

 

 

――どうやら、また元の位置に戻ったらしい。

 

 

そんな感じで、ルストの主戦場でこそないものの、ネフホロにおいて大体のランキングでトップを飾るルストを正面から超えれる数少ない人物として有名なのが、この流星なのである。

以前に玉男もこの記録を打ち破らんと、件の人物のゴーストを見たことがあるが、早々に匙を投げた。

背面に大きさの違う二種のブースター、両足の代わりに大型のブースター、肩に姿勢制御用のブースター等々、全身がブースターで構成されているような機体が、比喩でなく機体が真横に吹っ飛ぶことでコーナーを直角にクリアしていくのを真似しようとは思えなかったのだ。

 

とはいえ、その数日後にはその技法を習得して強化されたランキング一位が出てきて嫌でも覚えたわけだが――と、そこまで考えて、玉男には一つの嫌な予想が生まれてしまった。

外れていてほしいその予想は、しかし先ほどの対戦で見受けられたルストの不自然な挙動によって現実味をおびだしてしまい、どうか違うようにと願いながら彼は、そんな特大の爆弾を持っていたプレイヤーと視線を合わせた。

 

 

「おいおいおい、ちょっと待て。なんでいまそれ言ったんだお前、え、嘘だろ」

「察しがいいな玉男、多分それで合ってるぞ」

「ログ見てくる!」

 

 

そう言って観戦エリアから飛び出していく玉男。

 

残された面々は話半分で聞いていたこともあって、いまだ状況を理解できていないようで、残っているもう一人に視線が集まっていく。

その視線に気づいたのだろう、玉男の後ろ姿を見送っていたそのプレイヤーはどうしたものかといわんばかりの困った顔と、これまた大げさなジェスチャーを交えて、口を開いた。

 

 

「ルスト、また流星さんの新しい技法習得中――かも?」

 

「「「ログ見に行くぞぉ!!!」」」

 

 

 

ネフィリム・ホロウ、良過疎ゲー。そこに君臨する王者が、その上で煌めく流れ星からなにかを学んで先を走るなら、残された者たちはどうするのか?

 

決まっている、さらに速く走るしかないのだ。いつか流星さえも追い越す王者を追い越すために

 

 

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