シャンフロで商人プレイする奴の話   作:白詰

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商人プレイだっつってんのにその要素がかけらもない第一話になってしまった……許してヒヤシンス


シャンフロで商人プレイする奴の話

 

シャングリラ・フロンティア、通称『シャンフロ』

 

それはフルダイブ型VRゲーム界にて、まさに金字塔といってもいい文句なしの神ゲーである。

登録者数3千万人、去年の春に発売されたにも関わらず七つのユニークモンスターはいまだ一体も倒されず、またその世界観も謎に包まれたまま、しかしその面白さゆえに登録者が増えつつづけているこの神ゲーの掲示板にて、一人のクソゲーハンターの存在が騒がれていた時のことである。

このシャンフロにおいて、まさに値千金とも言える情報を握っているかもしれない初心者、しかし明らかに初心者を朗らかに歓迎するというだけでは済まなそうな()()プレイヤーネームの連中が待ち構えるサードレマ。その光景を城壁の上からこそこそと見下ろしている一つの影、そうなにを隠そうそれが私、プレイヤー名「アンバー」である。

 

 

「うっへぇ……Animalia(アニマリア)はともかく“廃人狩り”(ジャイアントキリング)がいるじゃん、やばすぎる」

 

 

初心者相手に大人げないなー、と思いつつしかし事前に頭の中で組み立てていた作戦を思うと自分もどっこいどっこいかと思い直す。

テイム()()()()はずのウォーパルバニーを連れた半裸の初心者、などという話題性(金の匂い)につられて慌ててサードレマまで来たのはいいものの、着いた時にはすでにサンラクを探すプレイヤーがちらほらいる状態だったのだ。

しかも悪名名高きプレイヤーキラー(PK)クランの阿修羅会、そのナンバー2の後ろ姿を見つけたことで当初の作戦であるサンラク氏への素早い救出劇(恩の押し売り)というのはすっぱりと諦めた。

いかにPKに長けていようと街中に入ってしまえばある程度は何とかなるし、高レベルプレイヤーがわざわざ自分のカルマ値を上げるだけの初心者狩りには出向いてこないだろう。という前提の下ろくな準備もなしで動いていた私にとって、天敵といってもいいほどに苦手な廃人狩りこと「アーサー・ペンシルゴン」という高レベルプレイヤーを相手するというのはだいぶ厳しいものがある。

とはいえ、サンラクというプレイヤーが金の生る木である、という予感もひしひしとするわけで

 

 

「あんまり余計な恨みは買いたくないんだけど」

 

 

脳裏に蘇る嫌な思い出の数々(あの手この手で襲われた記憶)に身震いしながら、しかしせめてチャンスがあれば援護の一つくらいはしてやろうと準備をしているとにわかに下側、つまり門の入口が騒がしいことに気づく。

そっと覗き込んでみれば、アニマリアが誰かの手を握って引き留めているのが見えた。

とすると、相手が件の初心者、サンラクだろうか?角度的にギリギリみえないところで喋ってるので、もう少し外側にきてくれれば――などと考えていると、アニマリアと共に青い被り物をした半裸の男性がバックステップで飛び出してくる。

あれはたしか初期装備の凝視の仮面だったはず。なので、掲示板での恰好が変わっていないならば彼がサンラクであるのだろう。

どうやら襲ったのはペンシルゴンだが……どうやら何か話しているようだ。しかしサンラク側が油断せずにちゃんと武器を構えているあたり、けっこうな顔見知りなのだろう。ペンシルゴン相手に油断するとサクッと首が飛ぶので大事な心掛けである。私?二回くらいやられましたがなにか?

 

などと考えながら見下ろしていると、視界の端で遅れて離れていく女の子が見える。あれはサンラクのパーティーメンバーだろうか?いや、挙動不審ぎみにわたわたと慌てて頭を押さえたりしているので巻き込まれた一般人かもしれない、だとするとご愁傷様と言わざるをえないが。

心の中で手を合わせながら見守っていると、どうやら話合いは決裂したらしく、サンラクとペンシルゴンは戦いを始める。ペンシルゴンが牽制代わりに投げているナイフ、あれ毒付きの高いやつではなかろうか。

とはいえ、どうやらサンラクのほうも対人経験は豊富なようで、うまくナイフとペンシルゴンの攻撃をかいくぐっている。いくらペンシルゴンが舐めプしているとはいえレベル差で押しつぶされそうなものだが、生き残っているのはやはりその技量の高さゆえなのだろう。

上手く小細工しにくい距離を保っているあたり、ペンシルゴン相手の戦い方を心得ているともいえ―――なんか急にさっきの女の子が爆発した。

 

 

「あ、すごい」

 

 

おもわず爆発した女の子側に目が行っていたサンラクが、その隙に仕掛けたペンシルゴンをパリィで対処していたのに感心して声が出た。私だったらパリィは無理だ、たぶんダメージ覚悟で全力お祈りステップしていたことだろう。

さらっと行われた技量の高い行為に、これはもしかするのではと心の中の欲望が語りかけてくる。さすがに勝つのは無理だろうけど、上手く躱して街中に入れれば賞金狩人(バウンティハンター)と持ち前のスピードで逃げ切ってくれるのでは?となれば、ここでそのアシストをして恩を売れれば―――?

 

 

「いや、まぁ、集団で初心者いじめる方が悪いし……うん、セイトウなリユウってやつだよ」

 

 

あとで問い詰められたときの言い訳を考えながら、アニマリアの援護と“最大火力”(アタックホルダー)の参戦で目まぐるしく変わっていく戦況にむかって、私はそっと弓を構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

(しまった――でもまだ間に合う!)

 

 

呪いの反射によって倒れ伏し、あとは死にゆくだけだと思われていたアニマリアが取り出した「奥の手」に思わず直前までの笑顔が引きつりかけたペンシルゴンは、しかし即座にその詠唱を止めるためにインベントリを操作して投げナイフを取り出した。インベントリの一番上に置いておいたのが功を奏し、過去最高速で右手に取り出した投げナイフを今まさに詠唱を完了しようとするアニマリアへと投げつけんと振りかぶり――

 

「なっ――誰!?」

 

 

後ろから飛んできた矢によって肘当たりから持っていかれたことで、ナイフは腕ごと後ろへと落ちていく。今の今まで影も形もなかった弓使いによる奇襲に、犯人を捜さんと振り返ったペンシルゴンは、城壁の上に慌てて逃げていく見慣れた影を見つけ、少しの悔しさを滲ませた獰猛な笑顔を浮かべながらもその犯人の名前を口にする

 

 

「アンちゃんめ……おぼえてろ――!」

【冥府への旅路は汝と共に】(フェロウ・トラベラー)!」

 

 

さてどうしてやろうか、そんなことを考えながらペンシルゴンは自滅呪術に飲み込まれていった。

 

 

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