書けぬなら
書きたいとこだけ
書けばいい
件名 :そういえば思い出したんだけどさ
差出人:サンラク
宛先 :鉛筆戦士
本文 :どうやって対価の天秤借りたんだ?たしかPKerって好感度下がるよな
「そういえば言ってなかったか……」
サードレマ内にある『蛇の林檎』にてアップルパイを頬張っていたペンシルゴンは、送られてきたチャットを見て珍しく本当に忘れていた事案を思い出し、天を仰いだ。
サンラクの言う通り、PKをするプレイヤーに対してのNPCの好感度は低い。実際には低いのではなく一定以上上がらなくなっているのではないかとペンシルゴンは睨んでいるが、どっちにしろ今はいいだろう。大事なのは好感度が最低値近くで固定されるわけではないという部分であり、天秤を借りるための方法もそこにかかってくるのだが……
「口で説明するの面倒なんだよねー」
簡単な足し算ではあるのだが、その足し算に使った数字がちょっと特殊なこともペンシルゴンの説明を鈍らせている一因であった。
どう説明したものかとしばらく頭を悩ませながらアップルパイをかじっていたペンシルゴンだったが、ふと思いつく
「自分で体験させればいいのか」
そうと決めれば迷うことなし、送り主の鳥頭の半裸人間と後々聞かれるとめんど……もとい大事なクランメンバーにも一緒に説明しておこうと場所を送りつけ、説明に必要な協力者にも
「マスター!ショートケーキひとつよろしく~!」
もろもろの準備を終わらせたペンシルゴンは、ふたたびやたらと美味しいデザートを頬張る作業へと戻っていった。
――――――――――――
「いきなり何の用でしょうかね、
「まぁまぁ、そう邪険にしないでよアンちゃん」
送られてきた
つい先日、ユニークモンスターを討伐しシャンフロ内にて一躍時の人として躍り出た
とはいえ
「お金払うまで口添えとかはしないからね」
「わかってるって、ダイジョブダイジョブ」
本当だろうか、あまりにも胡散臭い笑顔が見えているのだが……まぁそういうのなら信じるのがいいのだろう。なんだかんだこういう時に嘘をついたりはしないのがペンシルゴンなのだ。たぶん、きっと。
息を一つ深めにはいて心をリセットする。信じると決めた以上追及はなしである
「それで、なんでここ?」
「いやぁ~、実は討伐した三人でクラン作ったんだけどさ。天秤について聞かれちゃってね」
「あぁー……」
「ついでに顔合わせもかねて、ってところかな」
名案でしょ?そういわんばかりに笑うペンシルゴンを見て、呼ばれた理由を察する。つまり説明がめんどくさくなったということである。
しかしたしかに、いちいち口で説明するよりは体験してもらったほうがはやいだろう。討伐者三名で組んだクランということだから手間ひまを考えるとそっちのほうが楽である……か?。
なんとなく上手く乗せられた気がしなくもないが、とりあえず納得のいく理由だったのにうなずいていると、遠くから青い鳥頭とツインテールの二人組が見えた。どうやら来たようである
「おっそいよ二人とも!もう立ちっぱなしでつかれたんですけどぉ?」
「わぁるいわるい、カッツォと正面のほうにいってた」
「ごめーん、場所わかんなくってさぁ」
開口一番にそんなことをいうペンシルゴンに慣れた感じで返す二人。実際のところは1分遅れた程度だが、そこは言わないでおこう。口を挟むタイミングを見失っているだけだって?そのとおりだよ
「見つかると面倒だから、とりあえず中に入ろっか。挨拶とかはあとでね」
「で、こちらの方はいったい?あ、俺はオイカッツォね」
「俺はサンラク、はじめまして」
「アンバーです。お話はいろいろ」
商会のなかに入り一息いれたあたりで、オイカッツォさんがそう話を切り出してくれた。女性アバターだが声を聞く感じ中身は男性。そしてペンシルゴンいわく緊縛ロデオが趣味の方らしい……なんというか、こう、業が煮詰まっている感じがしなくもない
そしてもうひとり、たぶんこの3人のなかだと今一番知名度があるサンラクさんである。なんといっても目を引くのは半裸の刺青と鳥頭である。刺青の部分はともかく、せめて頭を変えないのだろうかとは思うが、ペンシルゴンによると「変態だから」とのこと。……いまのところ3分の2が変態ということなるが、ほんとに大丈夫なのだろうかこのクラン
「おいペンシルゴン、お前なにを吹き込んだんだ。アンバーさんの俺たちを見る目が変態を見るそれなんだが」
「となりの半裸鳥人はともかく、俺まで巻き込むのは許されないよ」
「どういう意味だカッツォ!」
「私はありのままを伝えただけだよ、偽りなくね」
思わず視線に出てしまったらしい。取っ組み合いの喧嘩でもしそうな睨みあいを始めた二人とそれを見てけらけら笑っているペンシルゴンの図が出来上がった。めちゃめちゃ愉快な人たちである。変態だがいい変態なのかもしれない……変態の時点でいいも悪いもないか。まぁなんにせよ
「よかったねペンシルゴン」
「え、ちょっとまってアンちゃん。それはこの私をこの二人と同列に扱った合図ではないよね」
「「 ようこそ こ ち ら が わ!!」」
こんなにイキイキとして他人に絡むペンシルゴンを見るのは久々だったので、おもわず出た言葉だったのだが、どうやら違う意味に捉えられたらしい。いや、嬉々として上位陣にPvPを挑みに行けるのはたしかに変態といえるのであながち間違ってもいないのかもしれない……?
困ったな、このクラン全員変態しかいなくなったのだが
「んんっ!とりあえずアンちゃんとは後で話すとして、本題に入ろうか」
「たぶんアンバーさんは間違ってないと思うぞ」「右に同じー」
「 本 題 に 入 ろ う か ?」
さーせん、と息ぴったりに謝る二人、やっぱり仲がいいんだなぁと少し頬が緩みそうになる。最近のペンシルゴンのモチベの落ち具合を知ってたから、なんだかうれしいよ私は……これが親心ってやつか。
しかし親心子知らずとはよくいったもので「あとで話合いだから」と言いつけられてしまった。お母さん悲しいよ……。などとやっていると、もう一度咳ばらいをしたペンシルゴンに目配せをされる。はい、真面目にやります
「まぁ百聞は一見に如かずっていうし、さっそく行ってみようかアンちゃん」
「任された。【
その文言を唱えた瞬間、まるでレイヤーを切り替えたように景色が切り替わる。明るく豪華絢爛といった天秤商会の内装とは打って変わってどことなく古臭い印象を感じさせる、ザ・古物商といった内装の場所へと切り替わったことに二人は驚きを―――なんでペンシルゴンも驚いてるんだろうか。それはともかく、ここはあいさつの一つでもしておくのがいいだろう。そう、決め台詞、というやつである
「いらっしゃいませ、ご注文は?」