【シャケを狩るだけの簡単なお仕事です】 作:コーヒーメーカー
おいおい、俺だよ、忘れちまったか?
ハンバーグだよ!(違います)
《オヤ、また来たのかい?》
「あはは、お邪魔します…」
《そう気張らないでくれ、君はもう立派な『伝説アルバイター』なんだから。それと、熱心なのはいいことだけど勉強も忘れないでくれ》
彼女がここへ来たキッカケは、至極普通で、ありえないほど異常なことだった。
彼女は自身の住むトリニティ自治区から離れたブラックマーケットにおいて、見つけた探し物に目を光らせていた。
ただ少し、その日は通常より痛い出費を負い少なくなった口座の数字や軽くなった財布とにらめっこをしていた。
彼女が風に吹かれて顔に飛びついたチラシに目を引かれたのは、もはや決定事項以外の何ものでもなかった。
《しかし不思議なことだ。君のいる自治区にも分店はあるはずだろう?何故何時も本店まで来てくれるんだい?》
「その、本店の方がお給金が良いので…それとよく探し物ついでにも来られるので……」
《成る程、だが火遊びはほどほどにしなさい。一番の大事は自分の身なのだから》
彼女はバイトに応募し、あれよあれよと言う間に功績を重ねいつの間にか『伝説アルバイター』の名を貰い受けていた。
バイトの給料のせいで趣味への浪費が加速し、他の人より頻繁に訪れていた事も功績に関与しているだろう。
《サテ、来てもらってそうそう悪いんだが、今日は新人研修もあってね。参考にでもしてほしくて、ぜひ君にも参加してほしいんだ。追加の手当ても出そうと思うのだが、どうだろうか?》
「え、ええぇぇ!??いきなりそんな…それに私がお手本だなんて、自信ないですよ…!」
《大丈夫さ、新人研修用の間は、私が呼ばない限りシャケはあまり出ないのは知っているだろう?それに、君ほど実力とやる気がある人はそうそう居ないんだ。頼むよ、未来の後輩たちを助けるつもりでどうにかできないかい?》
「あうぅぅ…出来るだけやってみますけど、期待し過ぎないでくださいね…」
《ありがとう、感謝するよ。もうじきヘリが出るからそれまで待機していてくれ》
恐ろしい速さで伝説へと至った彼女を、誰かがこう呼んだ。
《頑張ってください、ヒフ………いや、Fさん》
『
[F視点]
(どうしてこうなったんでしょうか………)
新人を乗せたヘリの中、F…もとい『阿慈谷ヒフミ』は考えを逡巡させる。
始めは単発バイトのはずだった。
怪しさ満点のチラシにノセられて始めたバイトだったが、神秘やシャケといった明らかヤバ目な情報を聞いたときには「あっ、もしかしてもう後戻り出来ない……?」と未来を悟ったりした。
それでも、ブラックマーケット帰りに通える手軽さ、浪費した金銭を補える給金、そしてシャケからの危機に対するそこそこの善性がいつの間にか伝説へと自分をを導いていたのだ。
何か間違いがあったとするならば、それこそブラックマーケットに通っていた事なのでほとんど初めから詰んでいた。
「あ!あの!もしかしてFさんですか!?」
「………」
(うわぁ!?ビックリした!)
「私、ミレニアムからきました!新人の□□□です!」
「……どうも」
(うぅ…緊張する…)
今自分たちが着ている服には特殊な認識阻害機能がある…なんてことはないが、神秘を弾きやすい加工と個人の特定がされたくない人用の
自分はいま薄茶色のヘルメットを被っている。*1
さらにクマサンは銃の貸し出しも行っており、バイトに参加したいが銃を紛失・使えない状態の人に貸しているらしい。
《サテ、バイトの時間だ。と言っても今日は研修だがね》
「チェッ、なにが研修だよ。要するにシャケとやらをぶっ倒しゃいいんだろ?チラシにも『簡単な仕事』って書いてあったのに何学ぶ必要があんだよ」
《言いたいことはわかるよ。その為にも今日は特別なバイトに来てもらったんだ。『伝説アルバイター』のFさんだ、彼女から色々学ぶといいよ》
(え!?自己紹介!?あの感じで!?なんて言えばいいのー!?)
「……Fです、どうぞよろしく」
「はぁ?こんなヤツが伝説だって?だとしたら案外すぐなれそうだな!」
「……もしかして貴方、Fさんの伝説を知らないの?」
「あぁ?誰だよあんた」
「Fさんはね!例のオカs
《会話を遮って申し訳ないんだが、そろそろ目的地だ。着地の準備はできているかい?》
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クマサンによる『キ・ホ・ン』の教えと、自分による応用的なシャケの倒し方、緊急時の対処法、SOSサインなどをレクチャーした。人前で教えを説くのは初めてだったせいで緊張が止まらなかったが、しっかり伝わっただろうか。
意外なことに三人とも筋が良く、不良チックな子が
研修はこれにて何事もなく終了した。
[三人称視点]
《コレで研修は終了………おや?》
《これはこれは…どうやら旅にアクシデントは付き物らしい》
ブーーー ブーーー ブーーー
アラートが鳴る。緊急事態を知らせるアラートが。
「な、なんだぁ!?奇襲か!?」
「……コレって…」
二人が警戒する中一人だけが、私を知っていたらしいミレニアムの子だけがこちらに期待の目を向けている。
《四人とも、落ち着いて聞いてくれたまえ。オカシラシャケがそちらに向かっている》
《この反応はおそらくタツだろう。ひとかたまりになって回避に専念してくれ》
《Fさん、いけるかい?》
「……例の武器と、危険手当」
《わかっているとも、幸運を》
遠方から射出された『何か』をヒフミは、Fはノールックでキャッチし装備する。
ソレは、銃と言うにはあまりにもパーツが多く、カスタムされていないところを見つける方が難しそうだった。
おそらくこれがARであると言われなければ、誰もが口を揃えて鈍器だとでも言うだろう。
そのブキの名は『クマサン印のアサルトライフル』、数あるクマサン印シリーズで射程と連射速度に極振りされた一点物である。
やがて、オカシラシャケが姿を表す。
長い胴体と口元の装置、浮遊する姿は龍を想起させる。
オカシラシャケ、『タツ』が現れた!
「だ、大丈夫でしょうか…その…あんな大きなシャケを相手に………」
「おい!なんでアタシたちは手出ししちゃいけねぇんだ!?」
《ターゲットの分散は狙いを絞らせないという利点があるが、その分攻撃範囲が大きくなったり一人一人への注意が届き辛いのだよ。今回は一人で十分、というのもあるがね》
《まあ見ておきなさい。あれこそが伝説アルバイターだよ》
本来なら、オカシラシャケと共に現れるオオモノシャケを倒し、神秘が濃縮された金イクラをぶつけることによりオカシラシャケにダメージを与えるというのがセオリーだ。
しかし今は研修直後、元よりシャケがあまり活動していない時間だったことも相まり金イクラの入手は不可能と言えるだろう。
タツは標的を捉えた。
かつて戦い、そして敗れた忌々しきヒトガタを。
少し前にクマサンが武器の貸し出しをしていることは話しただろう。
それらの武器はどれも実弾ではなく、使い手の神秘を使用し、エネルギー弾に近い攻撃を行う。
リロードも必要ない、強いて言えば銃身が冷える数秒と自身の神秘があれば理論上無限に撃ち続けられる、夢のような武器だ。不良に貸し出しが多いのもこれが理由の1つと言える。
中でも、強力故に信頼できる人にしか貸し出せないクマサン印シリーズには+αで様々な特徴があった。
スナイパーライフルは反動がハンドガンよりも軽く連射がきく。
ロケットランチャーは射程と引き換えに爆破威力と連射速度がピカイチ。
ハンドガンは一発一発が重いが、テッパンやバクダンの装甲を貫通するほど一撃が鋭い。
そしてFに貸し出されたアサルトライフル、純粋な射撃速度と飛距離は勿論のこと、弾丸にも特殊な仕様があった。
放たれた弾丸は周囲の神秘を吸収し、より早く、より鋭くなるという通常とは真逆の事象を発生させる。
要するに、対象との距離が遠ければ遠いほど、その弾丸は威力を増していくのだ。
そして、タツは空中を旋回しながら攻撃を行うという性質上、この武器はタツへの特攻と成る。
「……シッ!」
Fは目にも留まらぬ速さで連射される弾丸を、全弾寸分の狂いもなくタツの頭へ命中させる。
コレにはタツも堪らず、口を開き神秘を圧縮して爆弾を放とうとする。
タツの膨らませる爆弾に弾丸が三発ほど突き刺さる。ソレだけで爆弾は暴発を起こしタツの口内を爆撃する。
タツ自身には攻撃方法が口の爆弾しかない、しかし爆弾は膨らませている間に自らを傷つける。
オオモノシャケがいない、というのは何もメリットだけではなくかえって戦いをイージーモードにしていた。
「す、凄い…圧倒してる…」
「……でもよ、コレってあの武器が強いだけなんじゃねえか?見たことねぇし、ゴツいし」
「いーや!貴方たちは彼女の凄さをわかっちゃいない!」
「……つーかさっきからはしゃいでるけどさ、お前はあいつのなんなんだよ。ファンガールかなんかか?」
そんなそんなとんでもない、と少女は謙遜しながら話をする。
「私は一度見学に来たことがあって、そこでFさんの現場を観させてもらったことがあったんだ」
「そのとき、Fさんは『ハンドガン』で迫りくるシャケの波を捌いていたんだ!」
「……んぁ?でもあいつの持ち武器『アサルト』じゃんか?故障でもしてたんか?」
《それは違うね》
《彼女の真の強みはブレない狙いでも、冷静さでもない》
《私のカスタムしたどんな武器でも、『普通に』扱うことが出来るんだ。ハンドガンからスナイパーライフル、片手間に作ってみた巨大手持ちローラーでさえも》
《いやはや、素晴らしい才能を持ったものに出会えて私は幸せだよ》
《……もう1つ、彼女を伝説たらしめる話があるんだが、また今度にしておこう。噂話はよくない、本人の前では特にね》
決着は目前
タツは息絶え絶えで、巨体を盾になんとか爆弾を作り上げた。
全力を込めた爆撃を解き放つ、と同時にFもまた銃に神秘を送っていた。
Fは自由自在に神秘を操れるという訳ではない、むしろバイトに参加する前まで自身に神秘があるということさえ自覚していなかった側の人間だった。
だが神秘を馴染ませやすいクマサン印、それも適正が最も高いアサルトライフルを扱う上で神秘の扱い方を正しく認識し始めていた。
銃身から一発の弾丸が射出される。
ソレは爆弾と接触し拮抗し始めた。
一発の弾丸が高濃度・高圧縮の神秘爆弾に対抗するなどおかしなことだが、異常はそれだけに留まらない。
銃弾が、爆弾を食らっていた。
表面を削り、加速する。内部に侵入し、威力が増す。爆弾の体積が縮み、弾が赤く発光する。
ついに爆弾を完食したソレは、鋭い光を放ちながら空の彼方へと消え去る。
爆弾の生産者は貫かれたことにすら気づかずに。
やがて、ふと思い出したかのように動きを止めた。
内部の神秘が行き場を失い、膨張をはじめ、オカシラシャケは盛大に爆発四散した。
「これが……伝説のアルバイター、F…」
「…タメ口きいたこと、謝っとこうかな……」
「っ//////!!!最っ高!!!まさか、また見れるだなんて!!!」
《サテ、トラブルも去ったことだし、帰還のヘリを近づけるよ。今日はお疲れ様、危険手当を増やしておこう》
「………」ピカピカ
《オヤ、金のウロコ、それも三枚とは運がいいね》
「……」
「………よかったら」
「えっと…くれるんですか?」
「よくわかんねぇけど、綺麗だな」
「わ、私にプレゼントを!!??」
「……登ってきて、ここまで」
「あの…先輩」
「さっきはタメ口きいて、すいませんっした」
「いつか、絶対追いつきますから!」
「………待ってる」
「っ!!はい!!!」
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(カッコいい先輩って、こんな感じでよかったかな!??煙たがられてたりしないかな……??)
(あぁ!??そういえば今日はペロロ様の特集番組があるんだった!!?今から間に合うかな…!?)
阿慈谷ヒフミ(F)
逸般人。覚悟()ではなく覚悟、やる気ではなくヤる気。お前が普通なら矯正局には七囚人しかいない。
クマ武器関連の話を作りたくてちょうど序盤だけ書いていたヒフミに任せてみた所バケモンが誕生した。
でも好きでしょ?ヒフミ(ファウスト)最強伝説。
感想で期待されたんで戻って来た。『待ってる』の一言でどれだけやる気がでてくるだろう。
久々なんでキャラが安定しないかも知れないけど大目に見てください。m(_ _)m