転生主人公、ガンプラバトルネクサスオンラインを遊び倒す 作:くずもちXXX
リリネットは、まだまだ生まれたばかりで、成長の途中である。
断片のような記憶、わずかばかりのアイデンティティは備わっているがそれだってこれからぐんぐん育っていくはずである。
だが今はまっさら、余計な物がない状態とも言える。
戦闘を終え、一日活動したリリネットは間違いなくデータ量が増えていた。
これから先どんどん成長するにつれて彼女のデータは大きくそして洗練されてくることだろう。
「記憶が大事なんだ、ELダイバーの個性を消してしまったら死んだのと変わらない。だけど個性を確立するためなのか、情報を収集してため込む性質があるか……バグを貯め込むって仕組みはこれかな? 集めてストックする領域がある? 多分ここ」
溜まったゴミをこまめに捨てて、忘却して整理する必要があるのは人間も、ELダイバーも同じか。
だが、集めたモノを簡単に忘れられないのも人間と同じ。
しかしこれは改良できそうだと俺は思い立った。
「……これをあげるよ」
「……これは一体なんでしょう?」
そう尋ねるリリネットに、俺は手元のタブレットから、お掃除アイコンをタップする。
するとリリネットにデータが転送され、アイテムがその姿を現した。
彼女が手にしていたのは、魔女が乗っていそうな箒だった。
「クリーンツール。バグや、余剰データを消去して整理するプログラムだ」
「なんと」
「君自身や、新たに獲得した経験や記録には手を出さないように組んだけど、取捨選択は君自身でも出来るならより分けてみてほしい。君らはどうも、データの収集はできても消去が難しいみたいだ。そのツールでゴミを集めたらゴミ箱にポイっと捨てて消去。大事なものを消したら大変だから、チェックはしっかりやるんだよ?」
「……簡単にいいますが、こんなものを用意するのは簡単なことではないでしょう?」
「いや? そんなことはないよ?」
余計なことは言わずに、必要なものをスッと渡す。
そりゃあ、準備には手間もかかっているけど一度はそうしてみたい憧れである。
詳しく説明するつもりがないと察したリリネットはあきれ気味にため息を吐いた。
そして手渡されたアイテムを改めて眺めて、妙にソワソワしていた。
「わかりました。ありがたく使わせていただきます。しかしこの形……どうにも私には高揚するものがありますね」
「この形って、箒が? なんでまた?」
「いえ。何でと言われるとわからないのですが……楽しくなって、落ち着かない気分になります」
最初からどこかメイドさんっぽい格好だったリリネットは本当にメイドさんだったのだろうか?
俺は変なひらめきは首を振って振り払い、無難なことを言った。
「……掃除好きなんじゃない?」
「そうなのかもしれませんね。ところでこの箒、私以外の、このGPDの中のデータに使ってみたりはできますか? どうにももやもやする部分がありまして」
「まんま箒じゃないからね? まぁ、できなくは、ないのか? ……そう言うのわかるもの?」
「最近コツを掴んできたところです。やめた方がいいのならしませんが」
それはバグとりを自分でやると言うことなのか?
まぁおおよそデータの整理という意味では頼んでいることと大きく差はない気がするので、俺はGOサインを出した。
「……いや、出来ると思うのならやってみてもいい。でも、このGPDは君の生命線そのものだから、いじるなら細心の注意をしてやってみること、くれぐれも壊さないように」
「心得ていますとも」
むふーと胸を張って自信満々にされるとやっぱり不安になって来るんだけど……まぁいいか。
リリネットもその自信の根拠はわかっていないみたいだし、色々試してみてほしい。
後日うちのGPD筐体のシステム面が劇的に効率化されていて、俺はELダイバーの可能性を見た気がした。
同時にプログラマーとしてはちょっと負けた気がする。
「すごいな……ELダイバーはプログラマーでもやっていけるのかも」
「いえいえ、全ては掃除のスキルです。いい道具のおかげですとも」
そんなものなんだろうか?
やっぱりリリネットはひょっとすると、エルドラじゃ凄腕メイドさんか何かだったのかな? なんて妄想が頭に浮かんだが、事実は宇宙の果ての電子の海の中である。