転生主人公、ガンプラバトルネクサスオンラインを遊び倒す 作:くずもちXXX
アースリィガンダムが最も厄介なのはその狙撃性能だろう。
おそらくはヒロトの最も得意とするバトルスタイルを伸ばした機体、それがアースリィガンダムだと思われる。
しかし、距離は十分詰めた。
「……今はまだ、アースリィガンダムなんて名前じゃないんだろうけどな。絶対ヒロトには言わないように気をつけないと、うっかりしちゃあ台無しだ!」
何が台無しかってそりゃあ、大切な思い出エピソードを俺が無くすなんて許されない。
しかし相手が優秀な機体だとしても、こっちだって負けていられなかった。
アースリィから続けざまに発射されたビームを巨大メイスで叩き落す。
続いて、鋭く迫ったビームサーベルをかわし、距離をとった。
超至近距離の一瞬の攻防はお互いの技量を感じさせるものだった。
「……バルバトス。前より磨きがかかってる」
「そのアーマー……ここまでコアガンダムと反応速度が違うのか!」
この機体は狙撃だけじゃないらしい。
こうして直に戦えば本当の意味で理解できた。
アースアーマーはコアガンダムのポテンシャルを大きく引き出す、最も純粋なコアガンダムの上位互換だ。
それに加えてフルスクラッチ作品の完成度とは思えない工作密度の機体は、俺の想像を超えてゆく。
「……じゃあこれならどうだ!」
弾む声のヒロトは明後日の方向にビームライフルを撃った。
「なに?……うげぇ」
命中したのは巨大な岩の塊だった。
位置を計算された!
それも落ちてきているのはモビルスーツがぺしゃんこになるくらいの大岩だ。
月にだって重力はある。
重さが6分の1でも、あの質量ならGレクスをぺしゃんこにしてあまりあるだろう。
「うおお!」
Gレクスは上に逃げた。
垂直にバーニアを吹かし、矢面を転がって来る岩塊を飛び越える。
「でもそれは悪手だ―――」
「しまっ―――!」
ヒロトのライフルがGレクスを捕らえる。
装甲が赤熱し、画像が激しく乱れたが何とか耐えきったのはレクスの装甲ゆえだろう。
「……危ない。でもピンチはチャンス!」
「いや。まだ俺の攻撃だ」
ヒロトの声がやけにはっきりと聞こえた気がした。
何か寒気を感じ、上を向く。
そこには空中から周囲にワイヤーを伸ばすなにかが飛んでいるのが見えた。
アッザムリーダーはマズイ! アレはビームでも実弾でもない!
「ぬおおお!」
咄嗟に砲でカプセルを撃ちまくり、同時にテイルブレードで地面を叩いた。
アッザムリーダーは強力な電磁波によって、ワイヤー内を灼熱にする。
パイロットが煮えるなんてことはさすがにないが、強力な電磁パルスは電子機器に致命的なダメージを与えるだろう。
効果範囲内を何とか抜け出したが完全には逃げ出せず、無傷では済まない。
Gレクスの機体は不調を訴え、出力は明らかに低下していた。
そして無理な脱出は容易にこちらの動きをヒロトに悟らせていたようだった。
Gレクスは膝を突く。
すぐさま躍りかかって来たアースリィはすぐ後ろに迫っていた。
「―――これで!」
「……終わりじゃない」
「!」
射線にアースリィガンダムが入った瞬間、Gレクスのバックパックのクリアパーツが輝く。
そこに俺が増設したのは拡散メガ粒子砲だった。
「吹っ飛べ!」
ランダムに放たれる拡散メガ粒子砲が追撃してきたアースリィを焼く。
完全な不意打ち成功は、相手に深刻なダメージを与えていた。
「……!」
「ビックリギミックはそっちの専売特許じゃないぞ」
「そうみたいだ……驚いた」
アースリィガンダムはビームサーベルを正面に構えるとゆらゆらと大気が揺らめいていた。
俺もメイスを構えて体勢を低くした。
接近戦で負けるつもりはないが、機体の動きが鈍いのが気にかかる。
最後の裏技も使ってしまったことだし、本日最後の勝負としよう。
「……今ので仕留めきれなかったのはまずかったな!」
Gレクスは口から初手、ビームを吐いた。
この至近距離で器用に躱すアースリィははっきり言っておかしいが、逃げやすい方向に逃げてくれて助かる。
「ふんぬ!」
狙い通りの位置にいるアースリィに俺の大型メイスは振り下ろされた。
アースリィは思い切りバーニアを噴射して、砂埃を巻き上げた。
だが今更目を封じたところで、外しはしない。
「獲った!」
メイスに確かな衝撃を感じ、装甲を叩き潰した感触を俺は確かに感じた。
その時点で俺は勝利を確信してしまった―――いや、気を抜いてしまったのだ。
しかし煙が晴れ、地面に突き刺さっていたのは青いアーマーだけだった。
「!」
Gレクスの頭をビームが貫いたのを俺は自らの負けと共に知ることになる。
「負けたぁ!」
ああ負けた! あそこまで思惑通りに行って、負けたのなら完全に負けだった。
「まさか脱皮とは……完全にやられた」
咄嗟に腕のアーマーだけ犠牲にして回避するとはしてやられたとしか言えない。
「うまく行って良かった。でもその機体、大分怖いな。正直いつ負けてもおかしくなかった」
「いや、今回は完全敗北だ。めっちゃ悔しいよ」
正直なところを口にすると、ヒロトは嬉しそうに苦笑していた。
「ヒロト! すごい!」
「イヴ! ……いや運が良かっただけだよ」
笑顔で飛びつかれたヒロトは、勝者の特権を存分に味わうといいだろう。
「……」
「……」
そして敗者に刺さる視線が痛い。
心なしか冷え冷えしているリリネットのメガネは気持ち霜が降りてるんじゃないかと思った。
「おつかれさん……見てたぞ。クククッ」
そしてアンシュに笑われた! 笑いに出て来たとしか思えないタイミングに、俺は地団太を踏んだ。
「君達ねぇ! 傷心の俺をねぎらおうって気はないのかい!?」
「ないな」
「ないです」
「ヒン!」
フォースメイトが冷たい!
涙目の俺だったが、楽しそうな笑い声を聞いて顔を上げると意外にもヒロトが俺達を見て楽しそうに笑っていた。
「なんだか、いいフォースが出来てるんだな。……楽しそうだ」
本当にそう思われますかヒロトさん?
まぁ、確かに俺は楽しんでいるけれども。でもまだまだこんなの序の口だった。
「ああ。でもサービスは始まったばっかりだ。これからもっともっと楽しくなるさ。俺は負けっぱなしじゃないぞ? 次こそは必ず勝つからヒロトも頑張っといてくれよ」
ニヤリと口角を上げた俺に、ヒロトは目を丸くしていて―――優しく微笑むと手を伸ばす。
「ああ、待ってる。またやろう」
そして俺はその手を取って握手をした。