転生主人公、ガンプラバトルネクサスオンラインを遊び倒す 作:くずもちXXX
「ひゃっほー!」
ガンダムバルバトスルプスレクス、その改造機を操り、俺 オサカベ タカマルは大型メイスをぶんぶん振り回して、ご機嫌な重量感にテンションを上げた。
的のデスアーミーは面白いように砕け散って、攻撃力は抜群だった。
駆動系に問題なし。
ポロリもなければ、変に干渉するパーツもなく、武装も機能しているようだ。
そして予想よりもパラメーターが高めに設定されているのは我が技量のなせる業である。
前世からコツコツと積み重ねたノウハウは常に最新の機体の中にある。
ただ飾っても良いものだが、作ったガンプラを戦わせるという、前世では夢でしかなかった技術は俺をまったく飽きさせることはなかった。
「ああ……いいなぁ。やっぱガンプラを直接動かせるこいつもいいもんだ……」
俺はしみじみとノスタルジーに浸りながらGPDの筐体の上で動く機体を楽しんでいた。
今回の出来は中々のもの。
上機嫌でテストを続けていると、不意に声を掛けられた。
「どんなもんだい? 新作は?」
「ああ、父さん。いい感じだよ」
顔を上げると、そこにいたのは父である。
この店の店主であるわが父は、俺の模型作りを応援してくれる理解者の一人である。
この世界では模型作りの認知度が、世の中的にはるかに高い。それは個人的に歓迎すべきことだった。
そして父さんもまた一人のガンプラビルダー。出来上がった機体を見て目を輝かせていた。
「それってGBNで使う機体だろう? もうサービス開始近いもんな」
「そうなんだよ。ひとまず動かしてみて調整中。GPDも絶対GBNは参考にしてるんだし」
「まぁそうだろうね」
頷く俺達にはある程度の確信があった。
旧作あっての新作である。
地道な積み重ねこそが、いいゲームの原則だろう。
俺はこっちに来た以上、ガンプラには全力で当たろうと決めていた。
ゆえに新旧、システム面にまで把握することに努めているわけだが……そういうのは建前で趣味に没頭した結果である。
今では多少の不具合なら、筐体自体メンテナンスまで出来る自信がある。
そういうことを差し引いても、細部に旧作が生きているのは、好きな者ほどわかるところだった。
「それに……こっちはこっちでいいものだ。だってガンプラ実際に動くんよ!?すごくない!?」
「まぁ……よくわかるね。とてもよくわかるとも」
「何はともあれ続編も楽しみだよ。筐体も届いたしダイバーギアも入荷済み……期待せずにはいられない」
「うん。そうだねぇ。ああ、そうだ。父さんこの後用事があるから、店番お願いしていいかな?」
「心得た。気をつけてー」
チェックが終わったバルバトスをいったん片付けて、ひとまず店番である。
しかし今日はお客が少ない。
気分転換にのんびりとザクが滝つぼの湖で朽ちた感じのジオラマを製作しながら店番をしていると、カランコロンとお店の扉が開くベルの音がした。
「いらっしゃいませー……」
入って来たのは俺と同じくらいの歳の少年だった。
ただ、どうにも見覚えがある気がする。
それは遠い記憶に紐づいた、だがとても身近な記憶な気がした。
「あ、すごいな。このお店前の筐体も置いてあるんだ……」
そうだろうそうだろう。どっちも置いてあるお店はそうそうあるまい。
まぁちょっとスペース圧迫してるけど、楽しいガンプラバトルには必要なことだ。
「すみません。プラモ用の塗料を探してるんですが……置いてありますか?」
「はいもちろんありますよ。あちらご自由にどうぞ」
「あ、すごい。沢山あるな……ここってGBNの筐体置いてあるんですね」
「はい、昨日届いたんですよ。お客さんもGBNやるんですか?」
「はい。今新作のガンプラを製作中で……」
「いいですね。俺もです」
「え? でもそれジオラマじゃ……」
「え? ああ! 違います違います。作ったのはこっち。ジオラマは気晴らしです」
慌ててバルバトスを机から取り出すと。彼は目を輝かせた。
「……いい色ですね。加工も綺麗だ」
「いやぁお恥ずかしい。サービス開始から始めるつもりなんで、中で見かけたら遊びましょう。ハンドルネームはタカマルです」
「いいですね。その時はぜひ。オレは……ヒロトで始めると思います」
「……ヒロト?」
しかしそこで俺は、彼が撃ち込んだ自分の名前を見て、彼を見た時に感じた既視感の正体をようやく理解した。
……クガ ヒロト か?
ハンドルネームはそのままヒロト
動揺で一瞬フリーズした俺にヒロトは不思議そうな顔をしていた。
「どうしました?」
「いえ、なんでも……知り合いに似た名前がいたもので」
「ああ、そうなんですか」
「そうなんですよー。ああ、家の店はガンプラに力を入れてますから、何かご入用の際はぜひ。最近は、GBNのサービスも始まって、色々品薄ですから個人商店も捨てたものではないですよ」
「確かにそうかも。ありがとう」
おそらく本人であろうと確信したのは、その容姿があまりにも自分の知っている彼と似通っていたからだ。
必要な物を買って、店を出ていくヒロトの後姿を見送って、ようやく俺は深く息を吐いた。
なぜか緊張してしまうのは、仕方のない事だと思う。
「あービックリした……主人公ってうちの店来たりするんだ」
ネット題材の作品で、主人公を探し出すなんて雲をつかむような話だと思っていたよ。
いや本当に世の中何が起こるかわからないもんだ。
まぁ、だから何だって話なんだけどね。
原作は原作、ウチはウチだ。
ただ……誰であれガンプラを心から楽しんでもらいたいと思うのは、プラモ屋店員の心意気である。