転生主人公、ガンプラバトルネクサスオンラインを遊び倒す 作:くずもちXXX
夜空の見えるフィールドで寝そべるヒロトは手にした端末で、動画のフォースミッションを見ていた。
「モルガーナ、またランキング上がったのか。頑張ってるんだなタカマル……」
「ヒロトも頑張っているでしょ?」
ひょいっと視界の隅から現れた笑顔に、ヒロトはハッとして身を起こした。
「イヴ。……驚いた。いや俺は頑張ってるのとは少し違うかな?」
ヒロトが苦笑いでそう口にするとイヴは首をかしげて不思議そうに言う。
「そう? ミッション沢山頑張ってるでしょう? それとも、もっと頑張っている人がいるの?」
不意の言葉にヒロトは、自分でも思っている以上に驚いて咄嗟に言葉が口を衝いた。
「いや、そう言うわけじゃないけど……いや、うん少しだけ張り合っていたのかもな。ホラ、タカマルってさ、すごく楽しそうに色々やってるだろ? 俺も……色々やってみたくなっちゃって」
頭に浮かんだのは、つかみどころのない友人の顔だ。
そしてイヴの頭にも同じ顔が浮かんでいるようだった。
「……うん。そうね。彼はとっても楽しそう。それで、沢山着せ替え作るのも頑張っていたのね」
「ああうん。そっちは君のおかげもあるかな。沢山アイディアをくれたし」
「私はヒロトのイメージを膨らませただけ。短い間にこの子とってもとっても強くなれたから、すごく驚いてる」
二人はコアガンダムを見上げる。
確かにかなり短期間にアーマーを充実させたのは間違いなかった。
様々な状況に対応するアーマーを使って、最適な運用をすることがこのコアガンダムの強みだ。
だから、アーマーの数が増えれば増えるほど運用の幅は広くなっていく。
バトルを続けるなら、それはコアガンダムの、そしてヒロト自身の強い味方になってくれるはずだった。
「……そうだね。急いで作業が粗くなってしまっていたら悪いな」
ガンプラの心が分かると言うイヴにそう尋ねると、彼女は楽しそうに笑ってくれた。
「そんなことないわ。とっても上手。この子も驚いているけど、とても喜んでる」
「それならよかった。本当はもっと時間をかけて作るつもりだったんだ」
ヒロトにコアガンダムの感情はわからない。でも出来る限りの心は込めたつもりだった。
GPDからGBNに移る時、正直少し乗り切れていなかったところがあった。
だけど、今はイヴのおかげでこのGBNを好きになれている気がする。
そして昔、確かにあった情熱を、タカマルを見ていると思い出した。
「コアガンダム、お前も……小さくても何かできるんじゃないかって作ったんだったよな」
「フフフ……じゃあ私も何かできるかな?」
「? イヴならできると思う。俺だっていつも助けられているから」
「ホントに? だったら嬉しい。私もヒロトの助けになりたいもの」
「そ、そう?」
「うん……私この世界が好き。ねぇヒロト? この空ってどこまで続いてるのかな?」
彼女は夜空を見上げながら言う。
どこか切なく、故郷を想うような顔をしたイヴの言葉をヒロトは理解することが出来なかった。
「どこまで?」
「いつか行ってみたい。ヒロトとヒロトのガンプラと」
「それって、エリア移動するってこと?」
「そうじゃなくって……ここから空の向こうへ行くの。大気圏を超えて、お月様のその先、火星も木星も土星の輪っかも飛び越えて太陽系の、GBNの果てまで」
「流石に出来るかな……ああ、でも。タカマルは。もう月までいってるんだっけ?」
「フフフッ。そうね。だからきっとできる。GBNのみんなの大好きって気持ちが集まればどんな奇跡だって起こせる……私みたいに」
「え?」
「ううん。なんでもないの」
イヴは首を振りヒロトに手を伸ばした。
「だから行こう? ヒロト、もっともっと遠く。銀河の遥か先、宇宙の向こうまで―――どこまでもどこまでも!」
「そうだな……そんなのもいいかもしれない」
ヒロトを見るイヴはいつも笑顔だった。
それでいいと、いつも笑っていて欲しいとヒロトは思う。
だって、彼女の笑顔が、この世界を好きになるきっかけだったから。
ヒロトはイヴの言葉を完全に理解しているわけではなかった。
でもイヴが喜んでくれるなら、なんでもやってみていい。
コアガンダムもそういう形のない願いを形にするために作られたものだから。
「そうだ! コアガンダムの換装パーツに星の名前を付けよう」
「星の名前?」
「そう。1号機は地球。だからアースアーマー」
「地球は三番目の惑星だから」
「スリー……あ!」
「「アースリィガンダム!」」
声をそろえて笑い合う。
イヴは提案を気に入ってくれたようで、何度も頷いていた。
「いいねヒロト! そうしよう! とっても素敵!」
「うん……じゃあ他のアーマーの名前も考えよう。きっといい機体になる」
「そうね! じゃあね―――」
イヴとヒロトは出来上がったアーマーに名前を付けていった。
名前の付け方は決めたから、後はどんな風に名前をくっつけようか頭を捻る。
ずいぶん長かったような、とても短かったようなそんな時間だった。
でも、名付けたアーマーはとても愛着がわいたし、そんな時間をヒロトはずっと覚えている気がした。
「……ああ、もうこんな時間か。じゃあイヴ、今日はもうログアウトするよ。明日は来られないかも」
「うん。じゃあねヒロト。また……」
ヒロトは心地よい感覚に名残惜しいものを感じながら、ログアウトした。
イヴはログアウトしたヒロトを見送り、呟いた。
「……ヒロト。ありがとう」
この奇跡のような時間がいつまで続くのか、イヴ自身にも分からない。
でも少しずつ自身に歪みが溜まっていることは、不安として存在していた。
「本当に、奇跡みたいなことなのよね。私がここにいることは……」
だけどたぶんこの奇跡には代償がある。
いつかその時はやってくるのかもしれないけれど、その時はこの世界のために何かしようとイヴは決めていた。
「―――見つけました。イヴ様。少々お話よろしいでしょうか?」
「え?―――」
イヴは振り返る。
いつの間にか現れたその人達は一人の女性の後ろに、横一列に並んでいた。
そして、真ん中にいるメイドのような服を着た女性をイヴは知っていた。
「貴女は……ヒロトのお友達のところにいた」
「改めまして……私はリリネットと言います。イヴ様。今日はあなたを―――お迎えに上がりました」