転生主人公、ガンプラバトルネクサスオンラインを遊び倒す 作:くずもちXXX
ガンプラをセットしたシャフリヤールは滑らかに発進を決めて、バトルフィールドに降り立った。
ガンプラの動きはとても良い。
やはり丁寧な仕事が光るモデラーの作品は愛を感じるとシャフリヤールはサタンガンダムの動きに満足げに笑みを浮かべた。
「この感じ懐かしいな!……しかしあのナイトガンダム、見たところパイロットがいる様子がないが」
タカマル君が動かしている様子もないなら、遠隔操作かNPCということになる。
GPDでもNPCと戦ったことはあったが、今一歯ごたえがないと言うのが当時の印象だった。
反応が悪く、アグレッシブさに欠ける。どんな機体を使っても単調な動きをするものだから、動作確認以上の意味はない、それが旧式のNPCである。
「ふむ……なぜ戦わせようとしたのかよくわからないが、まぁやってみるか」
今回はGPDを懐かしむのが目的、そう考えてサタンガンダムの髑髏の杖を振りかざす。
魔法の光が杖の先端に集約し、弾けた。
ガンプラの性能が十分であるなら、威力もまた相応のものになる。
「さぁどうだ!」
杖から電のような光が放たれたとたん、ナイトガンダムは動き出した。
「!」
しかしその動きは明らかに予想していたNPCの動きではなかった。
ナイトガンダムは魔法の稲妻に真っ向から直進してくる。
そしてステップを踏む様に見事な動きで雷をかわし、斬りこんで来た。
「おっと!」
あまりにも鋭い踏み込みに、押し返された。
だがすぐさまシャフリヤールは杖を突き出し、レーザーのような閃光でナイトガンダムを狙い撃った。
「思ったよりいい動きをするじゃないか!」
サタンガンダムの攻撃は、ナイトガンダムの攻撃モーションの隙を完全に突いた一撃だった。
これならば仕留められる。
そんなシャフリヤールの確信は、受けた剣で閃光が弾かれるその瞬間に裏切られた。
「悪よ―――滅びろ! なんちゃって」
「んな!」
その上、眉間に剣を突き立てようとしてくるのだからそのアグレッシブさは目を見張るものがあった。
何とか回避できたが危なかった。そして今の声は何なのか疑問は尽きない。
「―――強い」
杖と剣がぶつかり、魔法の力が拮抗する。
ここから先はもう少し踏み込んだ戦いになる、そう覚悟したタイミングでバトルはいきなり終了した。
「そこまでです。どうでしたか?」
試合を止めたのは、タカマル君の声だった。
いつの間にかダイバーと対戦している時並みの集中が途切れて、シャフリヤールは顔を上げた。
「驚いた。いったいどんなAIを積んだんだ?」
「まぁAIと言えばAIなんですが、少し違うんですよ」
そんな問いにタカマル君は満足そうに笑みを浮かべて、こう言ったのだ。
「実は今戦った相手はリリネットさんなんです。あの俺のチームにいたクタン使いの女性ですよ」
そう言われてシャフリヤールはアプサラスⅢを撃破した女性ダイバーの事を思い出す。
今戦ったのが彼女だと言うのなら、自分の見当違いだったのだと納得した。
「ああ、なるほど。遠隔操縦ということかな? それはそれですごい技術だと思うが……」
「いえ、そういうことではなく。彼女は……GBNの中で出会った自然発生した電子生命体だと言ったら―――信じますか?」
「? どういうことだい……」
「こういうことでございます。シャフリヤール様。リリネットと申します」
すると突然誰かが話しかけてくる。
声に向かって視線を下げると、ナイトガンダムが機能停止してその傍らに立体映像が現れた。
手のひらサイズのリリネットと名乗る彼女は、こちらの顔を見てシャフリヤールの名前を呼んでいた。
「……これはご丁寧に」
「いえ。突然のことで驚かせてしまい申し訳ございません」
なんとなく軽く手を振ってみると、ニコリと微笑む彼女はこちらの反応を見て行動しているように見えた。
「信じられないと思いますが、ELダイバーと俺達は呼んでいます。このGPDの筐体も彼女達のために用意したものなんですよ」
淡々と語るタカマル君の意図がシャフリヤールには分からない。
だからシャフリヤールは、単刀直入に聞いていた。
「ふむ。君は私に何をさせたいのかな?」
それは興味本位の質問だったが、彼の答えはほんの少しだけ心動かされるものだった。
「大したことではありません。店に誘ったのと同じようなものですよ。GBNで面白いことが起こっているから一緒に遊ばないかなと。あなたのようなモデラーが一枚噛んでくれると、とても心強いですから」
「へぇ。まぁ確かに興味はあるね。GBNで私の知らないことが起こっているというのも気になるな」
「そう言ってくれると思ってました。じゃあ、きちんと説明しますね?」
タカマルという少年は胸をなでおろすようにそう言って、とても信じられないような話をし始めた。
そしてGPDの筐体の上で、実際に彼女達と顔を合わせて、シャフリヤールの疑念は大きな好奇心へと変わっていた。
「ふーむ……ELダイバーか。そうだな……私の方も少し気になることがある。協力してくれるのならこちらも手を貸すのもやぶさかではないよ?」
「というと?」
少しだけ緊張してしまったタカマル君だが、シャフリヤールは改造されたGPDに視線を向けて、提案した。
「いや……実は、この改造GPDにかなり興味があってね。特にSDガンダムの世界観を構築したこれは見事だ」
「そ、そうですか? それは嬉しいですね」
「うん。私の方でも似たような環境を作ることはできそうなんだが……実は私の弟はSDガンダムが好きでね。しかしネットゲームをするにはまだ少し年齢的に早い。出来ればオフラインでガンプラバトルを楽しめればいいなと思っていた所なんだよ。私がいない時でも一人でバトルが出来れば面白いと思うんだが」
どう見ても幼い彼にこんなことを言うのは少し酷な気がしたが、目の前のGPDはとても子供の仕事には見えない。
可能であれば、今のバトルくらい歯ごたえのあるバトルが出来るのなら弟も楽しめるだろうと思う。
どんな返事が返って来るだろうと、内心期待していると。
タカマル君は少し悩んだ後頷いて、大丈夫だと断言した。
「本当かい?」
「ええ。実は最近、面白い知り合いが出来まして。新技術の目途が立ったんです」
「新技術かい?……それはまた年齢に見合わない話だね」
「よく言われますが、こいつはすごいですから自慢させてください」
「そんなにかい?」
「ええ。その名も『ビルドデカールバージョン1.0』です。こいつがあればELダイバーの中で興味がある子がいればですけど、そちらに派遣するなんてことも出来るかも。まぁ……GBNありきの非正規ツールなんで、ホントは胸を張って新技術なんて言えないんですけど」
「フフフッ悪い子だね―――ゲーム自体で不正ではないのだろう?」
「ゲームは真剣勝負が面白いと思っています。ただ……ELダイバー達がめちゃくちゃ頑張ってくれているのが、いつか不正と判断されたらどうしようと怯える日々です」
「あー……それは確かに。まぁ彼女達の事をよく知らない私から言えることはないのだが、うまくやることだね。楽しんでこそのガンプラバトルだ」
「もちろん。ケチが付いたら最悪ですから」
さて真偽のほどはわからないが少年が何をしてくれるのか、シャフリヤールはとても興味を引かれていた。
そして数週間後、派遣されてきたELダイバーと触れ合い、ゲーム内と趣味の部分だけでなく、本気で協力を申し入れてみることを決めた。