転生主人公、ガンプラバトルネクサスオンラインを遊び倒す 作:くずもちXXX
「……一体何をどうしてこうなった?」
「……それを君がいうのかいシバ君。でっかい倉庫にGPDパラダイス作ったって言いだした君を見た時の感想がそれだよ」
「いや、なんでいきなり機材が最新型に一新されんだ? おかしいだろ?」
「それは……思ったよりもうまく行き過ぎたというか……石油王舐めてたって言うか……派遣した子が思ったより優秀だったんだよ」
「なんだそれ?」
立候補したELダイバーはリリネットの影響を特に受けていた女性型ダイバーだ。
ほぼほぼ無感情に見えるのに、奉仕の精神を学びたいと主張したメイド好きである。
これを機に『バティ』と名付けられたELダイバーは我が出てきたのなら、自己を確立するためにもう一息というところだろう。
ひとまず色々と学習能力の高いELダイバー達だが、航空情報とお天気情報だけは念入りに調べるツールを持たせておいたよ。
航空事故はとても危ないという情報を添えてね。
「しかしここまで本格的だとゼーガペインが頭をよぎる……だいたい合ってるな」
「……何て?」
「何でもないね」
まぁなんやかんやあって最強のタカマルサーバーが誕生した。起こったことはそれだけだった。
「ああ、それと開発者の人が真面目に調べ始めてるから、シバ君もここからは一般ダイバーの人にELダイバーの事言いふらしちゃだめだよ? そのうち公開されるからね」
「うーん、この暗躍具合が、うさん臭さの元だよな……」
「なんか言った?」
「何でもないね」
まぁもうここまで方々で動き出してしまっては、勝手に進んでいきそうな気がしていた。
そしてこれはたぶん間違っちゃいないと思えた。
「やっちまったものは仕方がない。定期連絡終わり。じゃあシバ君、見ていくなら好きにいじってみていいよ」
「どこか行くのか?」
「店番だよ。こちとらホビーショップの店員さんだからね」
「ああ、そうだったな……なぁ、俺も後で店に行ってもいいか?」
「もちろん、気軽にどうぞ? お安くしとくよ」
「……ああ」
少し片づけてくると言うシバ君の背を見送り、俺は倉庫から店に向かった。
いやー大変なことになってしまったが、良いことの方が多い。
世界初、ワールドワイドに活躍するELダイバーの前途に期待するとして、俺は頑張って店番である。
俺がカウンターで少しばかり作業疲れをクールダウンしているとさっそく店に誰かが入って来るのが見えた。
「あのー、すみません」
本日のお客様は、制服姿の女学生。
彼女は確か―――。
「いらっしゃいませ。確かヒロトと一緒にいた。そう……ヒナタさん?」
「あ! そうです。店員さん。この間はありがとうございました」
「いえいえ。プラモデル出来上がりましたか? ちょっと心配してたんですよ」
ズゴックはフォルムこそ大きめだがやはりそこはRGシリーズだ。パーツも細かく、数も多い。
少々心配な部分もあったわけだが、にっこり笑ったヒナタちゃんの表情を見れば杞憂だったようである。
「はい! 上手に出来ました! ヒロトにも手伝ってもらえましたし……」
「それは良かった」
イケてる店員さんの任務はこれで本当に完了した。楽しんでくれたら最高である。
しかし次のミッションは、すぐにやって来た。
「えっと、それで……今日は店員さんに相談に乗って欲しくって」
「相談ですか?」
おや、これはまた意外な展開。
どうやら俺はイケてる店員力を発揮しすぎてしまったかもしれない。
しかし相談したいと言うのなら受けて立とう、他ならぬガンプラの事に関して俺は引くわけにはいかないのだ。
「はい。大丈夫ですよ」
「えっと……実は私もGBNを始めてみたくって。でもヒロトに聞こうにも……なんだかとても大変そうなことをしてて、一緒に楽しむって感じじゃないんです」
「あぁーまぁそうですね。ヒロトは工程多そうなことやってますから。横で既製品組み立ててたら邪魔してる感じがしちゃうかも?」
そう言うとヒナタちゃんは身を乗り出した。
「そうなんです! 箱から出してプラモ組み立てるんじゃなくて、こう……平たい板を積み重ねたり、とっても臭い接着剤みたいなやつを混ぜたりしてるんです!」
ううーん。まぁ確かにフルスクラッチなら仕方がない。
元になるフレームはあるんだろうけど、やってることが素組とは根本的に別である。
「それで私もゲームならって思ったんですけど……この間のやつで、ヒロトと一緒に遊べますか?」
「遊べますよ。遊べますが……」
「だ、ダメなんですか?」
「ダメじゃないですよ……ただ」
そう遊べる。どんな機体でも遊べるのが、GBNの良いところだと思う。
しかし『ヒロトと一緒に遊びたい』……これが問題だった。
ヒナタちゃんが遊びに誘えば、最初こそヒロトも空気を読んで、軽めのミッションを選んでくれることだろう。
しかしそれが大きな落とし穴となる。
ヒナタちゃんとて鈍くはないのだろう。
いや、プラモ作りの時点で気を使ってしまうと言うのなら、むしろ鋭い方だと見た方がいい。
そしてヒロトはどう考えても、トッププレイヤー帯のプレイヤーである。
戦う相手も強ければ、ミッションだって遊ぶとなれば高ランクになることだろう。
そんな中、一緒にやろうと素人の女の子が素組の機体片手に突貫したところで、足手まといにならないか?
それはとても難しいと言わざるを得ない。
初めに簡単に埋めることが出来ないヒロトとの差を感じてしまえば、悲しいことになる未来は容易に想像できた。
それはショップ店員としては看過できない事態である。
まして相手はヒロト君のお友達。入門にRGを売りつけた負い目もあることだし、ここは是非力になりたいところだった。
「ヒロトと一緒に遊ぶことが目的なら……機体は強力なものを選んだ方がいいかもしれませんね」
「そ、そうなんですか?」
「ええ。ヒロト、ゲームがうまいんですよ。だから技量の方は少しずつ慣れるしかないですけど、せめて機体性能は同格以上の物を使った方がいいかもしれません」
ガンダム作品は、多種多様な機体が存在する。
もちろんどんな機体を使っても戦い様はあるが……どうしても性能差というものはあった。
そして工作の技量も反映してしまうのは、少々初心者さんにハードルの高い仕様でもある。
「で、でも。それは私が作ってもダメなんじゃ……」
「いえ。今回は楽しくゲームをするのが目的なんでしょう? なら、機体を作ってもらうっていうのはどうですか?」
「作ってもらうんですか?」
「ええ。そうすれば高性能な機体でいきなり遊べます。GBNは機体が壊れるようなことはないですから練習するのもいいでしょう」
いきなりいい道具から入るのは別に悪いことではない。
まずはやってみる事だ。そして興味が出たら色々試してみるのは順番として間違ってはいないと俺は思う。
「でもお金沢山かかりませんか? プロの方にお願いするんですよね?」
心配そうな少女が表情を曇らせるが、プロに頼めばそうだろう。
しかしそこは店員さんではなくこの熟練のアマチュアガンプラビルダーが一肌脱ごうではないかという話だった。
「私が作ってもいいですよ」
「え? 店員さんがですか?」
「ええ。1機くらいならどうにかなります。2000円くらいでどうです?」
「……いいんですか?」
「もちろん大丈夫ですよ。店員に二言はありません」
正直こんな値段で請け負っては完全に赤字だが、引けない。
これは店員としては失格だが、1GBNビルダーとしては楽しむ一歩はすがすがしく歩んでもらいたい。
ついでに言うと、よかったら原作崩壊気味の中でヒロトの力になってくれればとても嬉しいと思う俺だった。
「そこまで言ってくれるなら……お願いします!」
他ならぬヒナタちゃんに深々と頭を下げられては、俺も本気を出さざるを得なかった。
「じゃあ、キットを選びましょうか。えっとそうですね……」
ではおすすめチョイス再びだ。
このヒナタという少女。少々反則知識だが俺の原作においてのイメージは、完全に巫女さんだった。
現状どんなアバターにするのかはわからないが、たぶんあの巫女さんっぽい衣装で作ってくる気がする。
きっと神社の関係者に身近な人がいるのだろう。弓道を部活として選択していたから、無関係とも思えなかった。
神社か……なら神様を思わせる名前の―――。
「!」
そこで運命的に目に入ったキットに、俺は戦慄した。
いやしかし……これは奮発しすぎじゃないか?
いやいやしかし思いついたら作りたくなってくるのがモデラーだった。
だから俺はそれを手にする。
ガンダムアストレイゴールドフレームアマテラス。
その原型となるキットをだ。
「ではこれを使いましょう……」
「……なんだかゴールドって書いてありますけど?」
「大丈夫です。いいキットですよ」
完成すれば恐ろしい性能を発揮してくれること間違いなし。
何なら剣じゃなくって弓を装備させてあげるのも面白かった。
「お? ゴールドフレームか。そいつ作るのかよ?」
しかしその時、声をかけて来た男に、俺達の視線は集まった。
「え?」
「え?」
目つきの悪い男は俺の持つキットを見て、大変興味を引かれたようだった。
「し、シバ君!? どうしてここに!?」
「あん? 後で来るって言ったろう? んで? どうしたんだ?」
「ええっと。こちらのお嬢さんにGBN用の機体を用意しようって話をしててね。この娘、ヒロト君のお友達なんだよ」
「ヒロトって……ああ。お前がボコボコにされた奴か」
「ボコボコって言わないでね? 善戦したんだから」
「いや負けは負けだろうが。そこはごまかしちゃいけねぇよ」
カラカラ笑うシバ君は次にヒナタちゃんを見る。
「でもそうか、あいつと遊ぶなら……」
ヒナタちゃん怯えてるからやめたげてと思ったが、シバ君はフムと唸り、予想もしていない提案をしてきた。
「ならあんた。そのキット。俺が組んでやるよ」
「「ええ?」」
「引き受けたんだろ? 割り込んだみたいですまねぇが、俺はアストレイには一家言あってね。特にバトルに使うなら手は抜かねぇよ。これでもGPD時代は、大会でいいところまで行った実績もある、どうだ?」
ヒナタちゃんは、当たり前だが俺の顔とシバ君の顔を行ったり来たり視線をさ迷わせていて、戸惑い気味に答えた。
「えっと……追加でお金は払えないんですけど」
「いらねぇよ。まぁ確実に素組よりはいい性能に仕上げるさ」
そこで次に不安そうに視線が向かうのはやっぱり俺だった。
うむ、やはりそこは援護が必要みたいである。
「いい仕事すると思いますよ。バトル用の機体を作るなら特に。任せても大丈夫だと思います。顔は怖いけどとても面倒見のいい人ですから」
「おい」
「えーっと、な、ならお願いしても……いいですか?」
「任された。楽しみにしとけ」
「とりあえず、ズゴックで練習してみてください。登録が難しかったらいつでも聞きに来てくださいね。家にもGBNありますから」
「は、はい……ありがとうございます」
困惑しながら帰るヒナタちゃんを見送り、俺はシバ君を見た。
「妙に優しいな。どう言う風の吹き回し?」
「アストレイをタダで組めるんなら最高だろ? 勘を取り戻したいんだよ。愛機を調整してぇからな」
「お! じゃあついに?」
内心聞ければいいと思っていたセリフを聞いて俺は目を輝かせる。
シバ君は心持ち照れくさそうに、だが見た目はより顔を険しくしていた。
「ああ、まぁボチボチな。ビルドデカールも一段落ついたんだ。……それに、ヒロトってやつの連れなら素人でもそれなりの機体がないと辛いだろ」
おお、なんとそこまで状況を把握していたとは、彼はイケてる店員さんの素養もあるようだった。
「……気遣いの男」
「そんなんじゃねぇ。だいたいお前もずいぶん格安で引き受けてたじゃねぇか」
「まぁこの間RGズゴックおすすめしちゃったからね。最後まで面倒見たいんだよ」
「初心者にズゴックって……まぁいいキットだけどよ。なら……外装にズゴックでも使ってやるか? 作ったならそれなりに思い入れあんだろ」
「SEED系の機体にズゴックの外装ー……」
「なんだ?」
「いや? 何でもないけど? めっちゃいいアイディア?」
何でもないけど運命というか自由を感じた。
うん、こいつは期待できそうだ。
完成の暁にはヒナタちゃんも喜んでくれること請け合いである。