転生主人公、ガンプラバトルネクサスオンラインを遊び倒す 作:くずもちXXX
今日はヒロトに誘われて、俺は防衛ミッションに参加していた。
2対2の防衛ミッションは、お互いに与えられた拠点を破壊されるか、全滅すると負けとなる。
楽しそうに手を振って応援しているイヴと、すまし顔で座っているリリネットは今回不参加である。
「フィールドは、港と海。陸を与えられたのは俺がいるからかな?」
「海か……。相手によっては厄介だ」
そうそれも、かなり厄介だ。
これだけ広い海フィールドで、視界がいいのに敵が見えないとなると、敵の機体にはある程度想像がついた。
「いたぞ白い機体……黒い奴もいるな」
「最近ランキングが急上昇している奴らだ……だが、そんなに甘くないってところを見せてやろうぜ! ギガンテス隊!」
海からものすごいスピードで潜航する複数の機体があった。
海の色より鮮やかな水色の装甲を持つ機体、ハイゴッグが浮上し機体そのものが魚雷の様に真っすぐ突っ込んでくる。
そしてそのすべての腕には大型のミサイルが装備されていた。
「喰らっていけ! 新米共!」
「!」
そして、一斉に放たれた。
オレンジの外装の下から飛び出したミサイルは、完全に奇襲の形をとって開始早々俺達に襲い掛かった。
「ハッハッハッ! 奇襲成功だ! このミッション、どれだけ先に一機倒せるかが重要とみた! さぁ来い! 後はじわじわ水中でなぶってやろう!」
なるほど。見事な奇襲だった。
機体を一機でも破壊されれば、俺達は敵陣を狙うしか勝つ方法はなくなる。
そのまま放置していればおそらくこの場合1機落とされた方が判定負けになるだろう。
そうなれば水中用モビルスーツの独壇場である。
基本的に防衛ミッションは守る方が強い。
今回の場合は露骨にそれが出ることだろう。
「確かにそうだ……だがそれは、一機落とせたらだろう?」
「……なに!?」
敵の驚愕が、中々に心地よかった。
Gレクスは黒煙の中、大型メイスを振り回し、健在をアピールした。
バルバトスの防御性能は特に気を使っているのだ。
例え大型ミサイルとて、そう簡単に落とせるとは思ってほしくない。
だが防衛には成功したが、さすがに無傷とはいかなかったようだった。
ギシギシと機体が軋むのを感じるが、降参するのはまだ早すぎる。
「さぁかかってこい……まだまだここからだ、それとも逃げ出すか?」
「クッ! やるぞ! くたばり損ないのMS一機! 瞬殺だ!」
「了解!」
水しぶきを上げて、飛び出して来るハイゴッグを見て、俺はニヤリと悪い笑みを浮かべた。
それでいい。
だがここから先の展開は、俺にとってはかなり厳しいものだった。
「こういうのはくたばり損ないの方がしぶといんだよ!」
「ぬかせ!」
異形のモビルスーツのクローが、Gレクスを襲う。
俺は大型メイスを構えて、ハイゴッグめがけて襲い掛かった。
クローとメイスが激しくぶつかり合うが、2度3度打ち合ったところで、俺の方に限界が来た。
「ウッ!」
腕が衝撃に耐えきれずにもげた。
派手にぶちまけられるマニュピレーターの部品が宙に舞って、小爆発が目を焼く。
どう見ても満身創痍な様子はハイゴッグのパイロットたちに勝機を見せたに違いない。
「ハッ! 限界じゃねぇか!」
「……いや。これでいい。ほら、腕は捥げたが俺はまだ立ってるだろ?」
「調子のいいことを言っていられるのも今の内だ!」
俺が相手をしているのは2機。
相手の敗因は、速攻の奇襲で落とせなかった時点で俺を倒すことをあきらめきれなかったことだろうと思う。
距離を置き、俺を狙って両腕のビームカノンを連射してきたあたり、その必死さは見て取れた。
俺はビーム砲の乱れ撃ちを、耐えつつ躱す。
今は少しでもここでこいつらを足止めするのが先決だった。
だがそれもそろそろ終わりだ。ダメージを一手に引き受けていた俺は敵に向かって口を開いた。
「しかし……いいのかな? 敵は1機じゃないんだぞ?」
「貴様を倒せばどうとでもなる! 水の中なら……」
「それはどうかな? いつまでも俺に関わってると、追いつけなくなるんじゃないか?」
「なに?」
「俺達が水中用の装備を持っていないなんて言ってないよな?」
「……!」
すでにヒロトはここにはいない。
「コアドッキング・ゴー! メルクワンガンダム!」
深い藍色のアーマーを身に着けたメルクワンガンダムは、水中をものすごい勢いで移動していた。
そのスピードは決して水中専用MSに見劣りするものではなかった。
そのことに今更ながら気が付いたギガンテス隊の面々は攻める手すら止めて動揺する。
「なんだあの機体は! 水中でどんなスピードしてやがる!」
果たして今から追って間に合うのか?
そんな迷いは相手の焦り具合を見たら一目瞭然だった。
「くそ! ミサイル撃ったら即撤退……それがハイゴッグのセオリーだったってのに!」
「すまん! ガンダムタイプを甘く見た!」
「あきらめるな! 量産型が工夫で勝てるのがガンダムだ!」
「……いいだろう。俺達のテクニック見せちゃる!」
叫ぶハイゴッグのパイロットを皮切りに、最後のアタックを決行するギガンテス隊だったが、陸に上がった魚がフルスペックを発揮できるわけもなく。
メルクワンガンダムの水中での性能は俺が粘っている間に相手の拠点を破壊するのに十分だった。
「フッ……勝った」
「水中だったのは焦ったけど、何とかなってよかった」
「相手のフォース、ハイゴッグメインはいいセンスしてたよな。ギガンテス隊……覚えておこう」
ミッションを終えて、ミッションカウンターに戻ってくるとイヴ達が待っていた。
イヴはヒロトに駆け寄り、とても嬉しそうに彼をねぎらった。
「お疲れ様! すごかったねヒロト!」
「イヴ。ありがとう」
そして俺は、おそらくいつも通りの様子についほっと胸をなでおろした。
「……そんなに心配でしたか?」
そんな心中を察せられたのか、突然リリネットに言われて俺は肩をすくめた。
「そりゃあそうだよ。記憶は複雑だし、人間はミスをする」
「そんなことはありません。あなたはそんなミスはしないでしょう?」
「買い被りだね」
「そんなことはありません。勝手に私がそう信じているだけですので」
「うぬ……まぁ頑張るよ」
リリネットの期待が重いけれど、彼らにとって死活問題ではある。
荷物は重くなってきたけれど、頑張るとしよう。
「なぁイヴ……今日はなんだかご機嫌だね?」
「そうかな?……そうかもしれない。私とても楽しい!」
「そ、それならよかった」
ヒロトがイヴの明るい笑顔に不意をつかれたのかどぎまぎしていた。
そして思わずニヤリとする俺達。
こうしてヒロトとなんの憂いもなく楽しく会話できる時間を作ることが出来たのは何よりの成果だと思う。
ついつい、後方で腕を組んでファン目線というか、親目線に近い温かい視線を向けてしまっていたのだけれど、それは何の脈絡もなくイヴが笑顔のままこんなセリフを言うまでの事だった。
「それでね? ヒロト、私思ったんだけど……もしよかったらフォースに入ってみない? また違う世界が見えてくると思うの」
「……!」
おおっと、不穏な流れが始まりそうなセリフ来ちゃったね。
どういうこと?
戸惑う俺の胸中を理解できる人間は残念ながら誰もこの空間にいそうになかった。