転生主人公、ガンプラバトルネクサスオンラインを遊び倒す 作:くずもちXXX
「うーむ……少し休めと言われてしまった」
などと店番をしながら呟く。
だが確かに言われてみれば、少々最近根をつめ過ぎていたような気がしないでもない俺はされるがままだった。
「達成感はある……だがまだ不完全燃焼感が否めない」
いうなれば俺は楽しくガンプラバトルをするために動いてきた。
バグ騒ぎやら、不具合のリスクを減らし、ともに遊ぶ仲間が出来た現在は非常に快適な環境が整いつつあると言える。
運営も余裕があるのかゲーム環境は原作ほど荒れたプレイヤーがいるわけでもなく。
マスダイバーの存在も耳に入ってこないのは、頑張った成果なのだろう。
「……だが、だからこそ今なのではないだろうか?」
逆に考えよう。プラモを製作する手間が最小限になったということは今こそGBNを本気でやりこむ好機とも言えるのではないだろうか?
「まぁでも何かやってるんだろうけど……前世からの悪い癖だよ」
とりあえずこれを機に目の下のクマでもよく寝て取ってしまうのもありなのかもしれない。
そんなわけで俺は比較的いつもよりマッタリしているとカランと店のベルが鳴った。
「こんにちはー」
「いらっしゃいませー。おやヒナタちゃんお疲れ様」
「はい。お疲れ様でーす」
「ゆっくりしていってよ。何なら工作スペース開いてるから、好きに使っていいよ」
「ありがとうございます!」
「実は家にはコーヒーメーカーもあってね、ちょっと豆にはこだわっているんだよ。良ければどうぞ?」
「なんだか喫茶店みたいじゃないですかー」
「だよなー。カフェオレなんかも出来るよ?」
「じゃあもらっちゃおうかなー?」
「いいとも。少々お待ちくださいねー」
制服姿のヒナタちゃんは、緊張している様子もなく空気はもう常連さんだった。
しかしカフェオレを入れ終え、サービス満点の対応をした俺はとある事実に気が付いてしまった。
「いや……なぜ?」
「え?」
「ヒロトとGBNするのでは?」
しかし、あえて大事なところなので店員さんは尋ねると、ニッコリ笑顔だったヒナタちゃんはぴたりと制止。
途端にシュンとしたヒナタちゃんは、ポツリとこぼした。
「……今まで、私は一緒に遊んでなかったんです」
「そうなの? 家に遊びに来てたじゃない。仲のいい幼馴染に見えたけど?」
「も、もちろん家は隣だし。遊びはしてます。お料理だって作ってあげたりしたんですよ? でもガンプラだけは……ほんの少しだけ距離があった私なのです」
「う、うむ?」
「い、今更一緒にやりたいって言いづらいんです! 『いや、今まで興味ない感じだったのにいきなりどうした?』みたいな空気になりそうで!」
半泣きのヒナタちゃん思春期の主張は俺に衝撃を与えた。
そこまでやってなんで一緒にゲームするのをためらうのか? 世の中不思議なことでいっぱいだった。
「いや、そんなに身構えなくても。ガンプラ、怖くないよ? ゲームなんだからさらっと遊ぼうって言えばいいと思うよ」
「わかってますけど……きっかけが」
「きっかけか……」
アマテラスだけではきっかけにならんか、どんだけハードルが高いんだって話である。
しかしこればかりは最初の一歩を自分で踏み出さないと始まらない話ではあった。
もうこれ以上はどうしようもなくないか? と遠くを見つめ始めた俺は店の外に見知った顔を見つけた。
「……あ。ヒロトが来た」
「え!? まだ心の準備が!?」
途端になぜか慌てだすヒナタちゃんは、どうにかしてくれと涙目で訴えてくるので、仕方がないなと、俺は店の裏口を教えてあげた。
「……あのまま顔を合わせた方が面倒がなかったのでは?」
カウンターに肘をつき呟いてみたが、あんな風に目で訴えられては仕方がない。
そしてヒロトはまもなく店に到着した。
「いらっしゃいませー」
「……こんにちは。なんだか久しぶりな気がするな」
「それは仕方ない。やっぱり設備はベースに負けるしね。やりこんでるんだろう? GBN」
「ああうん。団体戦は今まで興味がなかったんだけど、みんなよくしてくれて、思ったより楽しめてる」
「まぁそうかもなぁ。フォース戦は個人戦とはまた別に考えること多くて楽しいよ」
個人技とはまた違う連携や、戦術戦略入り乱れる戦いもまた個人戦では味わえない遊び方だと思う。
「そうなんだ。とはいえ新顔だから、無難にフォースミッションこなしているだけだけど。メインメンバーと一緒に組めることも多くなってきて。機体を面白そうだと思ってもらえたのかもしれないな」
「そっかー。ヒロトなら実力だと思うけどなー……」
んんー? なんでイヴちゃんとしそうな会話を俺とする?
そこはGBNでイヴとするべきところじゃないのかい?
にこやかに語るヒロトは楽しそうで、無事にフォースになじむことが出来ているようだった。
だが、とある話題に変わるとヒロトの口は重くなった。
「そう言えば……タカマルはイヴを見てないかな? 最近あんまり会えてないんだ」
「え?」
あ、そうね。そっちは俺のせいか。
最近こっちで色々やってるから、あんまりうろうろしてないみたいねあの娘。
今はフォース正式加入目指して、モルガーナの量産機でランク上げでもしている頃だろう。
しかし正直に言うのも、サプライズに協力している手前、違う気がする俺なのだった。
「あーうん。まぁそういう時もあるだろう」
「そうだよな……オンラインなんだから、リアルの事情もあるだろうし」
「まぁそうだよね。近いうちに会えるよ。もうほんとスグ」
「そうかな? ……まぁそうかな。イヴはいつも突然現れるから」
「あ、そんな感じなんだ」
ログアウトできるからいつもいるわけじゃないけど、きっと今後も突然現れることだろう。
でもそうだな……GBNってオンラインゲームなんだよな。
ごく自然に中の人を知ってるケースが多かったが、本来であれば外の事情を気にせずに気軽に楽しめる。それがオンラインゲームの強みでもあったはずだった。
「あっ。なんだ簡単なことだった」
「どうしたんだ?」
「ああいや、実はね……うちの店に来てた娘が、GBNを始めたんだよ。良かったら、ヒロト、少しレクチャーしてくれないか?」
「え? 俺が?」
「そうそう。軽く遊び方は教えたけど、やっぱオンラインだしな。いろんな人と遊んでみたいみたいなんだ。なに、たまに見かけたら一緒にミッションを遊んでくれればいい。もちろん普通に仲良くしてくれたらもっと嬉しいけど」
別に一緒にベースで遊ばなくても、向こうで会えばいいじゃない。
いけそうならカミングアウトして、ダメそうなら今まで通りリアルで仲良くすればいい。
みんな幸せになるとてもいい采配なのではないだろうか?
少しだけ驚いたような雰囲気のヒロトだったが、思うところがあるのかヒロトは俺の提案を快く引き受けてくれた。
「……ああ。いいよ。大丈夫だ」
「助かる! じゃあ、この日時にミッションカウンター辺りでお願いしてもいい?」
「わかった。その子のダイバーネームは?」
「ヒナタだよ」
「……ヒナタ?」
「そう。ああそう言えば、ヒロトのお友達さんとおんなじ名前だな」
「ああ。こんな偶然ってあるんだな。でもヒナタはガンプラバトルはやらないんじゃないかな? ガンプラをすすめたことはあったんだけどあんまり興味はないみたいなんだ」
「……」
お互いの認識そんな感じ?
そんなに興味なさそうに見えた? 俺にはむしろ興味津々に見えたが?
いや、ちょっと苦笑いに見えただけでも、一歩引いちゃうのが人間ってもんか。
いやうん、まぁ興味はあるけど、気後れしてただけみたいですよ?
人間関係ってちょっとしたすれ違いでままならないもんだなって感じである。
まぁ、ちょっと変則的ではあるけどオンラインでは普通の事だ。
リアルをバラすかどうかは、ヒナタちゃん本人が決めればいいことだろう。
「ありがとう。じゃあ、相手の娘にもそう伝えておくよ」
「うん。あんまりうまく案内出来ないかもしれないけど、……GBNを好きになってくれるといいな」
ホントにね!
では後は任せるよヒナタ君! 吉報を待つ!
事の経緯をメッセージで送ると、大慌てで店にヒナタちゃんが突撃してきたが、撤退は許されなかった。