転生主人公、ガンプラバトルネクサスオンラインを遊び倒す 作:くずもちXXX
「簡易GPDはぶっちゃけELダイバーの素体を動かす奴を繋げてでかくしただけだ。デカール貼ると動く」
「ビルドデカール?」
「いや、もっとお手軽なやつだ。やり取りするデータ量を相当絞ってる。デュエルデカールってところだな」
「……なるほど」
まさにホビー用の進化って感じである。
それにしても俺は、新たなデカールの誕生に立ち会ってしまった。
心の中の前世知識がアウトかセーフか審議していたが。まぁセーフとしておこう。
フィールドこそ狭いが、SDガンダム達がフィールドの上で、準備運動したり飛んだり跳ねたりしている様はとっても素敵な光景だった。
「おおー。案外動き回れるな」
「まぁ簡単なバトル位は出来るさ。あくまで手軽にGPDを楽しめるように作った。主に自分用だ」
「自分用かい」
「すごいなこれ。これを自作したって……すごすぎないか?」
ヒロトはしきりに感心していたが、それも無理はない出来である。
「まぁな。……いや、全部自作とは言えねぇかな。色々ちょろまかして出来上がった感じだ」
「おいおい」
まったくしょうがないシバ君だった。
それでもすごいことに変わりなく、何かに使えそうなのは確かで、今後に期待である。
実際に動きまわるガンプラは本家GPDの物より距離感が近く、非常にかわいらしかった。
「じゃあバトルでもしてみようか。リリネットでも誘って、サタンガンダム討伐再現でも……」
そこまで言いかけた俺は、しかし俺達の事をガン見している女の子を発見して動きを止めた。
黒髪のサイドテールがかわいらしい女の子は学生のようだったが、目が一時もSDガンダムから離れる様子がない。
「こ、これは!……僧侶ガンタンクとファイターガンキャノンが動いてる!……置いてあるレアキットの数々といい……このショップはどうなってるの?」
ぶつぶつ言ってる女の子は、手に持っているキットがガンキラーなところを見ると素人ではあるまい。
俺はSDガンダムガチ勢女子と見た。
小声の解説も実に楽しそうで、頬が紅潮しているのが見て取れる。
だから俺はちょっとだけ勇気を出して、ゲームに誘ってみることにした。
「あの……良かったら参加していきますか?」
「え!? いいんですか!??」
食い気味の女の子は、やっぱり参加したくてたまらなかったらしい。
そう言うことならこちらは大歓迎である。
「どうぞどうぞ。じゃあ何を使ってみます?」
「ファイターガンキャノンでお願いします!」
おおっと、即答とは。そして、そこをチョイスするとはなかなか通好みのお嬢さんだ。
確か仲間ではあるんだけど、敵に操られたりするんだったかな? ストーリー面でも重要な活躍をするキャラクターである。
だったら俺も気合を入れて、サタンガンダムを動かそう。
ついでにボイスチェンジャーで合成音っぽくすれば完璧だった。
「フハハハ! それで勇者のつもりか! 伝説の勇者がガンダムならば! それは闇の力でこの世を支配する私の事だぁ!」
「ノリノリじゃねぇか!」
「……俺も何かロールした方がいいかな?」
「う、動いている! このガンキャノンクオリティ高くないですか? 売ってたりしますか?」
「フハハハハ! 楽しそうでなにより! だが潰れてしまえ!」
しかし、手加減なしで行かせていただく!
わぁーすごい! エフェクトとか出るんだ! 赤いオーラとか、光とかめっちゃ出てる!
タカマル模型店ラクロア編は、しかしガチ勢3人の前では原作通りにサタンガンダム瞬殺で終わったのだった。
「いいじゃないか! まさかビームやらエフェクトまで出せるとは思わなかった!」
「それが簡易版でもこだわったところだ。動かすだけならダイバーギアくらいの……もっと小さくてもいいんだよ」
絶賛する俺に、フフンと得意気なシバ君は成し遂げた職人の顔をしていた。
そして大変興奮しているのは俺だけではなかった。
「……これはいいものですね! ええっと、このお店で販売とかしてるんでしょうか?」
未知の体験に目を輝かせている女の子に、製作者のシバ君はなにやら残念そうに頭を掻いた。
「いや、販売はしてないんだよ。自作の試作品だ……あーいや、だがせっかく参加してくれたんだ。どうだろう? これ使ってみないか?」
「え?」
「モニターってやつだ。使用感を聞かせてくれ。それとこれ、デカールも何枚かあげるよ。リアルの友達でも、親兄弟とでもいいから遊んでみてくれないか?」
デュエルデカールを受け取った女の子はどこか困惑しながらデカールを受け取っていた。
「私の意見なんて参考にならないと思うんですけど……」
サイドテールをしんなりさせて言う女の子だが、シバは大丈夫だと付け加える。
「本当に単に使ってみた感想が聞きたいだけなんだ。デカールに関しちゃリアルじゃないとダメだしな。GBNはやってるか?」
「はい、一応」
「んじゃ。そっちの連絡先教えておく。まぁ気が向いたらどんな感じだったか教えてくれるくらいでいい。まぁひとまず……一週間くらい貸し出すよ」
「……それくらいなら」
「あと、この店の裏でGPDの交流会やら大会なんかもやってる。良かったら顔を出してくれな?」
「あ、はい」
なるほど本命はそっちか。
流石シバ君、GPD布教に余念がなかった。
これを機に近場に住んでる、ガンプラ好きを沼に引き入れる心づもりか。
この簡易版GPDはプラモが動く喜びを実感するのに、まさに最適そうだった。
だがシバ君は少し畳みかけすぎて、困惑させてしまったと判断したのだろう。
今一乗り切れていない女の子にダメ押しの一手を放った。
「もちろんちゃんと礼はする。そっちのガンプラ棚から一個俺が奢るよ」
「! 私、フジサワ・アヤって言います! GBNではアヤメってアバター使ってますからよろしくお願いします!」
ひょっとしなくても、彼女が噂のアヤメちゃんか。
うーん。しかしこの娘、ちょっと心配になる感じだ。
なにとは言わないが、絵面もマズイ。
そしてシバ君は、やっぱりこの子にデカール配らせる運命にあるんだなと俺は大変複雑な気持ちになったが、あんまり学生の女の子に無茶ぶりをしないようにと、軽―く釘をさしておこうかなってそう思った。