転生主人公、ガンプラバトルネクサスオンラインを遊び倒す 作:くずもちXXX
月でのバトルは俺達の最も力を発揮できるフィールドだった。
「密集隊形! GNフィールドを集中!」
9機のサーペントのダブルガトリング一斉射撃をグレイズは粒子のシールドを集中して防いだ。
「……やはり先制攻撃は取られがちですね。チャージが長いのがモルガーナの弱点です」
「な、なんだと!」
リリネットはため息交じりにそう呟いたが、とはいえダメージは許容範囲内である。
ほとんどのメンバーに搭載されたGN粒子を最大限集中したフィールドは菱形の密集隊形をとることで効果を重複させていた。
「……あの一瞬で陣形を組んだのか? まるで機械のような動きだ……だがネタは割れているんだぞ?」
対戦相手のワイルドさんは秘策があるらしく、トゲトゲした青い機体を駆り前に進み出た。
「何をするつもりですか?」
「当然! お前達モビルドールを無効化するんだよ! 行くぞガンダムアクエリアス! アンチモビルドールウイルスだ!」
「!」
アンチモビルドールウイルスとはまたマイナーな兵器を持ちだす。
ELダイバーの性質的に俺はひやりとしたが、リリネット含めてうちのメンバーに一切不具合はないようだった。
「……大丈夫なようですが?」
「そんな! 絶対モビルドールだと思ったのに!」
なんだいその思い込み。
リリネット達の一糸乱れぬ動きが彼にそう錯覚させてしまったのか?
それとも俺がソロ専門に見えたのか?
実際、フォースの人数が足りない場合モビルドールで数を補うのは有効な戦略ではあった。
「クソ! だが俺のモビルドールは特別製だ! ここからが本番だぞ!」
「ではお願いします」
「了解」
サラッと相手の言葉を流したリリネットに促され、俺は前に出る。
では戦法が有効かどうか、試させてもらうとしよう。
「デストロイヤー・レイ。行くぞ!」
「んな!」
俺の叫びと共に、ホーミング機能付きのレーザーが敵めがけて降りそそぎ、サーペントを撃ち抜いて行く。
仮にも必殺技である。
その威力は申し分なく、防がれたとしても勢いをそぐには十分すぎた。
「よし! かく乱する! チャージ用意!」
「了解です」
指示を飛ばしながら、俺は手近な敵にメイスで殴りかかった。
言っちゃなんだが、ビーム兵器対策が露骨に多くなってきた昨今、この大型メイスは必殺の武装である。
うっかり大振りでも当たれば、この通り。
サーペントは上半身がもぎ取られて、大爆発を起こした。
「反応は……速いんだがな。不意打ちで案外ペースが乱れるなモビルドール」
今後バトル用のAIがもっと進化すればわからないが、現状は問題ない。
破損した相手から一機ずつ叩き潰していけば、攪乱は成功の様だ。
「く、くそ! だが接近戦ならアクエリアスだってやるぞ!」
「武装がないだけでしょうが!」
アンチモビルドールウイルス。
モビルドール相手に絶大な効果があるが、一方でリソースをドカ食いして他の武装が付けられない。
効果の範囲がモビルドール限定と、ごく狭い範囲のシステムは、別名ボッチ殺しである。
だが本当に申し訳ないが、そろそろ時間切れだった。
「だけど、ここで引かせてもらうよ!」
「なにぃ!?」
ではワイルド氏、生き残ったらまた会おう。
俺が退避したのを確認して、チャージタイムが終わった我がフォースの面々はサテライトキャノンで狙いを定めていた。
「ちぃ! サテライトキャノンか! だが俺は世代だ! そいつの効果範囲は熟知している! モビルドール! 効果範囲から退避だ!」
弾幕を張りつつ、敵も後退していた。
しかしさすがはモビルドール、逃げるとなると一つに意志に統率されて乱れがなかった。
これはまさに、モビルドールの利点だろう。特に回避については人間の限界すら超えそうだった。
「なるほど……タイミングと効果範囲を見切れると言うのなら、回避も可能かもしれません。ですが―――それは武装がただのサテライトキャノンだった場合でしょう?」
「なに……!」
リリネットの言葉に驚愕したワイルドはきっと冷汗の一つも流したに違いない。
リリネットの号令で引き金を引く機体の輝きが、マイクロウェーブの物だけではないと気が付いたワイルドはその瞬間負けを覚悟していた。
「我らの月は太陽を喰らう……」
GNフィールドのエネルギー源である太陽炉は攻撃にも転用できる。
サテライトキャノンに太陽炉のエネルギーを上乗せした砲撃こそが彼らの必殺技だった。
「ソーラーイクリプスキャノン! 発射です!」
「なぁ!」
見切りが回避の要なら、見誤った時点で運命は決まった。
敵は真っ正面からこちらの砲撃に呑まれ。俺達は勝利の栄光を手に入れる。
ガンプラバトルの判定はいつも明快そのものだった。
「よし。いい感じじゃないか。必殺技」
「まさか連携を繰り返すことで手に入れられるとは思いませんでしたね」
このフォース戦は月のネストがかかっていた。
また一つ月基地を手に入れられてリリネットはホクホク顔でご機嫌だった。
「しかし、威力は相当ですが、撃った後の反動が厄介です。あまり多用出来る切り札ではないかと」
「ここぞという時まで温存しといたほうがいいかな。ぶっちゃけサテライトキャノンでも威力的には十分だしなぁ」
ソーラーイクリプスキャノンは、瞬間的に威力は増大するが、キャノン自体に大きな負荷があり、リキャストタイムがかなり長い。
何なら状況次第ではキャノンそのものが壊れかねないもろ刃の剣だ。
手札としては使いづらいと言うのが正直なところだった。
「だけど、基本の戦い方は固まって来たね」
「はい。タカマルが相手をかく乱し、我々の一斉射で仕留める。またはその逆ですね。試した限りで言うなら有効な戦術でしょう」
シンプルだが、だからこそ破りにくい。
どちらも意識を乱すには十分個々のインパクトはあるだろう。
「とりあえずモルガーナの準備は完了って感じだね。後は……サプライズかな?」
「機体の製作は順調です。何ならコアの方も私達で作りますが?」
「いや、そっちももう完成する」
自慢もかねてそう言うと、リリネットは眉間に皺を寄せた。
「……マスターはまた無茶をしたのですか?」
「マスターじゃないです。そして無茶じゃないです。心の栄養です」
「なぜですマスター」
「いやそんなめちゃくちゃ不満そうな顔をしないでリリネットさん。サプライズは成功させたいだろう? 祭りの前は準備をしっかりしないと。それにヒロトに許可をもらったけど、それだけじゃ面白くないからね。実は1エッセンス俺なりの隠し味を加えてある」
「と、言いますと?」
首をかしげるリリネットに、俺はうまく説明できる気がしなかった。
「なんて言えばいいだろうな……しいて言うなら、未来の力かな?」
おそらくこの世界の人間には驚いてもらえることだろう。
うまいこと出来上がって喜んでくれればいいけど、それはまぁ完成品を見せた後にしか答えが出ないのが恐ろしいところだった。