転生主人公、ガンプラバトルネクサスオンラインを遊び倒す 作:くずもちXXX
お店の店員をやっていると、たまに印象に強く残るお客さんがやって来る。
「……!」
ある日、俺が店番をしていると、非常に見覚えのある制服を着た女の子が買い物に来ているのを発見した。
そして俺は彼女を見た瞬間、脳に電撃が走るような衝撃を受けた。
あ、あれはまさか……フミナパイセンでは?
突然の有名人来店に、サイン色紙片手に、走り出したい気分である。
しかし落ち着くんだ俺、まだ慌てるような時間じゃない。
だが俺とて、模型ショップの店員。
この出会いを俺はチャンスとして生かす責任があった。
ホシノ・フミナとは?
テレビアニメガンダムビルドファイターズトライにおけるメインヒロインである。
そして彼女は、元の世界で……最もプラモ化に愛された女とそう形容しても間違いないだろう。
こちとらガンダムファンである前にガンプラファンを自称していたモデラーだった前世。
『フミナ』には特別な思い入れがあった。
なぜならば彼女こそがガンプラ界隈の美少女プラモデル、その歴史そのものと言って差し支えないからである。
彼女のプラモはそれこそ様々な形態で世に出た。
そのたびに試行錯誤が加えられて、造形は進化し続けていったのである。
まぁ正直、美プラを研究するための実験体に見えなくもなかったが……それはともかくガンプラを追いかけていれば絶対に目につく、思い入れのある人物であることは間違いなかった。
しかしプラフスキー粒子を使ったガンプラバトルシステムが存在しないこの世界。
それはいわゆるパラレルワールドである。
派生作品で同一の世界に存在した場合もあったが、それはどう考えてもお祭り企画だった。
正直存在しない可能性が大きいと感じていたが……彼女を初めて見たのは恐らくそう、ほんの2・3年前のことだったと思う。
あれはGPDの大会で、中々うまい小学生がいると言うことで噂になっていたのだ。
その時トーナメント表に記載されていた名前がホシノ・フミナ。
彼女の名前だったように思う。
当時は絶対の確信が持てず、もちろんその時は声をかけるなんてことはできなかったわけだが……現在制服を着ている彼女は一目でそれとわかってしまった。
しかし今の俺はだいたい同じくらいの年頃の模型や店員。
ここは一つそれとなく声をかけてみるのもいいと思う。
「あの、これお願いします」
パワード・ジムのキットを選んで家の店で買ってもらえたことに感動を覚えた俺は思わずあふれ出た感情のままに話しかけていた。
「あの……ひょっとしてGPDの大会に出たことありませんでしたか?」
「え?」
かなり驚いた顔のフミナさんに俺は矢継ぎ早に話しかけていた。
「いや、俺もGPDやるんですよ! すごく強い子だったから、ファンになっちゃって」
「えぇーそんなー。私なんて全然大したことありませんよー」
おっと? かなり嬉しそうだ。
ニヤけて顔を赤くするフミナさんはまんざらでもない感じである。
これはもうちょっと話せるかもしれない。
俺はもう少しだけ頑張ってみることにした。
「いやいや、本当に。それに今もガンプラ続けてくれていてすごく嬉しいです」
これはガンプラファンの心からの言葉である。
するとフミナさんは元気に頷いた。
「はい! 今も楽しくやってます! あーでもGPDのサービスが終わっちゃいそうで、少し迷ってるんですよね。私ガンプラバトルで憧れてる人がいてプラモ始めたので。中学になったら模型部に入ろうかって思ってたんですけど……なんか違う感じで」
なんと、年齢的にはまだ中学入学したばかりとは原作年齢が中学3年だったから、それより前ときたか。
しかし思わぬパラレルな影響に俺は内心これは良くないと焦った。
彼女になんやかんやあってプラモを引退し、GBNに参加しないなんて言うのは世界の損失である。
そんなことになるくらいなら、俺とて手を貸すことにやぶさかではなかった。
「それはもったいないですね。今度GBNってゲームも始まるって噂ですから、公式はそっちで色々やってくれると思いますよ?」
「あーGBNかー。でもなんだか勝手が違いそうで。私メカとかもあんまり強くないからなぁ……」
「じゃあ、家の店でサークルでもやってみては?」
「サークルですか?」
「ええ、GPDの個人勢は店でメンバーを集めてる人も多いんじゃないかな? GPDの筐体もありますからそっちでガンプラバトルもできるし、GBNの筐体もサービス開始時に入荷予定ですよ? ちなみに俺は特別GBN関係はメカも得意です。模型屋店員ですので」
「模型屋店員ってメカ強いんだ……」
「絶対じゃないけど俺は強いですね」
妙なところに食いつかれたが、機材のセッティングに自信がないなら力になれることだろう。
「じゃあ、私くらいの年齢の子もいたりします?」
目をシイタケみたいに輝かせたフミナさんは身を乗り出すが、GPDも大ヒットコンテンツである。
当然遊び場を求めたユーザーは俺も含めて何人かいた。
「いらっしゃいますよ。模型店のサークルなら結構やってるんじゃないかな? バトルを楽しみたいなら、部活じゃなくてもいいと思いますけど?」
「なるほど……そんな手が……あの! 案内とかってありますか!」
「ええ、ありますよ。どうぞ」
「ありがとうございます! すみません! また来ますね!」
ものすごい勢いでチラシを持って飛び出して行くフミナちゃんは、行動派だった。
すまぬセカイ君。ひょっとすると、何か致命的な歴史を動かしてしまったかもしれん。
しかし、まぁこのままGPDと共に彼女のガンプラ歴が消えてしまうよりはずっといいはずである。
それから次の日には、家の店にやって来て模型サークルに参加し、GPDでしばらく店の客も含めてバトルの日々を過ごしていたのだが……それはほんの少しの期間だった。
ちなみにいよいよガンプラをやりづらくなって引退したとかそんな世知辛い話ではない。
なぜならば―――。
『こんにちは! GBNイメージキャラクターのアバターフミナです! 今日はサービスを開始したGBNについて丸ごと紹介しちゃいますので、皆さんよろしくお願いしまーす!』
なんか公式にいつの間にかスカウトされてた。
ついつい熱が入って、G-TUBEでハイクオリティアバターフミナとかやってしまったのが原因と言えば原因か。
許可? もちろん本人に取ったさ。奴とは違うのだよ奴とは。
あーいや、でもさすがにモデラーの方には許可取しなくてもいいよね? だって過去だもの。
フミナチャンネルを立ち上げたらめちゃめちゃバズった。
公式が反応してしまうほどなのだから、その反響は推して知るべしである。
「でもまぁ……考えてみれば、フミナパイセンなら仕方がないかぁ」
フミナさんはこっちの世界でもガンプラに愛されてたってことなのだろう。
肝心の店の宣伝にはほとんどならなかったが……世界のために仕方がないことだった。