転生主人公、ガンプラバトルネクサスオンラインを遊び倒す   作:くずもちXXX

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月光蝶

「こけおどしだ! 敵は一機! 囲んでしまえ!」

 

「了解!!」

 

 こちらの主軸がどの機体かは一目瞭然だろう。

 

 作戦として、取り囲んで物量で潰そうとするのは間違っていない。

 

 いや……実際俺だってEXカリバーのコンセプトはどうなのか、自信がない部分はあった。

 

 練習はともかく、真剣勝負という特殊な条件下で果たしてどれほどこの構成で効果がでるか?

 

 しかしこのリライズ時空に置いて最強の機体であるリライジングガンダムですら4機合体だ。

 

 10機ともなれば相当期待できるのでは?という期待はもちろんある。

 

 俺の不安をよそにイヴはニコリと笑う。

 

 ビームマシンガンの弾幕は飛んできていると言うのに、その表情に一切迷いがないのが、個人的に少し気になった。

 

「楽しそうだね。不安はない?」

 

「ないわ! みんなで一生懸命作って私に託してくれたんだもの!」

 

「お、おう……」

 

「私、嬉しいの! この世界に生まれたみんなが全力で頑張ってる! 私も弱気になんてなってる暇はないわ!」

 

 イヴは金色の衛星に視線を巡らせる。

 

 その目は何を思っているのか?……それは乗っている機体のおかげかすぐに理解できた。

 

「じゃあ見てて―――さすがみんなのお姉ちゃんってところを見せるから!」

 

 いつの間にかお姉ちゃんとしての自覚が芽生えている……!

 

 

【挿絵表示】

 

 

 そして10機丸ごと分の出力を得た月光蝶は殆ど原作中の再現みたいな威力を実現した。

 

「弾幕薄いぞ……! うわ! なんだ!」

 

 サザビーの号令でファンネルが展開し、飛んできたが、まるで強烈な向かい風を受けた様にファンネルが飛ばされ、爆散する。

 

「クッ! これならどうだ!」

 

 更にはダブル・ホーン・ファンネルによる砲撃は、ムーンベースが割って入るとビームが湾曲した。

 

 そうしている間にも月光蝶は迸っていたが、濃度が一人で使った時とは比べ物にはならない。

 

 羽根の様でありながら、糸の様でもある光の本流は迫る敵機を宇宙空間で押し流した。

 

「うおおおお! なんだ!」

 

「これ月光蝶!?」

 

 俺達のサテライト・ムーンベースからもガンガンエネルギーが吸われる。

 

 そのたびに月光蝶の輝きは増して、勢いはもはや光の洪水だった。

 

 EXカリバーのフェイスは赤く輝き、その機体には全身の装甲から強い輝きが発せられていた。

 

「アハハハ! すごい! これすごいね! 宇宙が! 私が宇宙を埋め尽くしそうだよ!」

 

「いや何その感覚表現……俺知らないよ?」

 

 予想以上の輝きに俺は驚き、目を見開いた。

 

 イヴの言葉の意味は分からなかったが、EXカリバーから放たれた光は、あっという間にフィールド全体を覆いつくす。

 

「ぐっ……何なのだこのプレッシャーは!」

 

 敵のリーダーであるサザビーは異様なモビルスーツに気圧されるのはともかく、こちらに近づきすぎたのは失策だった。

 

 EXの放出する光は一粒一粒がナノサイズのマシンで構成されている。

 

 それすなわち、ナノマシンの一つ一つがイヴの思念で動くファンネルの様なものだ。

 

 そしてフィールドを埋め尽くす月光蝶の光は容赦なく敵モビルスーツに牙をむいた。

 

「武装が全然使えない!」

 

「なんだこの月光蝶! 機体が動かない……!」

 

「光に触れるな! 捕まるともう―――」

 

「―――動けないでしょう? 近づけば近づくほどあなた達の事がはっきり見える……そこは丸見えだもの。そして……」

 

 動けないネオジオンの面々に近づき、イヴは箒改め剣を構える。

 

「えい!」

 

 そして可愛い掛け声に似合わないハイパービームサーベルの横なぎは、動けずに固まる月光蝶の犠牲者を胴体から真っ二つにしてしまった。

 

「ば、ばかな! これが心の光……」

 

「え? 違うよ? 月光蝶って言うんですって」

 

「……」

 

 あっさりと爆散する光すら月光蝶は飲み込んで、その性能を余すことなく発揮することに成功したようだった。

 

「うぉー。すげぇなパーフェクト月光蝶……」

 

 俺は胸をなでおろす。

 

 正直1機に全部乗せとか10機で袋叩きの方が強いかもしれないと思っていたのだが……イヴの乗ったEXアーマーの月光蝶にはすべてプラスに働いたようだった。

 

 

 

「勝者! フォース『モルガーナ』! なんということでしょう……すごい月光蝶でしたね! 月の悪魔ならぬ月の女王現る! まるでディアナ様のようです!」

 

 実況のフミナさん、わたくしの異名をご存じでしたか。

 

 お勉強していてえらいね……でも忘れてくれるととても嬉しい。

 

 しかし、そんな異名とも今日ここでバイバイかもしれない。

 

 思ったよりも噛み合ってしまった圧倒的な結果に、会場の視線はイヴに集まっていた。

 

「それでは早速、やはりメインパイロットの彼女にお話伺ってみましょう! 大丈夫ですか?」

 

 勝負が終わり機体から降りたイヴはアバターフミナに頷いて見せた。

 

 そしてマイクを向けられると、いつも通りの屈託のない笑みをカメラに向かって見せて、仮面をとってアピールした。

 

「私がパイロットのイヴです! えっと……フォースモルガーナをよろしくお願いします!」

 

 それってとっていい奴なんだ!という驚きからの小さく手を振るサービス付きに、静まり返ったロビーは色めきだった。

 

「か、かわいい……」

 

「フッ……なるほど。彼女がモルガーナというわけか……」

 

「差し詰め、月の悪魔は女王に飼われる番犬と言ったところですかな?」

 

「……そのポジションは羨ましすぎるだろう」

 

「あの陽だまりのような笑顔が黒い悪役の女幹部風の衣装から出てくる破壊力よ……正直推せる」

 

 いろんな意見はあるようだが、好意的に受け入れられたようだ。

 

「すごいガンプラでしたね。製作は大変だったんじゃないですか?」

 

「みんなで一緒に作ったのでとっても楽しかったです。これから皆さんとも遊べると思うとワクワクします。よろしくお願いしますね♪」

 

 心を清めるような受け答えには、嘘くささが一切ない。

 

 それはそうだ、天然である。

 

 しかし会場を浄化しそうな笑顔は、大会会場の彼らの心にも届いた。

 

 最終的には、名前の大合唱でフィナーレである。

 

 イヴ!イヴ!イヴ!イヴ!イヴ!

 

「皆さんありがとうございます! ゲームで会ったら遊んでくださいね!」

 

 ウオオオオオオ!

 

 このお姫様のカリスマ性はどうやらGBN内でも有効だと証明された瞬間だった。

 

 というかあのクソ外道兵器使っておいて、チーター呼ばわりも悪魔呼ばわりもされないのずるいと思うのだが?

 

 もし俺が同じことをやったら、間違いなく悪魔どころか魔王呼びな気がした。

 

「これがヒロイン力っていうものか……泣けるぜ」

 

 いやまぁ俺が観客なら俺だってそうするけど。それはそれである。

 

 

 

「ふぅ……」

 

 俺はいったんログアウトして現実に戻って来る。

 

 すると他の面々も戻ってきていて、GPDの筐体の上にイヴもいた。

 

 シャフリさん製イヴ専用モビルドールは約束通りプロクオリティの素晴らしいものが届き、彼女のメインボディとなっている。

 

 しかしログアウトして戻ってきた瞬間、イヴは膝から力が抜けて尻もちをついた。

 

「おっと!……どうした?」

 

「フフフッ……ちょっと疲れちゃったかも」

 

 リリネットに支えられたイヴはぽかんとして笑う。

 

 その顔は高揚していたが、様子がおかしいのも本当の様だった。

 

「なんだかチカチカするわ。……あの子の力とってもすごかった。フィールド全体に私がいて、何でも思うままに出来そうな―――でも力が強すぎて目が回っちゃったみたい」

 

「うーむ……言いようがニュータイプやら、強化人間のそれなんだよなぁ。力が強すぎるか……負荷があるなら考えないと」

 

「どういうこと?」

 

「わからないけど、データ見る感じ機体との親和性が高すぎたみたいな? 月光蝶を発動してから感情データが乱れてる。精神的負荷がかかっている感じ?」

 

 機体性能が作中設定そのままってことではもちろんないが、特殊な機体の合わせ技であるのは間違いない。

 

 ターンXの月光蝶は極小のナノマシンをIフィールドに乗せて散布し、敵を破壊する兵器。

 

 キャリバーンはパーメットという物質を使って、機体との親和性を高める。

 

 二つの機能を使ってイヴが機体とリンクを試みれば、それは宇宙と一体化するような感覚を味わう場合もあるのかもしれない。

 

 キャリバーンとターンXの組み合わせは、ELダイバーの彼女に思ったよりジャストフィットしてしまったようである。

 

「ちょーっと、様子見た方がいいかもな。お披露目はすんだし、いったん使用禁止ってことで」

 

「ええ!?」

 

「「「「「えー」」」」」

 

「……君達ね。自分の体は大切にしときなさいよ? 気持ちはわかるけどさ」

 

 ELダイバー達全員から、不満の声が飛んできたが君ら少し落ち着きなさい。

 

 不具合ありそうなの君達だからね?

 

 しかしストレートに不満を表現するとは、彼らも中々人間味が出て来たものだった。

 

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