転生主人公、ガンプラバトルネクサスオンラインを遊び倒す 作:くずもちXXX
「……」
それはいい試合と言ってよかった。
「ランキング1位と戦えるなんて光栄なことだ! だがその称号、この私がいただこう!」
シャフリヤール達の射撃が一斉に放たれた。
彼らの一糸乱れない砲撃は流石の火力だった。
遮蔽物のデブリすら消滅させ、原作よりもある意味では強力に見える攻撃は、シャフリヤールの高い技術力を証明していた。
実際、アヴァロンの機体は砲撃に巻き込まれて撃墜さえされている。
一見、彼らの優勢である。
だが―――チャンピオンが動いたその瞬間、形勢は一気に逆転する。
反撃のビームがシームルグの機体を立て続けに撃ち抜いたのはその時だった。
「私も光栄だよ! その機体、堪能させてもらう!」
位置的にはシャフリさんの再チャージが間に合うはずだ。
シャフリヤールもそれをわかっていて射撃体勢に入っている。
このままいけば突っ込んだタイミングで倒されるのはクジョウ・キョウヤのはずなのだが……GNバズーカが実際に放たれたその瞬間、閃光が裂けた。
「なっ……!」
ブレードにもちろん細工はあるのだろう。
実際にビームを切り裂く方法はいくつか存在している。
しかしそれを使いこなすのは、高レベルの戦いになるほど難しいことを俺はよく知っていた。
「で、真っ二つと。うへぇ……やばいなぁ。アレを斬るか。どんな達人だよ」
感心しながら動画を繰り返し見ていると、声を掛けられ俺は顔を上げた。
「また動画を見ているのですか?」
「リリネットさんか、そりゃあもちろん。最新映像は貴重な資料だからね」
「なるほど……確かにそうです。彼に勝つのが貴方の望みですからね」
熱心になるのもわかると頷くリリネットだが、そこのところ少しだけ勘違いされては困る所ではあった。
「ハハハ。確かに目標の一つだね、だけどそれだけじゃない」
「そうなのですか?」
「ああ。勝つのは大切だけど、その過程が一番重要だ」
「負けても良い? ということですか?」
リリネットはいまいち理解できなかったのか首をかしげていたがもちろん負けて良いわけではない。
「負けていいわけではないかな? でも負けて言い訳出来ないくらいには人事を尽くすし、過程も楽しむってことだ。思い通りにならないからってやる気をなくすようじゃ、ホビーの精神に反するだろ?」
「ホビーの精神とは?」
「つねに楽しむことさ。後は……楽しもう!って意気込みかな? 当たり前だけど、大切なことだと思ってる」
勝負事になるとついつい忘れがちになってしまうが、無くしてしまうと根幹が揺らぐ。
非情に厄介で儚い宝石である。
「なるほど……」
正直あのチャンプは追い詰めたところで、未知の現象を無理やり起こして勝つくらいやる気がするからそれでも勝てるようにギリギリを攻める。
そんな攻略を考えることに楽しみを見いだすのが最も楽しめるような気がしているのは内緒である。
他には……メンバー的に考えると、イヴやヒナタはヒロトと直接戦えるこの機会を存分に有効活用してもらいたい。
そう考えると決勝戦は我がモルガーナにとって、お楽しみ目白押しだった。
「決勝もだけど、ELダイバーについてはどう発表するのか気になるなぁ。一応この期に及んで渋るようなら、インタビューでポロリからのフミナさんの盛り上げトークのコンボを予定しているけれど」
「それは中々、面白いことになりそうですね」
「だろう? ちなみにフミナさんには軽く説明してある」
今一信用しきれていない節があったが、そこはいつでも会えるのだし時間が解決してくれるはずだった。
「実際、会議の時は驚きました。ヒナタ様がいる時にELダイバーの話題を出したことも意外でしたが」
「ああ、そっちはワードの共有だけのつもりだよ。詳細はまだ話さないでね。どうせすぐにわかるんだ。決勝の連携でノイズになったらマズイ。まぁすべて内緒にしているよりはいくらか誠意があるだろう」
単にヒロトより先に詳細を説明すると、それはそれで気持ち的に気まずいので是非ともヒナタには決勝に集中してほしいところだった。
俺はちらりとリリネットを見る。
ひとまず、試合については俺の望みの話だ。好き勝手やらせてもらって大変ありがたい。
ただ俺もリリネット達の望み……というか望みを持てるところまで持っていこうと力を尽くしてきた手前、リリネットに聞いてみたいことはあった。
「……リリネットはどう感じてる? ELダイバーを世の中に知られることとか、今後のダイバーとの付き合い方とか、不安はないかな?」
少しだけ俺自身も不安に感じながら聞いてみると、リリネットはいつも通りのすまし顔で答えた。
「不安がないかというとそんなことはありませんが、大したことではないとも思っています」
「いや、大したことではあるだろう?」
「ないです。あなたがいれば何とかしてくれる気がしますので」
ここに来ても、思ったよりも大きな信頼感に押し潰されてしまいそうである。
しかしまぁ本当にそう思ってくれているのだとしたら、それは俺がやってきたことが無駄ではなかった証でもあることは理解していた。
「いつも言ってるが、そんなに頼りにならんよ俺は?」
「いいえ。きっとあなたがいなければ、私はとっくに消えていたのです。GBNの中でいつかまた、形を持つことはできるのかもしれないけれど、それはきっと私ではない」
「まぁ、そうか……わかんないよな」
俺としては受け継がれて、変わらないものがあると信じたいが。
というか俺が前の俺から受け継がれている物があると信じているからなのだろうが、難しいところである。
そんなものやってみなければわからないし、出来る事なら先延ばしにしたい感情はよくわかった。
「私自身だってELダイバーというものがどういうものなのか、今でもハッキリとわかっているわけではありません。ですが今の日常に不満はありません。むしろ、楽しいと感じている私がいます。それはきっとタカマルのおかげなのです。だからあなた達とは、これからも良き隣人、良きパートナーとしていられたらと……そんなことは可能だと思いますか?」
それは真実ELダイバーとしての彼女の感じている不安なのだろう。
だから俺は、今この時点の答えを彼女に返した。
「もちろん可能だ。リリネット? 好きって気持ちはね、たとえ死んでも消えないくらい、心の中にはっきりあるものなんだ。他の誰かの中にこれを見つけた時、俺達も誰かと友人になるんだよ。俺の言葉じゃないんだが……ELダイバーは俺達の好きって気持ちから生まれて来るんだってさ。だからきっと大丈夫だよ」
「……はい。そうですね」
こう、なかなか恥ずかしいセリフだが。本心だ。
何か、こう、いい方にとらえてくれるといいのだがと、内心冷や汗を掻いていると、リリネットは改めて尋ねた。
「タカマルは今楽しいですか?」
そんな簡単な質問に、俺は力強く頷いた。
「楽しいね。生まれた意味をひしひしと感じているところだよ」
「……オーバーすぎでは?」
「オーバーだとも。楽しんでいるのが伝わるだろう? リリネットも一緒に楽しもう。きっとこれからもっと楽しくなる」
もはや原作とは程遠い流れだから保証はできないけれど、うまくいく。
「……私も、何かお手伝いします」
「そう? じゃあお願いしようかな」
なんとなく横目で見たリリネットはとても優しく微笑んでいた。